想い出のカケラ (調整中)
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夕暮れ時の森の中
不気味にそびえ立つ養成所
通称 ”夢島”
第25話 [前兆]
*船を使い、山道を何時間も歩かされた吾朗たちの目の前には、今時流行りもしない木造校舎に手を加えただけの寮が佇(たたず)んでいた
お世辞にも寮と呼べる代物ではない
乾「ここが貴様等の生活の中心となる寮だ」
乾が案内をするために部員たちを寮へと誘導する
歩くたびに、ギシギシと今にも床が抜け落ちそうな嫌な音がする
『(・・・なんか教官がどうのこうのより、まずこの寮がありえない・・・・ιι)』
ここで半年間過ごすと思うと、ゲッソリしそうになる未架
少し後悔したかも・・・
寮は、一階と二階にそれぞれ6部屋あり合計で12部屋ある
教官である乾が、あらかじめ班分けをされた紙を読み上げ、呼ばれた者は指定された部屋へ向って行った
*冷たい風が吹く廊下には、先ほどまでびっしりといた部員の姿は無く、人っ子一人見当たらない
そんな中、一人だけぽつんと寒い廊下に立っていた
『(寒いんですケド・・・ι)』
あまりの寒さに思わずクシャミをしてしまう
そんな未架を厳しい目で睨んでいる乾と周防
そのまま2人に連れられ監督室へと場所を移した
自分一人だけ残された理由はだいたい想像がつく
周「お前のことは、二軍監督から聞いている
マネージャーであるお前が、なぜ夢島組に参加しているのか・・」
やはり、たかがマネージャーが何のためにこんな辺境の地まで来るのか・・男装までして何の得があるのか・・・? ここにいること自体が不可思議なこと
参加するのなら、それなりの理由が必要・・・そう聞かれると思った未架は口を開く寸前だった
周「そんなことどーでもいい」
『えっ!?』
推測が外れ、少々戸惑う未架を周防はサングラス越しに睨みつけた
周「やるからには半端は許さん! そこで条件を出す」
『・・・条件?』
突然のことに動揺を隠せないでいた未架
それもそのはず、二軍監督である静香からはそんなこと一言も聞かされていなかったからだ
周防は机に肘をつき、顔の前で手を組んだ
周「一週間、ここでの訓練に耐え抜き付いて来られたら、半年後まで面倒を見てやる
それが出来なかった場合は足手まといだ
一週間後の帰りのフェリーで帰ってもらう・・・強制的にな」
『!!』
*
周「・・まぁ特別に今やめるのであれば、すぐにでも帰してやってもいいがなぁ?」
お前に耐えられるわけがない、邪魔だ、そう言いたげに笑う周防に未架は怒りが込み上げて来て、拳をギリッと握りしめた
『残念ながら、そのご期待には添えられそうもありません』
乾「なに?」
『私は・・・いや俺は、そんな生半可な気持ちでここに来たわけじゃない!!
それに、そんな弱い意志ならこんな所まで来ませんよ!』
強気に言い切った未架は、話がそれだけなら失礼します! と言って周防たちに背を向けた
周「待て」
部屋から出ようとする未架を止めた
不審に思い振り向く
周「もう一つ条件だ」
パタリと閉まるドアを背に、はぁー・・と溜め息を漏らす未架
まさか、あんなことを条件に出してくるなんて・・・
意表を突かれ、脱力感が込み上げてくる
その条件とは・・・
ここ夢島にいる間は、他の部員たちに女であることを気付かれないこと
*バレた場合は即刻、二軍へ帰ってもらうということだった
どの道、ここに居続けるには女であることを隠し続ける必要がある
『す~~~~・・・・よしっ!』
自分の頬をぺしっと叩き、気持ちを切り替えた
ひとまず要注意は幼なじみの2人、吾朗と寿也だろう
その2人に注意さえしていれば、そうそうバレることはないだろう
そう安易に考えていた夏村は今後、幼なじみと言う関係がこれほど恐ろしい存在だということを思い知らされることとなるだろう
暗くて長い廊下の一室の前に未架は立っていた
『(第7班・・・ここだな)』
すぅ・・はぁー・・と深呼吸をして心臓を落ち着かせる
妙に緊張をしていたからだ
『(まぁ、これだけ班が分かれていれば寿や吾朗とは同じ部屋になることは無い・・・よねι? 一緒だと困るなぁ・・・・ι)』
特に寿は・・・と、せっかく気合を入れたのに溜め息を吐いてしまった
ぶんぶんと首を横に振って、気合を入れ直し部屋の取っ手に手を掛けた
ガラガラという音と共に部屋の中の視線が一斉に未架に集まった
*その視線に臆することなく笑顔を見せ自己紹介をした
『俺、天宮未架 これから半年間よろしくな!』
無邪気に笑う未架に、部員たちは少し驚くものの、よろしくと挨拶をした
その中に、未架に近づいてくる男が2人
一人は坂口、もう一人は木村と名乗り、未架をじっくり上から下まで舐め回すように見た
坂「へぇ~、よくこんなチビが海堂なんかに入れたよなぁ?」
『野球は背丈でやるもんじゃないだろ』
少しムッとした未架は無意識に反論していた
そんな未架を見て2人は顔を見合せ大笑いした
木「だっはっはっはは!! そりゃそうだぁ!」
坂「だがな・・」
そう言って坂口は未架の顎を掴み上げた
思いもよらない行動に反応が出来ず、もろに掴まれてしまった
『うっ・・』
坂「こんな女見てぇな奴がやるスポーツじゃねぇんだよ」
未架はキッと坂口を睨みつけた
それは苦しさからではなく、悔しさからだった
私だって・・好きで女に生まれたわけじゃない・・・
夏村は今までにもそんな事を思ったことが何回かあった
それは、すべて野球のため
女だからと言うだけで野球が出来ない
これほど夏村にとって悔しいことは無い
そう思った時だった
誰かが坂口の腕を掴んだ
*
寿「お取り込み中悪いんだけど、早くしないと夕飯食べ損ねるよ?」
坂口にストップを掛けたのは、目の錯覚であってほしいが、紛れもなく寿也だった
坂口は、ちっと舌打ちをし木村と一緒に部屋を出て行った
2人が出て行った後、この部屋には寿也と未架の2人だけが残った
大丈夫? と声をかける寿也に未架はすぐには返事をすることが出来なかった
これだけ部員がいるのに、どうして・・よりにもよって寿と同じ部屋になっちゃうのよ~~!!
・・・やっぱり、こういう時の私の勘って当たっちゃうんだね・・・(:_;)
寿也が不審がる前に部屋に荷物を置き、寿也と共に食堂へ向った
『(こうなったら・・やるっきゃない!!)』
夢島(ここ)にいるために、寿を騙し通すしかない!!
そう心に強く誓った夏村であった
食堂前に着くと、何やら食堂が騒がしい
寿也と未架は顔を見合せ食堂を覗いた
*すると、男共の群れが2人の目に飛び込んできた
それと同時に、怒声も聞こえてきた
食『おら! あんたたち邪魔だよ!! 受け取ったんならさっさと席に着きな!!
それとも、没収してほしいかい! んん!?』
よく言えば元気がいい、悪く言えば超怖いオバちゃんがカウンターに群がる男共を蹴散らしていた
2人は頭に?を浮かべていた
と言うのも部員たちからは”名前は?”とか”年は?”とか”めっちゃカワイイやんけv”などというセリフばかり
カウンターに近づいてみると、そこには16・7くらいのウェーブのかかった可愛い女の子が皆に食事を配っていた
寿「『(なるほど・・)』」
それを見た2人は大いに納得をした
いくらなんでも、あのオバちゃんに・・・ではなかったからだ
と、その時、女の子がこっちを向いた途端立ち上がった
女『寿也君!!』
喜びの表情を浮かべ、カウンターから出てきた女の子は思いきり寿也に抱きついた
当然、寿也は訳が分からず多少パニクっていた
女『久しぶり! やっぱり海堂に来たのね寿也君!!』
そう言って寿也に、ずいっと顔を近づける
反射的に後ろに退いてしまう寿也は、久しぶりと言う言葉に記憶の中を探っていた
そして、その糸を掴んだ
*
寿「有里・・先輩?」
有『あったりー(^_^)』
そんな2人を間近で見ていた未架こと夏村は、目を見開いて固まっていた
誰・・・?
無意識にもその言葉が出ずにはいられなかった
自分の知らない女の子
夏村の心臓は大きく波打っていた
他のことを考えることが出来ずに、ただ2人を見ていることしかできない
それは これから起こる何かの前兆だと 気付きもしなかった
*END*
◇あとがき◆
長らくお待たせいたしました!
皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました・・・(..)
さてさて、本編の方は何やら雲行きが怪しくなってきちゃいました
新たに登場した女の子”有里”と寿也の関係は??
今後、夢島編での鍵となるキャラです☆
それではこの辺で失礼いたします☆
*08.4.17