カントクに相応しい相手とは?
「監督さんに相応しいのってさぁ…結局俺だと思うんだよね」
レッスンの休憩中、至さんがそんなことを言い出した。
背後から真澄の殺気をひしひしと感じる。
「ちょっと至さん、変なこと言わないでくださいよ!真澄が今にもナイフ持ってきそうです」
「いやでも綴、考えてみ?春組の中で一番生活安定してるの誰?俺でしょ?」
そう言われて、春組を一人ずつ眺める。
咲也、凄く優しいけど、まぁ財力って面で言ったらもちろん至さんには敵わない。まぁ天然だし、恋愛として監督と一緒にいるのは想像つかないかも。
真澄、監督のこと好きなのは十二分に伝わってくる。上手くいけば監督を幸せに出来そうな気もするけど…どっちかっていうと愛が暴走しそうな…?
何より監督が恋愛対象にしなさそう。
シトロン、いや全然想像つかないな!
監督とシトロンが恋仲に…?
うぅん……?いやシトロンイケメンではあるし、わかんないけど…
うん…全てがわからない。
「綴、もちろん俺だろ…俺に決まってる…」
「ま、真澄怖いって!!」
「その顔だと綴、俺が一番相応しいって気づいたみたいだな。真澄おつ〜」
「至、お前…八つ裂きにしてやる…!」
「オーノー!マスミそれはダメダヨ〜!マスミが撮影班になってしまうネ〜!」
「シトロンさん…殺人犯のことじゃ…?」
でもこの様子見ると、やっぱり至さんが相応しいような気がしなくもない。
「……ただいま」
買い物に行っていた千景さんが帰ってきた。
俺は気づいてしまう。
至さんより千景さんの方が相応しいんじゃね…?と
「なんの騒ぎ?」
「あぁ、千景さん、おかえりなさい。実はさっき至さんが___」
「至、許さない……っ!」
「わぁっ!落ち着いて真澄くん!」
とてもじゃないけど咲也が千景さんに説明する余裕はなさそうだった。
「なるほどね、茅ヶ崎が監督さんは自分に相応しい…とでも言ったというところかな」
「え!?千景さんなんで分かるんですか!」
「綴、真澄がこんなに取り乱すなんて監督さんの事しかありえないだろ?」
たしかに。この乱れっぷりは原因を物語っている。
「ちっ…余計な人が来た」
「茅ヶ崎、聞こえてるぞ」
「…はぁぁ…無理ゲー無理ゲー。先輩に勝つのはムリですわ」
「何故?茅ヶ崎の方が監督さんといる期間は長いだろう」
個人的には経済観念がしっかりしてる…廃課金じゃない千景さんの方が相応しいと思ったけど、至さんがこんなに早く引き下がるとは…
「カレー…」
「は?」
「だから、先輩と監督はカレーがあるから」
あー…と、真澄以外が納得の声をあげた。
「……あいつがカレー好きとしか結婚しないなら、俺はカレーになる…」
「はは…カレー好きになるのとカレーになるのはまた別なんじゃ…って、おい!真澄!?」
真澄はレッスンルームを出て行ってしまった。
「まさか真澄くん…本当にカレーになりに行ったんじゃ…!?僕止めてきます!」
続けて咲也が出て行く。
「マスミカレー……きっとラブがたくさんネ〜!刺身してくるネ!」
シトロンも咲也の後ろをついて行った。
「いや、味見な。てかカレーになるってなんだよ…」
三人の素直さに呆れつつも、エリート達とレッスンルームに取り残された俺は壁に腰掛け、様子を眺める。
「…茅ヶ崎、からかいたかったのは分かるけど、真澄の前でそんな発言するのは迂闊だったんじゃないか?」
「はいはい〜さーせん」
「…あぁ。なるほど、分かった」
ドアの方を向いていた千景さんが至さんの方を振り向く。
「茅ヶ崎は本当に監督さんが好きなんだな」
「…はっ?」
至さんがいじりだしていたスマホから顔を上げる。
「何を…」
「会社の女とは違う扱いだとは思っていたけど、とうとう真澄に醜い嫉妬心を見せたか」
な、なんだこの超展開。
え?至さんが本気で監督を…?
至さんの顔を見ると、少し戸惑っているように見えた。
「は…はは…先輩言葉きっつ〜」
「素直に監督さんに甘える真澄を牽制しようとしたんだと俺は予想するね」
至さんの動きが固まる。
図星って事?
そんな…至さんが監督を…
「…そういう先輩こそ、本当は監督が好きなんじゃないっすか?」
「あいにく俺は恋だの愛だのには興味がなくてね」
「先輩、監督のことはやけにからかいますよね」
「…はぁ?」
「職場の女性社員には素っ気ない返事しかしないくせに、監督には嘘ついては困らせてますよね」
千景さんまで監督のことを!?
てか二人とも、俺がいること忘れてる?気まずいんですけど…
「俺が監督さんを…?まぁ、監督さんのことは嫌いじゃないよ」
「やっぱり…」
「じゃあ、もしも俺が監督さんを好きだ言ったら、茅ヶ崎は監督さんを諦めるのか?」
「は?」
「だとしたら俺は監督さんが好きだよ。守りたいと思う唯一の女性だ」
千景さんの予想外の言葉に、俺も至さんも息をのむ。
「まぁゲームで簡単に機嫌を損ねる茅ヶ崎と、常に落ち着きを持ってる俺を見て…監督さんがどっちを選ぶかなんて分かりきってるけど」
千景さんは嘘が上手い。
だからこれも嘘かもしれない。
だけど、どうしても俺には…千景さんは監督が好きなように見える…
………はは…監督ほんと…凄いな。
こんな気難しい人から好かれるなんて…
俺に入る隙なんて、無いってことだな…
「た、たたたた助けてください千景さん!」
咲也が勢いよくドアを開けた。
「ん、どうした?」
「真澄くんがカレーを飲もうとして辛さで倒れて〜〜!!」
遠くからシトロンの「マスミカレー!マジ辛え〜〜!」というくだらない台詞が聞こえてくる。
さっきまでの緊迫した雰囲気は一気に消え、元の春組という感じがしてホッとする。
千景さんが咲也に続き食堂に向かうのに続いて俺も出ようとした。
「…綴」
至さんがレッスンルームからぼーっとこっちを見る。
まさか…さっきので精神的ダメージを…?
「…腰…抜けた…立たせて…」
「……はっ?」
「先輩の迫力やばすぎ…ラスボス…ロードしたい…」
「はは…何言ってるんですか!ほら、早く立ちますよ」
至さんを立たせて、食堂に向かうと、真澄がソファに寝かされ、シトロンにガムシロを口に流し込まれていた。
笑みがこぼれる。
監督がもしこの中から交際相手を選んだとしても…この関係は変わらずありたいな。
レッスンの休憩中、至さんがそんなことを言い出した。
背後から真澄の殺気をひしひしと感じる。
「ちょっと至さん、変なこと言わないでくださいよ!真澄が今にもナイフ持ってきそうです」
「いやでも綴、考えてみ?春組の中で一番生活安定してるの誰?俺でしょ?」
そう言われて、春組を一人ずつ眺める。
咲也、凄く優しいけど、まぁ財力って面で言ったらもちろん至さんには敵わない。まぁ天然だし、恋愛として監督と一緒にいるのは想像つかないかも。
真澄、監督のこと好きなのは十二分に伝わってくる。上手くいけば監督を幸せに出来そうな気もするけど…どっちかっていうと愛が暴走しそうな…?
何より監督が恋愛対象にしなさそう。
シトロン、いや全然想像つかないな!
監督とシトロンが恋仲に…?
うぅん……?いやシトロンイケメンではあるし、わかんないけど…
うん…全てがわからない。
「綴、もちろん俺だろ…俺に決まってる…」
「ま、真澄怖いって!!」
「その顔だと綴、俺が一番相応しいって気づいたみたいだな。真澄おつ〜」
「至、お前…八つ裂きにしてやる…!」
「オーノー!マスミそれはダメダヨ〜!マスミが撮影班になってしまうネ〜!」
「シトロンさん…殺人犯のことじゃ…?」
でもこの様子見ると、やっぱり至さんが相応しいような気がしなくもない。
「……ただいま」
買い物に行っていた千景さんが帰ってきた。
俺は気づいてしまう。
至さんより千景さんの方が相応しいんじゃね…?と
「なんの騒ぎ?」
「あぁ、千景さん、おかえりなさい。実はさっき至さんが___」
「至、許さない……っ!」
「わぁっ!落ち着いて真澄くん!」
とてもじゃないけど咲也が千景さんに説明する余裕はなさそうだった。
「なるほどね、茅ヶ崎が監督さんは自分に相応しい…とでも言ったというところかな」
「え!?千景さんなんで分かるんですか!」
「綴、真澄がこんなに取り乱すなんて監督さんの事しかありえないだろ?」
たしかに。この乱れっぷりは原因を物語っている。
「ちっ…余計な人が来た」
「茅ヶ崎、聞こえてるぞ」
「…はぁぁ…無理ゲー無理ゲー。先輩に勝つのはムリですわ」
「何故?茅ヶ崎の方が監督さんといる期間は長いだろう」
個人的には経済観念がしっかりしてる…廃課金じゃない千景さんの方が相応しいと思ったけど、至さんがこんなに早く引き下がるとは…
「カレー…」
「は?」
「だから、先輩と監督はカレーがあるから」
あー…と、真澄以外が納得の声をあげた。
「……あいつがカレー好きとしか結婚しないなら、俺はカレーになる…」
「はは…カレー好きになるのとカレーになるのはまた別なんじゃ…って、おい!真澄!?」
真澄はレッスンルームを出て行ってしまった。
「まさか真澄くん…本当にカレーになりに行ったんじゃ…!?僕止めてきます!」
続けて咲也が出て行く。
「マスミカレー……きっとラブがたくさんネ〜!刺身してくるネ!」
シトロンも咲也の後ろをついて行った。
「いや、味見な。てかカレーになるってなんだよ…」
三人の素直さに呆れつつも、エリート達とレッスンルームに取り残された俺は壁に腰掛け、様子を眺める。
「…茅ヶ崎、からかいたかったのは分かるけど、真澄の前でそんな発言するのは迂闊だったんじゃないか?」
「はいはい〜さーせん」
「…あぁ。なるほど、分かった」
ドアの方を向いていた千景さんが至さんの方を振り向く。
「茅ヶ崎は本当に監督さんが好きなんだな」
「…はっ?」
至さんがいじりだしていたスマホから顔を上げる。
「何を…」
「会社の女とは違う扱いだとは思っていたけど、とうとう真澄に醜い嫉妬心を見せたか」
な、なんだこの超展開。
え?至さんが本気で監督を…?
至さんの顔を見ると、少し戸惑っているように見えた。
「は…はは…先輩言葉きっつ〜」
「素直に監督さんに甘える真澄を牽制しようとしたんだと俺は予想するね」
至さんの動きが固まる。
図星って事?
そんな…至さんが監督を…
「…そういう先輩こそ、本当は監督が好きなんじゃないっすか?」
「あいにく俺は恋だの愛だのには興味がなくてね」
「先輩、監督のことはやけにからかいますよね」
「…はぁ?」
「職場の女性社員には素っ気ない返事しかしないくせに、監督には嘘ついては困らせてますよね」
千景さんまで監督のことを!?
てか二人とも、俺がいること忘れてる?気まずいんですけど…
「俺が監督さんを…?まぁ、監督さんのことは嫌いじゃないよ」
「やっぱり…」
「じゃあ、もしも俺が監督さんを好きだ言ったら、茅ヶ崎は監督さんを諦めるのか?」
「は?」
「だとしたら俺は監督さんが好きだよ。守りたいと思う唯一の女性だ」
千景さんの予想外の言葉に、俺も至さんも息をのむ。
「まぁゲームで簡単に機嫌を損ねる茅ヶ崎と、常に落ち着きを持ってる俺を見て…監督さんがどっちを選ぶかなんて分かりきってるけど」
千景さんは嘘が上手い。
だからこれも嘘かもしれない。
だけど、どうしても俺には…千景さんは監督が好きなように見える…
………はは…監督ほんと…凄いな。
こんな気難しい人から好かれるなんて…
俺に入る隙なんて、無いってことだな…
「た、たたたた助けてください千景さん!」
咲也が勢いよくドアを開けた。
「ん、どうした?」
「真澄くんがカレーを飲もうとして辛さで倒れて〜〜!!」
遠くからシトロンの「マスミカレー!マジ辛え〜〜!」というくだらない台詞が聞こえてくる。
さっきまでの緊迫した雰囲気は一気に消え、元の春組という感じがしてホッとする。
千景さんが咲也に続き食堂に向かうのに続いて俺も出ようとした。
「…綴」
至さんがレッスンルームからぼーっとこっちを見る。
まさか…さっきので精神的ダメージを…?
「…腰…抜けた…立たせて…」
「……はっ?」
「先輩の迫力やばすぎ…ラスボス…ロードしたい…」
「はは…何言ってるんですか!ほら、早く立ちますよ」
至さんを立たせて、食堂に向かうと、真澄がソファに寝かされ、シトロンにガムシロを口に流し込まれていた。
笑みがこぼれる。
監督がもしこの中から交際相手を選んだとしても…この関係は変わらずありたいな。
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