アルバイトと忍術学園の段
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何かそんなに悲しくなってしまう結論なのだろうかと、小平太の質問が口から発せられるのを待つ。
「恋歌さんは…見ただけで“模倣”してしまうのでしょう…?」
「「「!!」」」
『…七松くんが気に病む必要はないよ、優しいね』
「やはり…そう、ですか…」
ぎゅぅっ、と拳を握りしめて俯いた小平太の肩を長次が優しく叩いてやり、恋歌が視界を閉ざしている理由を理解した全員が言葉を失った。
「え?どういうことですか?」
ただ1人、尊奈門を除いて。
「この子は見たもの全てを模倣してしまう力を持っている、ということだよ
そしてこの子の性格上それが嫌だったんだろうね」
「なぜですか?」
「考えてもみなよ
己が切磋琢磨して身につけた技術をたった一目見ただけで真似されるんだ
それをされたらどう思う?」
「た、たしかにそれは…いい気分ではありませんね…」
なるほど、と納得した尊奈門も恋歌の力がどれだけ厄介なものであるのかを理解できた。
なんでも見ただけで真似ができてしまうということは、影武者になる相手の動きを覚えることも、相手の文字を覚えてしまえばそれを真似て偽書を書くこともなんでもできてしまう。
技も動きも文字も一目見ただけで奪われてしまうとあっては、内容よっては気持ちのいい物ではない。
『七松くん』
小平太の声が聞こえていた方に少し移動して手を伸ばせばその手を軽く握り返してくれる。
『ほんとに気にしなくていいんだよ
これはわたしが自分で選んだんだから』
「ですが…見たいものもあるでしょう
わたしも…長次も文次郎も仙蔵も伊作も留三郎も…先生方も…下級生たちも…
目を見て、顔を見て…貴女と話がしたい…
楽しいことも一緒にやりたいこともたくさんあります
約束を…しました…」
『うん…そうだね…』
握ってくれている手を頼りに小平太の頭を撫でてやれば握られている手に力が入った。
「恋歌さんはわたしたちの顔を見てお話をしたくはないのですか?」
『……それは質問かな?』
どこか拗ねたような声音での言葉に恋歌からは意地の悪い返答がきた。
「もそ、ではその質問はわたしが」
『そういうことなら…
したいと思っていればはい、なのかな?』
「それならば…!!」
きちんと目を見て話をしようと続くはずだった言葉は外からの矢羽音が聞こえ、言葉を区切った。
「恋歌さん、あんたあの店はあんたの持ち物かい?」
『…そうですね
譲り受けたものではありますが…』
山田からの問いに答えるとふぅ、と小さく息をはいたのがわかった。
「うちの5年生たちにあんたの店の周りを張らせていたんですが、先ほど店に何者かが侵入しあんたがいないとわかると引き上げていったと
追跡可能と判断し現在は追跡中とのことですが…
心当たりがありますね?」
ようやく動きがあったかと視線で合図を6年生同士で送り合い、伊作と留三郎は医務室から出ていった。
『…はい
相手も…来た理由も…全て心当たりがあります
わたしが店に戻りま…っ!』
「あ、申し訳ございません…」
立ちあがろうとした恋歌の手が離れようとしているのを察知した小平太にぐっ、と腕を引かれバランスを崩してしまい咄嗟に引いた本人である小平太に支えられた。
「お前…力加減考えろよな」
「わかっている…
大丈夫ですか?」
『少しバランス崩しただけだよ
ごめんね』
「店に戻られるなら我らも向かいます」
『だめだよ
5年生の子たちも戻ってくるように伝えられるなら伝えてほしいけど…』
「恋歌さん、わたしたちはたしかに貴女より年下ではありますが子どもではありません
5年生たちも自分たちで判断して追跡をしています」
『それは…そうだけど…
わたしの所為で何かあったら…』
「それは我らも同じです
ここで恋歌さんを1人で行かせて何かあれば悔やんでも悔やみきれません」
『先生方は…』
「わたしたちは各自の判断に任せます」
先生たちであれば自分の教え子が危険かもしれない場所に行くことを止めてくれるかと思ったがそうでもないとわかり恋歌は何かを考えるように俯いてしまう。
『もし…もしわたしが目を開けた時にみんなを見てしまったら…
それにわたし…もう何年も人に目を見せてなくて…』
「恋歌さん!」
どうしよう、と呟いている恋歌の両頬を掴んでぐっと顔を近づけてきた小平太は、意地の悪い笑みを浮かべて長次へと視線を向けた。
「もそ、失礼します」
『え…
え?』
「失礼しまーす」
「ほんとに失礼なやつらだな」
長次の手で両手首を掴まれ、小平太は頬から離した手で包帯を解いていく。
呆れたような視線を向けている文次郎と仙蔵だが止めることはしない。
解いた包帯をぽいっ、と投げ捨てじーっと恋歌の顔を真正面から見つめる。
「さぁ恋歌さん
目を開けてください」
『だ、だめだってば…』
「細かいことは気にしないです!
早く!
早くしないと5年生がどんどん追跡で離れていきますよ?」
「もそ…そうなると後輩たちが危ない」
『う…そ、それは…』
長次の手を振り解こうとしているが恋歌が長次の力に敵うはずもなく手は外れず、目の前には笑顔で待ち構える小平太。
目を開けてしまえば確実に小平太と目が合う。
「さぁ!!」
「拷問だろ、あれ」
「見る人が見たら勘違いする現場でもあるな」
顔を背ける恋歌の頬をもう一度掴んで自分と目線が合うように固定している小平太はとても楽しそうに笑っているが、恋歌にとっては拷問。
『し、潮江くん…助けて…』
「…そう言われると断ることに心が痛みますがお助けできません」
『立花くんは…』
「わたしも残念ながら…すみません」
『どうして…?
忍者って…見られたくないものいっぱいあるでしょ…?
全部…真似されちゃうんだよ?
今までみんなが頑張って…培ってきたものを…』
「それ、思うのですが動きを真似されるだけですよね?
思考などを読み取れるわけではなく」
『え、そ、そうだけど…』
なぜ見られることに抵抗がないのか、と疑問を口にすればなんてことないように小平太も疑問を口にした。
肯定すればまた満面の笑みを浮かべ、恋歌の頬を軽く押した。
「であればわたしは問題ありません
わたしの動きを真似できたとして、わたしの考えがわからなければそれは“わたし”ではない」
『そ、れは…そうかもしれないけど…』
「ここにいる中でも土井先生や山田先生、悔しいですがあの曲者もわたしの動きなど簡単に真似できます
ここで恋歌さんが増えたところで3人が4人に増えただけ
細かいことなのです
だから気にしません」
「曲者たちは見られたら困るなら出ていって構わんぞ」
「何言ってるの
わたしも七松くんと同じ考えだよ
わたしと同じ動きができるからってその子が脅威になるわけがない
わたしと同じ体躯も、思考も持ち合わせていない
だからここにいるよ
目のことも気になるしね」
「ふん」
「恋歌さん、大丈夫です
ここには貴女から視線を向けられて困る者などいません」
『わ、かったよ…』
もう何を言っても言い負かされてしまうのだと、観念したように恋歌の瞼がゆっくりと開いた。
「恋歌さんは…見ただけで“模倣”してしまうのでしょう…?」
「「「!!」」」
『…七松くんが気に病む必要はないよ、優しいね』
「やはり…そう、ですか…」
ぎゅぅっ、と拳を握りしめて俯いた小平太の肩を長次が優しく叩いてやり、恋歌が視界を閉ざしている理由を理解した全員が言葉を失った。
「え?どういうことですか?」
ただ1人、尊奈門を除いて。
「この子は見たもの全てを模倣してしまう力を持っている、ということだよ
そしてこの子の性格上それが嫌だったんだろうね」
「なぜですか?」
「考えてもみなよ
己が切磋琢磨して身につけた技術をたった一目見ただけで真似されるんだ
それをされたらどう思う?」
「た、たしかにそれは…いい気分ではありませんね…」
なるほど、と納得した尊奈門も恋歌の力がどれだけ厄介なものであるのかを理解できた。
なんでも見ただけで真似ができてしまうということは、影武者になる相手の動きを覚えることも、相手の文字を覚えてしまえばそれを真似て偽書を書くこともなんでもできてしまう。
技も動きも文字も一目見ただけで奪われてしまうとあっては、内容よっては気持ちのいい物ではない。
『七松くん』
小平太の声が聞こえていた方に少し移動して手を伸ばせばその手を軽く握り返してくれる。
『ほんとに気にしなくていいんだよ
これはわたしが自分で選んだんだから』
「ですが…見たいものもあるでしょう
わたしも…長次も文次郎も仙蔵も伊作も留三郎も…先生方も…下級生たちも…
目を見て、顔を見て…貴女と話がしたい…
楽しいことも一緒にやりたいこともたくさんあります
約束を…しました…」
『うん…そうだね…』
握ってくれている手を頼りに小平太の頭を撫でてやれば握られている手に力が入った。
「恋歌さんはわたしたちの顔を見てお話をしたくはないのですか?」
『……それは質問かな?』
どこか拗ねたような声音での言葉に恋歌からは意地の悪い返答がきた。
「もそ、ではその質問はわたしが」
『そういうことなら…
したいと思っていればはい、なのかな?』
「それならば…!!」
きちんと目を見て話をしようと続くはずだった言葉は外からの矢羽音が聞こえ、言葉を区切った。
「恋歌さん、あんたあの店はあんたの持ち物かい?」
『…そうですね
譲り受けたものではありますが…』
山田からの問いに答えるとふぅ、と小さく息をはいたのがわかった。
「うちの5年生たちにあんたの店の周りを張らせていたんですが、先ほど店に何者かが侵入しあんたがいないとわかると引き上げていったと
追跡可能と判断し現在は追跡中とのことですが…
心当たりがありますね?」
ようやく動きがあったかと視線で合図を6年生同士で送り合い、伊作と留三郎は医務室から出ていった。
『…はい
相手も…来た理由も…全て心当たりがあります
わたしが店に戻りま…っ!』
「あ、申し訳ございません…」
立ちあがろうとした恋歌の手が離れようとしているのを察知した小平太にぐっ、と腕を引かれバランスを崩してしまい咄嗟に引いた本人である小平太に支えられた。
「お前…力加減考えろよな」
「わかっている…
大丈夫ですか?」
『少しバランス崩しただけだよ
ごめんね』
「店に戻られるなら我らも向かいます」
『だめだよ
5年生の子たちも戻ってくるように伝えられるなら伝えてほしいけど…』
「恋歌さん、わたしたちはたしかに貴女より年下ではありますが子どもではありません
5年生たちも自分たちで判断して追跡をしています」
『それは…そうだけど…
わたしの所為で何かあったら…』
「それは我らも同じです
ここで恋歌さんを1人で行かせて何かあれば悔やんでも悔やみきれません」
『先生方は…』
「わたしたちは各自の判断に任せます」
先生たちであれば自分の教え子が危険かもしれない場所に行くことを止めてくれるかと思ったがそうでもないとわかり恋歌は何かを考えるように俯いてしまう。
『もし…もしわたしが目を開けた時にみんなを見てしまったら…
それにわたし…もう何年も人に目を見せてなくて…』
「恋歌さん!」
どうしよう、と呟いている恋歌の両頬を掴んでぐっと顔を近づけてきた小平太は、意地の悪い笑みを浮かべて長次へと視線を向けた。
「もそ、失礼します」
『え…
え?』
「失礼しまーす」
「ほんとに失礼なやつらだな」
長次の手で両手首を掴まれ、小平太は頬から離した手で包帯を解いていく。
呆れたような視線を向けている文次郎と仙蔵だが止めることはしない。
解いた包帯をぽいっ、と投げ捨てじーっと恋歌の顔を真正面から見つめる。
「さぁ恋歌さん
目を開けてください」
『だ、だめだってば…』
「細かいことは気にしないです!
早く!
早くしないと5年生がどんどん追跡で離れていきますよ?」
「もそ…そうなると後輩たちが危ない」
『う…そ、それは…』
長次の手を振り解こうとしているが恋歌が長次の力に敵うはずもなく手は外れず、目の前には笑顔で待ち構える小平太。
目を開けてしまえば確実に小平太と目が合う。
「さぁ!!」
「拷問だろ、あれ」
「見る人が見たら勘違いする現場でもあるな」
顔を背ける恋歌の頬をもう一度掴んで自分と目線が合うように固定している小平太はとても楽しそうに笑っているが、恋歌にとっては拷問。
『し、潮江くん…助けて…』
「…そう言われると断ることに心が痛みますがお助けできません」
『立花くんは…』
「わたしも残念ながら…すみません」
『どうして…?
忍者って…見られたくないものいっぱいあるでしょ…?
全部…真似されちゃうんだよ?
今までみんなが頑張って…培ってきたものを…』
「それ、思うのですが動きを真似されるだけですよね?
思考などを読み取れるわけではなく」
『え、そ、そうだけど…』
なぜ見られることに抵抗がないのか、と疑問を口にすればなんてことないように小平太も疑問を口にした。
肯定すればまた満面の笑みを浮かべ、恋歌の頬を軽く押した。
「であればわたしは問題ありません
わたしの動きを真似できたとして、わたしの考えがわからなければそれは“わたし”ではない」
『そ、れは…そうかもしれないけど…』
「ここにいる中でも土井先生や山田先生、悔しいですがあの曲者もわたしの動きなど簡単に真似できます
ここで恋歌さんが増えたところで3人が4人に増えただけ
細かいことなのです
だから気にしません」
「曲者たちは見られたら困るなら出ていって構わんぞ」
「何言ってるの
わたしも七松くんと同じ考えだよ
わたしと同じ動きができるからってその子が脅威になるわけがない
わたしと同じ体躯も、思考も持ち合わせていない
だからここにいるよ
目のことも気になるしね」
「ふん」
「恋歌さん、大丈夫です
ここには貴女から視線を向けられて困る者などいません」
『わ、かったよ…』
もう何を言っても言い負かされてしまうのだと、観念したように恋歌の瞼がゆっくりと開いた。