降りかかる雨
ランティスはその日も昼寝をしていた。その日は特に気持ちのいい陽気で、ランティスは立ち上る眠気に素直に身を任せ、うつらうつらと現実と夢の間をさ迷っていた。
「あら、こんなところに」
下から聞こえてきた聞き覚えのあるかわいらしい声に、ランティスの夢は一気に吹き飛んだ。慌てて下を見ると、やはり、そこには自分の仕える人の姿があった。慌てて、樹から飛び降りようとしたがエメロードはくすりと笑ってそれを制した。
「ごめんなさい、お昼寝の邪魔をしてしまって」
「いえ……」
さすがに親衛隊長が城内で丸腰のまま昼寝をするところを見られては決まりが悪く、ランティスはどうしたものかと逡巡せずにはいられなかった。こんなところでこの国の柱と話しているところを導師やザガートに見られれば何を言われるか分からない。導師など何も聞かずにこちらを怒鳴りつけて来そうだ。自分の師が年齢を重ねている割には幾分怒りっぽく、短気であることをランティスはよく知っていた。
そんなランティスの心情を見透かしたようにエメロードは少し悪戯っぽく微笑んだ。
「悪戯っぽく」……いつも悠然と微笑んでいる彼女の、そのような表情を見るのは初めてで、不覚にもランティスはは自分がどきりとするのを感じた。
「クレフやザガートからランティスはいつも昼寝ばかりしていると聞いていたけれど本当だったのね」
「いや、そういうわけでは……」
と否定しつつも本当のことなのでどうも歯切れが悪い。そうでなくても元々会話は苦手だ。どうしたものかと、ランティスは戸惑ってエメロードを眺めた。
いつも彼女とは城内でしか会うことはないので、こうして日の下で髪を風にそよがせながらくすくす笑っているのはとても新鮮だった。初めて見る彼女のそうした姿は美しく、もちろん初めから美しい人だとは思っていたが、あぁ、この人にも色々な一面があるのだなと思った。柱だからと言って一日中城内にいて、余裕を感じさせる優しい笑みを浮かべているわけではない。よくよく考えれば、それは至極当然のことだった。
「こんなところで堂々と寝ちゃうなんて、そんな人初めて見たわ。前々から思っていたけれどあなたって本当に自由でおもしろい人ね」
エメロードはランティスの目を仰ぎ見て言った。
「ランティス」
「ランティス、ランティスってば」
またしても、自分を呼ぶ声でランティスは我に返った。今度は自分を呼んでいるのは銀髪の親友ではなく、紅髪の少女だった。大きな目でこちらを見上げている。
さっきまで、ヒカルと窓の外を眺めて「酷い風だね」「明日は雨かなぁ」などと立ち話をしていたはずだったのに、気付けばぼぅっと現実を離れてしまっていたらしい。
白昼夢。
窓の外には、さっきも見ていた新しい樹があった。それを眺めているうちに、過去の記憶が蘇ってきたのだろうか?
何を俺は回想に耽っているんだ。ランティスは軽くこめかみを抑え、今日の俺はどうかしているとため息を吐いた。
「どうしたの……?」
心配そうにのぞき込んでくる視線に、ランティスは微笑んでヒカルの頭を撫でた。
「少し考え事をしていた……すまない」
ヒカルは首を横に振り、心配そうな目で見つめてくる。膝をついてもう一度頭を撫でるとヒカルは心配そうな目はそのままに、嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに微笑んだ。
窓の外では大きな黒い雲がせり出し、空を覆おうとしていた。
「あら、こんなところに」
下から聞こえてきた聞き覚えのあるかわいらしい声に、ランティスの夢は一気に吹き飛んだ。慌てて下を見ると、やはり、そこには自分の仕える人の姿があった。慌てて、樹から飛び降りようとしたがエメロードはくすりと笑ってそれを制した。
「ごめんなさい、お昼寝の邪魔をしてしまって」
「いえ……」
さすがに親衛隊長が城内で丸腰のまま昼寝をするところを見られては決まりが悪く、ランティスはどうしたものかと逡巡せずにはいられなかった。こんなところでこの国の柱と話しているところを導師やザガートに見られれば何を言われるか分からない。導師など何も聞かずにこちらを怒鳴りつけて来そうだ。自分の師が年齢を重ねている割には幾分怒りっぽく、短気であることをランティスはよく知っていた。
そんなランティスの心情を見透かしたようにエメロードは少し悪戯っぽく微笑んだ。
「悪戯っぽく」……いつも悠然と微笑んでいる彼女の、そのような表情を見るのは初めてで、不覚にもランティスはは自分がどきりとするのを感じた。
「クレフやザガートからランティスはいつも昼寝ばかりしていると聞いていたけれど本当だったのね」
「いや、そういうわけでは……」
と否定しつつも本当のことなのでどうも歯切れが悪い。そうでなくても元々会話は苦手だ。どうしたものかと、ランティスは戸惑ってエメロードを眺めた。
いつも彼女とは城内でしか会うことはないので、こうして日の下で髪を風にそよがせながらくすくす笑っているのはとても新鮮だった。初めて見る彼女のそうした姿は美しく、もちろん初めから美しい人だとは思っていたが、あぁ、この人にも色々な一面があるのだなと思った。柱だからと言って一日中城内にいて、余裕を感じさせる優しい笑みを浮かべているわけではない。よくよく考えれば、それは至極当然のことだった。
「こんなところで堂々と寝ちゃうなんて、そんな人初めて見たわ。前々から思っていたけれどあなたって本当に自由でおもしろい人ね」
エメロードはランティスの目を仰ぎ見て言った。
「ランティス」
「ランティス、ランティスってば」
またしても、自分を呼ぶ声でランティスは我に返った。今度は自分を呼んでいるのは銀髪の親友ではなく、紅髪の少女だった。大きな目でこちらを見上げている。
さっきまで、ヒカルと窓の外を眺めて「酷い風だね」「明日は雨かなぁ」などと立ち話をしていたはずだったのに、気付けばぼぅっと現実を離れてしまっていたらしい。
白昼夢。
窓の外には、さっきも見ていた新しい樹があった。それを眺めているうちに、過去の記憶が蘇ってきたのだろうか?
何を俺は回想に耽っているんだ。ランティスは軽くこめかみを抑え、今日の俺はどうかしているとため息を吐いた。
「どうしたの……?」
心配そうにのぞき込んでくる視線に、ランティスは微笑んでヒカルの頭を撫でた。
「少し考え事をしていた……すまない」
ヒカルは首を横に振り、心配そうな目で見つめてくる。膝をついてもう一度頭を撫でるとヒカルは心配そうな目はそのままに、嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに微笑んだ。
窓の外では大きな黒い雲がせり出し、空を覆おうとしていた。
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