想い出のカケラ (調整中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
真「あぁ? なんだ?
本田の奴、4年のくせに、もううちの涼子を落としにかかってんのか? ませガキが・・・」
寿「吾朗くんはそんなんじゃないと思いますけど・・・」
寿也の隣に座っていた夏村が、寿也の前に乗り出してバスの外にいる吾朗と涼子を見た
『ませガキってなに?』
寿「・・・え?///」
夏村にそう質問されて、少し頬を染めながら困っていると、前の席に座っていた真島が顔をこちらに向き答えた
真「そうだな・・・・簡単にいやぁ、佐藤みたいな奴のことを言うんだよ」
寿「え”!」
『ふ~ん・・・』
寿「真島さん///!!」
やけに焦っている寿也の顔をじっと見つめる夏村
『良かったね! 吾朗くんと一緒だよ!!』
いいなぁ~、と二人が一緒なことを羨ましがる夏村
夏村ちゃんって、基本的に頭はいいんだけどな・・・
と、あまりの鈍感さにそんなことを思う寿也
でも…鈍感で良かった…かも……//
第9話 [勝利]
*
いろんな事があった合宿も終わり、秋季大会が始まった
横浜リトルは、Aグループ
吾朗のいる三船リトルはBグループと、幸か不幸か分かれていた
横浜リトルはシードされており、どこのリトルも寄せ付けない強さを見せつけて、準々決勝まできた
準々決勝の相手は
なんと、人数が少なく解散寸前まで陥った三船リトルだった
寿也は惜しくもブルペンだったが、夏村は先発に選ばれた
試合が始まり、横浜リトルからの攻撃
ノーアウト一、二塁で三番でバッターボックスに立ったのは、夏村だった
夏村、続いて真島と連続ホームランを打たれ、気付けば7対0
一回裏、三船リトルの攻撃
江角は三船の打席に、立て続けに打たれた
キャッチャーの後藤がマウンドへ行くと、苛立ちのせいか後藤を追い払う
そんな江角を後ろから見ていた夏村は、不満げな顔
4点取られてなおもヒット
夏村のダイビングキャッチ
みごとなファインプレイでスリーアウトチェンジ
夏村はベンチに戻る際、江角の横に並んだ
『どうしたんですか? 江角さん
今日はかなり不調じゃないですか』
江「うるせーな!
年下のくせに、先発に選ばれたからって調子づいてんじゃねぇぞ!!」
『・・・キャッチャーの助言も無視して、バカスカ打たれてる人が言える台詞じゃないですね・・・
エースナンバーに慢心して、油断してるからこうなるんですよ』
江「な、何!」
『真面目にやる気がないなら、マウンドに立たないで! 不愉快よ!』
そう言い放ち、ベンチへ戻って行った
気落ちした江角に樫本が、さらに
追い打ちをかけた
二回裏、横浜リトルはピッチャー菊池に代わるものの、三船の勢いは止まらず、7対7の同点になった
フォアボールで、なおもランナーが出る
もたついている菊池にシビレを切らしたのか、真島が激を飛ばした
そして、キャッチャー後藤に代わり、寿也が入った
打席には吾朗
やっとグラウンドで寿也に会えてはしゃぐ吾朗だが、寿也は感情を抑え敵に向ける言葉のように冷たかった
その態度にイラついた吾朗は、外角に逃げるカーブの球を打ったが、サードゴロ
真島から夏村にボールが渡りセカンドベースを踏む
走り込んできた前原をジャンプで避けながら、ファーストに投げ吾朗もアウト
小「ダ・・ダブルプレー?!」
夏「おいおい・・またあの娘だぞ!」
長「女の子なのに、めちゃくちゃ上手いじゃん!バッティングも上位打席だし・・・」
沢「あの娘、本田の幼なじみなんだろ?
あのキャッチャーといい、本田の幼なじみは上手い奴ばっかだな!」
三船ベンチが騒がしい中、横浜リトルの攻撃が始まった
その後
両者一歩も引かず五回表、横浜リトルの攻撃
ツーアウトランナー一塁
三番打者の夏村が打席に立った
吾「一、二打席は打たれたけど、いくらバッティングの上手い夏村ちゃんでも、今のオレの球はそう簡単には打てないぜ!!」
チェンジアップ、ストレートとカウントは、ストライクツー
ベンチの誰もが、打てないと思っていた
こんなところで負けるなんて嫌!
吾朗くんに・・試合に勝ちたい!!
あたしは、まだ・・・
*
三球目のチェンジアップを、体勢を崩しながらも打った
それは、ぐんぐん伸びていきレフトの頭を越えフェンスの向こうに落ちた
ツーランホームラン
横浜ベンチから歓声が上がった
戻って来た夏村にハイタッチする寿也
寿「すごいよ夏村ちゃん!!
あの落ち球をホームランするなんて!!」
真「さすがだな夏村」
みんなの祝福を受けながら、ベンチへ帰る夏村を樫本が止めた
樫「・・・未架、お前は次で交代させる」
『っ!!』
その発言にみんな驚いた
寿也が何故交代なのか、樫本に問い質した
樫「当たり前だ・・・ケガ人が出ていては、勝てる試合も勝てなくなる」
そう言って、夏村の左肘を掴んだ
夏村の顔が痛みに歪んだ
『いっ・・・!!』
「「「!!」」」
樫「あんな無理な打ち方をすれば、肘を痛めることぐらいお前なら分かっていただろ!
無理してまで、チェンジアップを打ちに行く必要がどこにある!」
『・・・早く、勝ち越したかった・・』
真「夏村・・?」
『あたし・・こんなところで終わりたくない!
6年生の涼子ちゃんや真島くんと、この先まだまだ勝ち進みたい!
みんなと・・ここにいるみんなと、もっと一緒に野球がしたい!!
だから・・・』
寿「夏村ちゃん・・・」
樫「だからと言って、ケガをしていいというわけじゃない! わかるな」
しゅんと沈む夏村は、樫本の横を通りすぎてベンチへ入っていく
樫「・・ナイスバッティングだった
次を考えて、今日は身体を休めておけ」
『……は、はい!!』
樫本の一言が嬉しかったのか、笑顔になった
樫本にとっても夏村の言ったことは嬉しいことだった
その後、試合は9対7のまま最終回を迎えた
ツーアウトでランナー無し
三船リトルが諦めかけている時、スタンドからギックリ腰で試合に来られなかった安藤監督の姿があった
安藤監督の励ましを受け、吾朗たちは土壇場で同点に追いついた
延長戦
横浜リトルはピッチャー菊池に代わり、涼子がマウンドに上がった
横浜リトルの守りは完璧
三船リトルは、吾朗の疲れが限界に来ているのか、ストライクが入らなくなってきている
『・・・寿くん・・吾朗くん、様子がおかしいよ・・』
寿「え? そう?
疲れがピークにきてるんだよ
それでも、まだあの球速はすごいけどね」
『違う・・・吾朗くんのフォームがあれだけ乱れるなんて・・』
夏村の深刻そうな発言を不思議に思う寿也
吾朗のワイルドピッチで、清水は取り損ねたが、ホームベースには吾朗の姿があった
しかし、座り込んで立とうとしない
『吾朗くん!!』
吾朗の元へ駈け出そうとする夏村を寿也が止めた
寿「夏村ちゃん!」
『寿くん・・離して!
このままじゃ、吾朗くんが!』
寿「ダメだよ! 今は試合中なんだよ」
『吾朗くんは、肩か肘に異常が起きてるかもしれないんだよ!
このまま投げたら・・・』
寿「それでも今は、敵なんだよ!
・・・敵である僕たちが行ったところで、何にもならないよ」
俯く夏村に樫本が口を開いた
樫「その通りだ! 敵に情けは無用だ!
・・・まぁ、ここで代われば大丈夫だろう
三船にもそれぐらい判断できる大人がいるみたいだからな」
身体が限界にきているにも関わらず、続投
三船の最後の攻撃で、吾朗はボロボロになりながらもホームイン
9対10で三船リトルの勝利に終わった
空が紅から藍に変わっていく中、ユニホームが土まみれの二人がトボトボと歩いていた
『残念・・だったね』
寿「・・・うん」
『勝てると思ってたのにね』
寿「・・・うん・・」
まだ試合に負けた悔しさが尾を引いている寿也
『でも、楽しかったよ!
吾朗くんと・・三船リトルとの試合』
寿也は夏村の顔を見た
『やっぱり、野球は楽しくやりたいもん!
結果はその後についてくるもんでしょ!
負けるのなら、楽しんで負けたい! もちろん、勝てれば最高だけどね!!』
寿「夏村ちゃん・・・」
『だから明日からまた一緒に頑張ろ!』
寿「うん!!」
来年は必ず、三船リトルに勝つからね! 吾朗くん!
そして突然の別れは、前触れもなくやってきた
新5年生になったあたし達の耳に入って来たのは、吾朗くんが福岡へ転校したという事実だった
また、大切な人がいなくなる・・そう思った
パパもママも、あたしが小さい頃に事故でいなくなってしまった
残されたお兄ちゃんとあたしは、ママの妹の稚紗さんに引き取られた・・・
『・・・いかない・・よね』
寿「え?」
『寿くんは、どこにもいかないよね?!』
夏村の家庭のことは寿也も知っている
夏村の心情を察した寿也は、今にも泣いてしまいそうな夏村を優しく抱き寄せた
寿「大丈夫、僕はどこにも行かないよ!
夏村ちゃんの傍にいるから!」
『・・・・・本当に?・・・絶対だよ!』
寿「うん・・・約束するよ」
ずっとずっと一緒にいてね
私を一人にしないでね・・・
・・・・・・寿くん
*END*
◇あとがき◆
さぁ、長かったリトル編も次でラストです!!
吾朗との別れ、そして寿也とも・・・
横浜リトル対三船リトルは、こんなにも長く書く予定ではなかったのですが、原作を読んでるとこんなんになってしまいました・・・
それではまた!!
*07.11.4修正