想い出のカケラ (調整中)
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頭がぼーっとする
この間のことが頭から離れない
・・あれ・・・誰か・・呼んでる?
第15話 [スカウト]
*
眉「・・・未架」
『眉・・村?』
目の前には制服姿の眉村が立っていた
夏村は自分が何をしていたのか思い出すためか、辺りを見渡した。ここは野球部の部室、眉村と夏村以外誰もいない
どうやら部活はとっくに終わっているらしい。最後の眉村が、一向に動こうとしない夏村に声をかけたという事だ
目を開けたまま寝ちゃった! と、おちゃらける夏村だがあまりにも不自然な笑顔にさすがの眉村も聞かずにはいられなかった
眉「何があった?」
『何言ってんの! 何にもないよ(^_^)さ、帰ろ』
眉「・・夏村」
眉村の問い掛けをはぐらかして帰ろうとする夏村を呼び止めた
苗字ではなく名前で・・・
名前で呼ばれたのは初めてで一瞬で止まった
眉「・・・何があった?」
『・・・』
眉村は鋭すぎる
どうしていつもわかっちゃうんだろ?
どうして気づいちゃうの?
泣きやんだはずの涙が出てきてしまう
吾朗とは違うがっしりとした筋肉がついていた
『・・・ごめん・・・・・・・・少しだけ・・・・』
眉「・・・ああ」
そう言って優しく抱きとめてくれた
何も言えなくてごめんね・・・今だけ
明日からはいつも通りに笑顔に戻るから・・・だから今だけ・・・・
あなたには心配をかけたくないから
*次の日、球場では友ノ浦 VS 中央の試合が行われていた
結果は、5対0で友ノ浦の勝利に終わった
倉「あと二つ勝てば念願の県大会だな寿!」
寿「ああ
この調子なら県大会でも十分いけるよ!
今年の夏は神奈川に友ノ浦旋風を起こしてやろーぜ!!」
意気込んでいたが、話題はおのずと次の対戦相手のことになる
誰もが次の相手が青武館だと思っていた
大「青武館なら負けたよ 1対0で・・・
それも三船東の本田吾朗ってやつにノーヒットノーランをくらうおまけつきでな」
寿也達の前に立っていたのは、煙草をふかした太めの中年オヤジと、きれいな女性だった
傍から見れば、不倫カップルに見える
その情報が本当かどうか喰いつく倉本に、名倉は名刺を渡した
”海堂高校野球部スカウト班チーフマネージャー”と書かれた名刺を見て、その場の空気が変わった
大「ちょっと佐藤君に話があってね。他の者ははずしてくれるかな」
他の人を外させて寿也のプレーを見た素直な感想を大貫は言った
寿也の顔は徐々にほころんでいった
が、本題に入るや否や大貫の声のトーンが変わった
大「うちとしては、二人共入ってもらって黄金バッテリーを組んでもらいたいとこなんだが・・・
本田君は、君が来るならぼくは海堂には行かないといってるんだ・・・
そうなると二人のうち一人に絞るしかなくってね・・・いろいろ考えた結果・・・
君に海堂高校はあきらめてもらおうということになったんですよ」
寿也の表情は固まっていた
スカウトの二人は寿也の前から去って行ったが、寿也はしばらくその場に立ち尽くしていた
あまりのショックゆえに言葉もでなかった
スカウトされる自信はあった・・だからこそだった
寿也が家路へと足を進めていった
階段の影に夏村がいるとも知らずに
『・・・・・寿』
*その夜、夏村は吾朗に電話をした
海堂のスカウトを断ったこと、寿也と同じ学校へは行かないこと全部本当だった
だが、大貫が言っていたこととは少し意味合いが違っていた
恐らく、大貫が吾朗の返答に色をつけたようだ
『・・・・海堂って、あんなところだったっけ・・・
ねぇ・・・お兄ちゃん・・・・?』
和室の一角に膝を抱えて座り込み誰かに問いかけたが、返事はありはしなかった
そして、ついに吾朗と寿也の運命の対決の日がやってきた
由『ごめーん 待った綾音ぇ?!』
スタンドには、綾音と由美の姿があった
綾音は真面目に“ド”がつくほど真面目で、生徒手帳に書いてある校則をきっちり守り制服姿、一方由美は私服
ここまで生徒手帳を熟読している生徒はいないだろう
由『真面目すぎるんじゃない綾音? もうちょっとくだけないと佐藤先輩だってなかなかふり向いてくれないよ?!』
綾『・・・・・』
綾音は深刻そうな顔で俯いた
あの時のことが頭をよぎった
そうあの日、友ノ浦と文化台の試合の日
見てはいけないところを見てしまった
できれば見たくなかった
佐藤先輩がキスしてるところなんて・・・
しかもその相手の人は、別の誰かと公園で抱き合ってたし・・・
由『どうしたのよ綾音? ボーっとして』
綾『え? な、なんでもないよ!』
・・・・・佐藤先輩
*選手控室では、昨夜の電話のことで吾朗と寿也が話し合っているが寿也は一向に聞く耳を持たない
寿「君が海堂に行く気があろうとなかろうと、そんなことは今更関係ない
僕はそんな君を海堂高校が選んだことが不愉快でならないんだ
君を選んだ夏村もね」
吾「!・・だからお前・・・夏村にあんなことしたってのか?!」
寿「あんなこと? 何を言ってるんだい吾朗君?」
吾朗の言っていることが分かっているにもかかわらず、しらを切る寿也に吾朗は今まで以上に反発した
吾「とぼけんじゃねぇー! お前・・夏村のこと大事じゃねーのかよ!」
寿「・・大事に決まってるだろ?
だから僕はこの試合で、必ず君を叩きのめして夏村の目を覚まさせるさ」
吾「んなに大事なら、あんな悲しい顔させんなよ! 泣かせんなよ!!」
寿也はグローブを持ってそのまま控室のドアを開けた
寿「・・・やっぱり夏村は君のところに行ったんだ・・」
独り言のようにつぶやいた小さな声は、吾朗に聞こえることはなかった
出ていく寿也を追いかけ、吾朗は勢いよく控室から出た
吾「寿也!! こうなりゃ、てめーが海堂に行けなくなろーが知ったことか!
夏村をあんだけ傷つけたヤローは許さねー!!
ぶっ倒す!! 今度こそハッキリさせてやらァ!!」
険悪ムードのまま友ノ浦 VS 三船東の試合が始まった
スタンドには当然、海堂高校スカウトの大貫の姿があった
*観客席に腰をおろした大貫に刺すように話しかけたのは夏村だった
『チーフマネージャーともあろう人が、こんな悪徳商法みたいなことして、いいんですか?』
大「なんだ未架・・・お前も観に来てたのか」
後ろを振り向きそう言った
当然、二人は初対面ではない
海堂付属というだけに、何回か大貫は中学の方にも足を運んでいる
大「悪徳商法とは、かなりの言いようだなぁ
だが、本田(金の卵)を取るためだ・・多少のルール違反は覚悟の上だ」
前を向き何やら勝ち誇ったように笑った
『・・・マナー違反の間違いじゃない? それに入らないわよ吾朗は・・・』
大「何?」
『吾朗を入れるために寿を一方的に入学拒否するなんて、そんな汚いまねされて入るわけないでしょ?』
夏村の物言いに浅い考え、感情的すぎると大貫は笑い飛ばした
夏村は軽蔑の眼差しを大貫に向け、客席を下まで降りて行った
大「未架! お前あの二人と知り合いなのか?」
ちらっと見るが、何も答えず三塁側へ行ってしまった
その行動、そして先ほどの言動を見るからに、知り合いに間違いはなさそうだと推測した
だが、三人が幼なじみだとは、さすがに気がつかなかった
*プレイボール
友ノ浦の先行で始まったが吾朗のキレのある球に手も足も出ず、二者三振
第一ラウンド開始の合図かのように寿也の吾朗に対する挑発が始まった
三番を歩かせ寿也との勝負を選んだが、結果は引き分け
一回裏、三船東の攻撃は、寿也の憎らしいほど人を食ったリードで吾朗をも三振にした
そしてランナーが出ないまま試合は硬直状態だった
*END*
◇あとがき◆
お疲れ様でした!
寿くんとのキスシーンと、吾朗と抱き合っていた場面を偶然目撃した綾音ちゃん
複雑な心境だろうなぁ・・・
今後、綾音ちゃんも絡ませたいと思います(>_<)
試合始まっちゃったけど・・・黒寿くんをほとんど書いていない気がするのは私だけ?
*07.11.8修正