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君の邪魔はしたくない
だけど それ以上に 君が大切だから
第28話[一件落着?]
*
寒かった夢島も3ヶ月も経つと、鶯(ウグイス)の鳴き声が響き渡るほど気温は温かくなり、絶好の野球日和だ
毎日が厳しい練習
だけど今は、疲れのとれるお風呂場
湯舟にはぽつんと一人、みだけが浮かんでいた
こんなに広いお風呂を独り占めできるとは、何だか他の部員に悪い気もするが、皆の入った残り湯に入っているので、そこはお相子ということで♪
『う~ん! さっぱりしたぁ~』
上に伸びながら風呂場を後にしたみ
すると向こう側からお風呂へ入るのか、手伝いで来ている有里が歩いてくるのが見えた
『お先に』
有『うまく取り入ったわね。 天宮さん』
すれ違い際に聞こえた言葉に、その場に立ち止まり振り返った
有里の言ったことに疑問を唱えた。 何のことだかみにはわからなかったからだ
有『ふふっ、惚けないでよ。 あなた寿也君を追ってきたんでしょ?
まさかとは思ったけど、本当に彼目当てだったなんてね~』
『前にも言いましたよね? 私は野球をするために』
有『そ・れ・はぁー、ここに来るための口実♪
でも上も上よね~・・こんな在り来りな理由に同情しちゃって、隠れた不純な動機に気づかないなんて
まぁ、ここまでする貴女も相当おかしいけどね
・・とにかく、これ以上寿也君に近づかないで頂戴ね』
言いたい事だけ言って、有里は再び足を進めた
どうして・・・
どうしてみんな 私の邪魔をするの・・
手を握りしめ下唇を噛み締めたみは、歩み始めた有里の足を再び止めた
『・・女の子が野球をやったら、おかしいですか?』
有『え?』
『私が野球をやることが、そんなにもおかしなことですか?!』
少々声を荒げて問い掛けるみ
だが有里はその姿に、さも呆れた顔で答えた
有『悪まで正統を貫きたいわけね・・諦めの悪い子
そんなにやりたいならソフトをやればいいのよ! 野球と同じなんだから野球にこだわる必要はないでしょ?
それに野球は男のスポーツじゃない。 好き好んでこんな汗臭いスポーツをやりたがる子なんていやしないわ』
佑「夏村」
有『野球部のマネージャーをやっていた私が言うんだもの! マネージャーなんて所詮、男目当てでやるようなものよ』
佑「本当に夏村は野球が好きだな」
『うん! おもしろいもんv』
佑「そうか! でも、どんな形であっても夏村が野球に携わっているんなら、兄ちゃんは嬉しいよ!」
『ほんと!?』
佑「ああ」
私が野球をやっている理由
寿と吾郎と野球がしたい
それは勿論あった
・・・でも
ホントウハ・・
『アンタに・・何がわかるっていうの?!』
私の中の何かが、プツンと切れた気がした
*
それからは、あまり覚えていない
気づいた時には、私の振り上げた右手を寿が掴んでいたということ
目の前には、目に少し涙を浮かべて、目を見開いていた柴崎さんがいたということ
彼女の着替えと洗面具が床に散らばっていたということ
そして耳元には”落ち着いて”という、優しい囁きがあったこと
何が起こったのか状況を把握しようとしていると、彼女は今がチャンスとばかりに口を開き出した
有『み・・見たでしょ! 寿也君! これがこの子の本性なのよ!』
少し震えた声で必死に叫ぶ有里に、寿也は目もくれず、みの背中を押してその場を去ろうとしていた
有『ちょ、ちょっと待ってよ! その子、男に扮してここに入り込んだのよ! 貴方を騙してたのよ!』
寿「知ってるよ」
有『なっ!!』
寿「・・行こう」
そう言って、今だ状況を飲み込めていないみを連れ足を進めた
自分に目もくれない寿也に苛立ちが沸き上がった
そしてそれは、みへの醜いほどの嫉妬と嫉みへと変わっていった
有『・・何でその子ばかり構うのよ・・・被害を受けたのはこっちなのよ!!』
叫ぶ有里に寿也の足は再び歩みを止めた
だが、振り返った寿也の表情は、何の感情も篭っていない無機質な冷たい視線だった
寿「これ以上、彼女を侮辱するのであれば、俺は本気で先輩の事を嫌いになりますよ」
その場にヘタリ込んでしまった有里を背に、その場を離れて行った
・・・・何よ・・
ふ・・ふふっ・・・
このままじゃ・・・
このままじゃ、済まさないっ!!
ぎりっと握り締められた拳は、爪が食い込み真っ白になっていた
夜になり、少し肌寒くなった廊下には、皆寝支度をしているのか人っ子一人いなかった
その中、夏村の手を引き黙ったまま前を歩いて行く寿也
何故だか、そんな彼の背中が怖く感じた
怒っている
当たり前なのだが、今の寿也は何か違う
黙ったままというのが、さらに恐さを増す
それに気になるのは、さっきの返答
みが女の子だと知っていたこと
それも未架夏村だと確信していた
いつ? どこで気づいたのか?
あまりの沈黙に耐え切れなくなったのか、夏村から口を開いた
『寿・・・どうして、わかったの・・?』
その質問に寿也は歩を止めた
後ろに付いて歩いていた夏村も、必然的に足が止まる
寿「わかるよ・・幼なじみなんだから」
『でも、吾郎は・・』
吾郎は少なくとも、気づいていないはず
なのに・・
寿「はー・・、僕がどれだけ君の隣に居たと思ってるんだよ
少なくとも、吾郎君の倍は君の傍にいたんだ・・気づくよ」
今だに背を向けたままの寿也の言葉は、少しトゲトゲしかった
もしかして、この事を監督達に話して私を二軍寮に帰すんじゃ・・!
そんなことが頭を過ぎると、夏村は直ぐさま口を開いた
『寿お願い! この事は監督達には黙っててほしいの!
私はもっとここで野球をしたい! これが最後のチャンスだから! お願い!!』
目を瞑ってめいっぱい頭を下げた
*
寿がわかってくれるかどうかはわからない
だけど、ここでやめるわけには・・・ううん、やめたくない!
寿と吾郎と野球が出来るのは今だけだから
すると頭上から、もう一度溜息が聞こえた
寿「僕がそんなことするとでも思ってるの?」
『へ?』
ぱっと顔を上げると、にっこり笑った寿也と目が合った
『黙ってて・・くれるの・・・?』
寿「夏村が野球するのを邪魔する訳無いだろ」
『で、でも・・怒ってたんじゃ』
寿「うん。 怒ってるよ(^-^)」
あぁ・・なんだろ
こんなに満面なスマイルなのに、物凄く怖い感じがするのは・・・
なんか、目・・合わせられないなぁ・・・
夏村が恐る恐る目を逸らしていくと、その心情を読みとったのか寿也の黒オーラが和らいだ
寿「どうして僕にも言わなかったの?」
『それは・・・寿に言ったら反対されると思って・・・』
寿「当たり前だろ? こんな男だらけの所に、夏村一人を放り込むなんて出来る訳無いよ」
ほらね
そんなこと寿が良いって言う訳無いじゃん
そりゃ、私のこと心配してくれているっていうのはわかるけど
でも、私は・・・
寿「ま、これは悪まで夏村が一人の場合・・だけどね」
『??』
その台詞に夏村の頭上には?が無数浮かんでいた
ぽかんとする夏村の髪を寿也は優しく撫でた
寿「ここには、僕も吾郎君もいるんだから」
『ぁ・・』
寿「言ってくれれば、それなりに対処が出来たのに
僕って、そんなに頼りない?」
頬を包む温かい手
少し悲しそうな表情
こんなにも心配をかけていたと実感した
でも、なんだかそれが無償に嬉しくも思えた
夏村は俯きながら首を横に振った
良かった・・ と言うと、寿也はそのまま夏村自身を包み込むように抱きしめた
キミがこんなにも近くに居てくれて本当に良かった
でも笑っちゃうよね
容姿を変えて偽っていても、僕はやっぱりキミに惹かれちゃうなんて
本ト・・・困ったな
緩みっぱなしの寿也の顔とは裏腹に、ぎゅうぅぅ~っと腕に力を入れると夏村が声を出した
『と、寿・・・誰か来たらどーするの』
少々焦っている夏村にかわいいと思いつつも、もう少し照れてほしかったなぁ・・なんて願望もあったりして
多くを望むと、必ず邪魔が入るもの
後ろの方から他の部員の話し声が聞こえてくる
寿也は心の中で舌打ちをしながらも、このまま見られるわけにもいかず、夏村の手を引き、通路に身を隠した
「おい、今誰か居なかったか?」
「はぁ? 何言ってんだよ。 それより早く寝ようぜ、じゃねぇと明日に響くぞ」
「そうだな」
ギシギシと軋む廊下を足早に部屋へと向かう足音
*
暫くするとそれも無くなり、廊下は再び静まり返る
その脇の通路には、重なる二つの影
夏村は目を丸くして、その場から動けずにいた
え~と・・・これは・・どういうこと・・・でしょうか・・・・・?
隠れるだけのはずだったのに、何故にこんな事になってるのかな・・・寿也君?
すると、ちゅっとリップ音を立てながら寿也の唇が少し離れた
だが、ちょっと動けばまた触れそうな距離に、夏村の体は完全に固まっていた
熱を持った瞳が夏村を捕らえて離さない
寿「これは、僕に心配をかけた罰だよ」
頬を赤く染めて見つめてくる寿は、暫くの間、離してはくれなかった
はっきり言って、そんな顔で見つめないでほしい
心臓がうるさくて仕方がないよ・・//
寿って大人美てるくせに、こうやってたまに子供みたいになる
もう・・・私にどうしろって言うのよ・・・・
寿のバカ・・
↓おまけ
『ねぇ、いつから気づいてたの?』
寿「変だなって思ったのは、手紙を書いてた時だな」
『手紙?』
寿「うん、あの時、夏村はおじいちゃんって言ったよね? 普通、真っ先に思い浮かぶのは親だからね」
『あ!』
寿「僕の家庭のことを知らないと、まずおじいちゃんは出てこないよ!」
『なるほど・・』
むしろ、君が夏村じゃないと困るから・・・
だって、変装していて気づかなかったとはいえ男の子に惹かれてたなんて・・・・
・・あまり考えたくないよ
それに
夏村が鈍感で本当に良かった・・・
・END・
あとがき
夢島編も次で完結予定です☆
なかなか長かったなぁ・・(-.-;)
寿君のホモ入りも、危機一髪で免れました!
良かったね!寿~(T_T)
ですが、次の話しはヒロインちゃん危うし!! になるカモ(>_<)
では、この辺で☆
*09.2.26