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吾朗くんが転校してから、どれだけたっただろう・・・
いろんなことがあった
春季、秋季大会と横浜リトルは連覇で優勝した
私は四番、寿くんは正捕手
チームのみんなで、合宿に行ったり、海で遊んだり
それから、寿くんとキャッチボールしたりバッティングセンターに行ったり・・・
そうそう、水族館や遊園地、動物園にも行ったなぁ
いろんなことがありすぎて、吾朗くんのいなくなった悲しみも、すっかり癒えていたよ
第10話 [悲別]
*
『ねぇ夏村ちゃん、見て見て! 縁結びだって』
私たちは今、小学校最後で最大の行事、修学旅行にきています
古いお寺や、歴史ある建物を見たり、体験したりで楽しく学習しています
『縁結び?』
『うん! 明日行くお寺の言い伝えだってさ』
『お寺の裏山にある、縁石の前で夕日が沈む前に、一番大切な人とキスをすれば、ずっと一緒にいられるんだって!!』
『へぇ~・・』
私は相変わらず、こういった話は苦手・・・
寿「夏村ちゃ~ん、そろそろ集合時間だよ!」
『は~い!』
――
―――
―――――
「じゃ、夜更かしなんかして、明日寝坊するんじゃないぞ!
先生がちゃ~んとチェックしに行くからな!
明日、もし寝坊した奴は一日先生と楽しくお勉強だ!!」
「『え~~~~~!!』」
「いやなら早く寝ろよ~!」
先生も冗談で言ったことだったのに、みんなの反応見て、少しガッカリしている様子
あれだけ拒否されたら、ショックか・・・(笑)
『夏村ちゃん、前から聞きたかったんだけどさ・・』
布団に入るやいなや、お決まりの恋話が始まった
そういうのは、私抜きでやってもらいたい・・・
友達の一人が私に話を投げかけると、他のみんなも腹這いになって集まって来た
『夏村ちゃんって、寿也くんと付き合ってるの?』
やっぱりきたか・・・
周りの子も、私も聞きたかったの! と、私の顔を見て返答を待つ
『別に、寿くんとはそんなんじゃないよ』
『え~、でもさ夏村ちゃんと佐藤くんって、すっごく仲いいじゃん!』
『あたし、二人は付き合ってるって聞いたよ~』
『うんうん、ウワサになってるよね』
ウワサ・・・か
確かに仲は良いけど・・
それは幼なじみだから仲いいのは当たり前だと思うけどなぁ・・
『じゃあ、夏村ちゃんはどうなの?』
『どうって?』
『寿也くんのこと、好きなの?』
『・・・さぁ、よくわかんない
じゃ、おやすみ!』
『あ~! 逃げたな~!』
『夏村ちゃんがなんとも思ってないなら、私にもチャンスがあるかな?』
『寿也くんのこと好きなの??』
『う、うん/// 明日、あの縁結びの場所に誘ってみようかなぁ・・』
キャッキャッと騒ぐクラスメイトたち
案の定、見回りの先生に見つかり、早く寝るようにと怒られていた
好き・・って
そりゃぁ、寿くんのこと好きだけど・・・
同じように、リトルのみんなや、学校の友達も好きだし・・・
みんなの言ってる好きって、それとは違うのかなぁ・・
次の日
寿くんを誘おうと意気込んでいた子は、見事に粉砕
代わりに、寿くんからあの縁石へ行かないか聞かれた
ちょっと複雑だったけど・・・
寿くんとは、これからもずっと一緒にいたいから、一緒に行くことにした!
私はやっぱり、恋愛事はよくわからなくて”ずっと一緒に”という意味を理解していなかった
*
寿「夏村ちゃん、もう少しだから頑張って!」
『う、うん・・
でも、さすがに千段はキツイよね・・;』
夏村ちゃんがOKしてくれた時、かなり嬉しかった
・・いや、かなりなんてものじゃないか
どの男子もキミを誘うって言ってたから・・
今のキミなら、ついていってしまうだろ?
寿「大丈夫?」
『うん・・・大丈ぶ・・きゃ!』
夏村ちゃんが階段を踏みはずして、こけそうになった
僕は、とっさに夏村ちゃんを支えた
『ご、ごめん寿くん・・ありがと!』
寿「いいよ! ケガしなくて良かった」
そう思いながらキミに触れられて、嬉しんだよ
細くなっていく腰、腕に当たっている確かな胸の膨らみ・・・
僕が男になっていくのと同じで、キミもだんだん女になっていくんだね
身長も、四年生の時はあまり変わらなかったのに、今じゃキミの方がはっきりと低いとわかる
いつの間にかキミは、僕を上目で見るようになった
それがまた、僕の心をキミで満たしていくんだ・・・
『・・はぁ・・はぁ・・・っ、着いたーー!!
あーっ、リトルの走り込みぐらいつらいよー!』
寿「夏村ちゃん! 来てみなよ!」
そこには、夕日が海に沈んでいくところだった
夕日の紅が海や空に反射してとても綺麗だった
その景色に感動したのか、少しの間二人で夕日を見ていた
『はっ! 見惚れている場合じゃないよ寿くん!
早くあのおまじないしないと、夕日が沈んじゃうよ』
寿「キス・・・だよね」
『うん!』
ふり向きながら笑顔で言うキミに、またドキドキするよ
でも、まさかキミがキスのことを知って・・
『で、キスって何? 寿くん知ってる??』
・・るわけないか
寿「知ってるよ
夏村ちゃんは、目をつむって動かなければそれでいいよ!」
『うん!』
そうやってキミは、何も知らずに無防備にするから、心配なんだ
もし
キミの目の前が僕じゃなかったらって思うだけで、ゾッとする
『まだぁ~? もういい?』
キミの隣には僕がいて、僕の隣にはキミがいる
それが、この先何があっても変わらないように・・・
僕は夏村ちゃんにキスをした
触るだけのかわいいキス
唇を離した後、夏村ちゃんはきょとんとしていた
それがまた、かわいいんだけどね
『終・・わり?』
寿「うん!」
『じゃぁ、ずっと一緒にいられるね!』
無邪気に笑うから・・・離したくなくなる
『と、寿くん?! どうしたの?』
いきなり抱きしめられた夏村ちゃんは、不思議そうにそう言った
僕が今、キミにしたことの意味なんてわかっちゃいないんだろうな・・・
寿「・・ほかの男子の前で、簡単に目をつむっちゃダメだよ?」
『え?・・うん・・・・・変な寿くん』
そう笑って、抱きしめ返してくれた
キミを想う気持ちは、こんなに溢れているのに
どうしたらキミに伝わるのかな・・・
この 切ない想いは・・・・
これで、ずっと一緒
寿くんとずっと一緒にいられる
なんか、すごく嬉しい
こんな気持ち初めてだよ・・・
この温かい気持ちを、幸せっていうのかな・・・
明日からまた、同じ毎日が始まる
それがずっと続くと、疑いもしなかった・・
当たり前のように 隣にいるあなたが
いなくなるなんて 思いもしなかった・・・
*
月曜日
寿くんは学校にも練習にも来なかった
次の日も、その次の日も来なかった・・
私は、樫本監督に問い質した
でも、監督が何を言っているのかわからなかった
私は、寿くんの家に走った
樫「お前たちが修学旅行から帰って来た日
佐藤の両親は、妹だけを連れて家を出たんだ」
そんなはずない・・・
樫「精神的にも野球を続けられる状態じゃなくてな」
だって・・そんなこと・・一言も・・・
寿くんの家に着いたときには、いつの間にか空から大粒の雨が降っていた
まるで、空が泣いているみたいに・・・
玄関のチャイムを鳴らそうとしたとき、私の指が止まった
いつも、チャイムの上にある表札が無くなっていたから・・
ドクン ドクン と鳴り止まない嫌な鼓動
ピンポーン
チャイムを鳴らしたが、誰も出てこない
ピンポーン
そんなわけないよ・・だって・・・
ピンポーン・・
寿「どこにも行かない」
ドクン
ピンポーンピンポーン
寿「夏村ちゃんの傍にいるよ」
ドクン…ドクン
ピンポーンピンポーン・・・
寿「約束するよ」
ドクンッドクンッ…ドクンッ
寿「ずっと一緒に…」
『寿くん!!!
いるんでしょ!! 出てきてよ!!!!
・・・・・・・ねぇ・・・』
いつまで待っていても、中から驚いた顔の寿くんが、出てくることはなかった
雨の音と、チャイムのうるさい音が虚しく響くだけだった
どうして・・・
ずっと一緒だって・・あのお寺でおまじないもしたのに・・
なんで何も言わないで、いなくなちゃうの・・・?
私を一人にしないって言ったのに・・・
私に降り注ぐ雨は、一層強くなり、一人になった私の心を・・・温かかった心を、一瞬で冷やしていく
神様のウソつき
『・・・・寿也の・・ウソつき』
そして私は、中学生になった
一人ぼっちの入学式・・・
*END*
◇あとがき◆
リトル編、無事終わりましたー!!ありがとうございます!
この話、めちゃくちゃ書きたかったところなんですよ(>_<)
突然の別れ!何も言わずにいなくなってしまう・・ドラマですね~☆
良ければ、このリトル編最終回の感想をお聞かせください!!
自分はすごい気に入っています!
ではでは、次回から中学編です!
壊れながら、書いていきますので、今後も温かく見守ってやってください!
*07.11.4修正