哀しみの蒼に (調整中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ほんの少し 君の事を知った
ただ それだけなのに
気づけば 君の事ばかり見ている
・想う心・
*いつもと変わりないアッシュフォード学園
教室に入って来たスザクを元気な声が迎えてくれた
スザクもそれに笑顔で答える
シャ『スザク君、シリルは今日休みなの?』
ス「今日は来るよ! 朝ちゃんと起こしてきたから」
にっこり笑いながら席に着くスザクにリヴァルが喰いついた
今のスザクの発言がかなり気になるらしい
ス「僕とシリル、同じ部署だから寮・・・っていうのかな? 同じ建物にあるし、部屋もわりかし近いんだ!」
シリルは、ああ見えて朝が弱いらしい
任務がある時以外は、わりかし起きるのは遅い方なのだ
興味深々な2人はズイィっとスザクを囲む
シャ『で? スザク君が起こす係りになってるの?』
ス「いや、係りってわけじゃないけど・・・ι 時間になっても起きて来ない時だけだよ」
リ「いいよなぁ~・・」
ス「・・・ι」
リヴァルが羨ましそうにスザクを見やるが、当の本人は苦笑い
というのも、シリルを起こすのは命がけなのだ
部屋の扉を開けた瞬間、至る所からナイフのオンパレード
自分目掛けて飛んでくる刃物に、初めての時は死ぬ思いをしたとか・・・
防犯だと思うが(セシルによると、ロイド除けだとか・・)
それにしてもあれはやり過ぎだろう
一般人だったら命がいくつあっても足りないだろう
というのは内緒にしておこう・・
すると、リヴァルがニヤリと怪しく笑う
リ「じゃぁさ! シリルの寝顔とか見ちゃったりする?」
ス「えっ∑!」
リ「やっぱ、可愛いのか?」
シャ『リヴァル!』
リ「いいじゃねぇかよ! な、どうなんだ? スザク」
そう聞かれたスザクは、ぽっと思い出したかのように頬を赤く染め、2人から目線を逸らした
ス「か・・・かわいいよ////」
ぽつりと照れながら言うものだから外野はかなりのハイテンション
次から次へと質問をしてくるリヴァル
リ「寝相とかは良かったりする? それとも以外に悪いとか??」
ス「それは・・ιι」
『大そうおしゃべりなのはこの口か?』
*スザクの左頬を抓くるのは、今しがた登校したばかりのシリル
挨拶をするシャーリー、リヴァルだがその間もスザクの頬は抓られっぱなし
ス「い、いはいよ・・シι (い、痛いよ・・シリルι)」
『おしゃべり好きなその口は私が縫ってやろうか? そうすれば抓られずに済むぞ?』
ス「・・ごめんなはい(/_;)」
ぱっと頬を離すと、代わってスザクの目の前に紙袋が置かれた
ほっぺたを擦るスザクは首を傾げシリルに問いかけた
『この前泊まった時に借りた服だ。 心配しなくてもちゃんと洗ってある』
ス「えっ、ぁ、よかったのに・・そんなの」
普通に会話をする2人に勢い良く割って入るリヴァル
当然の反応だろう
お年頃の男女が同じ部屋で一夜を共にしたと言うのだから
否が応でもそういう方へ考えてしまうのは人の性(さが)というものだろう
リヴァルは詳しく聞くためにスザクを問い詰めた
ル「お前、いくら相手がスザクだからって警戒心が無さ過ぎだ」
『なんだ、心配してくれるの?』
ル「当たり前だ」
大事な妹なのだから・・ と、続けたかったのだろうがそれは呑み込んだ
ル「それよりナナリーが会いたがっていたよ」
『あぁ、私も会いたい』
ル「なら、今度時間のあるときに来いよ。 夕飯でも一緒に」
『うん』
嬉しそうに笑い合う2人を横目にスザクの表情はどこか浮かない顔
2人を包み込む空気がとても優しくて、それと比例して2人の仲の良さがひしひしと伝わってくるようだった
なんで、あんなにルルーシュと仲が良いんだろう・・・
シリルに会ったのは僕の方が先なのに・・・
ス「いっ!」
放課後、アーサーの餌をやりに生徒会室へ来たスザク
ぼーっとしていたスザクの指にじゃれていたアーサーが噛みついていた
はぁ・・・と溜息をつきながらアーサーの口からゆっくりと指を抜いた
すると、後ろから大声を上げるシャーリーの声
シャ『そっ、そんなんじゃないです!』
ミ『でも、最近仲の良いルルーシュとシリルが気になるんでしょ?』
シャ『それは・・///』
図星を突かれたのか、目線を下げて椅子に座り直してしまったシャーリー
シャ『あの2人って・・何か特別仲がいいっていうか・・・ シリルに対してルルって、すっごく優しいし・・』
ミ『そうね~・・なんか私達が立ち入れない仲よね』
追い討ちをかけることを言うな! と言わんばかりにシャーリーは頬を膨らます
それに苦笑いをして謝るミレイ
その会話を他人事ではないと感じ取ったのか、聞き耳を立てていたスザクの胸にもミレイの一言がチクリと刺さった
ミ『でも”恋人”って言うよりは”兄妹”って感じよね』
シャ『兄妹?』
ミ『ルルーシュがシリルに向ける眼差しって、なんとなくナナリーに向けるのと似てる気がするのよ
それに、あの2人自身も結構似てるとこあるし!』
そう言われてみれば、そうかもしれない
でも2人が兄妹なんてそんな都合の良い話、あるわけがない
だとすると、やっぱり2人って・・・
ロ「考え事してるトコ悪いんだけどぉ~」
ス「わぁっ∑! ロ、ロイドさん!」
*びっくりして目を見開けば、目の前にはにんまりと笑うロイドの顔
勤務中だと言うのに、今日は特に上の空なスザクだ
ロ「買物してきてくれないかなぁ? スザク君、仕事に身が入らないみたいだから」
ス「・・す、すみません・・・ι」
『あ、スザク私も行く』
メモ紙とお金を受け取っていると、椅子に座っていたシリルがコロコロと椅子を転がし立ち上がった
伸びをして凝った筋肉を解(ほぐ)しながら、ロイド達の方へ歩み寄る
ロ「シリルちゃんはダメだよぉ~、やることあるし」
『ただの息抜きだ
誰かさんの手抜き仕事の所為で肩が凝る』
嫌味くさく言ってその誰かさんを睨みつけるが、本人はへらりと笑っている
シュンと閉まる扉を見てロイドは目を細めた
ロ「何か、悩んでるみたいだね。 スザク君」
セ『もしかして、恋の悩みかしらv』
セシルの顔が嬉しくも綻(ほころ)ぶ
そういう話の大好きなところは女の子である
だが、2人が出て行った扉を眺めながら細めたロイドの瞳は妖しくも曇りがかっていた
叶わぬ恋じゃなきゃ、いいけどね・・・
*
一方、買物を頼まれた2人は近くの繁華街に来ていた
スザクは茶色い籠を手に、メモ紙に書かれた物を確認しながら必要な物を入れていく
その後ろを物珍しそうにしながらシリルが付いて歩く
ス「どうしたの?」
『いや・・手慣れているなと思って』
ス「結構、買い出しとかするから
そういえば、シリルはこの前も何か物珍しそうだったね」
軽い気持ちで聞いたスザクだったが、シリルの表情はどこか悲しいものに見えた
堪らず名前を呼ぶと苦笑いをした
『こういうことには無縁だったからな・・私は・・・』
その時、店内に悲鳴が響き渡った
*思わず伸ばしかけた手を止めたスザクは、声の上がる方へ振り向いた
女『泥棒ー!! ひったくりよ! 誰か捕まえて!!』
白昼堂々、且つ大胆に犯行に出る犯人の男は勢い良くこちらに向かって走って来た
警備員が追いかける中、余裕の表情で客の間をすり抜けていく
男「どけぇー! 女ぁ!!」
叫んだ男は無様にも大げさに倒れ込んだ
シリルの出した足にまんまと引っ掛かったのだ
振り返る男を空かさず、スザクが取り押さえに入った
お手柄の2人にお礼を言う店員
盗まれた財布を見るからに貴族だと言わんばかりの被害者に返すスザク
だが、貴族の女はそれを乱暴に受け取った
女『あなた名誉ブリタニア人でしょ』
ス「え? はい」
女『だったら、もっと早く捕まえなさいよ! 軍人のくせして!』
スザクが名誉ブリタニア人と知り、礼を言うどころか罵り出したのだ
まるで当たり前のような口ぶりで。
それを見ていた周りの野次馬達は誰一人、口を開く者はいなかった
それを良いことに、口調を荒げる貴族の女
女『ったく・・これだからイレブンは』
ドカッ!!!
ブロック塀が落ちて来たんじゃないかという衝撃音に、皆押し黙る
スザクと女の間に割って入ったシリルの拳は壁にめり込み、ぱらぱらと小さく崩れていた
勿論、それに一番驚いたのは貴族の女だ
言葉の出ない女にシリルは低音で言った
『礼すら言えない貴族とは、貴賓の欠片もないな』
女『ひっ!!』
自分に注がれる視線が、今にも殺されるんじゃないかというほどの恐怖心を狩りたてた
そう感じ取った女は、血相を変えて逃げて行った
唖然としていたスザクが我に返った時、シリルの手からは血が滴り落ちていた
ス「シリルっ!」
『・・別に大したことじゃない』
ス「何言ってるんだ! 早く手当てしないと」
『お、おいっ』
心配するスザクに強く手を引かれその場を後にした
*
噴水のある広場の段差に座らされ、左手を手当てされる
ス「またこんな無茶して・・・シリルは女の子なんだから」
『・・・拘(こだわ)るんだな、男だの女だの』
ス「え? そういうわけじゃないけど・・・ただ、男が女の子に守られるのは格好悪いし・・ねι」
『そうか?』
ス「うん。 それにぞんざいに扱っちゃ勿体ないよ・・せっかくきれいな手をしてるんだから」
『・・・』
きれいな手・・か
こいつには そう見えるんだな
血で汚れきった この手が・・・
ふふ・・なんてことを言ったら
お前は どんな顔をするんだろうな
ス「はい」
『?』
突然目の前に出された物体に目をパチクリさせ、スザクを見上げた
初めて見るこの物体が何なのか目で訴える
それが伝わったのか、シリルにそれを渡し、隣に座った
ス「これ、タイ焼きっていう日本のお菓子なんだ」
『たい・・?』
ス「ほら、形が魚の鯛だからタイ焼き! 中にあんこが入ってておいしいよv」
美味しそうに食べるスザクを見て、シリルも一口食べてみる
意外に美味かったのか、あっという間に食べてしまった
そんな柔らかな時間も気付けば空の色がオレンジ色に染まっていた
そろそろ戻らなくてはロイドに何言われるかわかったもんじゃない
立ち上がって伸びをするシリルにスザクが遠慮気味に声をかけた
ス「ねぇシリル、その・・・聞いても、いいかな?」
『ん?』
ス「シリルとルルーシュって、ずいぶん仲良いよね」
『フッ・・・なんだ、私とあいつの仲を疑っているのか?』
ス「ドキッ・・・・」
図星だったのか顔を俯かせるスザク
そんなスザクから夕空へと目線を変えた
そっと優しい風が頬を撫でていく
ス「好き・・なの? ルルーシュのこと・・」
ぽつりと呟く言葉は、どこか浮かない声色
確かめるような言葉にシリルは空を見上げたまま瞳を閉じた
『あぁ・・好きだよ。 ルルーシュも、ナナリーも』
私の小さな 大事な幸せ
シリルの答えが意外だったのか、目を丸くしてこちらを見ていた
『お前は、好きか?』
ス「・・・・うん」
そう答えると 柔らかく笑ってくれたんだ
本当に 嬉しそうに
会長の言う通りなのかもしれない
兄妹みたいな・・そんな仲なのかな
ルルーシュもナナリーも好きってことは 少なくとも 恋愛感情じゃないって
そう 思ってても いいんだよね
*
特派に着いた時には、日が暮れてしまっていた
足早にエレベーターを降りた所で急にシリルの足が止まった
ス「? シリル?」
『・・悪い・・・少し肩・・かして・・・く・・』
言い終わらないうちにシリルの身体が自分に倒れ込んで来た
驚いたスザクは、支えながらその場に一緒に座り込んだ
ス「シリル!?」
短い呼吸・・とても苦しそうだ
これはあの時と、ホテルジャックの時と同じだ
スザクは急いでシリルを抱きかかえ、彼女の部屋へと運んだ
上着とネクタイ、ブーツを脱がせベットに寝かせた
ス「待ってて! 今セシルさんたち呼んでくるから!」
そう言って立ち上がったスザクは、手を掴まれた
『・・はぁ・・・あいつらには・・・伝えるな』
ス「だけど・・・っ!」
さらにぐっと手首を強く掴まれた
それは、絶対にだ。 と念を押されているかのようだった
買い物袋を持って一度特派へと戻ったスザク
セ『おかえりなさいスザク君! あら? シリルちゃんは?』
ス「あ、疲れたから今日は寝るって部屋に戻りましたよ」
ロ「なっ! 何を言っているんだいシリルちゃん! この大量の書類は誰がやるって言うのさ!!」
セ『ロイドさ~ん? 自分の仕事は自分で片付けましょうね~?』
そう言うセシルの額には青筋が浮かんでいるような・・
スザクも今日の仕事は終わったため上がることとなった
セシルさんたちなら知っているのかな・・・シリルの倒れた原因
ただの貧血にしては疑問が残る
聞きたいことは山ほどあるが、今はシリルの事が心配なのかもう一度、彼女の部屋へ向かった
部屋に入ったスザクの耳に呻き声が聞こえた
急いでベットに駆け寄る
ス「シリル!」
『ぅ・・・・ぅ・・』
・・・魘(うな)されてる?
だが、悪い夢を見ているだけならば、こんな魘され方はしないだろう
苦しそうな表情に大量の汗、とても悪夢で済むようなことではない
まるで地獄でもみているような、そんな苦しみ方だ
ス「シリル」
スザクはそっとシリルの手を包み込んだ
握り潰されるんじゃないかというぐらいにスザクの手を握り締めてくる
ス「大丈夫だよシリル
僕が傍にいるから・・・大丈夫だよ」
安心させるように、優しく声をかけた
*
どんな夢を見ているのか想像もつかない
こんなシリルを見るのは初めて・・・いや2回目かな
何があったんだろう・・
ふと僕は彼女の事を何も知らないことに気がついた
いつ軍に入ったのか
いつナイトメアのデヴァイサーになったのか
今までの軍歴は
ユフィとはいつ知り合ったのか
育った場所は
家族は
あの愁いに満ちた瞳の意味は
何も知らない
聞けば教えてくれるかな?
そんな生易しいことではないだろう
もっと君のこと知りたいんだ
前にセシルさんに聞いた君の過去
それだけでも 幸せな日々を過ごしてきたわけじゃないって 僕でもわかる
君の歩んできた道に 一体 何があったんだろう・・・
ふと気付くと、シリルの手は力が抜け、苦しそうだった呼吸も幾分か和らいでいた
ほっと胸を撫で下ろすと、近くにあったタオルで額や首周りの汗を拭きとってやる
『ん・・』
身じろぎをするシリルを起こしてしまったと思い、一度汗をふく手を止めた
するとシリルがうわ言で何か言っている
シリルの唇に耳を近付けた
『・・・ル・・ルーシュ』
君の口から紡がれた名前は 残酷にも 僕の胸を容赦なく抉(えぐ)っていった
やっぱり 君の中には ルルーシュしかいないのか・・・?
目の前にいるのは 僕なのに・・・
・END・
*09.1.30