哀しみの蒼に (調整中)
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シンジュクゲットー。
テロ事件の爪跡は
弱き者にほど 深く残るもの
・皇女と漆黒のナイトメア・
・先日のテロ事件以来、ブリタニア軍による攻撃の跡が生々しく残っていた。 立っている建物はほとんど無く、あるのは瓦礫の山と生気を失った人々だけ。
至る所に訪ね人の張り紙。 花やおもちゃが供えてある木や瓦礫。
ユーフェミアとシリルが目にしたのは、そんな杜撰(ズサン)な光景だった。
シュナイゼル殿下の言っていた通り
他の国と比べて、日本(ここ)はまだ内乱が酷く続いている
そのために、罪のない弱い命までも消えてしまっている…
これは思っていた以上に状況が酷いな…
……私に何が出来るんだろう…
その時、向こうの方で大きな爆発音と共に黒い煙が上がった。
スザクとシリルは、咄嗟(トッサ)にそちらへ足を向けようとした。 が、それを阻むかのようにタイミングよく、大きなトレーラーが走り込んで来た。
セ『スザク君! ここは危険よ。 乗って!』
ス「セシルさん!」
ロ「純血派の内輪揉めなんだよ」
『(ロイドにセシルさん!?)』
トレーラーに乗っていたのは、美人な女性セシルと、眼鏡を掛けたなんとも怪しげな男ロイドの2人。 この危険な状況にも関わらず、顔がへらへら笑っている。
さっさと、とんずらしようとするロイドに、スザクは待ったをかけた。
ス「ランスロットの戦闘データを取るチャンスなんじゃないでしょうか」
スザクの発言にセシルは驚き、ロイドは楽しそうに笑った。
心配そうに自分の名前を呼ぶユーフェミアに向き直る。
ス「ごめんユフィ、シリル。 ここでお別れだ
僕は行かなきゃならない…ランスロットなら止められるはずだから」
そう言い残すと、スザクはランスロットに乗り込み、未だ爆発音の止まない戦地へと飛び出して行った。
『ロイド。 あいつ本トのとこ、戦闘データなんてどうでもいいんじゃないか?』
ユ、セ『『え?』』
『戦闘データ(それ)はランスロットを動かすだけのただの口実
本当は、内輪揉めを止めに行きたかった……そうだろ?』
ランスロットの消えた先から2人に目を向けると、2人は実に対照的な顔をした。
セ『シリルちゃん!!? どうしてここに!』
ロ「さすがだねぇ~v」
『あっ! ユフィ!!』
ロイドとセシルに目を向けていたのを見計らったかのように、ユーフェミアはスザクの後を追いかけて行ってしまった。
まったく…と呆れた顔をするシリル。
『ロイド、ヴァイスを出して
取りに行ってたんでしょ?』
ロ「おほv 行くのかい?」
『仕方がないだろ…。 お姫様が行っちゃったんだから』
シリルは起動キーを右手の指で上に弾き、掌で掴んだ。
ロイドは嬉しそうにセシルに、”ヴァイス”の発進準備をするように指示をした。
『はぁー…』
まったく
どいつもこいつも自分勝手な…
・一方、内輪揉めの現場では、1機のナイトメアを4機の機体が取り囲んでいた。
事の発端はクロヴィス殿下殺害の罪で、スザクを軍事法廷へと連行しようとしたあの日にあった。
突如現れた”ゼロ”と名乗る仮面の男。
彼はクロヴィスを殺害したのは自分だと自供した。 にも拘(カカワ)らず、容疑者のスザクだけではなく、真犯人のゼロをも見逃したという純血派のジェレミア。
メンバーであるキューエルは、純血派の失墜の要因となったジェレミアを、処刑しようと企てていた。
そして今に至る。
内輪揉めの輪の中に、ランスロットに乗ったスザクが割って入ってきた。
キュ「特派が何用だ! 介入するなら誰であろうと撃つ!」
ス「だめです! 意味のない戦いを見過ごすわけにはいきません」
戦いに介入したスザク。
キューエル達は、ランスロットの素早い動きについて行けず、防戦一方になっていた。
力の差があり過ぎると感じたキューエルは、他の機体に下がるように命じた。
ス「わかっていただけましたか」
サザーランドが後退したことで、スザクは自分の思いが分かってもらえたのだと警戒を解いた。
次にキューエルから放たれた言葉に驚かされるとも知らずに。
キュ「ケイオス爆雷を使う」
ケイオス爆雷が放たれたと同時に防御に入るランスロットだが、スザクの目に信じられないものが飛び込んできた。
ユ『おやめなさい!!』
ス「あっ!!」
戦場に生身でかけてくるユーフェミアの姿だった。
スザクは咄嗟(トッサ)に自分を盾にして、ユ彼女を守ろうとした。
それは一瞬の出来事だった。
ケイオス爆雷は役目を果たす前に真っ二つになり、それを放ったキューエルのサザーランドの両腕と共に地面に転がっていた。
そしてランスロットの目の前には、見知らぬ黒いナイトメアが1機、佇(タタズ)んでいた。
ヴィ『あ…あれは、まさか!』
ジェ「漆黒の翼…!」
キュ「(皇帝直属の機体が何故ここにっ!!?)」
純血派の3人は驚きの余り、その場から誰一人として一歩も動けなかった。
ただ一人、状況が呑み込めていないスザクは、その黒いナイトメアを凝視するしかなかった。
ケイオス爆雷が爆発するあの瞬時に、真っ二つに切り落として、さらにサザーランドの両腕まで破壊するなんて…何なんだ、あのナイトメアは……
外観は何となくランスロットに似ているけど
『双方とも剣を収めよ! 皇女殿下のいるこの場を戦場にするつもりか!?』
ス「皇女…殿下?」
黒いナイトメアから凛々しく響く声が聞こえたと思ったら、後ろにいたユーフェミアがランスロットの前に出た。
それが合図だったかのように、黒のナイトメアのコックピットが開き、中からは見覚えのある黒く藍みがかった髪をした少女が出て来た。
スザクはその姿を見て、目を見開いた。
ス「…シリル!?」
驚くのも無理は無い。
先ほどまで、一緒に街を観光していた少女なのだから。
ナイトメアから降りたシリルはユフィの前で跪いた
ユ『我名において命じさせていただきます! 私(わたくし)はブリタニア第3皇女・ユーフェミア・リ・ブリタニアです』
ス「へっ!?」
ユ『この場は私(わたくし)が預かります! 双方とも下がりなさい!』
凛とした声を張り上げユフィはこの場を静めた
かなり混乱しているスザクは、ただただ驚くしかなかった
それは周りの純血派の3人も同様だった
何の反応も無い兵士たちにシリルは立ち上がり怒声を上げた
『お前たち! いつまでそうしているつもりだ!
皇女殿下の御膳であるぞ! 全員、即刻コックピットから降りよ!!
枢木スザク!! お前もだ!』
ハッとしたスザクは急いでコックピットから出た
セ『皇女殿下ですって! ロイドさん知っていました?』
ロ「まぁ~ね、今まで学生で表には出てなかったからね
それにしてもシリルちゃんのナイトメア捌(さば)きはいつ見ても惚れ惚れするね~v」
セ『え?』
ロ「だって普通はできないよぉ? ケイオス爆雷を真っ二つにするなんてv!」
ロイドはにんまりと笑いかなりの上機嫌だ
はぁ・・と、少々あきれ気味のセシルをよそに独り言のようにシリルとヴァイスをベタ褒めしていた
・
ス「皇女殿下!」
ランスロットから降りたスザクはユフィに近づいた
ス「知らぬこととはいえ失礼致しました」
”皇女殿下”その言葉にユフィは眉を潜めた
まるで一線を引かれてしまったかのようだった
一般では、それは当たり前のことなのだがスザクに出会ってからの時間を思い出すと、やはり寂しさが込み上げてくる
だが、今は自らが皇族の名を出したのだからそんなことは言ってられない
ユフィは皇女としての眼差しをスザクに向けた
ユ『スザクあなたは父を失い、同じように私は兄を失いました
みんなの大切な人を失わなくて済むよう力を貸していただけますか?』
ス「・・もったいなきお言葉」
スザクはユフィの心安らぐ言葉にその場に膝ま付いた
無益な戦いで大事な命を失いたくない、失わせたくない
そんな想いがスザクの心に染みてくる
ユフィなら、このブリタニアを変えていけるかもしれない
己の進むべき道を見出したスザクだった
『ではユーフェミア様そろそろ・・
迎えの者も着きましたので』
ユ『わかりました』
スザクに何か言おうとしたがユフィはそれをぐっと堪えた
一人の軍人に肩入れするのは良く思われないこと
それをユフィはよく知っていた
ユフィは名残惜しそうにスザクの姿を見て歩き出した
その後に続いてシリルも歩き出したが・・
*
『そうだキューエル卿、言い忘れていたが今回の件、コーネリア新総督には私から報告をしておく』
キュ「!!」
『何か弁解でもあるか?』
キュ「・・・・いえ・・」
シリルの突然の言葉にキューエルは虫を噛み潰したかのように歯を食いしばった
身を翻したシリルは、途中ロイドにヴァイスの起動キーを渡し、持って帰るように頼んだ
ロイドは何か良いことを思いついたのか嬉しそうにキーを受け取った
が、それに釘を刺すようにシリルは低音で告げた
『ロイド、ヴァイスに妙なことしたらお前のランスロット解体(バラ)すからな』
ロ「びくっ∑!!」
ロイドはへらっとした笑顔を引き攣(つ)らせシリルに返事をした
差し詰め、ヴァイスのデータでも取るつもりだったのだろう
そんな会話をしているとも知らずに、去っていく2人の姿を茫然と見つめていたスザク
まさかユフィが皇女殿下だったなんて・・・
それに
ス「・・・シリル」
彼女は一体何者なんだろう・・?
どうしてナイトメアなんかに
ランスロットの隣にいる黒いナイトメアルレーム・ヴァイスを見上げ、返事のない問い掛けをしていた
この出会いがスザクの人生に大きく関わってくるなんて微塵も思ってはいなかった
・END・
*08.5.31