カントクに相応しい相手とは?
〜椋side〜
いつも通りの練習をこなしていた休日のある日。
天馬くんが突然不思議なことを言い出した。
「なぁ、綴さんと俺の共通点ってなんだと思う?」
休憩に入った瞬間の言葉だったから、きっとレッスン中もずっと考えていたんだと思う。
「え…つづるんとの共通点?うーん……人?」
「え、むしろそれしかねえの?」
「レッスン中ずっとそれ考えてたの?ちゃんと集中しなよポンコツ役者」
「ば、ばか!んなわけねえだろ!」
何故か天馬くんは顔を真っ赤にする、
なんで真っ赤になるのか全然分かんないんだけど、どうしたんだろう?
「……あ!俺わかった!」
「ん……どうしたの九門」
「俺この前聞いたんだけど、監督さんが結婚したい相手に綴さん選んだんだって!」
天馬くんが飲んでいたお茶を吹き出す。図星だったんだ……
「は……?何、天馬自分がどうやったら結婚相手に選ばれるか考えてたの?きっも〜……」
「テンテン!監督ちゃんは譲らないよん!?」
「は、はぁ!?ちげえし!」
天馬くんの様子を見ると、監督さんに結婚相手として選ばれるにはどうしたらいいかを考えてたみたい。
でも監督さん、綴さんを選んだんだ…
なんだか少し切ない気持ちになる。
「でも実際監督ちゃんって誰がタイプなんだろ〜?知りたい〜!」
「一成じゃないことは確かなんじゃない?」
「ゆっきー辛辣すぎ〜!」
そんなみんなのやりとりに苦笑いしていると、レッスン室に三角さんと監督さんが入ってきた。
「あ、すみー!どこ行ってたの?」
今日は朝から三角さんはずっと行方不明だった。
きっとさんかくでも探しに行ってるって結論に至ったんだけど……
「…?監督さん?どうしたんすか?」
監督の様子が何やらおかしい。
少し俯いている。
「ま、まさか監督さん!体調でも悪いんですか!?どどどどうしよう僕が昨日カーディガンにお茶こぼしたからですよね!わわわわごめんなさい!」
「え、ちょ、椋くん!?違うからね!?」
監督さんが顔を上げる。
その顔には少し赤みがかかっていた気がした。
「でも、実際のところ大丈夫なの?顔赤いし」
「……監督ちゃん、体調悪いなら言って?」
「い、いや、ほんとに元気ですから……」
監督さんが困ったように笑う。
どうやら本当に体調が悪い訳では無いようだ。
「……てか、なんで二人一緒に来たんだよ?ずっと一緒に居たのか?」
天馬くんがそう聞くと、また監督さんは俯いてしまった。
…な、なんだろうこの…甘い空気……
「……すみー、監督ちゃんになにしちゃったの!!?」
カズくんも違和感に気づき三角さんを問い詰める。
三角さんはぽわーっとした笑顔のまま当たり前のように
「プロポーズしたよ〜」
と言い放った。
レッスン室に静寂が訪れた。次の瞬間カズくんは小さな悲鳴を上げて倒れてしまった。
「カズくーーん!!」
「は?は?何言ってんのお前」
「いやさすがに嘘でしょ。ねえ、かんと__」
幸くんが監督さんに目を向けて固まる。
僕も思わず固まってしまった。
だって監督さんのあの顔は……ガチ照れだ。
「マジで…?え、あんたプロポーズされたの…?」
「…え?ぷ、プロポーズ?な、何があってそんなことになるんすか…?」
照れて俯く監督をよそに、三角さんは話し出す。
「かんとく顔真っ赤でおもしろかったよ〜!」
すると倒れていたカズくんが勢いよく立ち上がった。
勢いよく立ち上がったものの、力が出ないのかフラフラとした足取りで三角さんに近づき弱々しく摑みかかる。
「すみー……監督の返事は!!?」
「それがかんとく照れちゃってぜんぜんこたえてくれないんだ〜」
三角さんがガクンとしょぼくれる。
「何がどうなったら三角星人とカレー星人が結婚すんの…」
幸くんも想定外の出来事に頭を抱えてしまった。
本当に監督さんと三角さんは…?
監督さんが幸せなら全然構わないけど…なんだかちょっと、いや、だいぶ寂しい…
「あ、み、みんな違うよ!私達結婚しないよ…!」
「……三角さんのプロポーズを断るってことですか…?」
「ち、ちがくて…」
「え〜〜!かんとくがおーけーするって言ったのに〜!」
カズくんが膝から崩れ落ちてしまった。
「カズくーーーん!」
監督さんがおーけーするって言ったってことは、二人は付き合っていて、そろそろ結婚したいから指輪買ってきてって監督さんが三角さんにおねだりしたってこと?
僕は結局当て馬ポジションにも入れなかったんだ…
知らない間に二人はいい仲になってたなんて…!
「だ、だって、ちょっとしたVTR撮るのがこんなに恥ずかしいと思わなくて〜!」
監督さんの言葉に三角さんを除いた夏組がピクッとした。
___VTR?
「ま、まってください監督…すみーさんからプロポーズされたんじゃないんすか?」
「さ、されたけど演技だよ!」
「…どういうことな訳?演技って」
監督さんの話では、高校時代の友人が結婚式を挙げるらしく、そこで新郎新婦の出会いから結婚に至るまでの経緯の再現VTRを作って流させてほしいという正式な依頼が劇団にあったらしい。
「…じゃあ、監督と三角が結婚するわけじゃないんだな?」
「ま、まさか!そんなわけない!」
天馬くんがホッと息を吐く。
僕も胸をなでおろした。
「でもなんで三角なんだよ。再現ドラマならカメラ慣れしてる俺に依頼すればいいだろ」
むすっとした表情で天馬くんは監督に言う。
天馬くんは本当に監督が好きなんだなー…と実感する。
薄々気づいてはいたけど、天馬くんは監督を恋愛的な意味で見ているんだと思う。
だって嘘のプロポーズにこんなに露骨に嫉妬しちゃうんだもん。
でもそれは…僕も一緒だ…
「それは思ったんだけど、新郎と三角さんの顔がちょっと似てて…」
「…で、なんであんたが新婦役やってんの。大根なんでしょ」
「うっ……指名されちゃって…」
「新郎新婦に?」
「いや…三角さんに…」
緩んでいた空気が引き締まる。
三角さんが、演技を通して監督さんにプロポーズしようとした?
「かんとくが違う劇団の女の人使おうとするからとめたんだ!」
「何で?経費削減?」
「それもあるよー!」
「も、もうこの話やめましょう!みんなレッスンに戻って!」
顔を真っ赤にした監督さんが催促するように手を叩く。
天馬くんが、監督さんのこと好きなのはなんとなく気づいてた。
カズくんも…幸くんも。
だけどこの様子を見るともしかして…夏組全員の全員が監督さんのこと__
「……監督さん!」
「え、あ、ど、どうしたの椋くん」
僕だって、男だ…!
「…夏組の中でオーディションをしませんかっ!」
「……オーディション?」
「三角さんからのプロポーズ恥ずかしくて受けれないなら、全員でプロポーズ試して、一番自然に受けたくなった人に再現VTR出演の権利を与えませんか!」
僕だっていつも脇役でいたくない…!
監督さんの側に立ってみたい…!
「おぉ〜!それいいな!そうしようぜ!」
天馬くんが加勢する。
その感じで三角さんを除いた夏組の意見が一致したのだった。
いつも通りの練習をこなしていた休日のある日。
天馬くんが突然不思議なことを言い出した。
「なぁ、綴さんと俺の共通点ってなんだと思う?」
休憩に入った瞬間の言葉だったから、きっとレッスン中もずっと考えていたんだと思う。
「え…つづるんとの共通点?うーん……人?」
「え、むしろそれしかねえの?」
「レッスン中ずっとそれ考えてたの?ちゃんと集中しなよポンコツ役者」
「ば、ばか!んなわけねえだろ!」
何故か天馬くんは顔を真っ赤にする、
なんで真っ赤になるのか全然分かんないんだけど、どうしたんだろう?
「……あ!俺わかった!」
「ん……どうしたの九門」
「俺この前聞いたんだけど、監督さんが結婚したい相手に綴さん選んだんだって!」
天馬くんが飲んでいたお茶を吹き出す。図星だったんだ……
「は……?何、天馬自分がどうやったら結婚相手に選ばれるか考えてたの?きっも〜……」
「テンテン!監督ちゃんは譲らないよん!?」
「は、はぁ!?ちげえし!」
天馬くんの様子を見ると、監督さんに結婚相手として選ばれるにはどうしたらいいかを考えてたみたい。
でも監督さん、綴さんを選んだんだ…
なんだか少し切ない気持ちになる。
「でも実際監督ちゃんって誰がタイプなんだろ〜?知りたい〜!」
「一成じゃないことは確かなんじゃない?」
「ゆっきー辛辣すぎ〜!」
そんなみんなのやりとりに苦笑いしていると、レッスン室に三角さんと監督さんが入ってきた。
「あ、すみー!どこ行ってたの?」
今日は朝から三角さんはずっと行方不明だった。
きっとさんかくでも探しに行ってるって結論に至ったんだけど……
「…?監督さん?どうしたんすか?」
監督の様子が何やらおかしい。
少し俯いている。
「ま、まさか監督さん!体調でも悪いんですか!?どどどどうしよう僕が昨日カーディガンにお茶こぼしたからですよね!わわわわごめんなさい!」
「え、ちょ、椋くん!?違うからね!?」
監督さんが顔を上げる。
その顔には少し赤みがかかっていた気がした。
「でも、実際のところ大丈夫なの?顔赤いし」
「……監督ちゃん、体調悪いなら言って?」
「い、いや、ほんとに元気ですから……」
監督さんが困ったように笑う。
どうやら本当に体調が悪い訳では無いようだ。
「……てか、なんで二人一緒に来たんだよ?ずっと一緒に居たのか?」
天馬くんがそう聞くと、また監督さんは俯いてしまった。
…な、なんだろうこの…甘い空気……
「……すみー、監督ちゃんになにしちゃったの!!?」
カズくんも違和感に気づき三角さんを問い詰める。
三角さんはぽわーっとした笑顔のまま当たり前のように
「プロポーズしたよ〜」
と言い放った。
レッスン室に静寂が訪れた。次の瞬間カズくんは小さな悲鳴を上げて倒れてしまった。
「カズくーーん!!」
「は?は?何言ってんのお前」
「いやさすがに嘘でしょ。ねえ、かんと__」
幸くんが監督さんに目を向けて固まる。
僕も思わず固まってしまった。
だって監督さんのあの顔は……ガチ照れだ。
「マジで…?え、あんたプロポーズされたの…?」
「…え?ぷ、プロポーズ?な、何があってそんなことになるんすか…?」
照れて俯く監督をよそに、三角さんは話し出す。
「かんとく顔真っ赤でおもしろかったよ〜!」
すると倒れていたカズくんが勢いよく立ち上がった。
勢いよく立ち上がったものの、力が出ないのかフラフラとした足取りで三角さんに近づき弱々しく摑みかかる。
「すみー……監督の返事は!!?」
「それがかんとく照れちゃってぜんぜんこたえてくれないんだ〜」
三角さんがガクンとしょぼくれる。
「何がどうなったら三角星人とカレー星人が結婚すんの…」
幸くんも想定外の出来事に頭を抱えてしまった。
本当に監督さんと三角さんは…?
監督さんが幸せなら全然構わないけど…なんだかちょっと、いや、だいぶ寂しい…
「あ、み、みんな違うよ!私達結婚しないよ…!」
「……三角さんのプロポーズを断るってことですか…?」
「ち、ちがくて…」
「え〜〜!かんとくがおーけーするって言ったのに〜!」
カズくんが膝から崩れ落ちてしまった。
「カズくーーーん!」
監督さんがおーけーするって言ったってことは、二人は付き合っていて、そろそろ結婚したいから指輪買ってきてって監督さんが三角さんにおねだりしたってこと?
僕は結局当て馬ポジションにも入れなかったんだ…
知らない間に二人はいい仲になってたなんて…!
「だ、だって、ちょっとしたVTR撮るのがこんなに恥ずかしいと思わなくて〜!」
監督さんの言葉に三角さんを除いた夏組がピクッとした。
___VTR?
「ま、まってください監督…すみーさんからプロポーズされたんじゃないんすか?」
「さ、されたけど演技だよ!」
「…どういうことな訳?演技って」
監督さんの話では、高校時代の友人が結婚式を挙げるらしく、そこで新郎新婦の出会いから結婚に至るまでの経緯の再現VTRを作って流させてほしいという正式な依頼が劇団にあったらしい。
「…じゃあ、監督と三角が結婚するわけじゃないんだな?」
「ま、まさか!そんなわけない!」
天馬くんがホッと息を吐く。
僕も胸をなでおろした。
「でもなんで三角なんだよ。再現ドラマならカメラ慣れしてる俺に依頼すればいいだろ」
むすっとした表情で天馬くんは監督に言う。
天馬くんは本当に監督が好きなんだなー…と実感する。
薄々気づいてはいたけど、天馬くんは監督を恋愛的な意味で見ているんだと思う。
だって嘘のプロポーズにこんなに露骨に嫉妬しちゃうんだもん。
でもそれは…僕も一緒だ…
「それは思ったんだけど、新郎と三角さんの顔がちょっと似てて…」
「…で、なんであんたが新婦役やってんの。大根なんでしょ」
「うっ……指名されちゃって…」
「新郎新婦に?」
「いや…三角さんに…」
緩んでいた空気が引き締まる。
三角さんが、演技を通して監督さんにプロポーズしようとした?
「かんとくが違う劇団の女の人使おうとするからとめたんだ!」
「何で?経費削減?」
「それもあるよー!」
「も、もうこの話やめましょう!みんなレッスンに戻って!」
顔を真っ赤にした監督さんが催促するように手を叩く。
天馬くんが、監督さんのこと好きなのはなんとなく気づいてた。
カズくんも…幸くんも。
だけどこの様子を見るともしかして…夏組全員の全員が監督さんのこと__
「……監督さん!」
「え、あ、ど、どうしたの椋くん」
僕だって、男だ…!
「…夏組の中でオーディションをしませんかっ!」
「……オーディション?」
「三角さんからのプロポーズ恥ずかしくて受けれないなら、全員でプロポーズ試して、一番自然に受けたくなった人に再現VTR出演の権利を与えませんか!」
僕だっていつも脇役でいたくない…!
監督さんの側に立ってみたい…!
「おぉ〜!それいいな!そうしようぜ!」
天馬くんが加勢する。
その感じで三角さんを除いた夏組の意見が一致したのだった。