ラン光イーまわり

※本作の前提※
以前、Twitterでこんなことを呟きました。



我ながらこの設定、すっげぇ萌える……!!! と思ったので、突発SSを書きました。
いつにも増してオチも何もないのでとりあえず日記に上げます……。

以下、「もしも現世に転生したザガエメ(高校生17歳)が魔法騎士レイアースを読んだら……」という現代パロSSです。
固有名詞一切出てきませんが、

・ザガートとランティス(兄弟)
・エメロードとイーグル(姉弟)
・ザガートとエメロードは付き合ってて同級生
・ランティスとイーグルは同い年で親友

……という設定で書いております。


***

「とても感動したお話なの」

 僕の机の上に差し出されたのは、三冊の本だった。一番上の一冊をめくると、目の大きな少女が文字通りキラキラと輝いた瞳で微笑んでいる。『高いな! 大きいな!』。無邪気に望遠鏡を覗き込む彼女の後ろには花びらのようなものが飛んでいて、読む者の性別を瞬時に区分する。
 優等生の彼女にしては珍しい。私物の漫画を学校に持ってくるのは、もちろん、校則違反だ。

「少女漫画を読むのは初めてだよ」
「でしょうね。でも、案外、様になってるわ」

 僕の目を覗き込んでからかうように笑う彼女の笑顔がとてもかわいくて、僕は思わず目をそらした。彼女のむきだしになった白い肘が視界に入って、僕は更に目をそらす。下校時刻を過ぎた教室には僕たちの他に誰もいない。明日から夏休みが始まるのに、クーラーの切れた蒸し暑い教室に居残りをしようという物好きが他のどこにいるだろう。開け放たれた窓の外では、学校から解放されたばかりの生徒たちが家路を急ぐ声がする。

 ――三人でプールいこうよ! 
 ――えー、絶対混んでるわよ。

 クラスメイトは教室という日常から離れ始めているのに、僕たちと言えば、いつもの教室の定位置から離れずにぐずぐずとしている。僕が窓際の一番後ろの席で、彼女がその前の席。彼女がくるりと振り返って僕に話しかけてくれるこの瞬間はいつも、普段通りの休み時間や放課後を一気に特別な時間に変えてしまう。夏休みが始まれば、一ヶ月、この時間が失われてしまうのだ。

「20年も前の少女漫画なの」

 そんな僕の心情を知ってか知らずか、彼女は窓の外のざわめきから隠れるようにとても小さな声で囁いた。

「1996年?」
「私たち、まだ生まれてもいない」

 あなたは最近のものは苦手でしょう。そういって彼女は笑う。笑いながら話す彼女の、少し上ずった声が、やっぱり、かわいいと思う。一つ机を挟んだだけのこの距離は、彼女の表情や喋り方、呼吸の仕方や睫の角度、彼女の一挙一動を一番近くに感じられるから、僕はとても気に入っている。

 夏休みなんて来なければいいのに。

「1部と2部に分かれているんだけど、私は1部の方が好きなの。だから、1部だけ貸してあげる。

 明日、感想聞かせてね?」



***



「どこが感動すると思う?」

 風呂上りに急に兄に呼び止められたかと思えば、いきなり三冊の本を差し出されたのが約2時間前。表紙からして、明らかに少女漫画なそれを、なぜ兄が持っているのか、一瞬、疑問に思い、借り物だから丁寧に扱うようにと注意を受けた時点で誰から借りたのか察しがついてしまった。何が悲しくて兄弟間で、花と星が背景に飛ぶ少女漫画の受け渡しをしなければならないのかと思ったが、兄はあの人のこととなると途端に冷静な判断力を失う。
 無駄な抵抗は諦めてリビングでそのまま漫画を読み始めれば、内容は意外と面白く、読み進めるうちに気が付けば髪もすっかり乾いていた。

 そして、俺が読み終わったとみて、即座に兄が俺に投げかけてきたのが冒頭の台詞だ。

「……最後に二人が結ばれるところじゃないか」

 兄に漫画を手渡しながらそう言うと、兄は納得いかないと言わんばかりに首を傾げる。
 俺自身が感動したかと聞かれればそんなことはなかったが、しかし、この漫画のストーリーで「感動する場面がある」といえば、それは、運命によって結ばれえなかった二人が、死をもってついにその運命から解き放たれる、あのラストシーンしかあり得ないだろう。

「結ばれる前に死んでいたじゃないか」
「あれは死によって結ばれた……というラストだろう」

 現に、漫画のラストで少女は「ついにあなただけのものに」なれたのだと喜んでいたのだから、結ばれた二人にとってはハッピーエンドだったのだろう。俺としてはどちらかといえば、二人を「ハッピーエンド」という死に導くために、二人を手にかけざるを得なかった主人公たちの今後の方が気になるのだが、兄は、二人が辿った運命が気にかかって仕方がないらしい。

「死んでしまったら意味がないじゃないか」
「この漫画はそういう解釈でストーリーを進めているんだから仕方」

 がないだろう。
 と言おうとしたところで、喉がひき吊れて、声が出なくなった。風邪でもひいたのか、最近、どうも喉の調子がおかしい。しかし、始めから俺の感想など求めていなかったのかもしれない兄は、突然咳き込みだした俺を心配するでもなく、どうしても分からないんだと、眉を顰めたまま、うんうんと唸っている。

「生きて、同じ時間を共有できないのなら、結ばれないも同じだろう」



**


「惚気じゃないですか」

 いつものように塾の自習室で、親友たる「彼」と勉強をしていると、唐突に“お前の姉さんが持っているはずの少女漫画の続きが読みたいから借りてきてくれないか”という謎の頼みごとをされた。経緯を尋ねた結果、彼の兄の、「漫画のラストに納得がいかないふりをして、「僕は、死んで結ばれるなんて嫌だ。生きて彼女とずっと一緒にいたい」と主張をする」という惚気話を、間接的に聞かされることになった。
 僕の姉と彼の兄が付き合い出して四カ月。初々しい高校生カップルの惚気話は尽きることなく僕たちに襲い掛かり続けている。

 僕の姉が彼の兄に漫画を貸した話は僕も知っていて、というのも、昨日、朝食の席では「明日から夏休みになるなんて毎日会えないから寂しいわ」とこの世の終わりみたいに暗い顔をしていた姉が、夕食の席では「明日、彼に漫画の感想を聞かせてもらうことになったの」とこの世の春のような明るい顔をしているのを見て、彼女のリアル充実ぶりにややげんなりしたばかりだからだ。

「……つまり、あなたのお兄さんは、1部のラストにひたすら納得がいかなくて、話の続きなんて気にならないみたいだし、『続きが読みたいから借りて来てくれ』なんて言える雰囲気ではないということですね」

 ゆっくり頷く彼を見ながら、僕はため息を吐いた。受験生の弟に漫画を押し付けた挙句、続きは渡さないとは彼の兄もなかなか所業が酷である。

「いいですよ、借りてきます」
「お前は読ん」

 だのか。
 と言い終わらないうちに、彼は口を押えて軽く咳き込んだ。元々口数の少ない彼だが、ここ数日はいつにもまして声の調子が悪そうだ。恐らく声変りの最中なのだろうと思う。

「読みましたよ、1部も2部も。僕はどちらも好きでしたけど……あなたは2部の方が気に入るんじゃないかな。姉さんは相当1部が気に入ってましたけど」

 そう言うと、彼は「ふうん」と一応は頷いていたが、1部を気に入る人の気持ちがいまいちよく分からないというような顔をしている。きっと、彼も、どちらかというと彼の兄と同じく「死によって、これまでの頸木から自由になり、結ばれる」ことの幸せや、そのようなストーリーを読む快感に、あまりピンとこないものがあるのではないかと思う。なぜなら、彼は、完璧な成績と容姿を貫くスーパー優等生の兄の下、そんな兄を追い越そうとするでもなく、普段から割と自由に好き勝手にやっているからだ。

 そう考えると、いつも「より良い自分」を目指して毎日の研鑽を惜しまない彼の兄が、「死」によってしか目的地に辿り着くことのできないラストを享受できないのも分かる気がする。

「お前はあのラストを読んでどう思ったんだ」
「うーん、柱としての自分を貫こうとしたけれど最後まで貫けなかった彼女は嫌いじゃないですね。
 でも僕は、それよりも」

 そこで言葉を切って意味ありげに彼の青い瞳を見つめると、無表情な彼が、彼なりに「嫌な予感がする」という顔をした。

「あなたが、あの漫画の2部を読んであなたがどう思うのか気になります。
 今日の夜、あなたの家に持って行きますから、明日、感想を聞かせてください」



***


オチが見当たらずフェードアウト!!! 

一応、

・最初:ザガート(僕)とエメロード(彼女)
・二番目:ランティス(俺)と兄(ザガート)
・三番目:イーグル(僕)と彼(ランティス)

のつもりで書いてます。
声変りランティスは書きたかったから無理やり入れました。


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