……っていう夢を見たんだ。
ふう、とため息をつく声が聞こえたかと思うと、いきなり目の前に青色の魔石が現われ、さすがにランティスも目を丸くせざるを得なかった。この国の者なら誰しも一度は目にしたことのある、大きな丸い魔石。
それは、導師クレフの杖の先に嵌っている魔石だった。よくよく状況を確認すれば、導師クレフが、あの彼の背丈の倍もあろうかという長さの杖をランティスの顔に突き付けているのだった。状況は把握できても、それが何を意味しているのかまでは分からない。ランティスはクレフの顔を見たが、彼は眉ひとつ動かさずにランティスをじっと見つめるだけで、口を開こうとはしなかった。
ランティスはもう一度、目の前に突き付けられている魔石を見つめた。導師クレフの杖とそこに嵌められた魔石。ランティスは、それこそ、いやというほどに、この魔石が魔法の力を集め、大地を切り裂くようにすさまじい魔法を放つところを何度も見てきた。それと同じくらい、人を導き、傷を癒す暖かな魔法が放たれるところも見た(付け加えれば、幼い頃には、いつまでも指示に逆らい続けた結果、「いい加減にしろ」とこの杖が上下に震える様を何度も見たものである)。初めて間近で見つめるその魔石は、これまでに持ち主が用いてきた様々な魔法の軌跡をその奥に湛えているかのように、深い青色をしていた。何の光を反射しているわけでもないのに、内側から深い青色に光りを放ち、そこからこぼれた光の粒子が魔石の周りを縁取ってキラキラと輝いている。思わず、その美しさに目を奪われそうになる。
しかし、そんな感傷を打ち消すかのように、緩慢な動きで、その魔石が上下に振られた。もう一度クレフを見ると、受け取れと言わんばかりに、顎を抉っている。
受け取れ?
そもそもセフィーロの全住民が触ることすら躊躇するような神聖なものだと思われるので、そんなに簡単に受け取っていいものかと戸惑っていると、荘厳で落ち着いているように見えて実は短気なところのあるランティスの師は、何度も言わせるな、というようにもう一度杖を振った。
持ち主が受け取れと言うのなら仕方ない。ランティスが杖を掴んだのを確認すると、クレフは満足げに杖から手を離し、「魔物が現われたらお前がなんとかしろ」と言ってランティスと同じように木の根の上に座り込んだ。
……なるほど、これは「私はしばらく魔法を使う気はないから、お前が周囲を警戒していざとなったら何とかしろ」という意志表示らしい。
彼なら杖がなくても、たいていの魔法は使えるだろうが……そんなに簡単に人に預けるものでもないだろう。しかし、当の本人は、完全に休憩モードに突入しており、いつも荘厳とした佇まいを崩さない彼にしては珍しく、膝の上に肘をつき、その上に頬を乗せてぼんやりと雨が降る森の中を眺めている。彼の場合、見た目の年齢がかなり年若いので、その姿はなんだか親に怒られてふてくされた少年のようにも見える。
少し状況が呑み込めないが、なんにせよ、いつも忙しく動き回っている彼に休息が必要なのは確かだろう。もとより警戒を解いたわけでもなかったのだが、ランティスは杖を左手で抱えると、周囲に張り巡らせる「気」の警戒の密度を上げた。幸い、魔物の気配は感じられない。
導師の権威の象徴であるかのような杖が自分の手の中にあると思うとなんだか不思議な気持ちだった。
***
こいつがこんななら、私もサボるか、というスタンスを取り出した師匠。
利き手は空けておくランティス。
クレフってたぶんこういうキャラじゃないよなーと思いつつ……。クレフは荘厳だったり切なげな表情をしてたりしてるのも好きですが、海ちゃんとぎゃーぎゃーやってるあの感じが一番好きなんです。最高位の導師が「イラッ」としてぶち切れてるあの大人げなさに萌える。
それは、導師クレフの杖の先に嵌っている魔石だった。よくよく状況を確認すれば、導師クレフが、あの彼の背丈の倍もあろうかという長さの杖をランティスの顔に突き付けているのだった。状況は把握できても、それが何を意味しているのかまでは分からない。ランティスはクレフの顔を見たが、彼は眉ひとつ動かさずにランティスをじっと見つめるだけで、口を開こうとはしなかった。
ランティスはもう一度、目の前に突き付けられている魔石を見つめた。導師クレフの杖とそこに嵌められた魔石。ランティスは、それこそ、いやというほどに、この魔石が魔法の力を集め、大地を切り裂くようにすさまじい魔法を放つところを何度も見てきた。それと同じくらい、人を導き、傷を癒す暖かな魔法が放たれるところも見た(付け加えれば、幼い頃には、いつまでも指示に逆らい続けた結果、「いい加減にしろ」とこの杖が上下に震える様を何度も見たものである)。初めて間近で見つめるその魔石は、これまでに持ち主が用いてきた様々な魔法の軌跡をその奥に湛えているかのように、深い青色をしていた。何の光を反射しているわけでもないのに、内側から深い青色に光りを放ち、そこからこぼれた光の粒子が魔石の周りを縁取ってキラキラと輝いている。思わず、その美しさに目を奪われそうになる。
しかし、そんな感傷を打ち消すかのように、緩慢な動きで、その魔石が上下に振られた。もう一度クレフを見ると、受け取れと言わんばかりに、顎を抉っている。
受け取れ?
そもそもセフィーロの全住民が触ることすら躊躇するような神聖なものだと思われるので、そんなに簡単に受け取っていいものかと戸惑っていると、荘厳で落ち着いているように見えて実は短気なところのあるランティスの師は、何度も言わせるな、というようにもう一度杖を振った。
持ち主が受け取れと言うのなら仕方ない。ランティスが杖を掴んだのを確認すると、クレフは満足げに杖から手を離し、「魔物が現われたらお前がなんとかしろ」と言ってランティスと同じように木の根の上に座り込んだ。
……なるほど、これは「私はしばらく魔法を使う気はないから、お前が周囲を警戒していざとなったら何とかしろ」という意志表示らしい。
彼なら杖がなくても、たいていの魔法は使えるだろうが……そんなに簡単に人に預けるものでもないだろう。しかし、当の本人は、完全に休憩モードに突入しており、いつも荘厳とした佇まいを崩さない彼にしては珍しく、膝の上に肘をつき、その上に頬を乗せてぼんやりと雨が降る森の中を眺めている。彼の場合、見た目の年齢がかなり年若いので、その姿はなんだか親に怒られてふてくされた少年のようにも見える。
少し状況が呑み込めないが、なんにせよ、いつも忙しく動き回っている彼に休息が必要なのは確かだろう。もとより警戒を解いたわけでもなかったのだが、ランティスは杖を左手で抱えると、周囲に張り巡らせる「気」の警戒の密度を上げた。幸い、魔物の気配は感じられない。
導師の権威の象徴であるかのような杖が自分の手の中にあると思うとなんだか不思議な気持ちだった。
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こいつがこんななら、私もサボるか、というスタンスを取り出した師匠。
利き手は空けておくランティス。
クレフってたぶんこういうキャラじゃないよなーと思いつつ……。クレフは荘厳だったり切なげな表情をしてたりしてるのも好きですが、海ちゃんとぎゃーぎゃーやってるあの感じが一番好きなんです。最高位の導師が「イラッ」としてぶち切れてるあの大人げなさに萌える。