キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キメラアント討伐の為、王宮に奇襲をかけた討伐組。 作戦は予定通りに、ハンター協会会長のネテロと王が対峙した。
各々が、自身のやるべき戦いへと挑んでいった。
ネフェルピトーとの戦いに向かったゴンと別れたキルアは、ある人物と対面していた。
目の前にいる人物は、手足に浮き上がった鱗のような模様に、鉱石のような丸いものが額に埋まっていた。
うねる様な艶のある黒髪は、地面につきそうなほど長い。
一目見てわかる。 彼女は、パームだ。
その姿に、パームが護衛軍に捕まったことが安易にわかった。 そして、変えられた。
もし、パームの心までもが変えられていたら、間違ってもゴンに会わせることは出来ない。
何故なら、ゴンの心はカイトの事で精一杯だからだ。 今のパームを会せてしまったら、恐らく心がもたないだろう。
だから、オレがここで止める
そう心に決め、パームと向き合った。
「パーム!! なんでゴンを探してるんだ!?
理由次第じゃ、居場所を教えてやってもいいぜ」
「は? 何、今さら
理由なんてないわ。 会いたいからよ
どうせ、近くでしょ? 自力で探すわよ
あんたを、ぶち殺してからね!!」
パームの拳が、キルアを吹き飛ばす。
ガードをしたものの、本来強化系の能力者であるパーム。 能力がハマった今のパームの攻撃は、変化系のキルアでは100パーセント防ぐことは出来ない。
故に、キルアは言葉を武器にする。
「ゴメン!!
オレも、てんぱってて敵とか言っちゃったけど、外見が変わろうがお前は”パーム”なんだろ!?
ゴンは今、苦しんでる!!
尊敬する人を無残に変えられて…
それをした張本人と、ゴンは向き合ってる!!」
これは 時間稼ぎ
「そこへ、パームまでがその姿で現れたら、ゴンは、もうまともでいられなくなる」
会せるつもりは
毛頭ない
「だから、必ず!! 最初に、あいつの名前を呼んでくれ。 ”ゴン”って……!!
それが…条件だ!」
そのはずだった
なのに…
キルアの心にあった一本の糸が、ぷつりと切れた。
今まで蓄積していた”不安”や”憤(イキドオ)り”が、涙となって一気に溢れ出てしまった。
ゴンを思うあまり。
ゴンを少しでも楽にしてやってほしい
それは もう…
オレじゃ…出来ないんだ…!!
たった一本切れてしまっただけ。
けれど、キルア自身も限界だったのだろう。 気が付かなかっただけで。
もし隣に、彼女がいてくれたのなら、今にも崩れてしまいそうなキルアは、いなかっただろう。
しかし、パームが護衛軍に捕まった。 それは、彼女も捕まってしまったと言う事だ。
それも相まって、キルアの小さな心では、抱えきれなくなってしまった。
今まで孤独の中で生きてきたキルアとは違う。
大切なモノができた。
かけがえのないモノができた。
守りたいと思う気持ちを知った。
暖かさを知った心は、同時に硝子の様に脆(モロ)く崩れてしまう。
しかし、そんなキルアの姿は、パームの心に深く響いていた。
その証拠に、キルアを殺すよう自分に命令するシャウアプフの分身を、殴り飛ばした。
それは、キルアの涙を止めるほど予想外の出来事だった。
姿も意識も変えられてしまったが、パームの心は変えられてはいなかった。
命令していた分身を殴り飛ばした事により、完全に自分自身を取り戻したのだ。
「キルア、あなたのおかげよ」
「…」
「自分が無力だなんて思わないで
あたしがゴンのために、何か出来るなら喜んでする
でも、忘れないで
ゴンに一番必要なのは、あなたなのよ」
微笑むパームに、キルアは俯いた。
自分は無力だと、心のどこかで思っていたから。
カイトを無残に変えられ、苦しんでいるゴンを助けることも、王宮に潜入するカシスの手を引くことも、何もできなかった。
ただ、2人の決意を黙って見ていることしかできなかった。
だからなのか。 パームの言葉は、キルアが思っていた以上に心に染みていた。
ぐっと何かを堪えたキルアは、顔を上げた。 いつものキルアで。
「ひとまず、イカルゴ達と合流しよう」
足を進めるキルアに、パームは思った。
そして、あの子にとっても
あなたは一番必要……
ゆっくりと瞳を閉じたパームは、ある事を口にした。
・
「生きているわ」
「っ!?」
「カシスちゃんは…生きてる」
目を見開き、驚きの表情を向けた。
それは今にも泣き出しそうな、不安と安堵が入り交じった表情だった。
本当は、一番聞きたかった事。
パームがこの姿でキルアの前に現れた時、同時にカシスも奴らに捕まったのだと悟った。
生きているのか、死んでいるのか。
それとも、パームの様に変えられてしまっているのか。
いろんな思考が巡る中
”生きている”
たったそれだけで、断崖絶壁に立たされているような心が救われた気がした。
生きてさえいるのならば、姿が変わっていようが助け出せる。
希望が見えてきたキルアに、パームは続けた。
「でもカシスちゃんは、恐らく私の様に変えられてはいないと思うわ」
それに疑問を投げかけるキルア。
パームは死ぬ直前、薄れゆく意識の中、護衛軍の会話を覚えていた。
「”器にする” そう言っていたから」
「うつわ?」
「何の事かは、わからないけど
少なくとも、実験兵士じゃなく、別の何かに使う目的で捕まったんだと思う」
「…カシスの居場所は、わかるか?」
「わからない
でも、生きているのは確かよ
まだ、カシスちゃんが”視”えるから」
パームは、右眼を手で覆った。
当然、疑問を抱くキルアは、どういうことなのかパームに質問をした。
パームの”淋しい深海魚(ウィンク・ブルー)”は、右眼だけで見た者を額の水晶に記憶し、左眼だけで”視”れば水晶に記憶された者の現在が映るというもの。
パームは、自分が死ぬ直前で、右眼でカシスを記憶していた。
「今は、どこかの部屋にいるみたい
繭のような入れ物で眠っている
体に私の様な変化は見られない
それに、他とは扱いがまるで違う。 何ていうか…宝物を扱うような…」
「……それだけわかれば十分だ
他の連中と合流しよう」
足早に歩くキルアに、パームも足を進めた。
泣きそうになった
カシスが…生きている
それが、こんなにも嬉しいなんて…
会いたい
声が聞きたい…
まるで
長い間、恋い焦がれているような
そんな錯覚さえしてくる
顔を上げたキルアの瞳には、強い意志が籠っていた。
絶対 見つけ出すからな
カシス
・END・
15/11/23
23/1/17(修正)