好きと嫌いの間
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
朝の練習が終わり、昼休憩に入った。
それぞれが食堂へ向かう中、日向を呼ぶ声があった。
「北川!」
『?』
「覚えてねぇかな?
中学の時、バッティングセンターで会ったんだけど」
『…あー…あぁっ!
はいはいはい、覚えてるよ』
「いや、お前。 絶対覚えてねぇだろ」
少し間を開け、思い出したような声を上げるが、視線だけは泳いでいた。
すると日向は口を尖らせ、御幸のゴーグルを外した。
『覚えてるよ
妙に自信に満ちたこの顔と、黒縁眼鏡が特徴のみゆきちゃん』
どや顔の日向に、なんだか嬉しさが込み上げてくる。 覚えていてくれたことが、こんなにも嬉しいことだとは、思ってもみなかった。
それは日向も同じで、たった2ヶ月足らず。 しかも、バッティングセンターでしか会わなかった相手だというのに、不思議なものだ。
話しながら食堂へ向かっていると、突然御幸が前に跳んだ。
「ヒャハハハ!
おい御幸、早速ナンパか?」
「いってーな…、倉持」
現れたのは、同じく一年の倉持。
御幸のケツに、見事なタイキックをかました。
蹴られたお尻をさする御幸。
「俺は、倉持洋一。 よろしくな!」
『やけに足が速かった人だね』
「なんだ、見てたのかよ」
『たまたま目に入っただけ』
「…」
カチンときた倉持は、日向の肩を掴みかかった。
「おい
そりゃあ、俺をバカにしてんのか?」
それには日向も驚き、目を丸くしていた。
やばいと思った御幸は、倉持を止めようとする。
『褒めたつもりだけど?』
「はぁ?」
『私の目に留まったってことは、たぶん監督の目にも留まってるんじゃない?
あれだけダッシュ力があれば、一番バッターに起用したいくらい
その足、いい武器になると思うよ』
「……」
日向の言葉に面食らった倉持は、掴んでいた手をゆっくりと離した。
ははっ
性格は変わってねぇな
さすがの倉持も、ああ言われたら突っかかる気も失せるだろ
なんだか恥ずかしくなったのか、ぽりぽりと頬をかいた。
「あー… そうか……」
「何照れてんだよ」
「ああ!? 照れてねーよ!」
「はっはっはっ」
『まぁ、頑張りたまえ』
「てめぇら、ムカつくなー! おい!」
「北川、食堂こっち」
倉持とは、こんな感じで仲良くなった。
―食堂―
腹を空かせた部員達が、ガツガツ米をたいらげていく。
掲げられた教訓、もとい食訓は
1人 3杯は必ず食べろ!
というものだった。
体を作るには、まず食事から!
理にはかなっているが、正直3杯はきついだろう。
食堂へ来た3人も、トレイを持ち椅子に座った。
隣同士に座る2人を見て、倉持がある疑問を投げかけた。
「そういやぁ、お前らって知り合いなわけ?」
「『?』」
「初めてにしちゃあ、仲良さげだからよ」
「あぁ。 こいつ、俺の先生なのよ」
「は?」
何言ってんだ、こいつ…なんていう顔をするのも無理はない。
御幸は、中学の時にバッティングセンターで日向に出会ったことを話した。
それを先に言えよ、と突っ込まれたのは言うまでもない。
「なるほどな」
「そういえば、北川」
食べ終わり箸を置くと、隣にいる日向の髪を何気に触る御幸。
「髪切ったんだな
前は、腰ぐらいあったのに」
『野球やるのに邪魔だったから』
毛先をいじられているものの、気にする様子もなく、最後の味噌汁を呑気に飲んでいた。
それを目の前で見ていた倉持は、あまりの自然で異常な光景に疑問を持たないわけがない。
おいおい
知り合いっつっても、いきなり女の髪触るか?
それに、北川は北川で、何の反応もねぇ
怒るか照れるかするだろうよ、フツー
すっげ~ 天然(ナチュラル)にイチャついてやがる
…いや、御幸はちげぇな
―――
――
午後の練習は、マネージャーの仕事。
高島に連れられて、ベンチへ向かった。
「藤原さん。 この子にマネージャーの仕事を教えてあげて」
「はい」
よろしくと高島は戻って行った。
黒の長髪に、女子にしては背が高い。
見た感じ、クールな美人さんだ。
「藤原貴子よ。 よろしくね、北川さん」
『よ…よろしく、お願いします』
握手をする日向は、さっきとは打って変わり、そわそわしている。
変に思った貴子は、どうしたのか聞いてみた。
『す、すみません
女子と話すの、久しぶりで…
それに…藤原先輩、美人だし…』
俯き顔で話す日向に、貴子は笑い声を上げた。
そんな貴子に、焦る日向。
笑う要素は、どこにもなかったはずだ。
「あはは…、ごめんね
第一印象のあなたと全然違うから」
『??』
いわゆるギャップ萌えというやつだ。
「おもしろい! 気に入ったわ」
『藤原先輩…?』
「貴子でいいわよ」
『貴子…先輩』
「じゃ、仕事教えるわね」
『はい』
はっきり言って 女子は苦手だ
嫉妬深く ねちっこい
だから引っ越し先の中学では 1人も友達は作らなかった
…違う 作れなかったんだ
けど
貴子先輩なら…
そう思いながら、今日一日が終わっていった。
今日は
一日大変だった
中でも、まさか御幸一也にまた出会うなんて
あの頃の私を知る奴
でも、あいつは私の事、知っているようで知らない
何も 知らない
よかった
私を知る人が いなくて
いるわけないか
あの野球部に
名門に入れるだけ野球がうまかった奴なんて いない
アイツを 除いては……
・END・
31/3/21
◇ヒロインの入部時期の話でした。 同時に、御幸との再会の話でもありました。
この頃の二人はお互いどう思っていたのでしょうか?
少なくともヒロインは御幸の事、異性として見てはいないと思います。
御幸も、女子にこんなちょっかい出す奴じゃない。 原作見る限りでは
でも、気になる子には積極的に行きそうv
そんな御幸であってほしい、管理人の理想です。