イーグルvsザガートが見たいRPG妄想
僕の友だちがその子を見つけたのはただの偶然だったけれど、その子をフェリオに引き合わせたのは決して偶然ではなかった。僕はその子の正体を知った時、確かにこの子をフェリオに引き合わせた方がいいと思った。そして、その通りにした。
だけど……
「ねえ、本当にオートザムに行くの?」
「何言ってるんだよ、今さら」
フェリオが呆れたように僕を見た。ロウソクの光だけが頼りの薄暗い部屋の中でも、フェリオの瞳は強い光を放っている。僕は何も言い返せないまま、目をそらした。今さらなのには間違いがなかった。あの子をこの国から出したくないなら。フェリオを危険な目に遭わせたくないなら。そして何より、僕自身が安穏と何も考えずに平和なまま日常を続けたいなら。僕はあの子をフェリオのもとに連れて行くべきではなかった。
そんなこと、最初から分かっていたはずだった。
けれど、いざ、出発となると、身がすくむ。
「いやなら、この街に残ってもいいんだぜ。俺は一人でもこの子を連れて行く」
「……」
僕はベッドの上で寝息を立てている女の子を見た。赤い髪が印象的な、とても小さな女の子だ。幾つくらいなんだろう。まだまだあどけなさの残るその顔立ちは、まだ十歳を少し出たくらいに見える。
彼女を見つけたのは、僕の「友だち」と夜の森を散策している時のことだった。裸足に、薄い簡素な服を身に着けた彼女は、木の陰に隠れるようにして眠っていた。彼女の気配に気づくことができたのは、僕の「友だち」が桁外れの嗅覚と夜でも遠くを見渡せる鋭い目を持っていたからだ。彼女は、自分自身の存在を殺すように、小さな体を縮こまらせて、消えそうなほど静かな寝息を立てていた。
彼女の赤い髪の色に気付いた時、僕はすぐに、この子が、あの、イノーバが血眼になって探している「少女」だということに気付いた。今日の朝、日が昇るとともに、イノーバは、セフィーロ中の魔導師に「赤毛の少女を探せ」と達しを出した。その「魔導師以外の者に他言無用」と厳しく引かれた緘口令に、セフィーロの魔導師ならば、誰しも「赤毛の少女」の正体にピンと来たはずだ。少女は、きっと……。
その直感が正しいのなら、彼女をイノーバの……いや、イノーバの上にいるザガートの、そのさらに上にいる皇帝のもとに、返すのが正しいことなのか。それが「正義」といえるのか、僕にはそうは思えなかった。
だからこそ、僕は、彼女をフェリオに会わせようと思ったのだろう。フェリオが、密かに、反帝国派の地下組織 “レイアース”と繋がりを持っていることを知っていたから。そして、彼女と「反帝国派」が結びつくことが、この、今の、閉塞したセフィーロのさび付いた歯車を、ぐるぐると回し始めるのではないかと思ったから。
……自分で回し始めた歯車だ。途中で降りるなんてあり得ない。
「……僕も行くよ。フェリオ一人じゃ、あの地下水道は超えられないだろ?」
「そうこなくっちゃ、アスコット」
フェリオがにやりと笑って僕の背中を叩く。セフィーロの国境には、厳しい検問がひかれているが、今はもう使われていない地下水道がセフィーロの外側に通じている「はずだ」とフェリオは言う。
僕たちはこれから、その、本当に出口に続いているかも分からない、今にも崩落しそうな地下水道を超えなければならない。向かう先はオートザム。セフィーロ帝国の属国でありながら、反帝国派であると密かに噂されている王国だ。
“「赤毛の少女」を連れて、オートザムへ逃れる。”
途中で見つかったら即死刑間違いなしだ。
オートザムがすんなり僕たちを受け入れてくれるとも限らない。
しかし、それでも、今のセフィーロを変えるには、このまま赤毛の少女をイノーバに引き渡すわけにはいかないのだ。
覚悟を決めた僕は、せめて最後にあの……いつも魔導教室で会う、あの青髪の綺麗なあの子にもう一度会いたかったな、いつかまた会えるかな、と思いながら、荷物をまとめ始める。
だけど……
「ねえ、本当にオートザムに行くの?」
「何言ってるんだよ、今さら」
フェリオが呆れたように僕を見た。ロウソクの光だけが頼りの薄暗い部屋の中でも、フェリオの瞳は強い光を放っている。僕は何も言い返せないまま、目をそらした。今さらなのには間違いがなかった。あの子をこの国から出したくないなら。フェリオを危険な目に遭わせたくないなら。そして何より、僕自身が安穏と何も考えずに平和なまま日常を続けたいなら。僕はあの子をフェリオのもとに連れて行くべきではなかった。
そんなこと、最初から分かっていたはずだった。
けれど、いざ、出発となると、身がすくむ。
「いやなら、この街に残ってもいいんだぜ。俺は一人でもこの子を連れて行く」
「……」
僕はベッドの上で寝息を立てている女の子を見た。赤い髪が印象的な、とても小さな女の子だ。幾つくらいなんだろう。まだまだあどけなさの残るその顔立ちは、まだ十歳を少し出たくらいに見える。
彼女を見つけたのは、僕の「友だち」と夜の森を散策している時のことだった。裸足に、薄い簡素な服を身に着けた彼女は、木の陰に隠れるようにして眠っていた。彼女の気配に気づくことができたのは、僕の「友だち」が桁外れの嗅覚と夜でも遠くを見渡せる鋭い目を持っていたからだ。彼女は、自分自身の存在を殺すように、小さな体を縮こまらせて、消えそうなほど静かな寝息を立てていた。
彼女の赤い髪の色に気付いた時、僕はすぐに、この子が、あの、イノーバが血眼になって探している「少女」だということに気付いた。今日の朝、日が昇るとともに、イノーバは、セフィーロ中の魔導師に「赤毛の少女を探せ」と達しを出した。その「魔導師以外の者に他言無用」と厳しく引かれた緘口令に、セフィーロの魔導師ならば、誰しも「赤毛の少女」の正体にピンと来たはずだ。少女は、きっと……。
その直感が正しいのなら、彼女をイノーバの……いや、イノーバの上にいるザガートの、そのさらに上にいる皇帝のもとに、返すのが正しいことなのか。それが「正義」といえるのか、僕にはそうは思えなかった。
だからこそ、僕は、彼女をフェリオに会わせようと思ったのだろう。フェリオが、密かに、反帝国派の地下組織 “レイアース”と繋がりを持っていることを知っていたから。そして、彼女と「反帝国派」が結びつくことが、この、今の、閉塞したセフィーロのさび付いた歯車を、ぐるぐると回し始めるのではないかと思ったから。
……自分で回し始めた歯車だ。途中で降りるなんてあり得ない。
「……僕も行くよ。フェリオ一人じゃ、あの地下水道は超えられないだろ?」
「そうこなくっちゃ、アスコット」
フェリオがにやりと笑って僕の背中を叩く。セフィーロの国境には、厳しい検問がひかれているが、今はもう使われていない地下水道がセフィーロの外側に通じている「はずだ」とフェリオは言う。
僕たちはこれから、その、本当に出口に続いているかも分からない、今にも崩落しそうな地下水道を超えなければならない。向かう先はオートザム。セフィーロ帝国の属国でありながら、反帝国派であると密かに噂されている王国だ。
“「赤毛の少女」を連れて、オートザムへ逃れる。”
途中で見つかったら即死刑間違いなしだ。
オートザムがすんなり僕たちを受け入れてくれるとも限らない。
しかし、それでも、今のセフィーロを変えるには、このまま赤毛の少女をイノーバに引き渡すわけにはいかないのだ。
覚悟を決めた僕は、せめて最後にあの……いつも魔導教室で会う、あの青髪の綺麗なあの子にもう一度会いたかったな、いつかまた会えるかな、と思いながら、荷物をまとめ始める。