カントクに相応しい相手とは?
〜綴side〜
「ただいま〜!って、何事!?」
真澄が倒れてから10分後、挨拶周りに行っていた監督が帰ってきた。
「あぁ、監督おかえりなさい。実は真澄がキッチンにあったカレー飲んだらしくて…」
「キッチンにあったカレー…?」
咲也がテーブルを指差す。
そこにはカレーの鍋が置かれていた。
「あぁ…今朝の……ん?」
監督がカレーの匂いを嗅ぎ首をかしげる。
「なんかこれ……」
ぞろぞろと皆がカレーに近づく。
匂いだけで痛くなるくらい辛そうなカレー…真澄よく飲んだな…
「あっ!わかりました!」
「何がわかったのかな?」
そう問いかける千景さんに、監督がじわじわ近づいて行く。
さっきの騒動もあって、俺はなんかドキドキしていた。
「千景さんですね!?カレーにスパイス入れたの!激辛の!」
「……は?」
ドキドキしていた分、監督の言葉に凄く落胆した。
「はは、さすがだね監督さん。悪気はなかったんだけど」
「どういうつもりですか〜!これ夜ご飯にも使うんですからね〜!?」
怒って監督さんは軽く千景さんの胸をトンッと叩いた。
千景さんはまるでそれを狙っていたかのように、叩いた監督さんの腕をパッと掴んだ。
これには監督さんも予想外だったようで、頭にはてなマークがたくさん見える。
「え、ち、千景さん?もしかして殴ったから怒りました?」
春組全員が息を飲んで見守る。
「……監督さん、忘れたの?」
「な、なにが……」
「俺に触れるなって前言ったよね」
「え?え?で、でもそれは昔の話…」
「俺に触れるってことは…それなりの覚悟があるってことだよね」
後ずさりする監督の腕を離さずジリジリと近寄る千景さん。
千景さんの動きが自然すぎて思わず俺たちは見入っていた。
「ちょ、ちょっとみんな!?千景さんがからかってくる…!」
監督の言葉にハッとした俺たちは、千景さんを止めに行こうとした。
だけど、気付くと千景さんと監督は離れていて、監督の側には何故か真澄が居た。
「ま、真澄くん…!?さっきまで寝てたよね!?」
「千景……お前も、敵……」
「…なーんてね。茅ヶ崎のマネだよ」
「はぁっ!!?なんで急に俺が出てくるんですか!」
さっきまでの謎の緊張感は消え、今度は真澄が監督ににじり寄っていた。
「監督……俺カレーになるから…」
「え?か、カレー?あ、ありがとう…?」
「茅ヶ崎が真澄を怒らせるマネだったんだけど、よく出来てなかった?」
「怒らせ方が違うネー」
「クッソこの先輩腹立つ…」
俺はなんだか気が抜けて、とりあえずテーブルにあった鍋をキッチンに戻した。
キッチンに立ったままみんなの様子を眺める。
なんかみんな…監督のこと好きだよな…
まぁ、当たり前なんだけどさ。
…てか監督カレー冷蔵庫にしまってなかったのか?
あ、千景さんがカレーにスパイス入れたんだっけ?その時に出したのか。
え…?じゃあ真澄が飲むことわかってて…?
それともさっきと同じやり方で監督に近寄るため…?
どっちにしても…怖い人だなぁ…
俺は冷蔵庫にカレーをしまい、キッチンに残ったままお茶を飲む。
わちゃわちゃしてる空気に、なんとなく戻りづらくなったから。
「そういえば、なんで真澄くんはカレー飲んだの?美味しそうだから?」
「……うん。あんたの味が食べたくなった……」
「真澄くん、嘘はダメだよ!」
「あと、スパイス入れたからあの味はほぼ俺が作ったみたいなものだよ」
「あんたの味…刺激的だった…俺はどんなあんたでも受け入れる…」
「ちょ、真澄くん離れて〜!」
「マスミ…人の話聞かないネ…」
そんなこんなで、咲也が監督に事の経緯を説明した。
説明を受けた監督は呆れたような照れてるような反応をしていて、可愛いなぁと思ってしまう。
「……で?監督さんは誰を選ぶの?」
「えっ?至さん一体何を…」
「だって、ここまできたら知りたいでしょ、フツー。ね、先輩」
「………あぁ、そうだな」
監督は困った顔をして春組一人ひとりの顔を見る。
「うーん…みんな嫌いじゃないし〜…」
「監督…俺…俺…俺…」
「真澄くんも嫌いじゃないけど…」
「…!監督に告白された…婚姻届にサインして…俺のはもう書いてあるから…」
「いやしないから。てかなんで書いてあるの…」
監督がゆーっくり春組全員を眺め…
最後に俺を見た。
「…あ!綴さんかな!」
予想外の言葉に体が硬直する。
お、俺!?
「ちょ、ちょっと待って監督さん何で俺じゃないの!?」
「至さんは結婚してもゲーム優先しそうだなって」
「そんなことないって…甘い新婚生活送るよ普通に…」
「俺は?茅ヶ崎とほぼ同じ条件だけどゲームしないよ」
「カレーに勝手にスパイス入れる人はダメです!」
「カントク、サクヤはダメ?サクヤとーってもいい子ネ」
「うん、そうなんだけど咲也くんにはもっと若くて可愛い子がいるだろうなぁって…」
「そんなこと…ないですけど…」
「監督…俺は…俺は…?」
「真澄くん、綴さんを睨まない!真澄くんも咲也くんと一緒かな…」
「俺にはあんたしかいない…あんたしか要らない…」
「ちなみにシトロンさんは?」
「シトロンさんは、結婚というよりは彼氏にしたいかな、楽しそう」
「シトロン………………殺す……」
「ワーオ!マスミ!目が血迷ってるネー!怖い怖いダヨ〜!」
「血走ってるな。……いや血迷ってるか、これは」
春組の会話は頭に入ってこない。
監督が俺を選んだ?
「あと綴さんは_」
監督がキッチンに入ってくる。
「カレーをさっき片付けてくれてましたから!」
あーー…と春組が声を漏らす。
カレーに奉仕すれば監督の心掴める説あるな。
カレーが理由だったことに急に興味をなくしたのか、至さんと千景さんは軽い言い合いを始め、真澄はシトロンに詰め寄っていた。それを咲也があわあわしながらなだめる。
「ははっ、すっかりいつもの春組ですね」
「ですね〜。でもさっきちょっと焦っちゃいました」
「焦った?」
「最初聞かれたとき、綴さん選ぼうとは思ってたんですけど、理由が見つからなくて」
「…………え?」
「あ、へ、変な意味じゃないですよ!だって綴さん、春組のこといつも縁の下で支えてくれてますし、春組どころか全組支えてくれてます。私だってもちろん支えてもらってますし、綴さんってすごく安心感あるんですよ〜。だから結婚するなら、綴さんだなぁとは思ったんですけど……何言っても角が立つ気がして」
結婚するなら…俺?
「そしたら綴さんがカレーキッチンに持って行って、冷蔵庫にしまってくれたって思い出して」
「…見てたんすか…」
「綴さんこっち来ないのかなぁと思って見てました、はは、すみません」
深い意味は無いとわかっていても、監督が俺を選んでくれた、見ていてくれた。
その事実に胸が暖かくなった。
「監督、晩御飯手伝いますよ。今日、カレーなんでしょ?」
「おぉ…!さすが綴さん!よろしくお願いします!」
きっと監督が俺に振り向くことはないけれど、一回でも一番なれた。
喜んでも…いいよな。
---春組編 end...?---
「ただいま〜!って、何事!?」
真澄が倒れてから10分後、挨拶周りに行っていた監督が帰ってきた。
「あぁ、監督おかえりなさい。実は真澄がキッチンにあったカレー飲んだらしくて…」
「キッチンにあったカレー…?」
咲也がテーブルを指差す。
そこにはカレーの鍋が置かれていた。
「あぁ…今朝の……ん?」
監督がカレーの匂いを嗅ぎ首をかしげる。
「なんかこれ……」
ぞろぞろと皆がカレーに近づく。
匂いだけで痛くなるくらい辛そうなカレー…真澄よく飲んだな…
「あっ!わかりました!」
「何がわかったのかな?」
そう問いかける千景さんに、監督がじわじわ近づいて行く。
さっきの騒動もあって、俺はなんかドキドキしていた。
「千景さんですね!?カレーにスパイス入れたの!激辛の!」
「……は?」
ドキドキしていた分、監督の言葉に凄く落胆した。
「はは、さすがだね監督さん。悪気はなかったんだけど」
「どういうつもりですか〜!これ夜ご飯にも使うんですからね〜!?」
怒って監督さんは軽く千景さんの胸をトンッと叩いた。
千景さんはまるでそれを狙っていたかのように、叩いた監督さんの腕をパッと掴んだ。
これには監督さんも予想外だったようで、頭にはてなマークがたくさん見える。
「え、ち、千景さん?もしかして殴ったから怒りました?」
春組全員が息を飲んで見守る。
「……監督さん、忘れたの?」
「な、なにが……」
「俺に触れるなって前言ったよね」
「え?え?で、でもそれは昔の話…」
「俺に触れるってことは…それなりの覚悟があるってことだよね」
後ずさりする監督の腕を離さずジリジリと近寄る千景さん。
千景さんの動きが自然すぎて思わず俺たちは見入っていた。
「ちょ、ちょっとみんな!?千景さんがからかってくる…!」
監督の言葉にハッとした俺たちは、千景さんを止めに行こうとした。
だけど、気付くと千景さんと監督は離れていて、監督の側には何故か真澄が居た。
「ま、真澄くん…!?さっきまで寝てたよね!?」
「千景……お前も、敵……」
「…なーんてね。茅ヶ崎のマネだよ」
「はぁっ!!?なんで急に俺が出てくるんですか!」
さっきまでの謎の緊張感は消え、今度は真澄が監督ににじり寄っていた。
「監督……俺カレーになるから…」
「え?か、カレー?あ、ありがとう…?」
「茅ヶ崎が真澄を怒らせるマネだったんだけど、よく出来てなかった?」
「怒らせ方が違うネー」
「クッソこの先輩腹立つ…」
俺はなんだか気が抜けて、とりあえずテーブルにあった鍋をキッチンに戻した。
キッチンに立ったままみんなの様子を眺める。
なんかみんな…監督のこと好きだよな…
まぁ、当たり前なんだけどさ。
…てか監督カレー冷蔵庫にしまってなかったのか?
あ、千景さんがカレーにスパイス入れたんだっけ?その時に出したのか。
え…?じゃあ真澄が飲むことわかってて…?
それともさっきと同じやり方で監督に近寄るため…?
どっちにしても…怖い人だなぁ…
俺は冷蔵庫にカレーをしまい、キッチンに残ったままお茶を飲む。
わちゃわちゃしてる空気に、なんとなく戻りづらくなったから。
「そういえば、なんで真澄くんはカレー飲んだの?美味しそうだから?」
「……うん。あんたの味が食べたくなった……」
「真澄くん、嘘はダメだよ!」
「あと、スパイス入れたからあの味はほぼ俺が作ったみたいなものだよ」
「あんたの味…刺激的だった…俺はどんなあんたでも受け入れる…」
「ちょ、真澄くん離れて〜!」
「マスミ…人の話聞かないネ…」
そんなこんなで、咲也が監督に事の経緯を説明した。
説明を受けた監督は呆れたような照れてるような反応をしていて、可愛いなぁと思ってしまう。
「……で?監督さんは誰を選ぶの?」
「えっ?至さん一体何を…」
「だって、ここまできたら知りたいでしょ、フツー。ね、先輩」
「………あぁ、そうだな」
監督は困った顔をして春組一人ひとりの顔を見る。
「うーん…みんな嫌いじゃないし〜…」
「監督…俺…俺…俺…」
「真澄くんも嫌いじゃないけど…」
「…!監督に告白された…婚姻届にサインして…俺のはもう書いてあるから…」
「いやしないから。てかなんで書いてあるの…」
監督がゆーっくり春組全員を眺め…
最後に俺を見た。
「…あ!綴さんかな!」
予想外の言葉に体が硬直する。
お、俺!?
「ちょ、ちょっと待って監督さん何で俺じゃないの!?」
「至さんは結婚してもゲーム優先しそうだなって」
「そんなことないって…甘い新婚生活送るよ普通に…」
「俺は?茅ヶ崎とほぼ同じ条件だけどゲームしないよ」
「カレーに勝手にスパイス入れる人はダメです!」
「カントク、サクヤはダメ?サクヤとーってもいい子ネ」
「うん、そうなんだけど咲也くんにはもっと若くて可愛い子がいるだろうなぁって…」
「そんなこと…ないですけど…」
「監督…俺は…俺は…?」
「真澄くん、綴さんを睨まない!真澄くんも咲也くんと一緒かな…」
「俺にはあんたしかいない…あんたしか要らない…」
「ちなみにシトロンさんは?」
「シトロンさんは、結婚というよりは彼氏にしたいかな、楽しそう」
「シトロン………………殺す……」
「ワーオ!マスミ!目が血迷ってるネー!怖い怖いダヨ〜!」
「血走ってるな。……いや血迷ってるか、これは」
春組の会話は頭に入ってこない。
監督が俺を選んだ?
「あと綴さんは_」
監督がキッチンに入ってくる。
「カレーをさっき片付けてくれてましたから!」
あーー…と春組が声を漏らす。
カレーに奉仕すれば監督の心掴める説あるな。
カレーが理由だったことに急に興味をなくしたのか、至さんと千景さんは軽い言い合いを始め、真澄はシトロンに詰め寄っていた。それを咲也があわあわしながらなだめる。
「ははっ、すっかりいつもの春組ですね」
「ですね〜。でもさっきちょっと焦っちゃいました」
「焦った?」
「最初聞かれたとき、綴さん選ぼうとは思ってたんですけど、理由が見つからなくて」
「…………え?」
「あ、へ、変な意味じゃないですよ!だって綴さん、春組のこといつも縁の下で支えてくれてますし、春組どころか全組支えてくれてます。私だってもちろん支えてもらってますし、綴さんってすごく安心感あるんですよ〜。だから結婚するなら、綴さんだなぁとは思ったんですけど……何言っても角が立つ気がして」
結婚するなら…俺?
「そしたら綴さんがカレーキッチンに持って行って、冷蔵庫にしまってくれたって思い出して」
「…見てたんすか…」
「綴さんこっち来ないのかなぁと思って見てました、はは、すみません」
深い意味は無いとわかっていても、監督が俺を選んでくれた、見ていてくれた。
その事実に胸が暖かくなった。
「監督、晩御飯手伝いますよ。今日、カレーなんでしょ?」
「おぉ…!さすが綴さん!よろしくお願いします!」
きっと監督が俺に振り向くことはないけれど、一回でも一番なれた。
喜んでも…いいよな。
---春組編 end...?---