選挙・アルカ編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
アイザック=ネテロ
キメラアントの王 メルエムと対峙し
結果。
メルエムとの闘いには敗北したが
キメラアントとの闘いに勝利した。
某、国立病院。
屋上から降りて来たパームとイカルゴ。
その表情は、神妙な面持ちだった。
「私はカシスちゃんの所へ行ってくるわ
そろそろ、検査が終わっている頃だろうし」
「あぁ…」
「どうしたの?」
歯切れの悪いイカルゴの返事に、疑問を投げかけた。
「ゴンもカシスも心配だけどよ…
オレは、むしろキルアが一番心配なんだよな」
「…」
それは、パームも思っていた事だった。
パームが敵として、キルアの前に立った時。 あの時のキルアは、色んな感情に押し潰されてしまっていた。
その状態は、きっと今も続いていて。 それを救えるのは、ゴンとカシスだけだと。
「あの3人は、本当に良いトリオだからよ」
「そうね
キルアにとって、ゴンは光、カシスちゃんは支え
そんな関係のように見えたわ」
その2人を、今は失ってしまっている。
それを考えるだけで胸が締め付けられる思いだ。
ベットのない病室に置かれているソファーに、キルアの姿はあった。
両膝の上に両腕を支えにして俯いていた。
両手は力無く、重力に従って地面に垂れ下がっている。
先ほどの会話を思い出していた。
最後にメルエムに会ったパームが直接聞いた情報。
―――
――
「カシスちゃんの体内には、次期王となる卵がある」
「!!!」
「卵は、あと数時間で孵化(フカ)するそうよ
孵化してしまったら、カシスちゃんは体内から喰われる…
王の子どもの…栄養源として…」
「…アイツらの言ってた”器”は、そう言う事か」
――
―――
アイツの中に…王の卵…
それは つまり…
王に 犯された…って事……だよな
力無く項垂れていた両手に、ぐっと力が籠る。
思い浮かぶのは、彼女の無邪気な笑顔ばかり。 それを奪う蟻の王に、怒りが込み上げる。
だが、それ以上に
凌辱された彼女が、自身をどう思うのか…。
そう思うだけで、身を引き裂かれる思いだ。
そんな彼女に
自分は、なんて言葉をかけてやれるのか…
思考が渦巻く中、病室の扉が開き、ベットが帰ってきた。
立ち上がるキルアの瞳には、王宮で見つけた時と何ら変わらず瞳を閉じたままのカシスが眠っていた。
ベットに続いて、パームとイカルゴも病室に入ってきた。
・
早々に口を開いたのはパームだった。
「カシスちゃんの容態は?
摘出手術はすぐに」
急かすパームを、ベットと共に入ってきた女医師が手で制した。 落ち着くようにと。
「結論から言うと、すぐ手術を行うことは出来ません」
「!?」
「どうして!?」
「彼女に適した輸血が無いからよ」
「それなら、各機関に問い合わせよう」
いつの間に病室に入ったのか、ノヴが携帯を手に提案をした。
しかし、女医師は首を横に振った。
「問題は、彼女の血液の型が今までに見たこともない型だったこと」
どういう事か説明を求めるノヴ。
カシスの血液検査の結果、一般的な血液型のどの型とも一致しない。 珍しい型ではなく、全く新しい血液型だという。
キメラアントの卵が体内にある為、キメラアントの血液が混じってしまっているのではないか? とも考えられるが、キメラアントの血液とも異なる物だった。
勿論、混じった様な形跡も見うけられなかった。
輸血無しでは開腹手術は出来ない。
万が一の時、どうする事も出来なくなる。
「手術をする為には、彼女自身から血液を採取して、輸血を確保するしかない
けれど、それには数日かかるわ
今日中に手術をするのは、無理よ」
「そんな!
だめよ! 今日中でないと!
いいえ、すぐにでも取り出さないと
卵は、あと数時間で孵化してしまうのよ!!
そうなったら、カシスちゃんは…」
女医師に食って掛かるパームだが、こればかりは女医師にもどうにも出来ない。
それはパームもわかっている。
だけど、言わずにはいられなかった。
すると、これまで黙ったままだったキルアが口を開いた。
「…オレがやる」
その言葉に、皆の視線がキルアに集まった。
「キミ、今の話聞いてなかったの? 手術は」
「オレなら”抜き取れる”」
「どういう事だよ。 キルア」
「オレ、元暗殺者だから」
疑問を口にするイカルゴ。 それに応えるようにキルアは、右手を顔の前あたりまで上げ、手の骨格を変えて見せた。
それは、ハンター試験でジョネスの心臓を抜き取った時と同じ。
「彼女の中にある卵には、動脈や静脈以外にも血管が複雑に絡み合っているのよ
それを、どうやって」
「焼き切れば、問題ない」
パリッと、右手に電気を纏わせるキルア。
その眼には、強い使命感のようなものが宿っていた。
カシスも
ゴンも
オレが 助ける
・
準備をする為、病室の外へ出ていたキルアが呼ばれた。
中には、パームと女医師。
ベットには、腹部を露(アラ)わにした状態のカシス。
卵は子宮の中にある為、足の付け根辺りまで出ていた。
「卵の正確な位置と大きさは?」
女医師に聞くキルアは、思った以上に落ち着いていた。
それを、逆に不安に感じてしまうパーム。
その感情が伝わってしまったのか、キルアはパームに視線を向けた。
「心配いらねェよ
オレが、絶対助けるから」
その言葉に、パームは頷いた。
パームに向けていた視線を、カシスに向けた。
眠っているカシスは、ずっと意識の無い状態。
カシスは オレにとって 大切な存在
失いたくない…
それは一瞬の出来事。
パームも、その速さに目を疑った。
気付いた時には、キルアの右手に丸い卵のようなモノがあった。 それは今だに、ドクッドクッと脈を打っている。
「異常は?」
「!?
……………だっ、大丈夫…異常はないわ」
あまりの速さに、現状が理解できず呆けていた女医師に確認の声を掛けた。
小さく息を吐いたキルアは、自分の右手にある卵を見た。
その瞳は酷く冷たいもの。
パームがキルアに声を掛けようとした時、ぐしゃりと音を立てて、卵を握り潰した。 赤い血液が飛び散り、床に滴り落ちる。
その光景に一瞬だが、背筋が凍る程の恐怖を覚えた。
俯くキルアは、後は頼むと病室を出て行ってしまう。
その小さな背中には、今のキルアの心情が表れているかのように。
大きな窓ガラスがある病室の廊下には、人工呼吸器の規則的な音が小さく響いていた。
廊下の長椅子に座るキルア。
カシスの病室を出た時、タイミング良くナックルが、ゴンの処置が終わったことを伝えに来ていた。
……カシスは…あれで大丈夫だ
あとは
意識が戻るのを…待つだけ
大きな窓ガラスに、一度視線を向けた。
ゴンは、非常に危険な状態。
生命維持装置を外せない以上、専門機関への搬送も出来ない。
いつ命が尽きてしまっても、おかしくない状態だった。
響く人工呼吸器の音が、やけに耳に残る。
結局…
お前一人で
片付けちまったな…
「ピトー(あいつ)は オレ一人でやる」
わかってる…
カイトは お前の恩人で
オレは 関係ない…
でも……それでも
いっしょに倒そうって
言ってほしかった…
ぎゅっと拳を握りしめ、ゴンが見える大きな窓ガラスまで歩み寄った。
わかってる…
ただの駄々だ
「おんなじさ!! 今回も!!」
尻ぬぐいは 全部オレ!!
「いつもの事さ…」
でも…
今回だけは 許さねェ
「やってやるよ…!!」
謝れよ…?
オレが
お前を 必ず元気にしてやっから
「絶対!!!
謝らせっからな!!!」
胸の内にあった憤りを、強い口調でゴンにぶつけた。
今まで、何をするにも一緒だった。
ハンター試験で出会って、キルアの家まで迎えに行って、ゴンの家に遊びに行った。
天空闘技場で念を覚えて、GIで共に念能力を磨いて、キメラアント討伐で共に闘った。
いつでも一緒だったゴンに、置いて行かれるなんて思ってもみなかった
関係ない
その言葉はオレが思っていた以上に、オレの心を抉っていた
そこから、なかなか心の整理が出来ないのは、カシスが側にいないからだ
オレの心が乱れて自分でもどうしようもない時、いつだってカシスが側にいて支えてくれた
闇に落ちてしまいそうなオレの手を、ずっと繋いでくれていた
光(ゴン)と 支え(カシス)
オレにとって かけがえのないモノ
何を置いても 失いたくない存在
その想いが、折れてしまいそうな心を辛(カロ)うじて繋ぎとめていた。
そこに、イカルゴが少し慌てた様子で走って来た。
カシスの意識が戻ったと…。
・END・
23/2/4
選挙・アルカ編突入です!
重い…重いです、内容が…。
結構感情移入して書くことがあるので、この序盤は胸が痛くて…でも、だからこその感情の揺さぶりを皆様に感じて頂けたら幸いです。(そこまで表現できればの話ですが…)
書いてて楽しいので(*^^*)
次回の2人が、もう…!!