キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
作戦実行まで、あと3日。
ゴン達と合流した3人は、そのままノヴの念能力で作った”四次元マンション”へ向かった。
――
―――
―――――
四次元マンションに着くと、既に全員が揃っていた。
全体が真っ白な部屋に円陣になり、今回の作戦を再確認した。
各々の役割を確認していく中、ある人物の名前が上がっていない事にキルアは気付いた。
「ちょい待ち
カシスの名前が抜けてんだけど」
『キルア、私は』
「カシス、獲物がかかったそうだ」
電話をしていたノヴが、そう告げた。
返事をするカシスは、内容がわかっているようだ。 だが他の連中は、何のことだかわからず首を傾げる。
皆を代表してキルアが問い掛けた。
『私は、パームと一緒に王宮に潜入するの』
「!!」
驚く一同。
パームのことは聞いていたが、カシスも一緒だとは聞かされていなかった。
パームの念能力を使えば、作戦の成功率がうんと上がる。
それをより確実にするために、パームの護衛という形でカシスも潜入することになったのだ。 勿論、これはこの国の政治を1人で仕切っているビゼフ長官が、内密に仕入れようとしている女性に、2人共選ばれたらの話しだ。
どちらかが選ばれれば、パームが変装して潜入できる。 両方かかれば尚よし。
カシスに声が掛かったと言うことは、両方がビゼフの目がねに叶ったということだ。
しかし、それを説明した所で納得してくれない輩が1人いる。
それが一番厄介。 故に内緒にしていたのもある。
「なんで黙ってたんだよ! そんな大事な事!」
『私が潜入するかしないかは、ビゼフが2人共選んだ場合のみ
2人選ばれなかったら、私もこっちの作戦に入る予定だったから』
「だからって、黙っとくことねぇだろ!」
『…言ったら、キルア反対するでしょ?』
「んなこと…っ……」
カシスの問いに、言葉が詰まってしまう。
”ない”とは言えなかった。
これは、蟻を全滅させるための作戦。
失敗は許されない。
パーム1人よりも、腕の立つカシスがついていた方が成功率が上がる。 理屈はわかる。 それがベストだとも思う。
今回は、今までの比ではないくらい過酷な状況。
いくらカシスが強くても、護衛の3人に見つかれば死は免(マヌガ)れない。
だから
行ってほしくない
その言葉を、言ってしまえたらいいのに
世界中の誰の命よりも、お前の命の方が大事だと
我が儘を言って、安全な所に閉じ込めておけたら、どんなに安心か
以前の自分なら、もしかしたらやっていたかもしれない
でも
前とは違う
大切な物が沢山できた
どれも捨てることなんて出来ない
自分が、こんなにも欲深い人間だったなんて
拳を握り締め、俯くキルア。
そんなキルアに、少しでも安心してもらおうと、言葉を紡いだ。
『あまり心配しないでキルア
ちゃんと戻ってっ!?』
顔を覗き込むようにしていたカシスを、力強く抱きしめた。
突然の出来事に、カシスは勿論、そこにいる全員も驚きの表情をしていた。 ナックルに至っては破顔するほど。
今までにないくらい、きつく強く抱きしめられる。
皆の前だというのに、羞恥心よりもキルアの心が痛いほど伝わってきてしまう。
そうせざるおえない今の状況に、歯痒くて、苦しくて…。
自分がキルアの立場だったら、同じように思うだろう。 心配で堪らない。
「……」
そんな2人の姿に皆気を使い、部屋を後にする。
少し複雑そうな表情のナックルも、何かをふっきるように部屋を出た。
「隣で待っている」
『うん。 少ししたら行くから』
皆の心遣いに笑みを返した。
・
パタリと閉まる扉の音で、部屋の中は静まり返った。
キルアは、先ほどと変わらず抱きしめたまま。
『…』
カシスもキルアの背中に腕を回した。
沈黙のまま、お互いの温もりを感じ合うように、暫くの静寂に包まれた。
『……あのね、キルア…』
「絶対!! 帰って来いよ!」
『!?』
「……ぜったい…」
カシスの肩を掴み、少し離れたキルアの顔が見えた。
眉尻を下げ、今にも泣き出しそうな表情。
まるで、自分を置いてどこかへ行ってしまう母親に、縋り付いている子供みたいに。
あの時の自分は、こんな表情をしていたのだろうか。
そんなことを思いながら、キルアの両頬を優しく包み込んだ。
『帰るから…
ちゃんと、帰ってくるから。 キルアのところに』
”絶対”とは、言えなかった
保証も確証もない
期待だけ持たせるなんて事は、したくない
けど
命を粗末にすることは、絶対にしないから
それは、貴方が一番悲しむこと
だから
『信じて、待ってて』
「……っ…」
お互いの吐息がわかるくらいの距離。
一層、キルアの表情が心配の色に歪んだ。 口をへの字にして、何かを堪えるように。
小さく頷くキルアに、安心したのか目を細め微笑んだ。
すると、肩を掴んでいたキルアの手がゆっくりとカシスの頬を包んでいった。
「…」
『…』
数秒見つめ合う2人。
痺れを切らしたのか、我慢の限界だったのか、キルアの顔が自然と近づいていった。
同時にカシスの瞳も、ゆっくりと閉じていく。
「……っ」
あと数センチのところで、キルアの唇はカシスに触れる事なく止まった。
身構えるカシスが疑問に思う前に、再び抱きしめた。
「…気をつけろよ」
『……うん』
もう一度抱きしめ合った。 互いの存在を、互いに刻み込むように。
もしかしたら、これが最後になるかもしれない。
そう思うと、とても離れ難くなる。
ありがとう キルア
無事に戻ったら
一番に 貴方の元へ行くから
いってきます
・END・
15/2/24
23/1/16(修正)
◇キス寸止め! ニヤけました(>_<)
させようかとも思ったのですが、寸止めにしました。 キルア君、よく止められたね(゚゚)
続きは、お互い無事に帰れたら!ということで☆