メジャー短編 (調整中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いつも通う通学路
同じバスに 同じ人
何も変わらないこの通学路に 違う春が訪れた
*春は突然やって来る*
*
*
背が高く、少し青みがかった黒い髪
黒に映える緑の瞳
肩からは大きめのスポーツバック
まだ幼さが残る童顔
今まで見かけなかった少年だった
季節は春
恐らく今年から高校生になったのだろう
真新しい学生服には、海堂高校の校章がついていた
『(うわぁ~かわいいv)』
彼のあまりの可愛さに、つい見とれてしまった
私より可愛いんじゃないか! ってくらいの可愛さv
さてさて、これが私と彼・佐藤寿也君との初めての出会い
*
月日が経つのは早く、外は白銀の世界へと変わっていった
委員会の仕事で帰りが遅くなってしまい、丁度サラリーマンやOLの帰宅ラッシュに巻き込まれてしまった
『(あぁ・・、最悪・・・)』
文句も言いたくなるよ
電車に何人乗ってんだ! ってほど押し込められた満員電車
私は出入り口を前に縮こまっていた
早く着かないかなぁ・・
と思った時だった
*何やら違和感を感じるお尻
誰かのカバンが当たっているのかとも思ったが、どうも動きが繊細だ
電車がカーブに差し掛かったとき重力がかかり、それがはっきりと誰かの手だとわかった
・・・これって、もしかして・・・・・・痴漢?!!
そう思った途端に、何とも言いようのない恐怖に襲われた
どうしよう・・・振り返るのも怖いよぉ
痴漢の手は徐々にエスカレートしていき、どんどん後ろから前に伸びてきた
『・・・っ///』
その行為に私は震えながら耐えるしかなかった
よく漫画なんかで痴漢を捕まえちゃうカッコイイ女の子がいるけど、やっぱりあれは漫画の世界だ
捕まえるのにどれだけの勇気がいるか計り知れない
痴漢の手がスルっと前に来たと思った時だった
『!?』
誰かが私の腕をぐいっと引っ張り込んだ
そのおかげで痴漢の手からは逃れられたのだが・・・
今の時代、こんな大胆な痴漢が出回っているのか・・・、と冷静を装ってパニクっている自分がいた
固く目を瞑っていると、上から自分を気遣う声が聞こえた
「大丈夫?」
『へ・・・//////!!!』
見上げた私はあまりの衝撃に声を失った
目の前にいたのは、あの日からずっと見てきた名前も知らない彼だった
顔を真っ赤にし、口をぱくぱくしていると彼はもう一度大丈夫? と聞いてきた
『は・・はい!』
寿「ごめん、すぐに手を引っ込められちゃったから、犯人が誰か分からなかったんだ」
私は彼と話せた嬉しさで、さっきまで痴漢に遭っていたことなど忘れていた
でも、彼のその一言で感触を思い出してしまい、恐怖と安心感で泣き出してしまった
*
『・・ふっ・・・ぅぅっ・・・・・』
彼の胸にしがみつく私の頭を優しく撫でてくれた
寿「怖かったよね。 もう大丈夫だから」
彼は本当に優しい人だと改めて思った
*
『おりがとう、わざわざ送ってくれて』
寿「こんな夜道を一人で帰るのは危ないからね。 じゃ」
と、彼が背中を向けて歩きだした
このまま別れたくないなぁ・・・
せめて名前だけでも!
そう思い、私は彼を引き止めた
『あの! 名前、教えて下さい!』
ゆっくり振り返った彼は、とても穏やかな笑顔をしていた
寿「佐藤寿也だよ。 如月未架さん!」
・・・・・・・・・・へっ??!!!
私はびっくりして目を見開いた
なんで?!! なんで名前知って・・・???
・・・・・待てよ、佐藤寿也・・・どこかで聞いたような・・・・・・・・はっ!!!
*
*
やっぱり・・・
寿「おはよう如月さん! やっと気づいてくれた?」
そう彼は、全国模試で唯一私の上に名前の載っている人物
いつもいつもこの人にだけは負けていた
でも、それが彼だったとは・・・・ι
だけど、どうして私が”如月未架”だってわかったんだろう?
その疑問をそのまま聞いてみた
すると、彼・佐藤君は私の耳元でこそっと囁いた
寿「当たり前だろ? いつも君の事、見ていたんだから。 偶然、定期券が見えても不思議じゃないよ!」
・・は?
待って! いつも見てたって?
いつも見てたのは私で・・
寿「でも、キミ全然気づいてくれなくて・・・
僕の事、気にしてくれてるのにじれったくて」
『え? ・・ええ??』
彼の言っていることが理解できなくてパニクる私
そんな私の頬に温かい手が触れたと思ったら、耳元にテノール声で囁かれた
寿「一目惚れなんだ、キミのこと」
耳まで真っ赤にした私を置き去りに、彼は指定された席へと行ってしまった
「それでは、全国模試を始めます」
突然やって来た春は
驚きと屈辱と
優しい恋を運んでくれた
*END*
16/16ページ