想い出のカケラ (調整中)
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樫「寿也一ついいことを教えてやる
寿「?」
樫「佑がいなくなった後、あいついろんなシニアの試合を見に行ってたんだ
まるで誰かを探すようにな・・・
初めは、佑を探しているんじゃないかと思ったんだが、よく考えれば佑がいたのは高校野球だ、シニアじゃない
俺はもしかしたらと思って、中学の軟式野球を見せたんだ
友ノ浦の練習試合をな」
寿「え!!」
樫「お前が野球をやっている姿を見て、あいつその場に泣き崩れたんだ
恐らくいろんなことを現実として受け入れたんだろうな・・・・佑が死んだことも、お前がいなくなったことも、すべて・・・な」
第18話 [誓い]
*コチコチと時計の音がやけに響く
寿が私のことどんな風に見てきたかなんて そんなの・・・
寿也の顔が徐々に近づいてくる
夏村の唇に、寿也の吐息がかかったと思った時だった
突然何かの鋭い視線を感じた
稚『親の居ぬ間に人様の娘に手ェ出すとは、いい度胸だなぁ?』
ゾゾッと悪寒が走ったかのように寿也の身体を震わせる
『稚紗さん!』
夏村はその人物の名前を呼んだ
未架稚紗 プロのデザイナーで夏村の義理の母である
夏村の両親が事故で亡くなった後、夏村と佑を引き取り、育ててくれた
もちろん寿也も小さい頃は、よく会っていた人だが寿也にとっては、少々苦手な人である
まず口では勝てない・・・ι
テーブルに頬杖を突いて、ニコッと笑顔で言うもんだから余計に怖い・・・ι
稚『夏村、雨降りそうだから洗濯物入れてきてちょうだい(^_^)』
『え?・・うん』
そんな稚紗にビビッている寿也を余所に、夏村は寿也から離れ洗濯物を取り込みに行ってしまった
稚紗と二人きりになった和室は、嫌な空気が漂っていた
変な汗が背中を伝う
稚紗は、無言で仏壇の前に座り手を合せた
ローソクの火を手で消し寿也の方は向かず、佑を見つめていた
稚『久しぶりじゃない・・・何しに来たの?』
寿「!!・・・ぁ・・佑兄に・・・会いに・・」
突然の問い掛けにビクッとなった
この家に来るのは3年ぶりぐらいだろうか
小学生の頃に会っただけだが、稚紗は横にいるのが寿也だと一目見てわかった
*
稚『・・・会いに来た・・か・・・・』
ため息をつき、さっきとはうって変わって哀しいような表情になった
そんな稚紗を見ているのはなぜだか胸が締め付けられる思いだった
稚『・・・遅すぎたよ・・ここに来るのが
あんたも・・・あの生意気な吾郎(ガキ)も・・』
寿「・・・」
稚『あんたたちがいれば、あの子もあんなにも苦しまずに済んだのにな・・』
稚紗の表情から、夏村がどれだけ苦しく辛い思いをしたか痛いほど伝わってくる
その苦しみの何分の一かは、自分のせいだと突きつけられているようだった
稚『本当は、あんたが夏村の前に現れたとき一発殴ってやろうと思ってたんだけど・・
あの子のあんな幸せそうな笑顔を見たら、そんな気失せちまったよ
』
寿「稚紗・・さん」
とても優しく、でもどことなく照れたような笑顔を向けてくれる稚紗は、少し夏村の笑顔に似ていた
ここは礼を言うべきかもな! と笑う稚紗に寿也は申し訳なさそうに笑う
稚『しっかし、寿也も大きくなったな! 小学生の時はヒョロッとしたひ弱なガキだったのにな!』
と、久しぶりに会った感想をストレートにぶつけてきた
寿也は、あはは・・・ιと苦笑い
その瞬間、稚紗は寿也の胸ぐらを鷲掴みにし勢いよく引き寄せた
鬼のような形相の稚紗の顔がドアップで視界に入る
自然と寿也の顔が引きつっていく
稚『寿也ぁ・・あんたまさか、夏村に手ェ出してんじゃないだろうねぇ?』
寿「・・・・ま、まさか・・・・・(・・;)」
ボタボタと冷や汗がギャグ漫画のように流れ落ちる
寿「(い・・言えない・・・少し手出しました・・なんて・・・口が裂けても言えない・・・ιι)」
かなり疑いの目を向ける稚紗
目が点になってしまっている寿也は、視線を外せない
というか、外したら即殺されそうだ・・・ι
*しばらくして寿也から手を離した
稚『・・・ならいいが・・一つ忠告しとくよ!』
居間から出る際に寿也に真剣な面持ちで言った
稚『あの子は幸せにならなきゃいけないんだ!
夏村を幸せにできない奴に夏村はやれないねぇ!』
寿「・・・・」
稚『今度、夏村にあんな悲しい顔させてみな! そんときは、容赦なく殴り飛ばすからね!!』
目を丸くして驚いていた寿也は、安心したような顔をした
夏村のことをこんなにも大切にしている稚紗の優しさに正直感動した
とても温かい家族の絆が他人の寿也にもわかるくらいだ
寿「心配しないで下さい
夏村の隣には僕がいます
それは、これから先何があっても変わらない・・僕が変えさせない
ずっと見守っていきます・・
それを伝えに僕はここに来たんです」
佑の分まで・・・そう言わんばかりに寿也は言い切った
約束ではなく誓いに・・・
稚『フッ・・・勝手にしな』
・・ありがとう・・・
冷たく言い放つ稚紗だが、寿也の言葉は何よりも嬉しかった
そして頼もしく思えた
あいつになら任せてもいいよな・・・佑
*どっぷりと暗くなった夏空
日が沈むのは遅くなるが、さすがに8時過ぎでは真っ暗だ
寿也は夕飯を食べていたら? と、誘われたが家にはおばあちゃんの手料理が待っているからと断った
内心では、かなり食べたかっただろう・・夏村の手料理
玄関を出て門のところまでお見送りの夏村に、寿也は頬を赤らめるものの何やらバツの悪い顔をした
寿「あのさ・・夏村」
『ん?』
寿「・・・この間はごめん・・・突然・・あんなことして・・・・・」
あんなこと・・大会の時に強引にキスしたことだ
せっかくいい感じで夏村と話ができているのに、自分から掘り出すのはかなり痛い
もしかしたらまた、ギクシャクしてしまうかもしれない
でも、謝りたかったから・・夏村を傷つけてしまったことを
だが、そんな寿也に夏村は鼻でため息をした
『過去を掘り出すのはマナー違反だよ』
寿「・・夏村」
『過ぎてしまったことは仕方がないでしょ? なら、いつまでもねちねちしないで!
私は謝ってほしいとか、そんなこと思ってたわけじゃないよ・・・ただ、また寿と話ができたことの方が嬉んだから!』
照れながら笑う夏村を見て、寿也も微笑み返した
こういう時の夏村の言葉は、妙に説得力がある
それは、素直に真直ぐに自分の気持ちを言えるから・・
そんな夏村は少しズルイと思ってしまう
*じゃ! と帰ろうとした寿也は何かに引っ張られ止まった。振り返ると夏村が寿也のシャツを少し掴んでいた
寿也が首をかしげ名前を呼ぶと、夏村はハッと我に返ったように掴んでいたシャツを離した
『な・・なんでもないよ^_^;
まっまたね!』
と言うが、どうもさっきと態度が明らかに違う
俯いて目線を合わせない夏村の頭にポンと寿也は手を乗せた
寿「試合見に行くから!」
その一言に夏村は頬をほんのりピンクに染め、満面の笑みで答えた
そんな夏村にトキメかない寿也ではなかった
寿「(・・だめだ・・・やっぱり、かわいいよ・・////)」
家に向かって歩き出した寿也は、夏村よりもピンク色だった
夏村は寿也が見えなくなるまで、ずっとその姿を見ていた
その表情はどことなく寂しい感じだった
いつでも会えるのに
約束なんてモノを使わないと不安でたまらない
また、あなたがどこかへ行ってしまうようで・・・
まだ心に空いた穴が埋まりきらない
少しの間離れているだけで、寂しいなんて思ってしまう
決勝戦 三船東VS三船西は8対0と圧勝だった
吾郎たちは県大会に駒を進めた
そして県大会
初戦で当たったのは、夏村の所属している海堂付属中であった
*END*
*
◇あとがき◆
稚紗さん初登場です☆
このキャラ陸的にはかなり好きなんですよ!!
ズバっと物事を言い放つ稚紗さん・・素敵です(オイ!)
そんな稚紗にヒロインを見守るなんてことをビシっといった寿くんが一番好きさ!!(壊れた・・)
*07.7.28