キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
四次元マンションから出たカシスは、パームと合流した。 時間が無いため、すぐ支度に入る。
淡い桃色のワンピースに着替え、カーディガンを羽織る。 小さな花のついた3センチ程のミュールを履き、髪を下ろした。
こんな格好をするのは生まれて初めての事。 鏡の中に写る自分は、その辺の街中にいる、同年齢の女の子達と何ら変わらない。
かなりの違和感だ。
本来ならば、これが一般的で普通なのかもしれない。 そう思うと、自分がいるこの世界は特殊なのだと実感する。
この道を選ぶしかなかった。 それが自分の中での”普通”だったから。
ハンターになって、生き延びるか
運命に絶望し、生き絶えるか。
今思えば、生まれた時から自分は特殊で異質な環境にいたのかもしれない。
パームに呼ばれ、薄く化粧を施(ホドコ)す。
目を開けた先に写っていたのは、自分によく似た別人。 ”変装”というには、十分な変わりようだった。
…キルアが見たら
どんな反応をするだろう?
ほめて‥くれるかな…
『行こう』
ガタンと音を立てて椅子から立ち上がり、パームと共に部屋を後にした。
キルア
私、気付いたんだ
ううん
もう、ずっと前から
心の奥底で、少しずつ育っていたこの子のこと
わかってたんだ
それに
蓋をして
気付かないフリをして
でも
もう
塞ぎきれないみたい
私ね
キルアが好き
クラピカへの気持ちとは、全然違う
それがわかったの
でも
きっと、この気持ちは伝えられない
生きて戻れたとしても
今だに、私を縛り付ける愛情への絶望感
それが、あなたに伝えることを恐れているから
今の関係を壊したくない
でも
この気持ちは、大切に閉まっておくから
心の奥底に
ありがとう、キルア
私に、温かいこの気持ちを教えてくれて
キルアに出会えて
本当に幸せだよ
漸く受け入れられた想いを胸にしまい込み、移送するトラックへ乗り込んでいった。
王宮への潜入が開始する。
――
―――
夜も更けた土砂降りの雨の中、ライトの明かりだけを頼りに走っていく数台のトラック。
王宮の格納庫に入り、荷物を下ろす中、一台のトラックだけは、更に奥へと進んで行った。
ある部屋で止まったトラックの荷台が、ゆっくりと開かれる。 暗闇に差す光に目を細めると、1人の人物がトラックを降りるよう促した。
「さあ、出たまえ
心配はいらない
今日からここが、君達の職場だ」
そう口にしたのは、垂れた太眉毛に七三分けの髪型をした小柄な中年男。 この男が、この国の政治を全て行っているビゼフである。
トラックから降りた女性は6人。 内2人は、パームとカシスが変装して紛れている。
辺りを見渡すと、オシャレな家が数軒に噴水を中心に、ゆったりとした緑があった。
室内だというのに、小さな街が広がっていたのだ。
1人につき家一軒が与えられ、この中でなら何をするも自由。 ただ一つ、ビゼフの命令には絶対従うこと。
それが、彼女達に与えられる仕事内容だ。
仕事内容を聞き、解散となった。
2人はカシスの家に集まり、今後の作戦について話し合った。
2人の役割は、王と護衛軍をパーム自身の目で見ること。
パームは自らの目で見た者の現在の動向を、水晶を媒介して覗き見ることができる。 この能力を使えば、王打倒の成功率が大幅に向上する。
しかし、パームは戦闘タイプの念能力者ではない。 万が一、兵隊蟻に出くわした時、静かに、且(カツ)迅速に、息の根を止めなくてはいけない。
そのため、カシスも共に任に着いたのだ。
「出入口は一つ
ここを出るには、ビゼフを使うしかないわね」
『でも、どうやって』
「私に任せて
カシスちゃんは、家で待っていて」
•
作戦決行、前日。
四次元マンションに集合した討伐隊は、各々作戦に備えて待機していた。
「まあ、100%王と奴らは近くにいるよ」
「それ言いすぎ!!
もっと他の場合に気持ちを備えてねーと、ハプニングで体動かねーぞ」
色んな場合の想定外を出していく中、こんな土壇場で揉め始めるキルアとイカルゴ。 その隣では、のほほんとお茶を飲んでいるゴン。
最近では、見慣れた光景なのだろう。
そんな中、話しに割って入ってきたモラウ。
「女だな」
サングラスを右手の中指で上げながら、神妙な面持ちで放った言葉に、皆動きを止めた。
「王の目的の一つが繁殖だろ?
宮殿内で、王が何やってんのか疑問だが…
子作り! これで決まりだ」
「なるほど」
「それならば、王が護衛軍を寝室から遠ざける可能性もあるにはあるっスね
もしかしたら、ビゼフが女性を調達したのは王のためかも…」
そこで皆が気付いた。
パームが
王と…
動揺する一同。
互いに声を掛け合い、想像してしまった映像を掻き消した。 何もわかっていないゴンだけは、真面目に頷いていた。
すると、またもやモラウから意見が飛んできた。
「いや、パームとは限らないかもな」
「どういう事っスか?」
「嬢ちゃんの場合も有り得るって事だ」
「!?」
思わぬ発言に、目を見開くキルア。
パームの場合があるのだ、カシスも絶対にないとは言えない。
モラウの予想では、むしろカシスの方が可能性が高いという。
有り得る可能性だったからなのか、キルアはモラウを鋭く睨みつけた。
「なんで?」
「キルア?」
「なんで、カシスの方が可能性が高いんだよ
年齢的に言ったら、パームの方が可能性あるだろ?」
「確かに。 パームに比べたら、嬢ちゃんはまだまだガキだ。 が…それはあくまで、オレ達人間の場合の話しだ
動物や昆虫、人間以外の生物は皆本能的に、強い子孫を残そうとするもんだ
そのためには、より強い雌を選ぶのは当然の節理
念能力で言えば、パームよりも嬢ちゃんの方が遥かに上。 2人のどちらかを選ぶとしたら、嬢ちゃんの可能性が高いってことだ
ま。 奴らに性的欲求があれば、別だがな」
モラウの言っていることは最もだ。
繁殖も目的にしているのであれば、その可能性もある。 捕まってしまえば、一貫の終わり。 王の血肉になるか繁殖の道具にされるか、どちらにしても地獄なのは間違いない。
考えなかったわけじゃない。 そういう可能性もある。
しかし、考えたくなかった。 可能性として、あってほしくないから。
俯くキルアに、心配そうなゴンが声をかけた。
「…キルア」
「わかってる
そういう可能性もないわけじゃない」
真剣な眼差しに、ゴンも皆もキルアは”冷静”だと悟った。
キルア自身、ソレは有り得ないことじゃないと頭の片隅で考えていた事だ。 だから、行かせたくなかった。
カシスは強い
だけど
時に、とても儚くて
どこかへ消えてしまいそうで
不安という感情が、こんなにも扱いにくいモノだったなんて知らなかった
胸の奥底にしまい込むのが精一杯で…
信じるしかない
あいつが
無事に、帰ってくるのを
・END・
15/4/25
23/1/16(修正)
◇自分の気持ちを漸く肯定したヒロインちゃん!
しかし、雲行きは怪しくなります。
キメラアント編、クライマックスに突入です!
二人に降り懸かる、大きな試練になるかと…。