メジャー短編 (調整中)
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今日、リトルの練習に未架ちゃんは来なかった
◇良薬は口に苦し◇
*監督に聞くところによると、未架ちゃんは夏風邪をひいたらしい
そういえば昔から夏に風邪引く子だったなぁ
僕は練習が終わってから、お見舞いに行くことにした
未架ちゃんの家の前に着いたが、いつ来ても家の大きさに圧倒してしまう
こんな大きな家に3人しか住んでないなんて、正直もったいないと思ってしまうほどだ
ピーンポーン
家の呼び鈴を鳴らすが、誰もいないのか応答がない
寿「(未架ちゃんはいるはず・・・だよね・・?)」
二、三度鳴らしてみたものの、反応は同じだった
どうしよう・・と思い、ふいにドアノブに手をかけた時だった
ガチャリとドアの開く音がした
不思議に思いつつも中に入っていった
玄関には未架ちゃんの靴が一足あるだけ
寿「稚紗さんと佑兄はいないのかな・・?」
風邪をひいた子供を一人残して、しかも玄関に鍵もかけずに出掛けるなんて、なんて不用心な・・・
とりあえず未架ちゃんの部屋に足を向けた
*
寿「未架ちゃん 入るよ」
コンコンとノックをして声をかけてみたが、中から返事はなかった
中に入ってみると、そよそよと心地よい風がカーテンを揺らしていた
その隣にあるベットには、少し膨らみを増した布団が敷いてあった
そっとベットに近づき、未架ちゃんの顔を覗き込んだ
『・・・・・・』
赤い顔をして苦しそうに布団にくるまり眠っていた
少しホッとした・・・これでもし、ここに未架ちゃんがいなかったら・・・なんて、あり得ないことを思っていたから
額に手を当て、熱の具合を診た
『・・・・・・ん』
僕の手が冷たかったのか、未架ちゃんがふと目を覚ました
寿「ごめん、起しちゃった?」
『・・・と・・し・・・・・くん・・・?』
虚(うつ)ろな目だったけど、目の前にいるのが僕だってすぐにわかってくれた
赤い顔して・・本トにかわいいんだからv
未架ちゃんに誰もいないのか聞いてみた
佑兄は野球部の合宿、稚紗さんは昼ごはんを用意して仕事に出かけたらしい
寿「じゃぁ、玄関の鍵は稚紗さんのかけ忘れ?」
『それはね・・あたしが頼んだの・・・寿君が来るかも・・しれないからって・・・』
寿「・・・ありがと」
未架ちゃんは僕の気持ち知らないのに、どうして僕のことわかっちゃうんだろうなぁ・・・
でも、それがどことなく嬉しくて未架ちゃんの髪を撫でてあげた
*
寿「そう言えば未架ちゃん、薬は飲んだの?」
『・・・・・の・・飲んだよ!』
思い出したように聞くと、未架ちゃんはプイっと反対方向を向いた
明らかにおかしい・・・
ベットの脇にあるお盆が目に入った
お粥が入っていたであろう器と、水の入ったコップ、開けられていない一錠の薬が置かれていた
一目瞭然、薬を飲んでいないのがもろバレ
寿「ふ~ん・・・じゃあ、これは何かな~未架ちゃん?」
『そ・・それは・・・・ι』
未架ちゃんはウソつくのが下手なんだよな・・・
そんなところがいい所でもあり、かわいい所でもあるんだよなぁ・・
寿「ちゃんと飲まなきゃダメだよ?」
『大丈夫だよ!そんなの飲まなくても治っちゃうから・・・!』
赤い顔して言われても説得力無いよ
寿「飲まないと治りが遅くなるよ? 辛いままだよ? いいの?」
『薬飲むよりいい・・』
こういう時の未架ちゃんはとても頑固だ
*ここまで頑なに拒む理由は、知ってる
未架ちゃんは苦い薬が大の苦手
寿「飲まなきゃ、稚紗さんに怒られちゃうよ!」
『嫌!』
布団に潜り込んでしまった
そんな未架ちゃんに僕はため息をついた
そして、声のトーンを少し下げた
寿「飲まないなら、キャッチボールしてあげないよ」
『っ・・・!』
そう言って、すっと立ち上がろうとした時、僕は未架ちゃんに腕を掴まれた
『・・やだ・・・やだよぉ・・寿君とキャッチボール出来ないの・・・やだよ・・・』
ポロポロと泣きながら訴えてくる未架ちゃんは、まるで寂しがり屋の仔ウサギみたい
寿「ごめんね未架ちゃん、言い過ぎたよ
ほら、泣かないで 熱上がっちゃうから」
落ち着かせた後、薬を渡した
*だが、一向に飲もうとしない未架ちゃん
寿「・・どうしたの?」
『・・これ苦いんだよ?』
寿「薬だもん、仕方がないよ!」
『ほんっっとに苦いんだよ・・・?』
寿「良薬は口に苦しって言うでしょ!」
それでも、渋っている未架ちゃんを見かねて
寿「じゃあ、甘かったら飲めるんだね?」
『・・うん』
僕は、未架ちゃんに目を瞑(つむ)って上を向くように言った
未架ちゃんは、頭に?を飛ばしつつも何の疑いもせずに上を向いた
その小さな唇に自分のを当てた
『・・・ん・・(コクン)』
口移しで薬を飲ませてあげた
未架ちゃんが飲み込んだことを確認すると唇を少し離した
寿「どう? 甘かったでしょ?」
『・・・にが~~い・・・・(:_;)』
寿「あれ・・?」
未架ちゃんにはまだ早かったかな・・・?
・・・・・・残念
*
寿「未架ちゃん舌出して、苦いの取ってあげるから!」
涙目になっている未架ちゃんは、またもや?を浮かべながらも今の苦みから解放されるならと、言われたとおりに舌を出した
あぁ、ダメだよ・・・そんなにホイホイ言うこと聞いちゃ・・・・
未架ちゃんの舌を、自分の舌で舐め取った
規則正しく寝息を立てている未架ちゃん
汗で額に張り付いている前髪を取ってやる
ズルイよ キミは・・・
僕ばかりが こんなに好きみたいで
あんなことしても キミはそのことを何も言わない
僕の心臓は 壊れそうなぐらいに波を打っていたのに
*
寿「・・・どうしよう・・・・最近、見境なくなってきた・・・//////」
かわいい寝顔のキミの隣で 僕はひとり 苦悩していた
*END*
-おまけー
稚『ありがとな寿也!』
寿「あ、いえ」
と、稚紗さんが帰って来たので僕も帰ろうとした
稚『ところで未架、ちゃんと薬飲んだんだな?』
寿「はい、飲みましたよ?」
稚『へぇ~、あの苦い薬を・・・ねぇ~・・・』
寿「は・・・はい・・・ιιιι」
顔は笑顔、声は低音 まったく矛盾している
稚『どんな魔法使ったんだ~?薬嫌いの未架に飲ませるなんてなぁ 寿也ぁ?』
寿「・・・・・(ガタガタ・・)」
その後、寿也がどんな目にあったかは誰も知らない
*おわり*