キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
目を覚ましたキルア。
目の前には、見慣れない薄汚れた白い天井があった。
勢いよく起き上がったキルアは、自分に起こっている今の状況が把握できないでいた。
そんなキルアの瞳には、心配した表情のカシスが映った。
『キルア!』
「カシス…」
『はぁ~…よかった‥』
目を覚ましたキルアに安堵したせいか、緊張の糸が切れたようにベッド脇の床にへたり込んだ。
それと同時に、もう一つ聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お。 どうだ、気分は?」
「…………!!
タコ!?」
「タコっていうな!!」
丸く赤い顔に、きりっとした太眉毛。 いつしか見た姿に、少なからず驚いた。
そんなキルアに補足と誤解を解くように話した。
『イカルゴがここまでキルアを運んでくれたんだよ』
「……」
ここは、裏の人間専門の闇病院。 反政府活動家やヤクザなどがおもなお得意さんだ。
キルアが運ばれて丸2日。 タイムリミットが迫っている今を、無駄だと感じたキルアは、作戦を続行させるべくベットから下りようとする。
つい先刻まで生死をさ迷っていたキルアに、イカルゴは制止の声を上げた。
だが、そんなこと聞く奴ではない。
するとタイミング良く、ふくよかな看護師さんが声をかけてきた。
今から退院する旨を伝えると、当然のことだが治療費を請求された。 闇病院に見合うだけの破格の請求額。
「今はサイフねーよ
戻ってから送金する」
「それで、ハイそうですかって帰すバカいないね
代理の人に持ってきてもらうまで、入院するといいね」
当然と言えば当然だが、こちらとて、そんな時間はない。
ただでさえ、2日もタイムロスをしてしまっているのだ。
『よし。 送金したから確認して?』
「カシス」
『時間、ないでしょ?』
「……後で請求しろよな」
助かった。 そんな表情だ。
これで、安心して退院できる。
キルアは、カシスの携帯を借り、ゴンに電話をかけた。
今の状況を把握するためと、これからどう動くべきかを整理するために。
ゴンとの電話を終えたキルアは、携帯をカシスに返した。
今後の動きが決まった今、ここに留まる必要はない。 しかしそんなキルアの体を、イカルゴは気遣う。
「でも、お前体は…」
そんな心配をよそに、患者服を脱ぎ、体を動かして見せる。
「ん。 問題ねー」
キルアの回復力に驚愕した。
包帯を取った体は、もう傷が塞がっているのだ。
驚くイカルゴをよそに、キルアの視線は隣へ移った。
「……何だよ」
『!! な、何でもないっ!』
カシスの視線に声をかけるが、慌ててそっぽを向かれた。
疑問に思うキルアは、ベッド脇で座り込んだままのカシスに近寄り、目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「大丈夫だって言ってんだろ。 ほら」
『!?』
カシスの左手を取り、自身の胸にあててやる。
本当に大丈夫かどうか、疑いを拭い去るための行動だったのだが。
『わ、わかってるってば!』
勢いよく、キルアの手から自分の手を抜いた。
首を傾げるキルアだが、看護師に声を掛けられたため、そちらに意識が向くことになる。
多少の違和感を覚えるが、後回しにすることにした。
その選択が、今のカシスにとって天の助けとなったとは露知らず。
キルアの視線から外れたカシスは
な…なに動揺してんのよ私!
キルアの裸見るのなんて、初めてじゃあるまいし
突然の動揺に動揺していた。
確かに以前と比べて、筋肉が付き引き締まった体にはなっていた。
しかし、それだけだ。
にも関わらず、以前の自分とはまるで反応が違う。
キルアの体に触れた瞬間、恥ずかしさからか顔に熱が集まった。
なんか‥すごく心臓がうるさい…
胸に手を宛ててみると、大きく動く心臓がわかる。
一体どうしてしまったのか。
その答えを知っているのに、気づかないフリをして、またその答えに蓋をする。
今は
必要ない
違う
ただ
怖いんだ
私は
知っているから
永遠なんて
この世に存在しないことを
とくに”愛情”は…
・
「よし! 行くぜ」
もんもんと考えていると、退院手続きが済んだのかキルアはカシスに声を掛けた。
しかし、動く気配が無い。
「何やってんだよ。 早く行くぞ」
『あ~…
キルア、先行ってて』
「なんでだよ」
当たり前だが理由を聞かれる。
だが、素直に答えるのも羞恥心が邪魔をする。
だからと言って、キルアに下手な嘘は通用しない。
『………腰…抜けたから』
「は?」
意味がわからないと言わんばかりの返答。
キルアからしたら当然だろう。
腰を抜かすほどの出来事など、起きていないのだから。 それでなくとも、あのカシスが腰を抜かすなど考えられない。
だからか、理由をしつこく聞く。
『…仕方ないでしょ! キルアが目を覚まして安心したら…抜けちゃったんだから』
「……」
最後は小さな声で、恥ずかしさのあまり俯いた。
そんなカシスに、溜息をつくキルア。
自分の事をこんなにも心配してくれている事に、顔が緩んでしまうほど嬉しい心境。
こんなにも愛らしい彼女を、抱き締めてやりたい衝動をぐっと堪えた。
髪の毛を少し乱暴に掻き乱してから、カシスの元へ行く。
『っ! キルア!?』
「時間ねぇって言ってんだろ
大人しくしてろよ」
動けないカシスを、抱き上げるキルア。
まさかの展開に、慌てるしかない。
俗に言う、お姫様抱っこ。 これはかなり恥ずかしい。
しかし、キルアの言う通り時間に余裕はない。
駄々をこねても時間を無駄にするだけ。 それに今は自力で動けない。 文句を言っている場合では無いだろう。
ここは、うるさい心臓を押さえて我慢をするしかない。
手を伸ばさなくても届いてしまう距離にいるキルアに、嬉しさと恥ずかしさが込み上げてくる。
意識していないと緩んでしまいそうな顔を、キルアから見えないよう少し俯きながら。
「…」
大人しくなったカシス。 だが、胸を高鳴らせているのは、カシスだけではないだろう。
カシスは、足を進めるキルアにストップの声をかけた。
抱えられながら、キルアの背後に視線を出す。
『イカルゴ!』
「?」
『何突っ立ってるの! 行くよ』
「え!?」
「みんなのとこ。 紹介するからさ!」
「あ、う……でも」
躊躇するイカルゴ。
キルアもカシスも、イカルゴも一緒に行く気でいたため、一瞬”あれ?”とも思っただろう。
イカルゴの立場からすると、躊躇うのは当たり前の反応。
「ま…来ねーならいいけど
んじゃ、礼だけ言っとくよ。 サンキュな」
「あ…いや、ってゆうか
行っていいのか?
その……オレなんかが…」
「……何だよ
もう友達(ツレ)になれたと思ってたの、オレ達だけかよ」
その言葉は、イカルゴの心を決めるのには、十分過ぎるほどだった。
キルアのくれる言葉一つ一つは、今までイカルゴが憧れ、求めた世界。
乞い焦がれて
追い続けた…絆。
こいつは…いや、こいつらは、本物だ
こいつらのためなら、自分の命を賭けてもいい
そんな口にしない思いが、イカルゴの心を熱くさせていた。
行く先は地獄。
わかっていても、そこへ飛び込みたいと思った。
お前らのいる 世界へ
・END・
◇久々更新です!
今回は、ヒロインの素直な反応が書けたかな? と思います。
まだまだ、じれったくてスミマセン(..)
おまけ↓
「………寝てやがるし」
暫く走っていると、いつの間にか腕の中にいるカシスの瞼が閉じていた。
「起こしてやるなよ
2日間、一睡もせずにお前を看病してたんだからな」
声をかけるイカルゴは、キルアの右肩に乗り、腕の中で眠るカシスを覗き込んだ。
何とも愛らしいその寝顔に、自然と頬が緩む。
「……」
「お前、今”かわいい”とか思っただろ」
「いや……思うだろ。 男なら」
この寝顔見たら、と付け加えるイカルゴ。
その言葉に、何だか胸のあたりがくすぐったくなるキルア。
「お前も、そう思うんだろ?」
「…まぁ……」
青春だなぁ〜。 と思いながら、キルアの腕の中にいるカシスの寝顔を再び見やる。
「……言っとくけど、手ェ出すなよ
こいつ、オレのだから」
15/1/11
23/1/15/(修正)
最後の台詞を言わせたかっただけです(>_<)