……っていう夢を見たんだ。

 フェリオやプレセアは心配性で……というよりも周りがよく見えているのだろう。クレフが少し無理を重ねればすぐにそれに気づき、無理を諫めてくる。たいてい、その忠告に従わずに更に無理を重ねてしまうわけだが、そんなことはあちら側も承知で、フェリオなど、最近は頃合いを見計らって「導師、根を詰めすぎてはお身体に障ります」とにっこり笑って仕事を取り上げてしまうようになった(全くもって先が楽しみな王子である)。
 今回もそうだ。「導師もたまには外へ出て、実際のセフィーロの様子を確かめるべきだと思います」の一言と共に、気付けばランティスが定期的に行っているセフィーロの“視察”に同行することになっていた。城の中に閉じこもりがちなクレフへの配慮なのだろう。気を使わせてばかりではいかんな……とため息が出る。
 しかし、確かに外に出てセフィーロの国土そのものの変化を肌で感じるのは、必要なことだと、降りしきる雨を、その雨を防ぐように何本もの太い枝を重ねているこの樹を見上げながら思う。この木はどれほどの樹齢を数えているのだろうか。木の下に飛び込んだとき、もう何十年も何百年もそこにあるかのように太い幹に、クレフは知らず感嘆の息を漏らした。本当に不思議な国だと思う。この木はいつ地面に根を張ったというのだろうか。セフィーロの国土が崩壊を免れ、少しずつ国土を回復し始めてから、まだしばらくも経たないのに。城の近辺はようやく落ち着きを取り戻し、出来上がった街には活気があふれているが、その外側で、この国の国土がどのように変化を遂げ、どのような地形を形成しているのか、そこにどんな生物が、どんな生態系が息づいているのか、まだまったくといっていいほど把握ができていない。これから先、この国がやるべきことは山積みだ。
 ランティスがクレフをこの森に連れてきたのも、国土の変化を目や耳で感じ取ることができるからなのかもしれない。ランティスの様子を伺うと、彼は根の上に腰を下ろしたまま、無表情に真正面の風景を見つめている。その表情は何かを深く考え込んでいるようにも見たが、もしかしたら、案外何も考えずにぼぅっとしているだけなのかもしれない。
 それにしても雨を察知しているのにそのことは言わずに勝手にスタスタと歩き出すわ、師が目の前にいるというのに何も言わずに座り込むわ、さっきからランティスの態度には礼儀も何もあったものではない。正式に修行として向き合っている時や公の場ではしゃべり方も態度も改まるのだが、それ以外でクレフと二人きりになった時のランティスの態度は大体このような感じだ。曲がりなりにも目の前にいるのはお前の師だぞと、また小言のひとつも言いたくなるのだが、正味、クレフとしてもその方が気が楽だし、彼自身もそのことを分かってやっている節があるので、放っておいている。
 昔からランティスにはそういうところがあった。形式ばった関係性を嫌い、杓子定規な人付き合いができるタイプではない。そして、本当はクレフ自身もそうした性質をもち合わせているのだと思う。だからこそ、彼に腹も立つし手も焼くが、最終的には溜飲を下げずにはいられないのだ。
 クレフは大きく息を吐いて、黒い雲の立ち込める空を見上げた。


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頭のいいフェリオと無礼なランティスが書きたかった。

個人的には、柱制度がなくなってもフェリオは王子のままでいいのかっていうのが気になります。セフィーロは、姫と王子がいるのに王とか王女がいないというのはどういうシステムなんだろう。こっち(地球)でいう王制度とは全然違うものなんですかね。
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