想い出のカケラ (調整中)
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誰だって 受験勉強なんか好きじゃない
でも その向こうに行きたい道がある
そのためなら 嫌なことでも 頑張れる
・・・そう信じてる
第22話 [何のため]
*セレクションも無事に終わり、海堂高校に受かるべく本格的に寿也と夏村の家庭教師が始まった
学校が終わった後、2人は吾朗の家へ向った
『じゃあ、まず簡単な漢字の読み書き辺りからやってこっか!』
吾朗は自慢げに、国語は結構得意だと鼻を高くした
以外にも本や新聞を読んでいるらしい。ま、さしずめ漫画やスポーツ新聞だろう・・・
カリカリと得意と言うだけあってペンの進みが良い
寿也は吾朗の隣に座り本に目を通した。夏村は吾朗のベットに座り筋トレグッズをいじっていた
吾「っしゃ! できた!!」
寿「早いね」
と、勢いよく解答用紙を寿也に差出した
解答用紙に目を通した寿也に吾朗は面白いだろ! と一言
ふざけた回答に寿也の顔にはドス黒いオーラが・・・
それを悟った吾朗はすぐに謝罪をした
その後も、国語を夏村、数学を寿也が教えていった
寿「じゃあ、また明日来るから今夜はさっき言ったとこ、ちゃんとやっとかなきゃダメだよ!」
吾「わかった わかった」
『じゃあね吾朗! おやすみ(^^)/』
吾「ああ」
寿也の自転車の後ろに乗り、手を振る夏村に吾朗はヒラヒラと手を振った
2人が見えなくなってから家には戻らずその足で吾朗は1人バッティングセンターに向かった
そしてバットを振る吾朗の表情はいつもの生き生きとした表情ではなかった
*
小「え!? 海堂はあきらめる!?」
体育の時間、小森の驚きの声が上がった
それもそのはず。吾朗は海堂を止め、担任の先生にリストアップしてもらった体育推薦校へ行くと言ったからだ
せっかく受かったセレクションも入学テストに合格するだけだというのに、あっけなく捨ててしまうなんて・・
あれほど行きたがっていた海堂なのにどうして? 小森は吾朗に問い正した。これまでの過程を目にしてきた小森には納得が出来なかった
吾「・・・今更・・勉強なんて無理なんだよ・・・」
ただ、その一言だった
太陽が姿を隠しはじめた頃、吾朗の家には呼び鈴を鳴らす寿也の姿があった。家の中からはいつも綺麗な吾朗の母・桃子が出てきた
今日もお邪魔します。と、あいさつをしたが桃子は申し訳なさそうな顔をして吾朗がまだ帰ってきていないことを伝えた
もうすぐ帰ってくるだろうと、寿也を上がらせ少し待ってもらうことにした
梓『じゃーね夏村!』
『うん! 明日ね』
学校での用事があった夏村は一足遅れて吾朗の家に向かった
かなり日の暮れてしまった中、河原の土手に寂しく座り込んでいる吾朗を見つけた
『吾朗?』
今は寿也とまだ勉強している時間のはず・・なぜこんな所にいるのか・・・
どうしたのか声をかけてみるが別にと返事をするだけ。制服姿のところを見ると学校帰り、家にはまだ帰っていないみたいだ
*
『なんでもないんなら早く帰らないと寿の雷が落ちるぞ!!
私も今から行くとこだから一緒に・・』
吾「無理だよ・・・」
『え・・?』
吾「・・・・昨日お前らに教えてもらったけど、何一つわかんねぇ・・・・こればっかりはオレのおつむじゃどーにもなんねぇ!!」
吾朗がこんな弱音を吐くなんて思ってもみなかった
だが、夏村はそんな吾朗を見ていて腹が立った
『・・・だから何? 一日勉強して何がわかるって言うの? まだ何もしていないのに海堂まで棒に振る気!?
まだ時間はあるから・・』
吾「やったってムダだろ・・・
今までろくに授業も聞いてないオレが、あと3ヶ月で何が身につくってんだよ!」
吾朗はすでにあきらめモードに入っていた
今さら勉強しても自分が学力テストに受かるわけがないと決めつけていた
吾「・・・好きなことなら、どんな苦労してもがんばれっけど・・・・・こればっかは無理なんだよ・・」
2人の間に暫(しば)しの沈黙が走った
冷たくなってきた北風が2人の身体にぶつかっていく
『・・・やる前から・・あきらめないでよ・・・・
これじゃぁ、私たちバカみたいじゃない・・・受かる気もない奴に一生懸命教えて・・・・・・・バカみたい・・・』
夏村の言葉にも何も言わない吾朗。夏村は唇を噛みしめた
悔しくて、やるせなくて・・・そんな気持ちでいっぱいだった。まさかこんなことになるなんて思ってもいなかった
それでも、夏村は何も言わない吾朗に言葉をつむいだ
『海堂には寿がいて、手強いライバルがいて・・・吾朗が望んでる野球があるんじゃないの? だからセレクションを受けたんじゃなかったの?
・・・・・・あんたの野球ってそんなもんだったの・・・』
小さくなった声に不審を抱き吾朗は後ろを振り向いた
*吾朗はビックリして立ち上がった
そこにはいつもの強気な夏村はなく、その表情は今にも涙が出てきてしまいそうなくらい悲しい顔だった
吾「・・・夏村」
『私は・・・・また3人で野球が出来るって・・思ったのに・・・・・』
吾朗が夏村の頬に触れようとした時
『この・・・・根性無し!!』
と言い放ち走っていってしまった
そして数メートル先にいる人物に夏村は抱きついた
その人物を見て吾朗は目を見開いた
吾「・・・寿也」
そこにいたのは、ちょうど吾朗の家から帰ってきていた寿也だった
寿也は自分の胸にしがみついている夏村をなだめるように左手で頭を撫でてた
寿「夏村、楽しみにしてたんだ・・僕たちとまた野球が出来ることを・・・・ずっと」
吾朗に目を向けず言った言葉は、吾朗の胸に深く刺さった
やりきれない顔をする吾朗に寿也は視線を向けた
寿「吾朗君、僕も夏村も信じてるから!」
吾「!」
寿「吾朗君なら絶対合格するって信じてるから!」
幼なじみ2人の励ましを受け吾朗は心機一転し、海堂高校に受かるべく勉強を始めた
そして、アクシデントはあったものの吾朗・寿也はもちろん、セレクション組全員、海堂高校合格を果たした
*試験結果に喜びの声もあれば嘆きの声もある。中には迷いの声も・・・
本屋の一角でパラパラと本を見ている清水の姿があった。何やら本はめくっているだけで、見ているというわけではなさそうだ
「やめんなよソフト・・・」
頭の中で響く言葉
先ほど吾朗に言われ言葉が胸にひどく刺さってくる
あたしだってソフト続けたいよ
だけど、それで聖秀に行ったら・・・
本を持っている手に力が入る
とその時だった。後ろから可愛らしい声が聞こえたのは
『あれ? もしかして・・清水さん?』
清『・・え?』
清水が振り返るとそこには見覚えのあるかわいい女の子が立っていた
あっ! と思い出したかのように清水は声を上げた
そこにいたのは、リトル時代戦った横浜リトルにいた夏村だった
北風の寒い中、焼きイモを頬張りながら公園のベンチに2人で座っていた
先に口を開いたのは夏村だった
『清水さんは高校どこに行くの?』
清『えっ!』
単刀直入に痛いところを突いてくる夏村にまだ迷ってるんだ~・・と笑いながら言った。そして今度は逆に清水が同じ質問をした
*
『私は海堂だよ!』
清『・・え・・・海堂・・?』
『うん、野球部のマネージャーにスカウトされて・・(^_^;)』
清水は驚きを隠せなかった
海堂は自分も合格している。だけどそれだけ・・ソフト部もなければ野球部に入れるわけでもない
だけど、あいつの近くにはいられる・・・
清『未架さんはソフトはやらないの?
あれだけ上手いのに』
そう聞いたのはなんでだろう・・・
夏村は焼きイモを一口、口に含んだ
『確かにやりたいなぁ~って思う時もあるよ。見ているだけっているのはつまんないかも
でも、一緒に練習して一緒に笑って・・・たとえずっと応援だとしてもみんなと同じ土俵にいる。一緒に戦ってるって思えるの!
私はみんなのサポート役だけど、それでも一緒に悔んだり喜んだり・・そんなとき思うんだ
私はやっぱり野球が好き!』
夏村と別れてトボトボと家路へつく清水
自分の前に伸びる影はどことなく寂しい感じだ
あの子は本当に野球が好きだから・・海堂に行くんだ
『だから、ソフトじゃなくて野球部にいるのかもね!』
「ソフトやってねぇお前と海堂で顔合わせてもつまらねぇよ」
先ほど話をしていた夏村、それから吾朗の言葉が頭を巡る
みんな自分のやりたいこと好きなことのために進んでいるんだ
清水の足は自然と止まっていた
わかっていないのは、あたしじゃない
あたしの好きなこと・・・あたしは ソフトが好き!!
自分の進む道、好きなことのために清水は聖秀へ行くことを決意した
*夏村と清水が焼きイモを食べていた頃、とあるマクドナルドでは久しい顔ぶれが並んでいた
周りのお客さんは一度は振り返るほど目立つ2人組
美男美女のカップルと言ってもよいほどの2人。当の本人たちはまったく気が付いていない
涼『本ト久しぶりよね寿也君!』
寿「そうだね! 声かけられた時はビックリしちゃったよ」
と、たわいない話をしながら高校合格の話もしていた。もちろん吾朗や夏村が行くことも伝えた
涼子は、ふと気になっていることを聞いてみた
涼『ねぇ寿也君! 夏村ちゃんとはどーなってるの?
もう付き合ってるとかv』
寿「ぶっ! な・・・何言ってるの//!!」
涼子の突然の質問に飲んでいたアイスティーを危うく吹くところだった・・・前にも同じようなことが・・・・ι
え~~っとつまらなさそうにフテる涼子だが、寿也の赤い顔を見てまだイジメがいがあるなと感じ取った
涼『じゃあ、告白しちゃいなよ!』
寿「えッ///!!」
涼『寿也君なら大丈夫よV 昔からあれだけ仲がいいもの!』
寿也は涼子から目線を少し下した。その寿也の姿は涼子の瞳には悲しげに映った
何かマズイことでも言ってしまったのだろうかと心配する涼子に寿也は優しく笑いかけた
寿「誓ったから」
涼『誓った?』
夏村の隣には何があっても僕がいる・・・見守る
稚紗と佑に約束し誓ったことだ
涼子はフ~ンと言って、フライドポテトを一つ二つと口に運んだ
涼『かっこいいね
でも寿也君はそれでいいの?』
寿「・・・え?」
涼『見守るだけで満足?』
その問いかけに寿也の胸は真意が揺らぐようにドキッと高鳴った
*それでいいと思っていたから・・・それで少しでも夏村が笑ってくれれば・・・・そう思っていた寿也は俯いてしまった
涼子はそんな寿也の心の皮を剥いでいった。素直になってほしかったから
密かに2人の恋を応援していた涼子にとって、こんな展開は面白くなかった・・・というのが本音だ
涼『もし、夏村ちゃんに彼氏が出来たとして寿也君がそばにいるのはおかしいよね~
彼氏はいい気がしないし、ぶっちゃけ邪魔よね・・・』
寿「・・・涼子ちゃん・・ι」
何もそこまで言わなくても・・・と言う寿也にガンガン攻める涼子
恋話で女の子に勝てるはずがない
涼『それに見守るにしても、今の幼なじみの関係じゃないとダメってことないでしょ! それこそずっとそばにいるのなら、その関係からは抜け出さないと!』
涼子ちゃんの言っていたことは正しいんだと思う
もしかしたら僕はただ逃げていただけだったのかもしれない
断られるのが怖くて”見守る”という立場を利用していたのかな・・・
いや・・・・逃げていたのは事実だ・・でも見守りたいって想いにウソはない
もうリトル(あの時)とは違う
夏村も色恋沙汰ぐらいわかっているだろう
小さい頃から ずっと想っていた人
僕はこんなに一途だったんだ・・・と感心をしてしまうくらい
夏村は 僕のこと どう想っているんだろう・・・?
*END*
*
◆あとがき◇
間が空いてしまいました・・ι
みなさん続々と決まっていく進路! そんな中決まっていない寿君の心
さぁ、寿君は涼子ちゃんに質問攻めにあって、この後どうするのでしょうか??
ヒロインに告白しちゃうのか~?(ドキドキ・・///)
続きは次回で(>_<)☆
*07.11.15