哀しみの蒼に (調整中)
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それは
偽りのない笑顔
凍ってしまった心を
少しずつ・・・
少しずつ 溶かしてくれる
・笑顔・
*トウキョウ租界の綺麗なショッピングモール
今週日曜日に生徒会メンバーで、カワグチ湖へ旅行に行く計画を立てていた
だが、大半のメンバーは都合により参加が出来ないようで、結局行くのは発案者のミレイとシャーリー、ニーナの3人
そのため、今日は旅行に必要な物を買うために皆でショッピングモールへ来ている
はしゃぐミレイとシャーリーが先頭を歩き、少し控え目にニーナが後ろから付いて行く
その後ろを、半ば無理やり連れてこられたルルーシュとシリル、楽しそうなリヴァルとスザクが歩いていた
そして男共の手には、すでに荷物が・・・
リ「はぁー・・。 人使い荒いよなぁ~・・」
ス「でも、楽しくていいと思うよ」
リ「おめでたい奴だよなぁ・・・。 俺ら、荷物持ちで連れて来られただけだっていうのに・・・」
話す2人の後ろを無言で歩いているルルーシュとシリル
というのも、先日のサイタマゲットーでのことが気がかりでならないのだろう・・。 特にルルーシュは
シリルの方をちらっと見るが、彼女は至っていつも通りだった
*
ル「・・・・なぜ・・ここに・・!!?」
C『私が連れてきたんだ』
ル「どういうことだ!」
C.C.を睨むルルーシュに自分が彼女に頼んだのだと言った
C『しかしシリルはあまり驚かないんだな。 こいつがゼロだということに』
『ゼロの正体がルルで納得した
むしろ驚いたのは、C.C.お前がルルに接触していたことだ。 ギアスはC.C.が与えたのか?』
C『ああ』
『なぜルルーシュなんだ! ルルーシュじゃなくても他に』
C『お前が私と契約をしなかったから・・・だろ?』
『っ・・・』
2人の会話を聞いていたルルーシュが漸く口を開いた
が、その言葉は明らかに2人は知り合いだということに対しての疑問だった
C『私はお前に会う前は、軍の研究施設にいたんだ。 皇族のシリルと顔見知りでもおかしくはないだろう』
『・・・じゃぁ、私は軍に戻るよ』
軍に戻ろうとするシリルの背中にルルーシュは静止の声をかけた
当然だろう。 ゼロの正体が軍にバレる恐れがある
今のシリルは、そんな不穏分子だ
口封じのため今ここで殺すか、拘束して牢に閉じ込めておくのが妥当だろう
だが、相手は愛おしい妹だ。 そんなこと地球が引っくり返ってもルルーシュに出来るわけがない
そんなルルーシュの心情を知っているかのようにシリルは口を開いた
『心配しないで。 ルルの邪魔をするつもりはないから』
ル「・・信じられる保証がないな・・・軍の人間なら尚更だ」
C『軍人といっても、シリルはブリタニアに忠誠を誓ってはいないぞ』
ル「・・・・」
『変わらないよ。 今も昔も・・・ブリタニアを嫌いな事には変わりない
だから、ゼロがルルで良かった
・・・本当に世界を、変えてくれそうだから』
再び歩き出すシリルを今度は止めることはなかった
ただ もし
私の大切な人たちに危害を加えるようであれば
私は 迷わず あなたに銃を向ける
*
*
ミ『ほぉらシリル! あんたはこっち組みよ』
いつまでも男共の中にいるシリルをミレイは強引に引っ張り、女の子組に加えた
今のところ、ブリタニア軍に不穏な動きは無い
C.C.のこともある。 今は信じるしかないか・・・
*
一行はオシャレな洋服店に入って行った
ミレイ達が店に入った数分後、荷物を両手いっぱいに持った男達は店の前にあるベンチにどかっと座った
店の中は可愛らしく、若い女の子達で賑わっている
その中で、シリルは物珍しそうに店内を見回った
それは軍人のシリルにとって無縁の物ばかり
シャ『ねぇ、シリルはどれにする?』
シャーリーが嬉しそうにミレイと話しかけてきた
『私はただ付いてきただけで、買い物に来たわけではない』
ミ『なぁ~に言ってんのよ! シリルは元が可愛いんだから似合うわよ! こういう服』
フリルのついた、ふわりとした服
きっとユフィなら似合うだろう・・・と思うぐらい女の子らしい服だった
シャ『シリルって普段どんな服着てるの? かわいい系? カジュアル系とか?』
自分の知らない単語が飛び交う中、シリルはバツの悪い顔をし一言、軍服とだけ言った
ミ『ま・・まぁ、それはそうだと思うけど』
シャ『休みの日とかは、さすがに違うでしょ?』
『・・・悪かったな、軍人に休みは無い』
ミ.シャ『っ・・・』
『それに、私はこういう物に興味は無い』
そう言うと、シリルは店を出て行った
後ろで引き留めようとシャーリーの声がしたが、気にせず足を進めた
そんなものはとっくの昔に捨てた・・・
・・・・今更・・っ
*
ス「・・・シリル?」
##IMGR22##
店から一人出てきたシリルは広場の方へ歩いて行った
そんなシリルに気を取られていたためか、リヴァルに呼ばれていることに気がつかなかった
リ「な~に見とれてんだよスザク!!」
ス「えっ?」
リ「なるほどなるほど・・・スザクはシリル嬢に気があると?」
楽しそうにスザクの肩を組むリヴァルにスザクは慌てて言い訳をしようとするが、それにルルーシュも加わってきた
ル「照れるなよ、さっきだって俺にシリルと仲が良いのかどうか聞いてきただろ?」
リ「ほほ~ぅ・・・嫉妬ですかぁ?」
ス「あれは・・べつに嫉妬なんかじゃっ!!」
からかわれるスザクを余所に、店からはシャーリーが飛び出してきた
キョロキョロ辺りを見回したあと、目当てのものを見つけたのか急いでそこへかけて行った
その様子をキョトンと見ている3人
シャ『シリル!』
野良猫とじゃれているシリルの背後で息を切らしながら足を止めた
シャ『・・・ご、ごめんシリル
・・あの・・・私、何も知らなく』
『次はどこへ行くんだ?』
シャ『・・え?』
野良猫を撫でていた手を止め、すくっと立ち上がり、シャーリーに微笑んで見せた
『シャーリーの行きたい所に付き合うよ』
シャ『・・・うん!』
その言葉と表情にシャーリーの顔にはいつもの彼女の明るい笑顔が戻った
私らしくもない・・・
こんなことで心乱されるなんて・・
だが、それをシャーリー達に当たるのは筋違いだ
だけど、こんな気持ちは久しぶりだ
私は自由に生きることは出来ない
これから先も、軍に縛り付けられるだろう
でも今は・・
生徒会のメンバーとこうして触れ合っている時間は、確かに私の中にあって・・少なくとも今は自由に笑っていられる
だから少しだけ、笑って過ごしてもいいのかもな
*
*
シャ『う~~~ん、久々にこんなに買い物したぁ~』
ぐ~~っと上へ伸びるシャーリーに、よくもまぁあれだけ買い物をしたものだ・・と飽きれ顔を向ける
他のメンバーは、ミレイ、ニーナに付き合い、まだ店を回っていた
すると、シャーリーが少し遠慮気味に口を開いた
シャ『シリルは・・・本トに何も買わなくて良かったの・・?』
『言っただろ? 私はただ付いて来ただけだって』
シャ『・・・・』
『でも・・・・楽しかった・・かな』
視線は合わせずに少し照れながら言うシリルにシャーリーは至極ご満悦の様子
そんな楽しい時間に、水を差す輩は後を絶たない
「ねぇねぇ、君たちかわいいねぇ、高校生?」
「暇なら俺たちと遊ばねぇ?」
お決まりのようなセリフを並べてシリル達をナンパし始めたのは、いかにもガラの悪そうな男4人組
困ったように男達の誘いを断るシャーリーだが、そんなことで引き下がるぐらいなら初めっからナンパなどしないだろう
「どうせ暇なんだろ? 俺たちと楽しいコトしようぜ」
シャ『なっ! 離してよ!』
一人がシャーリーの腕を掴み強引に連れて行こうとするが、それも叶わぬ夢
男のシャーリーを掴む腕をシリルががっしりと掴んだ
『離せ』
「あん? そんなに心配しなくてもお前も一緒に可愛いがってやるよ」
「へぇ~、こっちもかなり上玉だなぁ~、ツンデレか?」
下品に笑う男達を余所に、シリルの男の腕を掴む手に力が入った
ミシッと、骨が軋むような音が聞こえるんじゃないかというほど握られた男は悲鳴を上げた
「何しやがんだテメェー!!」
『聞こえなかったのか? 私は離せと言ったんだ』
シャ『シリル・・』
シャーリーを背に男達の前に立つシリルは、さきほどまでショッピングを少なからず楽しんでいた彼女からは想像もつかないほどの鋭く冷たい視線だった
男達は頭に血が上ったのか、シリルに殴りかかった
*
一方、リヴァルがいい加減文句を言い始める頃、ショッピングモールの通りが騒がしくなった
そして聞こえてきたのは、ショッピングモールの通りで喧嘩が起きているということと、男4人を相手にしているのが、アッシュフォード学園の制服を着た女の子だということ
スザクとルルーシュの脳裏にはすぐさまある人物が思い浮かんだ
スザクは持っていた荷物を全部ルルーシュに渡し、騒ぎの起きている場所へ急いだ
*
騒ぎの場所へたどり着いたスザクが目にしたのは、返り討ちにあっている男達の姿だった
相手の攻撃を先読みし、難なく交わす。 赤子の手を捻るよりも簡単に男達を伸(の)していった
そんなシリルの身のこなしにスザクは息を呑んだ
その動きは、速く、正確、そして何より無駄のない・・・恐怖さえ感じるほどだった
それは血の滲むような努力と鍛錬をどれほどしてきたのか想像もつかない
それほどの事をシリルは、あの小さな体で今までやってきたということだ
『まだやる気か?』
「わ・・・悪か・・った、・・・もう・・・・・」
命乞いをする男を見下すと、そのままシリルは背を向け、シャーリーの元へ戻ろうとしていた
ス「シリル! 危ない!!」
*さきほど命乞いをしていた男が立ち上がり、ナイフを手にシリル目掛けて走り込んで来た
だが、シリルは動じず、それを左手で弾いた
『運が良かったな。 私が今、銃を持っていたらお前はとっくに死んでいたからな』
ボソッと男にだけ呟くと、思いきり男の顔面を殴り飛ばした
それを見た他の奴らも恐れをなし、逃げて行った
ふぅ・・と息を吐いたのも束の間、周りにはかなりの野次馬がいた
そのほとんどが、シリルを良い目では見てはいなかった
なんて野蛮な・・
女の子のすることじゃないわ
あそこまですることないだろうに・・
顔に血が飛んでも、眉一つ動かさないなんて・・・
野次馬たちの言うことも分からなくはない
今のシリルを見て、誰が軍人と思うだろう
しかも今は軍服ではない、仮にも学生服だ
そう見られてもおかしくはなかった
振り返って見たシャーリーの表情も驚きと恐怖で固まっていた
シリルはシャーリーに預けた学生鞄を奪い取った
シャ『っ! シリル』
『帰る、気分が悪い』
シャ『シリル・・!』
ス「シャーリー! 大丈夫、僕に任せて」
シャーリーは2人が走って行った方を心配そうに見つめているしかなかった
*
租界から少し外れれば、そこはもう瓦礫の山
今だ続く戦争の爪痕が生々しく残っていた
その一角にシリルはいた
顔は伏せ、膝を抱え込むようにして座り込んでいた
やはり私には、笑って過ごすなど・・・
ましてや女らしくするなど・・・今更、出来るわけがない
私は・・・
「いけないなぁ~、こんなところに学生が来ちゃぁ~」
ゲットーに住むイレブンの中年オヤジが近寄って来た
何も言わないシリルに気を良くしたのか、にへらと笑う
黒く短いスカートから覗く白く綺麗な肌を、男の厭らしい視線が這うようにして見ていた
すると少々息を荒げた男はシリルの肩を抱こうと手を伸ばした
ス「彼女に何か用ですか」
「いでで・・・、くそっ、ヤローがいたのかよ」
男の痛みに歪んだ声が聞こえ、シリルはほんの少しだけ頭を上げた
ス「シリル大丈」
『何の用だ』
心配するスザクに冷たい言葉を放つ
その声色は、軍にいる時のシリルだった
シリルは幾分か顔を上げたが、立っているスザクからは表情が見えない
『私を笑い飛ばしに来たのか? それとも、慰めにでも来たのか?
生憎だったな、今の私には何の』
ス「違う」
スザクは片膝をつき、シリルの右手を取った
*突然の事に、シリルは思わずスザクの顔を見た
そして右手には冷たい感触
それは、小さな袋に入った氷だった
ス「さっきので右手首、捻ったんじゃないかと思って・・・、やっぱり捻ってたね。 少し腫れてる」
『・・・・お前、こんなことのために・・?』
ス「うん、・・・あとシャーリーも心配してたし」
そう言って、スザクはシリルの頬についている血をハンカチで拭き取った
だが、シリルはそのままゆっくりと俯いてしまった
『何に見える・・?』
ス「え?」
突然の質問にスザクは思わず聞き返した
『今の私は、何に見える?
学生か? 軍人か? それともただの女か?』
ス「・・・シリル」
『人は外見を見るものだろう? 外見で中身を判断するものだろう?
中を開ければ、途端に学生でも女でもなくなるっ!』
そう、皆私を見る目は同じ
恐怖・絶望・差別・・・
だから、見ないように、聞かないようにしてきた
『・・なら、私は一体何だと言うんだ・・・・』
乗せている手にぐっと力が入り、スザクの手を握り締めた
一度耳に入ってしまえば、遮ることは出来ない
どんどん私の心を蝕(むしば)んでいく
酷くひび割れてしまった心を治す術を私は知らない
あとは 崩れ落ちてしまうだけ・・
ス「シリルはシリルだよ」
・・・・・え・・?
*
ス「軍人や学生である前に、ただのシリルでしょ?」
『・・・・』
ス「それに、軍の上司でも腕っ節が強くても僕からしたらシリルは女の子だから・・・
だから、あまり無茶しないで」
優しく微笑む笑顔が眩しくて
柔らかく包んでくれる手が温かくて・・・
自分の目頭が熱くなるのがわかった
どうしてこいつは、私の欲しい答えを当たり前のように言い切れるんだ
・・だけどそれが
こんなにも心に沁(し)みるなんて・・・
私は私・・・・か
俯くシリルを心配そうに覗き込むスザクの耳に小さく笑い声が聞こえた
『はは・・、気色悪いな
どういう風の吹きまわしだ? 私を毛嫌いしていただろう?』
それは・・・ι と、困り出すスザク
『でも・・・ありがとう』
##IMGR23##
その時の私は
心から素直に笑えた気がした
・おまけ→
*
セ『あら!? 珍しいわね? 2人一緒に帰って来るなんてv』
スザクとシリル2人が特派に帰って来ると、なんとも嬉しそうに声を上げるセシルの姿があった
するとシリルは、そのままロイドのところまで歩いて行った
ロ「あ、おかえり~! シリルちゃん、スザク君」
『ロイド、ヴァイスにこんなモノがついていたんだが?』
ものごっつ見下すシリルの手には、何かのコードらしきもの
それを見たロイドはぎくりと肩を揺らし、冷や汗をかいていた
ロ「あの・・それはね、シリルちゃん・・ιιι」
『さぁ~て、許しも出たことだ。 ランスロットのサクラダイトでももらうとするか~』
どす黒い表情のシリルの手にはレンチが握られている
それを目にしたとたんロイドは必死にシリルを止めに入った
セ『あらあら・・だから言ったのに、ロイドさんったら』
懲りないんだから・・と、眉を下げて笑うセシルはふと、スザクのあることに気がついた
セ『あら? どうしたのスザク君、顔が真っ赤よ? カゼ?』
ス「あっ・・いえ、なんでもありません(^_^;)」
・・・シリルの笑顔にやられたなんて、とても言えない・・
それにしても・・あれは反則だよなぁ・・・・///
##IMGR24##
・END・
*08.10.6