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カントクに相応しい相手とは?

〜椋side〜

「夏組〜〜プロポーズ総選挙〜」
万里さんの楽しそうな声がリビングに響き渡る。
「わざわざリビングでやらなくても……ていうかなんで万里くんまで居るの!」
「何言ってんの監督ちゃん〜こんな面白そうなオーディション見守るしかないっしょ!」
数十分前、僕がプロポーズオーディションをしたいと言った後、万里さんがレッスン室に入ってきた。
至さんに言われ、差し入れを持ってきたのだという。
なんで差し入れなんか…と思ったけど、至さん前春組で結婚相手に選ばれなかったことがかなり不服らしいから、多分いいところを見せたかったんだと思う。
万里さんに任せたのはきっと露骨にならないためじゃないかな……。
なんていうのは全部予想だけど、そんなこんなで万里さんがプロポーズオーディションの話を聞いてしまい、面白くなってしまった万里さんは、僕達をリビングにわざわざ連れていき、全組にプロポーズが見えるようにしたのです……
つまりは晒し上げ。
「うぅ……みんながこの騒ぎを聞きつけないことを祈るしかない……」
監督さんは諦め気味で……
可哀想だけど、そんなところが年上には見えなくて可愛い。
「順番はどーしよっかねぇ〜?」
「待って、元々の台詞は無視してくスタイルなの?オーディションなら元々の台詞の方が良くない?」
幸くんの言うことはごもっともだ。
だけどこれは……僕達の勝負でもあるから。
「ぼ、僕達本人が……監督さんにプロポーズするならって設定で行こうよ。アドリブで……」
「……え、む、椋くん?」
「ほぉ〜いいじゃん。他のメンバーで異論ある人ー」
「ガチプロポーズかぁー!俺っち緊張しちゃうなぁ〜!」
演技でしょ、と監督さんが笑う。
「ま、たしかにその方が自然な芝居にはなるか」
「何お前が芝居のこと語ってんだよ」
「うっさいちょっと前まで舞台立てなかったポンコツのくせに」
「なんだと!!?」
「あわわ…喧嘩はダメだよ〜!」
「えー、っと…異論は無いんだよな?じゃあどんな順番で行くかな〜」
万里さんがなんだか一番楽しそうだ。
「…っし、じゃあ九門、お前行け」
「あぁ!!?なんでお前に指図されないといけないんだよ…!」
「一番新人だからだよ。こういうのは新人からやるもんだ」
納得のいかない様子で九ちゃんは監督さんの前に連れていかれる。
なんだかドキドキしちゃうな…


「……俺は…弱虫だ。弱虫で、何にも長く続けられない。だけど…ここに来て、監督に会って、俺は舞台を続けることが出来てる。強くなれたなんてそんな大それたことは言えない。だけど俺は、監督のために強くなりたいって、そう思うから…だから…」

九ちゃんが監督さんの手を取る。

「僕と…結婚してくださいっ!」

九ちゃんの顔は真っ赤で、監督さんの顔もうっすら赤かった。
静寂の間、九ちゃんは監督さんの手を離さない。
「………はいっ!上出来上出来〜じゃあ次〜天馬!」
「えっ!?は?も、もうやんのかよ!」
「もち〜時間おしいからな」
「ば、万里くん私の心がもたない……」
「えぇ〜?頑張ってよ監督ちゃん。ギャラリーも増えてることだし」
万里さんの言葉にダイニングテーブルの方を見ると、至さんとシトロン様がいた。
なんで増えてるの、と監督さんはうなだれる。
そんな監督さんを気にも留めず、万里さんは九ちゃんを元の場所に返し、天馬くんを監督さんの前へと連れてきた。

「え…ちょ…!
………監督っ!」
「は、はい!」
「俺は……さっき幸にも言われたけど、舞台が出来ないような、それこそポンコツ役者だった。過去のトラウマに囚われるような、弱いやつだった。
…だけど、そんな俺を変えてくれたのは監督だ。
もちろんメンバーの力もある。
だけど監督がそばにいて、支えてくれたから…今俺はここに居れる」
「天馬くん……」
監督さんはシンプルにその言葉に感動しているようだった。
「監督、俺は監督のこと…」
天馬くんは何か言おうとして、そして監督さんの顔を見て顔を歪めた。
…どうしたんだろう?

「……監督っ…!」

一瞬のことだった。
気がつくと天馬くんは監督さんを抱きしめていた。

「天馬くん!?」
「俺は…監督が好きだ!結婚してほしい!」

演技なのか、はたまた本音なのか…
天馬くんの顔は赤いものの、さすがは俳優。どこまで本気なのかは分からない。
抱きしめたのは、演技の一環?それとも_____
「…お〜…天馬やるな!」
「………だろ?」
天馬くんは監督さんを離し、元の場所へと自ら戻っていった。
監督さんは、放心状態だ。
天馬くんは俯いていて顔色はよく分からない。けど……耳が少し赤いような気がする。
「じゃあ次は〜〜」
「…万里くん…無理…無理…」
「え〜〜頑張って監督ちゃん!ギャラリー増えてるし!」
ダイニングテーブルに目をやると、真澄くんと綴さんを除いた春組メンバーが集結していた。
「だからなんで増えてるの〜!!」
監督さんがまたうなだれる。
キツイ…これキツイ…と赤面しながら言う監督さん。
これを提案してしまったことに少し申し訳なく思った。
九ちゃんと天馬くんが終わったから、残りは4人。
長い戦いになりますね、監督さん…
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