貴方と私の生きる道 (調整中)
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禁城内、古書室
新しい資料庫が出来てから
今は、余り使われていない部屋
古い文献や歴史書などが置かれている
窓を開け放ち、ハタキを手にしたフィアの姿がそこにあった
『・・・・・
これなら、良さそう』
「何をしている」
『Σひゃっ!!?』
ついつい本に目を奪われていたフィアは、背後に近づく者に気付きもしなかった
突然の声に驚きの声を上げ、読んでいた本を落としてしまう始末
振り返るフィアの目の前にいたのは、思いもしない人物だった
『こ、紅炎様!?』
炎「お前は・・白龍の従者だったな」
『は、はいっ! フィアと申します』
咄嗟に片膝を床に付け、顔の前で手を組んだ
炎「で、従者がこんな所で何をしている」
『・・そうじ・・です』
炎「そんなことは、女官のやることじゃないのか?」
『おっしゃる通りです
ですが、新しい資料庫が出来てから、この古書室は余り使われなくなりました
確かに、女官達も定期的に掃除をしています
しかし、本の事までは手が回っていないのも現状です
ここには貴重で珍しい古書が、数多くあります
それを枯れさせない為に、時折、本を陰干して・・・』
はたと、言葉を失うフィア
自分は何を口走っているのだ
相手は、第一皇子であり、征西軍総督でもある御方
簡潔に述べるべき所を、ペラペラと余計な事まで
フィアの胸中は、やってしまった・・・ι と、焦りの色を隠せないでいた
しかし、紅炎から返ってきた言葉は、意外なものだった
炎「最近、やけに整理されていると思ったら、お前がしていたのか」
『・・・紅炎様は、よくここをお使いになられるのですか?』
炎「あぁ、古い歴史書も多いからな」
・・・なんだろう
ジュダルや武官に聞いていたほど、恐い方ではないのだろうか?
ジュダルからは、戦争好きと聞いた
いや
戦場では、そうなのかもしれない
と、紅炎の人柄を勝手に想像していると、フィアが落とした本を徐に拾い上げる紅炎
その本を、ペラペラと捲(メク)っていく
炎「・・・フィア、と言ったな」
『はい』
炎「トラン語を解せるのか?」
『はい
その本は、白龍様にと』
炎「ほぅ、白龍もトラン語を嗜(タシナ)んでいたとは」
『少しですが、話す事も出来ます
白龍様は呑み込みが早いので、これくらいの本ならば、書物に良いかと』
炎「白龍に、トラン語を教えているのか?」
『僭越(センエツ)ながら』
驚いた表情の紅炎に、微笑んで見せる
なんだかんだと、色々話が弾んだ2人
頻繁にこの古書室に来ている事をお互い知らず
鉢合わせたのは、今回が初めてとは、何たる偶然
しかも
書物を出しっぱなしにしている輩に、ほとほと困っていたフィアだったが
その犯人が、まさか紅炎だった事には、本当に驚いた
そして
紅炎の認識を一部、改めたフィアであった
・
龍「フィア、この本の続きはあるのか?」
『もう、お読みになられたのですか?』
龍「なかなか興味深い内容だったからな」
『わかりました。 探しておきます』
以前、古書室で見つけたトラン語で書かれた本
それを受け取ると、白龍はいつもの鍛練の為、外へ出て行った
見送ったフィアは、早速本の続きを探すべく、古書室へと向かった
――
―――
広い室内だというのに、人っ子一人いない
もったいない・・・と、いつも思いつつ、本をあった場所へと戻す
『・・あれ?』
何かが目の端に映ったと思い、そちらへ行ってみると
窓際にある椅子に座り、頬杖をついて、居眠りしている紅炎の姿があった
手には読みかけの本があり、うたた寝をしてしまったのだろう事が伺える
フィアは、音を立てない様に古書室を出た
そして数分後
薄い布地を持って、再び古書室へと入っていく
起さない様に、そっと持ってきた掛け布団を紅炎に掛けてやる
本当は、起した方が良いのだろうけど・・
紅炎様程の人が、こんな所でうたた寝をなさるなんて
余程、疲れが溜っている証拠だ
ふと、紅炎が読んでいた書物に目が止まった
『(これ・・古い煌帝国の歴史書・・・)』
紅炎の周りには、何十冊と歴史に纏(マツ)わる本が積まれている
歴史書に集中していると
炎「・・ん・・・・何をしている」
『わっ!!』
驚きの余り、手に取った歴史書を落としそうになった
デ・・デジャヴ?
炎「また、お前か」
『も・・申し訳ありません・・・ι』
炎「・・・寝ていたのか」
ふと、自分の肩に掛っている布地に気付いた
炎「これは、お前が?」
『はい
このような場所で居眠りをなさっていたので、余程お疲れなのではと思いまして・・』
炎「そうか・・」
『お部屋で、お休みになられてはいかがですか?
風邪を召されては、元も子も有りません
ここにある書物は、私が部屋へお運びしておきます』
微笑むフィアに紅炎は、徐に彼女の手を握った
炎「お前は、本当に気の利く女だ」
『紅炎・・様?』
炎「フィアのような従者を、傍に置くのも悪くない」
妖艶な笑みを浮かべる紅炎
大人の男の色気ムンムンだ
しかし
それを向けられているフィアは、目を丸くしているだけ
そんな反応のフィアに、紅炎は根負けしたのか、フッと笑った
炎「女は皆、これで落ちるのだがな」
『・・え?』
炎「お前には、俺の色香は効かないようだ」
『・・・申し訳、ありません・・・・』
紅炎に頬を撫でられ、つい謝ってしまうフィア
そんな彼女に、興味を持ち始めていた
他の女とは違う
男に媚びる事も無く、自分を偽る事も無い
自然体の彼女だからこそだろう
女を、可愛らしいと思ったのは
いつぶりだろうな・・
炎「フィア」
『え・・っ』
・
龍「はっ!」
木々が生い茂る中庭で、一人黙々と槍を振るう
龍「ふー・・」
一息つき、額から流れる汗を手の甲で拭った
槍を置き、木陰で一休みする為、根元に腰を落とした
水の入った筒を手に取り、喉を潤す
一人で鍛練をする時は、必ずフィアに持たされているのだ
定期的に、水分補給をするように! と
集中し過ぎると、何時間もぶっ通しで鍛練に励んでしまう癖がある白龍
早く強くなりたい
と思う気持ち故である
我が従者ながら、なんとも過保護な扱いだ
だが、そんな心配をしてくれるのも、彼女以外いない事も確か
だがら、嬉しくも思う
そういえば
最近は、フィアとの鍛練もしていないな
明日にでも頼んでみるか
休憩もそこそこに、槍を持ち立ち上がった白龍
あるものが白龍の視界に映った
古書室にいるフィアの姿だ
先程頼んだ本を、探してくれているのかと微笑んだ時だった
龍「(フィア・・と、あれは・・・紅炎殿?!)」
何故、紅炎殿が?!
驚きの表情に、何か嫌なモノが胸をざわつかせる
そして
それは、確かなモノへと変わった
――
―――
―――――
突然
腕を引かれたフィア
何が起きたか、一瞬わからなかった
気付いた時には、紅炎の胸板が目の前にあった
え・・・?
これは・・いったい、どうなって??
混乱しているフィアに気付いた紅炎
炎「あぁ、天井から蜘蛛が垂れていた
避けるために引き寄せたんだが・・
驚かせたようだな」
『ぃ・・いえ・・・・ありがとうございます』
しかし、なかなか離してくれない紅炎
『・・・あの、紅炎様? もう、大丈夫・・です』
炎「あぁ・・」
ぱっと離したので、フィアもすぐに紅炎から離れた
炎「俺は部屋に戻る
この本、頼んだぞ」
『はい』
そのまま、古書室から出て行った
パタリと閉まる扉に、深い溜息が漏れた
はぁー・・ ビックリした
なんか、妙に心臓がドキドキしてる・・
・・・白龍様とは、違う香りがした・・
抱き留める
腕も
胸も・・
って
何を考えているんだ! 私は!?
『本を運ばなきゃ』
せっせと運びやすく、本をまとめていくフィア
龍「・・・・」
主が見ていた事には
気付かずに・・
・END・
13/5/7
◇続きます(>_<)!