哀しみの蒼に (調整中)
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アッシュフォード学園の校舎横にあるクラブハウス
綺麗な西洋風の建物、そこに現在ルルーシュ達は住んでいる
まさか、こんなにも近くにいたなんて
思いもしなかった
・再会(続)・
*
ル「ただいま、ナナリー、咲世子さん」
帰宅したルルーシュを笑顔で出迎えたのは、家政婦の咲世子と車椅子に乗った可愛い妹のナナリー
二人はここ、アッシュフォード学園の理事長でもある、アッシュフォード家に実質上、匿(かくま)ってもらっている身
その時にこのクラブハウスを貸し与えてもらっていた
そのため、アッシュフォード家の人間にはルルーシュ達が皇族だということは、知られている
勿論、孫娘であるミレイも知っていることだ
ル「今日はナナリーにプレゼントがあるんだ」
ナ『まぁ、何でしょう??』
喜ぶナナリーを見て、ルルーシュは車椅子の後ろにいる咲夜子に静かにという合図に、口に人差し指をあてた
咲夜子がうなづくと、ルルーシュは後ろに向かい手招きをしてシリルを呼んだ
シリルはそっと部屋に入ると、車椅子に座っているナナリーが目に入った
その姿は、シリルの記憶の中にあるナナリーとは幾分か大人になった姿だった
だが、あの時の後遺症が成長したナナリーの身体に生々しいく残っていた
地面を踏み締める事も、光の世界を見る事も叶わない
シリルは、零(こぼれ)落ちそうになる涙をぐっと堪えた
目の前の幼い妹の残酷な姿よりも、逢えた喜びの方が何倍にも勝っていたのだ
シリルはナナリーの前でしゃがみ込み、そっと手を握りしめた
すると、ナナリーの瞼がひどく揺らいだ
ナ『この手・・・・姉様・・・シリル姉様!?』
『ナナリー・・大きくなったね』
忘れることのない大好きな優しい手
ナナリーの閉じられた瞳からは、大粒の涙が次から次へと零落ちた
そして、シリルの頬にも嬉し涙が伝った
本当に無事で良かった
ルルもナナリーも・・・
数年も離れ離れになっていた時間を、埋めるかのように3人は言葉を交わしつづけた
もう二度と途切れることの無いように・・・
*そんな幸せの時間というのは、あっという間に過ぎてしまうものだ
広い玄関ホールには、シリルとルルーシュの姿
『なんか早いな』
ル「ん?」
『今日ほど一日が短いと感じたことは無かった』
そして、今日という日が終わらなければいいなんて思ったのは初めてだ
離れるのが名残惜しいのか、シリルはルルーシュの服の裾をちょんと掴んでいた
そんなシリルの手を優しく包み込んだ
ル「さっきも言っただろ? これからはいつでも会えるって」
『・・うん//』
はにかむシリルの表情は、今まで彼女の歩んできた道には似つかないほど穏やかな笑みだった
髪を撫でてくれるルルの大きな手が心地良くて、このままルルーシュ達とひっそり暮らしたい・・そう思ってしまうほどここは、安心の出来る場所
・・・でも
シリルは自分を撫でるルルーシュの手を取った
ふとしたシリルの行動にルルーシュは頭を傾げた
『ルル・・私たち他人でいよう』
ル「な! 何を言っているんだ!」
突然のシリルの発言にルルーシュは酷く驚いた
無理もない、漸く逢えた愛おしい妹
なのに、他人でいようなどとルルーシュにとっては、かなり堪え難い仕打ちだ
『・・・知っての通り、私の性は偽名でも何でもない、あのシ家のものよ
私が正式に軍に入った時に与えられたものなの・・・王位継承権返上の代わりに・・
私が皇女だと知る者はほんの一握りだけ・・だから、軍に知られるわけにはいかない!
それに、ルルとの事があいつに知られたら、また離される! 絶対っ・・・・離れ離れになる・・』
ル「・・・・」
『他人でいる方が私たちのためにも、ナナリーのためにもなる・・・・だから今は・・・』
ル「・・わかった」
ルルーシュは悲しみに満ちたシリルの肩にポンと手を置いた
ル「だが、シリルは俺にとって大事な妹だ
それは変わらない、何があっても・・・絶対にだ!」
『・・うん』
正直、他人のフリなんてどれだけ心を殺せばいいかわからない
だけど、これ以上離れたくないから
今は こうすることしか出来ない
*と、その時、後ろから今は聞き慣れた声がした
ス「ルルーシュ! シリル!」
後ろにある階段を軽やかに下りてくるのは、柔らかい猫っ毛頭のスザクだった
どうやら生徒会の仕事でこんな時間になってしまったようだ
ス「ルルーシュ、いたんなら手伝ってくれればいいのに」
ル「悪いな・・ところで、スザク今帰りだろ? シリルを送ってやってほしいんだ」
『ルっ!』
ル「流石にこんな時間に一人で帰すのは危ないからな」
シリルの反対意見を遮り、スザクに頼んだ
可愛い妹をこんな夜遅くに一人歩きさせるよりは、スザクに頼んだ方がよっぽど安心だったのだろう
頼まれたスザクも快く引き受けた
調度、シリルの部屋も特派の方に出来たというのもあった
シリルはというと、 少しふて腐れてルルーシュを睨むと、ルルーシュは困ったように笑顔を見せた
ル「じゃあシリル、また明日、学校で」
不安なのかシリルは戸惑いながらルルーシュから離れて行った
さっきの自分の言葉を自分自身に言い聞かせながら
真っ暗な中、ほどよい風が頬や髪を撫でていく
だが、二人の間には会話は無く、少し前を歩くシリルの靡(なび)く髪をもどかしく見ていた
こんな時間までルルーシュと何をしていたんだろう・・?
ぼーっとしていたのか、そんなことしか思い浮かばなかった
ス「ねぇシリル、クラブハウスで何してたの?」
『ナナリーと話しをしていた』
ス「こんな時間まで?」
『そんなに私のことが気になるのか?』
ス「えっΣ!ぁ・・いや・・・そういうわけじゃ」
突然の質問に一瞬ドキッとしてしまうスザクだが、プイっとシリルは前に向き直り、髪を靡かせてまた歩き始めた
その素っ気ない振る舞いにスザクは眉を寄せた
さっきルルーシュと話していた時のシリルの表情は、遠目からでもわかるぐらい穏やかだった
まるで、あの日ユフィに向けていた表情のように
この違いは何だろう・・・
それにユフィにはわかるが、今日初めて会ったルルーシュにはなぜ・・?
そんな疑問が浮かばすにはいられなかった
初めて会った時のシリルと、今のシリルでは自分に対する態度があまりにも違うから
*
ス「シリル、今朝の朝食ありがとう! おいしかったよ」
『あれは泊めてもらった礼だ。お前がそれに礼を言うのは、おかしいと思うが?』
ス「そ、そうかな・・・(¨;)」
やはり自分には冷たいシリルに、スザクはたじたじ
そこはスザクの天然、めげずに話しを続ける
ス「そう言えば、ビックリしたよ! シリルが転校して来るなんて」
『私も今朝言われたからな』
ス「・・僕と同じクラスなんて偶然だね・・f^_^;」
『・・・同じクラス?』
ス「うん・・・・・?」
足を止め、スザクの方を向いたシリルは疑問の表情だった
それにスザクも頭に?を浮かべた
しばしの沈黙
『同じクラスだったのか』
ス「っていうか僕、シリルの隣だけど・・・」
『・・・そうか、気づかなかった』
「・・・・・・」
そしてまた歩き始めたシリル
隣の席だったにも関わらず、気づいてもらえ無かったなんて、どれだけ影が薄くても有り得ないことだ
そんな有り得ないことに、スザクの心はかなりのダメージを受けていた
仕方が無いと言ってしまえばスザクが可哀相だが、その時のシリルはルルーシュの事で頭がいっぱいだったため、他の事など眼中に無かったのだ
だが、そんなことスザクが知るはずもないが・・・
さすがのスザクもこんな一方通行みたいな会話は嫌だった
仕事にも支障をきたさないためにも、思い切って聞いてみた
ス「シリル! ・・もしかして僕の事、嫌ってる?」
出会った時はそうでもなかった。 少なくとも嫌われてはいないと思っていた
でも、もしそうなら原因は?
そう考える中、シリルの足が止まった
嫌な空気が流れ始めた時、こちらを向いたシリルは、微笑んでいるように見えた
『わかってるじゃないか』
それだけ言うと、シリルは自室に入って行った
スザクは暫く、その場に立ち尽くしていた
なんだろう
嫌われているのは、慣れているはずなのに・・・
胸に何かが刺さったみたいに痛い・・
シリルが僕を嫌う理由
思い付くのは一つしかない
自分が元イレブンで、名誉ブリタニア人だから
今までもそうやって裏切り者扱いされ、虐げられてきたから・・シリルもきっと・・・
ただ それだけ
今までと同じ
それだけなんだ・・・
自室に入ったシリルは、暫く扉にもたれ掛かっていた
あいつ、なんであんなにも悲しそうな瞳だったんだ・・・?
今までの奴らなら、憎しみと嫉みに満ちた目をしてくるか、腰を低くする奴らばかりだったのに・・
あいつは、何か他の奴らと違う
もしかして私は、何か勘違いをしているのだろうか?
・END・
*08.8.27