想い出のカケラ (調整中)
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地区予選開始
宝仙 VS 三船東
一回戦開始は、吾朗の遅刻から始まった
第13話 [地区予選]
*三船東は、吾朗の大遅刻のおかげで崖っぷちに立たされていた
かなりの苦戦を強いられたが、本当のチームワークというものを知ったメンバーは、なんとか持ちこたえ、一回戦を突破した
寿「・・・なるほどね
吾朗君のチームらしい勝ち方だ・・・」
それを、会場の片隅で不敵に笑う寿也の姿があった
小「まさか、あそこで逆転満塁ホームランなんてさぁ・・・」
山「たまたまさ
みんながお膳立てしてくれたからな」
着替えを済ませて、一回戦勝利をたたえあいながら帰る三船東野球部ご一行
すると、前方に誰かがいることに山根が気付いた
山「ん? おい小森
あそこにいるのって、前にウチのグラウンドに来てたやつじゃないか?」
小「え?・・・あ!」
そこにいたのは、一回戦を見に来ていた夏村だった
小森は吾朗を呼び、夏村がいることを知らせた
『一回戦突破おめでとう!』
吾「なんだよ! 応援に来たのか?
自分のチームほったらかしで」
小走りで夏村の前まで行った吾朗の第一声は、それだった
*
『残念☆ ただの偵察よ!
吾朗くんの実際の球を見てみたかったからね! キレも抜群だし、かなりいいストレートだね(*^_^*)』
夏村に褒められて少し照れくさくなった吾朗は、まあな! と言いながら頭をかいた
牟「おい茂野! お前だけずりーよな~
オレらにも紹介しやがれ!」
及「まさか、お前のコレじゃねーだろうなぁ?」
及川が右手の小指を立てて、吾朗に問い詰める
吾「んなんじゃねぇっつってんだろ!! ・・・あれ?」
問い詰めていた牟田と及川は、夏村を取り囲んで自己紹介をしていた
デレデレと鼻の下を伸ばしながら、いろいろ質問している
挙句には、この後の打ち上げに誘っている始末
そんな二人のドタマを鷲掴みにした吾朗の顔は、まさに閻魔様だ・・・
小「そうだね、よかったら未架さんも一緒にどう?
いいよね? 本田君」
吾「ん? ああ、夏村が良けりゃあな」
牟田に四の地固めを決めながら返事をした
『ごめんね、せっかくの誘いなんだけど、まだ見たい試合があるから』
吾「そっか・・じゃ、しょうがねぇな」
『じゃね吾朗!』
手を振って走っていく夏村を三船東ご一行は、ぼーっと見ていた
牟「・・・かわいいよなぁ・・」
及「・・・ああ」
吾「・・・お前ら、ホレんなよ」
牟「そりゃあ・・ムリってもんだぜ」
*
別の会場へと足を運んだ夏村は廊下を抜けて、階段を上がりスタンドへ出た
ちょうど試合が始まったところだった
後ろのスクリーンには、文化台と友ノ浦の文字があった
夏村の見ておきたい試合は、この一戦だった
『ここにいらしてたんですね』
そう言って、夏村は隣に座った
夏村が座った隣には、昔お世話になった横浜リトルの樫本がいた
樫「遅かったな」
『ちょっと、吾朗くんに激励の言葉を言ってきてたから』
樫「相変わらず、敵味方関係なしか・・・」
ちょっと苦笑いの樫本に、そんなことないですよ? と笑顔で答えた
試合の方に目をやり、友ノ浦の守備を見た
『・・なかなか、いいチームですね
キャッチャーを中心に周りが機能していて、よくまとまっている』
樫「ああ、寿也らしいチームだな」
『・・・』
黙ってしまった夏村をちらっと見ると、思いつめたような、そんな表情をしていた
試合は見ているが、恐らく夏村の視線の先には、寿也がいるのだろうと見透かしている樫本だった
樫「・・・未架」
吾「お! やってるやってる」
その台詞に、言葉を遮(さえぎ)られた
そうさせた人物は、どかっと大きな荷物を横に置き、前列に腰をおろした
樫本は少し考えたが、すぐにわかった
樫「本田か・・・!?」
名前を呼ばれて吾朗は振り返った
樫「やっぱり本田か! 久しぶりだな」
吾「夏村! と・・・・・・・・・誰だっけ?」
『(・・・・やっぱり・・;)』
真顔で考えた吾朗だが、野球以外のことは、にわとりの頭みたくすぐに忘れてしまうこの発言に、樫本は情けなく思った
名乗ったのにも関わらず”あー”と思い出したのか出してないのか、どうでもいいような返事だった
挙句の果てには、宇宙刑事とわけのわからないことを言っている
樫本のことをちょっと哀れむ夏村だった
*
吾「そりゃそうと、リトルの監督がこんなとこで何してんだよ
中学野球なんて見たってしゃーねーだろ?」
樫「ちょっとした応援だよ・・・
一応、寿也はオレの教え子だからな」
吾朗は夏村の隣に座りなおし懐かしい話をした
この四年間、吾朗に何があったのか寿也に聞いたことも樫本は話した
以外とおしゃべりな寿也の一面である
『でも吾朗くん、今のあの程度のピッチングじゃ寿は抑えられないよ』
吾「わかってるよ。 寿也とあたる三回戦までに、もっと速い球にしなきゃ通用しねぇ
簡単じゃねーが、やるしかねぇ!」
ハッパをかけた夏村だが、吾朗はいつになく強気に言った
そんな吾朗に相変わらずだなと樫本は思う
突然吾朗は、思い出したかのように樫本に疑問をぶつけてみた
それは、寿也のことだった
寿也ほどの実力があれば、ケガでもしないかぎりシニアへ行くはず
だが、実際は中学で軟式をやっている
その疑問に夏村は、ピクッと反応して俯いた
吾「どーしたんだよ夏村? ・・・・何だよ~、二人して黙り込んで」
俯いたままの夏村を横目で見ていた樫本が、口を開いた
樫「・・・あいつは、三年前に両親に捨てられたんだ・・・」
吾「え・・・・!!?」
思いもよらない樫本の言葉に、驚きを隠せなかった
三年前
父親の会社が倒産
両親は寿也を一人残して、姿を消してしまった
幼い妹だけを連れて・・・
その後、祖父母の家に預けられることになったが、野球を続けられる状況じゃなかった
だが寿也は、ぐれなかった
それは、祖父母が優しく温かく、寿也を支えてくれたからだ
経済的にも苦しかったため、祖父は再び仕事にも就いた
寿也は、両親への憎しみを胸の奥にしまい込み、一日も早く自立して、祖父母に恩返しをしようと・・
寿也にとって一番の近道である、プロ野球選手になることを心に決めていた
そして、入学金も授業料も免除になる名門・海堂高校の特待生にスカウトされるために、すべてをこの大会にかけて、この二年間練習してきた
すべては、プロになるために・・・・
吾「・・・よしてくれよ、そんな話・・・」
*樫本が話し終わると、吾朗は明らかに動揺していた
吾「だから何だってんだ・・オレにゃ関係ねーだろ・・!
そんな話聞いたって、オレは同情したりしねーぞ!!
海堂だのスカウトだの知ったことか!!
オレだって、奴を倒して県大会に行くだけだ!!
なめんじゃねーよ!!」
吾朗は、冷や汗をかきながら慌てて飛び出していった
樫「なんだ? あいつ・・・・」
夏村の隣に座り直した樫本は、横でずっと黙ったままの夏村の頭を自分に寄せた
スカートを握りしめて、少し身体が震えていた
樫「・・・悪かったな・・お前の前であの時のことを話してしまって・・・」
あの時・・寿也がいなくなった時、夏村もまた、心に深い傷を負っていた
樫本は寿也や夏村の相談役として、中学に入ってからも信頼のおける人物だった
そのため、時折樫本の元へ訪れ、話を聞いてもらっていた
樫「・・・寿也と会ったのか?」
さきほどの吾朗の登場で聞きそびれてしまったことを聞いてみた
『・・・・・・はい』
樫「そうか・・・話は・・できたのか?」
『・・・・すこし』
淡々と話す夏村を見て、二人の間のわだかまりは解消されていないのだと察した
樫「ゆっくりでいい・・急いで前へ進む必要はない・・・大丈夫だ」
そう言って、樫本は球場を後にした
ゆっくりでいい・・
その言葉には確証があった
それは、二人が無意識にお互いのことを話していたからだ
樫本が二人の話し相手になっていることはもちろん告げていない
ポツリとスタンドに残った夏村は、試合が終わりグラウンドから去っていく選手たちをぼーっと見ていた
先ほどの震えは、樫本のおかげで治まっていた
『・・・8対0・・・・友ノ浦の圧勝・・か』
いつも私は、あなたのことを外から見ているね
あなたの心に・・自分の心に触れるのが怖いから・・・
どうか、気付かないで・・・振り向かないで
*スタンドを後にし、学校へ戻ろうと出口を目指していた
寿「友ノ浦の試合はどうだった?
海堂付属中学野球部マネージャーさん」
突然聞こえた声にもかかわらず、眉ひとつ動かさなかった
そこには、先ほどまでグラウンドで文化台と試合をしていた寿也が、腕組をして壁に寄りかかっていた
まるで待ち伏せをしていたかのように
寿也をちらっと見て、そのまま前を通り過ぎようとしていたが、そんな夏村の腕を後ろ手で掴んだ
寿「そんなあからさまに無視しないでよ
夏村ちゃんだろ?」
また・・・胸が痛い・・・・
『・・・・この間はありがとう・・定期届けてくれて・・・』
まだシラを切る夏村に、イラっとした寿也は掴んでいた夏村の腕を引っぱり強引にこちらを向かせた
寿「ふ~ん・・あくまでシラを切るつもり?
・・・じゃあ、この写真は何?」
『!!』
寿也が見せた写真は、夏村のパスケースに入っていた写真と同じモノだった
それを見た夏村は、心臓の鼓動が大きく鳴り、体中の血の気が引いて行くのがわかった
寿「キミのパスケースにも同じ写真が入ってるよね?
これ僕の幼なじみと撮った写真なんだ
どうしてキミが持っているのかな?」
『・・・・・』
いつか来ると思っていた
いつか知られてしまうとわかっていたが、嘘をつき通すことも、昔みたいに明るく笑顔を見せることもできない
夏村は極度の緊張状態に陥っていた
誰かが ずっとノックをするの
・・誰・・・?
・・・・やめて
開けてしまいそうになるから・・・だから今は・・・・・
黙ったまま俯いている夏村の耳元に寿也の吐息がかかった
寿「やっと見つけたよ・・夏村」
*その言葉に過敏に反応した夏村は寿也から離れようと腕に力を入れた
が、がっしりと掴んでいる寿也の手は離れることはなかった
寿「ま、僕よりも先にキミは見つけていたんだろうけど」
『!!・・・・・・・知って・・たの・・・?』
寿「じゃなきゃ、あの時、あんな風に逃げなかっただろ?」
『・・知らないふり・・・してたんだ』
寿「するつもりなかったけどね・・夏村が悪いんだよ?
せっかく逢いに来たのに、僕のこと知らないふりするから」
心が揺れる
閉じていた扉が開こうとしてる・・・誰かが開けようとしている?
ダメだよ・・・開けちゃ・・・
誰・・! あなたはダレ・・・・・・・
・・・・あなたは・・・・・・・・私・・・?
俯いていた夏村に少しかがんで寿也は答えた
自分の中でプツンと何かが切れる音がした
『・・だったら・・・』
寿「?」
『だったら何で一度も連絡しなかったのよ!!
寿から連絡が来るのをずっと・・・淋しいのをずっと我慢して、待ってたのに!!!』
寿「・・・!」
『想い出になんかしないで!!
過去の人なんかにしないでよ!!!』
寿「夏村・・」
止まらない
開いてしまった扉は、閉じることができない
今まで閉じ込めていた想いが・・・感情が溢れてしまう
『・・寿がそばにいてくれないのなら、もういい
・・・・私は、吾朗くんと一緒にいるから!!』
夏村は寿也の緩んだ手を振り払い、寿也に背中を向けて離れていった
寿「・・・いかせない・・・・・吾朗君のところへなんか!」
離れていった夏村の腕を乱暴に掴み、その唇を奪った
『!!?』
一瞬何が起こったのか、わからなかった
*
寿の顔が目の前にある
・・・前にもこんなことが・・・! あの縁結びの・・・
漸(ようや)く寿也に何をされているのか理解した夏村
『・・んっ・・・やだっ!』
一瞬、唇が離れ逃れたが、それが裏目に出てしまい壁に追い詰められ、さらに深く口づけをされることになってしまった
『んん!!・・・・はぁ・・んっ』
寿也の胸を叩いて抵抗するが、男に力でかなうはずもなくビクともしなかった
逃げようとする夏村を、寿也の舌が絡めとっていく
感じたことのない感覚に頭がついていけず、次第に身体の力が抜けていく
そんな夏村をさらに攻め立てるように、角度を変え深く口づけをした
『んっ・・ふ・・・・はぁ・・』
漸(ようや)く解放された口からは、二人を繋ぐ銀の糸が伝った
寿「あの時よりも、こっちの方がいいだろ?」
寿也は小さくつぶやいた
その瞬間、軽快な高い音が周りに響き渡った
『あんたなんか・・・
あんたなんか、大嫌い!!!』
寿也の頬を思いっきりひっぱたき、その場から逃げだした
寿「・・・はは・・変わってないよね・・
思ったことを真っ直ぐに口にするのは・・・昔から・・変わってない・・・・」
そう・・変わってしまったのは 僕の心
握り拳を壁に叩きつけた
悔しさと、おのれの無力さ・・醜いほどの自分の心
あんなことするつもりなかったのに
・・・なんで、あんなことをしたんだ・・・!!
僕は キミのそばにいたいだけなのに・・・
突いて出てしまった言葉を戻すことはできない
どうしたらいい?
この
狂おしいほどの キミへの想いは・・・
*
『・・はぁ・・・はぁ』
なんで・・なんでこんなこと・・・
それまで出なかった涙が、止めどなく溢れ出した
あの時でさえ、でなかった涙が・・・
寿「こっちの方がいいだろ?」
やめて・・・やめてよ
幸せだったあの頃を、かき消さないで!
今のあなたは嫌い・・大嫌い!
なのに・・どうして?
こんなにも・・・そばにいてほしいなんて
矛盾している心と自分(からだ)
噛み合うことのない想い
残ったのは
唇の生温かい感触と
握りしめられた腕の痛み
あなたに出会っていなければ
こんなもどかしい痛みなんて
知らなくてすんだのに・・・
*END*
◇あとがき◆
いや~、やっちゃったよぉ!!
しかもかなりのディープだよ寿也さん!!
なんか試合そっちのけで、恋愛主になっていますが、一応原作沿いです・・・(←自信ないι)
こんな状態で話進めていいのやら・・・
どっかで行き詰りそう・・・
でも書いちゃうと思う
萌えますから(>_<)
*07.11.8修正