アルバイトと忍術学園の段
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
4日目の夕飯は初日と同じく1年は組が誘ってくれたため一緒に取り、終わった後は留三郎と共にいたところに伊作が迎えに来てくれた。
「お前…なんでそんなにぼろぼろなんだ…」
「あはは…ちょっと不運でね…」
迎えに来てくれた伊作はぼろぼろだったらしく留三郎に少し引かれていたがいつものことと本人は気にしていなかった。
「さ、どうぞ」
『ありがとう』
連れてこられたのは医務室で、すでに6年生全員と雑渡、尊奈門、土井、山田が座っていた。
『なんか…たくさん人がいる気がする…』
「恋歌さんに聞きたいことがあるのでみんな集まりました」
『そうなの?』
「はい、昨日僕がお話しした“チャンス”の話覚えておられますか?」
『うん
その話が出るってことは答え合わせかな?』
昨日伊作と話したのは恋歌の目のことがわかれば嘘をつかず答えること。
隠している割には驚いてもいないようでただじっと伊作の次の言葉を待っている。
「恋歌さんは神埜家の御息女
神埜家は“神”が宿ることがある一族と聞いています
そして、その“神”が宿っているのが恋歌さんの目、というわけです」
『……うん、正解』
ふっ、と口元を緩めて小さく呟いた言葉は静まり返っていた医務室にいた全員の耳に届いた。
「じゃ、じゃあ…!それ以外の恋歌さんのことも教えてくださるんですよね?」
興奮気味に身を乗り出して恋歌に話を聞こうとする伊作だったが恋歌は小さく頭を横に振った。
『その大層な“神”という存在がこの目であることは正解
でも昨日の話では正解したからそれ以外の話もする、とは言ってないよ』
「た、たしかに…そうなんですが…」
『でもこの様子だと忍術学園に迷惑がかかってきてるのかな…
この短期間でよくそこまで調べられたね…』
忍術学園に来てからたったの4日。
こんな短期間で姓も、目のことも突き止められるとは思っていなかった。
「迷惑などかかっていません!!」
「そうです!
これは我らが勝手に…
隠しておられることを調べたのは…申し訳ありません…」
『別に調べられたことについては怒ってないよ
それだけ忍者という人たちはすごいってことがわかった
でもね、わたしがいろんなことを言わないのはみんなに迷惑がかかるからっていうのもわかってほしい』
「迷惑ではないのです…本当に…」
「…貴女が言ったんですよ」
“迷惑”という言葉に反応しているのは文次郎、長次、小平太の3人。
拳を握っている3人を見てはぁ、とため息をついたのは伊作だった。
「優しくしてくれた人には優しくすると
文次郎も長次も小平太も…下級生たちも…貴女が優しくしてくれたから、優しくしたいと思うんです
優しい人が困っていたら助けたくなるでしょう?
きっと恋歌さんはその気持ちがわかるはずです」
『…ふふ、善法寺くんは人一倍優しい子だね
じゃあ…少しだけ…』
降参、とばかりに両手を挙げた恋歌に6年生全員の顔がぱぁっと明るくなる。
『ここにいる人数分の質問…
そうだな…はいかいいえで答えられるものを嘘をつかず答える、というのでどうかな?』
「人数分…では10の質問ができる、ということですね」
『そ、そんなにいたんだ』
「あいつ…目が見えていない相手なのだから嘘の数を言えばいいのに…」
「まぁまぁ尊奈門
あれが伊作くんのいいところだよ」
なぜこの場に呼ばれたのかわかっていない尊奈門は伊作の誠実さに呆れていたが雑渡は横で楽しそうに笑っている。
「し、質問か…
慎重に考えないといけないね…」
「しかもはいかいいえの2択で答えられる質問となると…」
「ではまずあたしからいきましょうかね」
「「「え」」」
何から質問をしようかと相談する雰囲気となった矢先、手を挙げたのは山田だった。
「あたしゃ別にどこの生まれでもどんな秘密を持っていようといいからね
人間、知られたくないものもたくさんある
だからあたしが聞きたいことはこれだけだ
恋歌さん、あんたはこの忍術学園の敵かい?」
『…いいえ』
「それが聞けりゃ充分さね
まぁ聞かなくともわかっていようなことだけどね」
ひとつ目の質問にしては軽い質問ではあったが、教師として子どもたちを守る義務がある。
学園長が一枚噛んでいることを踏まえれば安全な人物なのだろうとはわかってはいた。
それに自分の教え子たちを信じている。
いずれ恋歌から全ての秘密を聞き出すだろうと。
「あ、じゃあそれならわたしも
恋歌さん、忍術学園の良い子たちは好きですか?」
『はい、とても』
「ふふ、わたしはこれが確認できれば良いです」
次に手を挙げた土井も山田の意図を汲み取って簡単な質問、けれどとても大切な質問を投げかけた。
こちらもわかっていた返答ではあるが、恋歌の返答に満足したようで土井は笑みを浮かべた。
「な、なんだか流れが…」
「お前たちは聞きたいことを聞きなさい
言っておくが恋歌さんでなくとも相手に秘密を喋らせるのは忍者の基本だ」
「そうですが…」
「お前たちのことを好きだと言ってくれる人になら、色々質問の仕方があるだろう?」
「わ、わかりました」
敵に情報をはかせるより難易度が高いのでは?とは思ったが、質問をしなければせっかくのこのチャンスが無駄になってしまう。
「じゃ、じゃあ僕からいくよ
恋歌さんは…盲目、または弱視ではなく、普通に目が見えていますか…?」
「な、なんか回りくどいな…」
「だ、だって…」
返答の仕方に制限があるため変な質問になってしまったと伊作自身も思っているが、いい言葉が思い浮かばなかったらしい。
『はい』
「!!
や、やっぱり…!」
だが、その伊作の質問のおかげでずっと疑惑を持っていたことが解消された。
「…となるとやはり次は“神”関連のことを聞くべきか…」
「目に“神”と呼ばれる何かが宿っているっていうのは答えてくれているから…」
「“神”と呼ばれるに相応しいものがある、ということだな」
「それをはい、いいえの回答だけで聞くとなると…」
6年生全員であと質問は5つ。
一番気になる“神”の正体まで辿り着けるとは思っていないがそれを調べるためのヒントが欲しい。
『あ、そうだ
こちら雑渡さんに』
「え?」
円になって質問内容を考えている間、思い出したように恋歌が袂から包みを取り出して雑渡の声がしていた方へと差し出した。
『わたしの作る甘味食べていただきたいので作りました』
「えー、わざわざ作ってくれたんだ
ありがとうね」
包みを受け取ろうと手を伸ばした雑渡だったが、それより先に尊奈門が包みを手に取った。
「だめですよ組頭
そんなに簡単に食べ物を受け取らないでください」
「この子の作る甘味すごく美味しいって聞いたから食べたいんだけど…」
「だめです」
頑なに拒否され雑渡が少し不機嫌になっていたが、そうだと名案を思いついたかのように手を叩いた。
「質問すればいいじゃない
今わたしたちはこの子が毒を入れたか入れてないか聞けるんだし」
「それはそうですが本当のことを言っている、というのは忍術学園の奴らが信じているだけで、わたしはそこまでこの女を信用してません」
「尊奈門、時には柔軟性も必要だよ?」
自分のことを思って言ってくれているとわかっている雑渡は尊奈門に強く言葉を返すことはないが、取り上げられた甘味を食べたそうに見つめていると尊奈門が根負けしたようにため息をついた。
「わかりましたよ
おい、お前これに毒は入れてないんだろうな?」
『はい、横に食満くんもいたので大丈夫かと』
「…だ、そうです」
「ふふ、じゃあいただこうかな」
「え!?今ですか!?」
早速包みを開けて中身が団子だと確認した雑渡はむしゃむしゃと独特な食べ方で団子を食べ始めた。
「へぇー、これはなかなか…
またお土産にでも作ってくれる?みんなにも食べさせたい」
『はい』
「ほら、尊奈門も食べてみなよ」
「うぐっ…
ま、まぁ…う、美味いです…」
『それはよかったです』
2人にも好評であったため嬉しそうに口元を緩めた恋歌に疑ってしまったことに少しだけ尊奈門は罪悪感を感じた。
「お前…煎餅は作れるのか…」
『あまり作ったことがありませんが…作れます』
「……それも土産に頼む」
『……はい』
小さな声での注文だったが恋歌は小さな声でも聞き逃すことはなかった。
「お前…なんでそんなにぼろぼろなんだ…」
「あはは…ちょっと不運でね…」
迎えに来てくれた伊作はぼろぼろだったらしく留三郎に少し引かれていたがいつものことと本人は気にしていなかった。
「さ、どうぞ」
『ありがとう』
連れてこられたのは医務室で、すでに6年生全員と雑渡、尊奈門、土井、山田が座っていた。
『なんか…たくさん人がいる気がする…』
「恋歌さんに聞きたいことがあるのでみんな集まりました」
『そうなの?』
「はい、昨日僕がお話しした“チャンス”の話覚えておられますか?」
『うん
その話が出るってことは答え合わせかな?』
昨日伊作と話したのは恋歌の目のことがわかれば嘘をつかず答えること。
隠している割には驚いてもいないようでただじっと伊作の次の言葉を待っている。
「恋歌さんは神埜家の御息女
神埜家は“神”が宿ることがある一族と聞いています
そして、その“神”が宿っているのが恋歌さんの目、というわけです」
『……うん、正解』
ふっ、と口元を緩めて小さく呟いた言葉は静まり返っていた医務室にいた全員の耳に届いた。
「じゃ、じゃあ…!それ以外の恋歌さんのことも教えてくださるんですよね?」
興奮気味に身を乗り出して恋歌に話を聞こうとする伊作だったが恋歌は小さく頭を横に振った。
『その大層な“神”という存在がこの目であることは正解
でも昨日の話では正解したからそれ以外の話もする、とは言ってないよ』
「た、たしかに…そうなんですが…」
『でもこの様子だと忍術学園に迷惑がかかってきてるのかな…
この短期間でよくそこまで調べられたね…』
忍術学園に来てからたったの4日。
こんな短期間で姓も、目のことも突き止められるとは思っていなかった。
「迷惑などかかっていません!!」
「そうです!
これは我らが勝手に…
隠しておられることを調べたのは…申し訳ありません…」
『別に調べられたことについては怒ってないよ
それだけ忍者という人たちはすごいってことがわかった
でもね、わたしがいろんなことを言わないのはみんなに迷惑がかかるからっていうのもわかってほしい』
「迷惑ではないのです…本当に…」
「…貴女が言ったんですよ」
“迷惑”という言葉に反応しているのは文次郎、長次、小平太の3人。
拳を握っている3人を見てはぁ、とため息をついたのは伊作だった。
「優しくしてくれた人には優しくすると
文次郎も長次も小平太も…下級生たちも…貴女が優しくしてくれたから、優しくしたいと思うんです
優しい人が困っていたら助けたくなるでしょう?
きっと恋歌さんはその気持ちがわかるはずです」
『…ふふ、善法寺くんは人一倍優しい子だね
じゃあ…少しだけ…』
降参、とばかりに両手を挙げた恋歌に6年生全員の顔がぱぁっと明るくなる。
『ここにいる人数分の質問…
そうだな…はいかいいえで答えられるものを嘘をつかず答える、というのでどうかな?』
「人数分…では10の質問ができる、ということですね」
『そ、そんなにいたんだ』
「あいつ…目が見えていない相手なのだから嘘の数を言えばいいのに…」
「まぁまぁ尊奈門
あれが伊作くんのいいところだよ」
なぜこの場に呼ばれたのかわかっていない尊奈門は伊作の誠実さに呆れていたが雑渡は横で楽しそうに笑っている。
「し、質問か…
慎重に考えないといけないね…」
「しかもはいかいいえの2択で答えられる質問となると…」
「ではまずあたしからいきましょうかね」
「「「え」」」
何から質問をしようかと相談する雰囲気となった矢先、手を挙げたのは山田だった。
「あたしゃ別にどこの生まれでもどんな秘密を持っていようといいからね
人間、知られたくないものもたくさんある
だからあたしが聞きたいことはこれだけだ
恋歌さん、あんたはこの忍術学園の敵かい?」
『…いいえ』
「それが聞けりゃ充分さね
まぁ聞かなくともわかっていようなことだけどね」
ひとつ目の質問にしては軽い質問ではあったが、教師として子どもたちを守る義務がある。
学園長が一枚噛んでいることを踏まえれば安全な人物なのだろうとはわかってはいた。
それに自分の教え子たちを信じている。
いずれ恋歌から全ての秘密を聞き出すだろうと。
「あ、じゃあそれならわたしも
恋歌さん、忍術学園の良い子たちは好きですか?」
『はい、とても』
「ふふ、わたしはこれが確認できれば良いです」
次に手を挙げた土井も山田の意図を汲み取って簡単な質問、けれどとても大切な質問を投げかけた。
こちらもわかっていた返答ではあるが、恋歌の返答に満足したようで土井は笑みを浮かべた。
「な、なんだか流れが…」
「お前たちは聞きたいことを聞きなさい
言っておくが恋歌さんでなくとも相手に秘密を喋らせるのは忍者の基本だ」
「そうですが…」
「お前たちのことを好きだと言ってくれる人になら、色々質問の仕方があるだろう?」
「わ、わかりました」
敵に情報をはかせるより難易度が高いのでは?とは思ったが、質問をしなければせっかくのこのチャンスが無駄になってしまう。
「じゃ、じゃあ僕からいくよ
恋歌さんは…盲目、または弱視ではなく、普通に目が見えていますか…?」
「な、なんか回りくどいな…」
「だ、だって…」
返答の仕方に制限があるため変な質問になってしまったと伊作自身も思っているが、いい言葉が思い浮かばなかったらしい。
『はい』
「!!
や、やっぱり…!」
だが、その伊作の質問のおかげでずっと疑惑を持っていたことが解消された。
「…となるとやはり次は“神”関連のことを聞くべきか…」
「目に“神”と呼ばれる何かが宿っているっていうのは答えてくれているから…」
「“神”と呼ばれるに相応しいものがある、ということだな」
「それをはい、いいえの回答だけで聞くとなると…」
6年生全員であと質問は5つ。
一番気になる“神”の正体まで辿り着けるとは思っていないがそれを調べるためのヒントが欲しい。
『あ、そうだ
こちら雑渡さんに』
「え?」
円になって質問内容を考えている間、思い出したように恋歌が袂から包みを取り出して雑渡の声がしていた方へと差し出した。
『わたしの作る甘味食べていただきたいので作りました』
「えー、わざわざ作ってくれたんだ
ありがとうね」
包みを受け取ろうと手を伸ばした雑渡だったが、それより先に尊奈門が包みを手に取った。
「だめですよ組頭
そんなに簡単に食べ物を受け取らないでください」
「この子の作る甘味すごく美味しいって聞いたから食べたいんだけど…」
「だめです」
頑なに拒否され雑渡が少し不機嫌になっていたが、そうだと名案を思いついたかのように手を叩いた。
「質問すればいいじゃない
今わたしたちはこの子が毒を入れたか入れてないか聞けるんだし」
「それはそうですが本当のことを言っている、というのは忍術学園の奴らが信じているだけで、わたしはそこまでこの女を信用してません」
「尊奈門、時には柔軟性も必要だよ?」
自分のことを思って言ってくれているとわかっている雑渡は尊奈門に強く言葉を返すことはないが、取り上げられた甘味を食べたそうに見つめていると尊奈門が根負けしたようにため息をついた。
「わかりましたよ
おい、お前これに毒は入れてないんだろうな?」
『はい、横に食満くんもいたので大丈夫かと』
「…だ、そうです」
「ふふ、じゃあいただこうかな」
「え!?今ですか!?」
早速包みを開けて中身が団子だと確認した雑渡はむしゃむしゃと独特な食べ方で団子を食べ始めた。
「へぇー、これはなかなか…
またお土産にでも作ってくれる?みんなにも食べさせたい」
『はい』
「ほら、尊奈門も食べてみなよ」
「うぐっ…
ま、まぁ…う、美味いです…」
『それはよかったです』
2人にも好評であったため嬉しそうに口元を緩めた恋歌に疑ってしまったことに少しだけ尊奈門は罪悪感を感じた。
「お前…煎餅は作れるのか…」
『あまり作ったことがありませんが…作れます』
「……それも土産に頼む」
『……はい』
小さな声での注文だったが恋歌は小さな声でも聞き逃すことはなかった。