好きと嫌いの間
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暑い初夏が過ぎようとしていた。
高校球児にとっての、暑い夏が終わった。
東京都・青道高校。
グラウンドには、練習に励む球児達の声が上がっていた。
「コラァ、ピッチャー!!
何じゃ、その腑抜けた球は!
俺をなめてんのか!?」
怒号を轟かせ、ピッチャーに活を入れているのは、3年の東。 その巨漢から繰り出される強打力は、プロも認めるほどだ。
その怒号に眉を寄せながらバットを数本持ち、グラウンドの端っこを歩く女子が1人。
『…ていうか
あの人、殴っていい?』
「いやいや…。 先輩だから……一応」
肩に担いでいたバットの先を地面に下ろし、本音を呟くと、隣に腰を下ろしていた男子が、すかさず突っ込みを入れた。
『私だったら、天狗先輩の弱点に、とことん投げ込んでやるのに』
「ははっ、それはそれで文句つけられるけど」
『克服しろ』
「お前なら、ホントにやりそうで怖ぇな…
てか、東先輩な」
茶色のはねっ毛に帽子を被り、ゴーグルをつけた男子。
1年生の御幸一也。
オレンジの茶髪を高い位置で結い上げ、首にはネックウォーマーを付けた女子。
同じく1年生の北川日向。
怒号が上がるグラウンドを見ながら、言葉のキャッチボールをする2人。
『そういえば、御幸知ってる?』
「ん?」
『高島先生が長野でスカウトした子
今日、見学に来るんだって』
「へぇ~」
「あんな体でプロ行くって!?
マジで、ありえねぇ!」
どこからか飛んできたヤジに、自然と視線が向いた。
高島先生と…
そこには、高島ともう1人。 黒髪の男の子が立っていた。 どうやら今のヤジは、この少年の口から飛んできたようだ。
キレる寸前の東に、グラウンドの空気が凍った。
「あいつじゃね?」
『100%ね』
「しっかし、無知ってのは怖いねぇ」
『いやいや、あれは皆の心の声を代弁してるんだよ
もっと言ってやれ』
「ははっ、確かに!」
意気揚々と話していると、喧嘩腰になった2人は、マウンドで白黒つけようという事になった。
「へへっ…」
『?』
「おもしろそーッスね!
礼ちゃん。 そいつの球、俺が受けてもいい?」
突然の申し出に、驚く周り。
隣にいる日向は、やれやれの様子。
そういう所が、先輩達の癇に障るんだっつーに…わかってんのか?
わかってて、やってんだろうなぁ…
案の定、怒られてるし
でも
こんなことで、怯(ヒル)むこいつじゃない
「けど東さん、最近天狗気味だし…
若者とプレーでもして、初心取り戻した方がいいかと思って…」
「だ…誰が天狗じゃ、コラァ~!!」
『プッ』
「北川! お前も、笑っとんな!!」
でも
御幸のこういう所
結構、気に入ってたりする
笑っている日向に高島は、少年を更衣室まで案内するように言った。
――
―――
着替えを済ませた少年こと、沢村栄純とグラウンドへ戻ってきた。
そこには、プロテクター等々を付けて準備万端の御幸がいた。
『あの子、ピッチャーなんだってね
どんな球を投げるんだろう?』
「礼ちゃん曰く、面白れー球投げるらしい」
『へぇ~』
「でも、本人は気付いていないらしい
んで、その秘めたるポテンシャルを、俺が引き出してやってほしいんだと!」
ニヤッと、どや顔の御幸。
『……そのゴーグル、割っていい?』
「すみません。 それだけは勘弁して…」
御幸にイラついた時の、お馴染みのやり取り。
本気でイラついているわけではないが、御幸のどや顔は無性に腹が立つ。
倉持も同じことを言っていた事は、置いておこう。
準備ができた沢村がマウンドに上がろうとした。
そんな彼に、東がまたもや挑発する。
「おい小僧
詫び入れるなら、今のうちやぞ」
「ムッ」
「そのマウンドに上がっちまったら、どこにも逃げ場はねーからなぁ…」
「えっらそーに…
逃げ場がねーのは、テメェだっつーの!
ていうか…ぶつけられても、文句言うんじゃねーぞ!」
決め台詞なのか捨て台詞なのか、言い切った沢村。
「『プッ…』」
笑いを堪える2人。
「やっぱこいつ、おもしれぇ~」
『大丈夫だよ、沢村君
東先輩には、あの脂肪(チャームポイント)があるから、ぶつけても問題ない!』
「ブハッ……日向、ナイス…」
更に笑いを提供してくれた日向に、親指を立てる御幸。 答えるように日向も親指を立てた。
当然、東からは怒鳴られ。 周りからは、心配の眼差しを向けられた。
アップも終わり、皆の視線がマウンドに集中する。
緊張からか、深く息を吐いた沢村。
う~ん…ちょっと表情が硬いなぁ
それじゃ、力の半分も出せないよ?
御幸がぱっとグローブを構えた。
そして期待とは裏腹に、沢村の投げた球は、ホームベース手前の地面に叩きつけられた。
『!!』
暴投ともとれる今の一球に、かなりの違和感を覚えた。
なんだろう…今の…
投げる瞬間に軌道を無理矢理変えたように見えたけど…
いや
それ以前に あの子…
するとタイムを取って沢村の所に行っていた御幸が、突然笑い出した。
何かを話した後、ゲーム再開。 戻ってきた御幸の表情を見て、胸が躍った。
御幸の表情が生き生きしてる
少なくとも、沢村君のこと気に入ったみたい
おもしろい球…か
2球目、3球目と投げては、ことごとくバットに当てられるが、すべてファール。
沢村がボールを投げる度に笑いが止まらない。
『…なるほどね』
「?」
『あんなにもナチュラルなムービングボール、初めて見た』
わくわくする
まるで 大きな原石を見つけたみたいに
――
―――
―――――
『さてっと』
雑誌を手にベットにうつ伏せで寝転がる。
ここ青心寮には、野球部の部員が寝泊まりをしている。
そして日向も立派なここの寮生だ。 勿論、日向以外は全員男。
日向の実家は、神奈川県にある為、寮生活を送っているのだ。
女という事で、それなりに決め事は多々あるが、それなりに楽しくやっている。
青心寮2階の一番奥の部屋が日向の部屋だ。
ペラペラと雑誌のページを捲っていると、部屋をノックする音が聞こえた。
『開いてるよ~』
相手も確かめずに入室許可の声を上げる。
ガチャリと開いたドアから入ってきたのは…。
「お前…少しは確認ぐらいしろよな」
『だって、後で来るって言ってたし』
「別の誰かだったらどーすんだよ」
『野球部員なら、別段困ることないし
外部からの侵入なんて、ほぼ不可』
「少しは警戒心持てよな~」
『へいへい
あ。 スコアブック机の上ね』
こんな御幸の警告もいつもの事。
言われた通り、机の上にあるスコアブックを手に取り、そのまま寝転ぶ日向のベットに腰かけた。
『そういえば、楽しそうだったね
沢村君の球受けてる時の御幸』
「おもしれぇよ、あいつ」
『肩関節が柔らかく、まるで鞭みたいにしなる左腕と、リリース直前のボールに強力なスピンを加えられる柔らかな手首』
「…」
『そして、ボールが打者の手元で上下左右に変化するナチュラルなムービングボール
捕手として、リードできれば楽しいだろうね』
「さすが、元ピッチャー… いてっ」
『”元”は余計だ』
あそこから見ていて、ここまでわかるこいつの洞察力と観察力は、ホント敬服する
最後のケリは余計だけど…
けど、日向のすごい所は、ピッチングよりもバッティングだ
ま。 それを買われて、青道(ここ)に来たみたいだけどな
コチコチ…
お互い会話のないまま、時計の音とページを捲る音だけが響いていた。
互いにこんな事はよくある事で、他の部員からは”ケンカでもしたのか?”と、よく言われたものだ。
次のページを捲った日向の目にある物が映った。
『今月のピックアップルーキー
”この男から目を離すな”』
「?」
『名門青道の救世主となるか! 1年生捕手、御幸一也16才……だって』
「なになに?」
と言いながら、ドカリと背中に乗ってくる御幸。
日向の見ているページの右上に載っているキャッチャー姿の自分の写真を見つけた。
「さすが俺。 超有名人じゃん」
『どうでもいいけど…重い』
「これ以上モテたらどーしような」
『早くどけ! アホ眼鏡』
御幸の下でじたばたする日向だが、乗っている御幸にどく気配はない。
「なんだよ、ほめてくんねーの?」
『その性格直したら、いくらでもほめてあげる』
「はっはっはっ、ありがとう」
『ほめてないから』
ニヤッと笑う御幸に腹を立てたのは言うまでもない。
こいつのこういう所が無ければ、いい奴なんだけど…
『早くどけ』
「ん~…日向風呂上り?」
『人の話を聞け』
「…日向ちゃん、いい匂いv」
『っ!』
首近くの匂いを嗅ぐ御幸に、鳥肌が立った。
『ぎゃあーやめろー!! クソ眼鏡!!』
「相変わらず口悪りーなぁ
女の子がクソとか言わないの」
『うるせー! お前の眼鏡割ってやる!!』
「はっはっはっ
出来るものならやってみろ」
さらに体重を乗せ、抵抗する日向を抑え込む。
ジャレついていると、またもノック音の後に部屋のドアが開いた。
顔を出したのは、2年生の厳つい兄ちゃんこと伊佐敷純と、裏の支配者、小湊亮介だった。
「おい日向、今月号持って来てやったぞ」
『純さん! ちょうど良かった! 助けて~! 御幸に殺(ヤら)れるぅ~』
入ってきた伊佐敷に助けを乞う。
「なんか、面白そうな事してるね」
「み~ゆ~き~
当然、日向の了解を得てヤってんだろうなぁ~」
「え… 純さん何か勘違いしてますよ
遊んでただけっスよ
しかも、変換違ってますし」
『え~ん、怖かったよー亮介先輩!』
「よしよし」
「おい」
いつの間にか亮介の元へ(ウソ)泣きついている日向。
伊佐敷の顔には青筋が増していた。
そして、御幸に迫る黒い影。
「御幸…俺の部屋来いコラ!
じっくり話聞いてやるよ」
「いや…だから、誤解っスよ!」
「早く来いコラァ!!」
連行されていく御幸であった。
・END・
17/6/1
◇じゃれつく2人にニヤニヤしながら書きました( *´艸`)
純さんにとって夢主は、かわいい妹みたいなものになっています。
そして、度々純さんにしめられている御幸だったり(笑)
高校球児にとっての、暑い夏が終わった。
東京都・青道高校。
グラウンドには、練習に励む球児達の声が上がっていた。
「コラァ、ピッチャー!!
何じゃ、その腑抜けた球は!
俺をなめてんのか!?」
怒号を轟かせ、ピッチャーに活を入れているのは、3年の東。 その巨漢から繰り出される強打力は、プロも認めるほどだ。
その怒号に眉を寄せながらバットを数本持ち、グラウンドの端っこを歩く女子が1人。
『…ていうか
あの人、殴っていい?』
「いやいや…。 先輩だから……一応」
肩に担いでいたバットの先を地面に下ろし、本音を呟くと、隣に腰を下ろしていた男子が、すかさず突っ込みを入れた。
『私だったら、天狗先輩の弱点に、とことん投げ込んでやるのに』
「ははっ、それはそれで文句つけられるけど」
『克服しろ』
「お前なら、ホントにやりそうで怖ぇな…
てか、東先輩な」
茶色のはねっ毛に帽子を被り、ゴーグルをつけた男子。
1年生の御幸一也。
オレンジの茶髪を高い位置で結い上げ、首にはネックウォーマーを付けた女子。
同じく1年生の北川日向。
怒号が上がるグラウンドを見ながら、言葉のキャッチボールをする2人。
『そういえば、御幸知ってる?』
「ん?」
『高島先生が長野でスカウトした子
今日、見学に来るんだって』
「へぇ~」
「あんな体でプロ行くって!?
マジで、ありえねぇ!」
どこからか飛んできたヤジに、自然と視線が向いた。
高島先生と…
そこには、高島ともう1人。 黒髪の男の子が立っていた。 どうやら今のヤジは、この少年の口から飛んできたようだ。
キレる寸前の東に、グラウンドの空気が凍った。
「あいつじゃね?」
『100%ね』
「しっかし、無知ってのは怖いねぇ」
『いやいや、あれは皆の心の声を代弁してるんだよ
もっと言ってやれ』
「ははっ、確かに!」
意気揚々と話していると、喧嘩腰になった2人は、マウンドで白黒つけようという事になった。
「へへっ…」
『?』
「おもしろそーッスね!
礼ちゃん。 そいつの球、俺が受けてもいい?」
突然の申し出に、驚く周り。
隣にいる日向は、やれやれの様子。
そういう所が、先輩達の癇に障るんだっつーに…わかってんのか?
わかってて、やってんだろうなぁ…
案の定、怒られてるし
でも
こんなことで、怯(ヒル)むこいつじゃない
「けど東さん、最近天狗気味だし…
若者とプレーでもして、初心取り戻した方がいいかと思って…」
「だ…誰が天狗じゃ、コラァ~!!」
『プッ』
「北川! お前も、笑っとんな!!」
でも
御幸のこういう所
結構、気に入ってたりする
笑っている日向に高島は、少年を更衣室まで案内するように言った。
――
―――
着替えを済ませた少年こと、沢村栄純とグラウンドへ戻ってきた。
そこには、プロテクター等々を付けて準備万端の御幸がいた。
『あの子、ピッチャーなんだってね
どんな球を投げるんだろう?』
「礼ちゃん曰く、面白れー球投げるらしい」
『へぇ~』
「でも、本人は気付いていないらしい
んで、その秘めたるポテンシャルを、俺が引き出してやってほしいんだと!」
ニヤッと、どや顔の御幸。
『……そのゴーグル、割っていい?』
「すみません。 それだけは勘弁して…」
御幸にイラついた時の、お馴染みのやり取り。
本気でイラついているわけではないが、御幸のどや顔は無性に腹が立つ。
倉持も同じことを言っていた事は、置いておこう。
準備ができた沢村がマウンドに上がろうとした。
そんな彼に、東がまたもや挑発する。
「おい小僧
詫び入れるなら、今のうちやぞ」
「ムッ」
「そのマウンドに上がっちまったら、どこにも逃げ場はねーからなぁ…」
「えっらそーに…
逃げ場がねーのは、テメェだっつーの!
ていうか…ぶつけられても、文句言うんじゃねーぞ!」
決め台詞なのか捨て台詞なのか、言い切った沢村。
「『プッ…』」
笑いを堪える2人。
「やっぱこいつ、おもしれぇ~」
『大丈夫だよ、沢村君
東先輩には、あの脂肪(チャームポイント)があるから、ぶつけても問題ない!』
「ブハッ……日向、ナイス…」
更に笑いを提供してくれた日向に、親指を立てる御幸。 答えるように日向も親指を立てた。
当然、東からは怒鳴られ。 周りからは、心配の眼差しを向けられた。
アップも終わり、皆の視線がマウンドに集中する。
緊張からか、深く息を吐いた沢村。
う~ん…ちょっと表情が硬いなぁ
それじゃ、力の半分も出せないよ?
御幸がぱっとグローブを構えた。
そして期待とは裏腹に、沢村の投げた球は、ホームベース手前の地面に叩きつけられた。
『!!』
暴投ともとれる今の一球に、かなりの違和感を覚えた。
なんだろう…今の…
投げる瞬間に軌道を無理矢理変えたように見えたけど…
いや
それ以前に あの子…
するとタイムを取って沢村の所に行っていた御幸が、突然笑い出した。
何かを話した後、ゲーム再開。 戻ってきた御幸の表情を見て、胸が躍った。
御幸の表情が生き生きしてる
少なくとも、沢村君のこと気に入ったみたい
おもしろい球…か
2球目、3球目と投げては、ことごとくバットに当てられるが、すべてファール。
沢村がボールを投げる度に笑いが止まらない。
『…なるほどね』
「?」
『あんなにもナチュラルなムービングボール、初めて見た』
わくわくする
まるで 大きな原石を見つけたみたいに
――
―――
―――――
『さてっと』
雑誌を手にベットにうつ伏せで寝転がる。
ここ青心寮には、野球部の部員が寝泊まりをしている。
そして日向も立派なここの寮生だ。 勿論、日向以外は全員男。
日向の実家は、神奈川県にある為、寮生活を送っているのだ。
女という事で、それなりに決め事は多々あるが、それなりに楽しくやっている。
青心寮2階の一番奥の部屋が日向の部屋だ。
ペラペラと雑誌のページを捲っていると、部屋をノックする音が聞こえた。
『開いてるよ~』
相手も確かめずに入室許可の声を上げる。
ガチャリと開いたドアから入ってきたのは…。
「お前…少しは確認ぐらいしろよな」
『だって、後で来るって言ってたし』
「別の誰かだったらどーすんだよ」
『野球部員なら、別段困ることないし
外部からの侵入なんて、ほぼ不可』
「少しは警戒心持てよな~」
『へいへい
あ。 スコアブック机の上ね』
こんな御幸の警告もいつもの事。
言われた通り、机の上にあるスコアブックを手に取り、そのまま寝転ぶ日向のベットに腰かけた。
『そういえば、楽しそうだったね
沢村君の球受けてる時の御幸』
「おもしれぇよ、あいつ」
『肩関節が柔らかく、まるで鞭みたいにしなる左腕と、リリース直前のボールに強力なスピンを加えられる柔らかな手首』
「…」
『そして、ボールが打者の手元で上下左右に変化するナチュラルなムービングボール
捕手として、リードできれば楽しいだろうね』
「さすが、元ピッチャー… いてっ」
『”元”は余計だ』
あそこから見ていて、ここまでわかるこいつの洞察力と観察力は、ホント敬服する
最後のケリは余計だけど…
けど、日向のすごい所は、ピッチングよりもバッティングだ
ま。 それを買われて、青道(ここ)に来たみたいだけどな
コチコチ…
お互い会話のないまま、時計の音とページを捲る音だけが響いていた。
互いにこんな事はよくある事で、他の部員からは”ケンカでもしたのか?”と、よく言われたものだ。
次のページを捲った日向の目にある物が映った。
『今月のピックアップルーキー
”この男から目を離すな”』
「?」
『名門青道の救世主となるか! 1年生捕手、御幸一也16才……だって』
「なになに?」
と言いながら、ドカリと背中に乗ってくる御幸。
日向の見ているページの右上に載っているキャッチャー姿の自分の写真を見つけた。
「さすが俺。 超有名人じゃん」
『どうでもいいけど…重い』
「これ以上モテたらどーしような」
『早くどけ! アホ眼鏡』
御幸の下でじたばたする日向だが、乗っている御幸にどく気配はない。
「なんだよ、ほめてくんねーの?」
『その性格直したら、いくらでもほめてあげる』
「はっはっはっ、ありがとう」
『ほめてないから』
ニヤッと笑う御幸に腹を立てたのは言うまでもない。
こいつのこういう所が無ければ、いい奴なんだけど…
『早くどけ』
「ん~…日向風呂上り?」
『人の話を聞け』
「…日向ちゃん、いい匂いv」
『っ!』
首近くの匂いを嗅ぐ御幸に、鳥肌が立った。
『ぎゃあーやめろー!! クソ眼鏡!!』
「相変わらず口悪りーなぁ
女の子がクソとか言わないの」
『うるせー! お前の眼鏡割ってやる!!』
「はっはっはっ
出来るものならやってみろ」
さらに体重を乗せ、抵抗する日向を抑え込む。
ジャレついていると、またもノック音の後に部屋のドアが開いた。
顔を出したのは、2年生の厳つい兄ちゃんこと伊佐敷純と、裏の支配者、小湊亮介だった。
「おい日向、今月号持って来てやったぞ」
『純さん! ちょうど良かった! 助けて~! 御幸に殺(ヤら)れるぅ~』
入ってきた伊佐敷に助けを乞う。
「なんか、面白そうな事してるね」
「み~ゆ~き~
当然、日向の了解を得てヤってんだろうなぁ~」
「え… 純さん何か勘違いしてますよ
遊んでただけっスよ
しかも、変換違ってますし」
『え~ん、怖かったよー亮介先輩!』
「よしよし」
「おい」
いつの間にか亮介の元へ(ウソ)泣きついている日向。
伊佐敷の顔には青筋が増していた。
そして、御幸に迫る黒い影。
「御幸…俺の部屋来いコラ!
じっくり話聞いてやるよ」
「いや…だから、誤解っスよ!」
「早く来いコラァ!!」
連行されていく御幸であった。
・END・
17/6/1
◇じゃれつく2人にニヤニヤしながら書きました( *´艸`)
純さんにとって夢主は、かわいい妹みたいなものになっています。
そして、度々純さんにしめられている御幸だったり(笑)