キメラアント編
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キルアと別れ、煽動(センドウ)作戦を開始した。
人々にディーゴはすでに失脚したことを伝え、洗脳された兵士が国民を殺しまわっていると動揺を与える。
同時に、ネフェルピトーに操られている人形と軍隊を倒していく。
ネフェルピトーの”円”は、数キロにも及ぶ。 故に、慎重かつ迅速に行わなければならない。
選別までに、出来る限り犠牲を減らすために。
しかし、この煽動作戦も蟻(やつら)の計画の内でもあった。 TVでディーゴの健在ぶりをアピールし、大っぴらに軍隊を動かす大義名分が出来たのだ。
それからも、各地を回るが、誰一人耳を貸さなくなっていた。
これじゃ、走り回ってるだけで意味がない
一度、キルアと落ち合うか…
携帯を出し、キルアに連絡をした。
『こっちが、かなり分が悪くなってる
一度落ち合って、作戦を立て直した方がいいと思う』
「そうだな
こっちも、誰も聞く耳を持たねぇし」
『キルア、今どの辺り?』
「ルォントン市の北東の国道沿い辺り」
『じゃあ、ルォントン市で落ち合おう』
多少離れてはいるが、カシスの足で約15分ってところだ。
ルォントン市に着いたカシス。
そこは市というには、あまりにも閑散としていた。 店はほとんど閉まっており、出歩く人もいない。
当然だろう。 家から出て、軍隊にでも遭遇したら、逆賊として拘束されるだけでなく、射殺される場合もある。
キルアとカシスの行動で、そうなってしまったのだ。
軍隊に見つかると、厄介だな
そう判断したカシスは、建物の屋上に上り、先についているであろうキルアを探した。
暫く探したが、キルアの姿は見当たらなかった。
……おかしい
カシスは、再びキルアに電話するも、繋がらない。 電源が切られている様だ。
距離的に、キルアの方が先についているはず
なのになんで電源が切れたままなの?
もしかして
何かあった?
そう考えるのが妥当
兵隊蟻に出くわしたのかもしれない
どうする?
待つか、探しに行くか…
・
ルォントン市から北東へ行った国道沿いを、カシスは走っていた。
蟻に遭遇したか、別の理由か
何にせよ、連絡が取れない状態に陥っていることは明らか
カシスは足を止めた。
国道沿いといえど、かなりの広範囲だ。 ”円”を使えば早いのだが、ネフェルピトーの”円”に引っかかる恐れがある。
今はまだ、極力位置を知られたくはない。
だが、この広範囲を闇雲に探す時間もない。
……仕方ない…か
カシスはその場にしゃがみ込み、右手で地面に触れた。 そしてカシスの瞳は水色に近い灰色から、深い碧色へと変わっていった。
紺碧の瞳を発動。
国道沿いの記憶を遡(サカノボ)り、キルアを探した。
”過去の記憶(タイムトラベル)”は、対象者や対象物に触れることにより、過去の記憶を見ることが出来る。
瞳を閉じるカシスの頭の中には、国道沿いの記憶が遡っていった。
確かに、キルアは国道沿いを通っていた。
しかし途中、葉が幾重にも重なったジャングルへと進路を変更していた。
……やっぱり
キルアの上空に飛んでいる奴は、兵隊蟻で間違いない
攻撃してこないことからして、恐らくサポートタイプだと推測できる
追跡か監視が目的ってところかな
それを撒く為に、キルアはジャングルへ入ったんだ
発動を解除し、走り出した。
向かったのは、ジャングルを見渡せる崖の上。
目を凝らし見渡すと、目的のものを発見した。 米粒程度の大きさだが、上空を飛んでいる兵隊蟻だ。
となると
あの下あたりに、キルアがいるはず!
勢いよく崖を滑り降り、ジャングルの中を駆けて行った。
前方で何かがぶつかる大きな音がした。
この先で、キルアが闘っているのだと確信できる。
あそこだ!
急いでいるはずのカシスの足は、木の枝を蹴ることなく、枝の上で止まっていた。
暗がりのジャングルの中。
一際輝く、銀色の髪。
上空で、6匹の兵隊蟻に囲まれたキルアが瞳に映った。 兵隊蟻の攻撃を避け、次々に決定打を与えていく。
何一つ無駄のない動きと、その戦闘技術。 まるで、上空を舞う蝶のようだ。
一瞬の動作のはずなのだが、カシスが目を奪われるには、十分な時間でもあった。
胸が疼いた
高揚感が胸を高鳴らせる
これは、憧れにも近い感覚
しかしながら、別の感情が滲み出てきていることも、カシスは知っていた。
大きな爆音に我に返ったカシス。 滲み出てきた感情を振り払うように頭を横に振った。
今は、そんな事を考えている場合じゃない
枝を蹴って、キルアの後を追った。
自分の心の中に、徐々に蓄積していた温かい想い
私は 知ってる
この想いが何なのか
でも
だからこそ、気付かないフリをしなくちゃいけない
キルアとは このままでいい
このままがいいから……
・
逃げて行く兵隊蟻の隊長を追うキルア。
途中、左の米神に痛みが走った。
銃…!?
…いや、何か着いてる!! 顔に…!?
米神に食い込んだソレを引っこ抜いてみる。 それは銃弾ではなく、ノミのような生き物だった。
微妙に動いていることから、生きているのだと分かる。 それだけでも気色悪さ満載なのだが、驚くはノミのでかさだ。
キルアの人差し指の第一関節ほどもある。
気色悪さを通り越して、グロテスクと言っても過言ではない。
見えない敵からの攻撃は、首、左足、右腕と続いた。
かなり良い腕の狙撃手のようだ。
米神の血が止まらない事から、明らかに狙撃でのダメージが目的ではない。
寧(ムシ)ろその後が狙い。 出血による体力の消耗。
狙いはわかったが、このままでは相手の思惑通りになってしまう。
頭をフル回転させるが、考えている間も相手が待っていてくれるはずもなく、次の狙撃が放たれる。
キルアの顔面目掛けて飛んできたノミは、ターゲットに命中する寸前で、地面に叩き落とされた。
同時に地面には、見覚えのある鉄扇が突き刺さっていた。
これ……カシスの!?
『大丈夫? キルア』
「!?」
目を見開いて驚きの表情をしているキルアの頭上から、カシスは降りてきた。
「カシス、なんでここが」
『キルアが遅いからさ
電話しても繋がらないし、何かあったと思って
案の定、面倒臭いのに捕まってたね』
会話中にもノミは飛んできた。 カシスはそれを鉄扇で叩き落とす。
キルアに粗方、今の状況を聞いた。
確かに、手の内を見せるのは得策ではない。
ひとまず今は、姿の見えない狙撃手をどうにかするのが先決だと判断した。
「狙撃手の方は、オレが何とかする
カシスには、あいつを何とかしてほしい」
キルアは頭上を指さす。
上空にいる蟻の事を言っているのだろう。
「あれだけ上空にいられたら、オレのヨーヨーも電撃もとどかない」
自分よりもカシスの方が、念の戦闘に長けている。 だから、より厄介な方をキルアは頼んだ。
『わかった』
頷くカシスは、キルアに狙撃手の正確な位置方向を教えた。
聞いたキルアは、すぐさま足を踏み出した。
『キルア』
「ん?」
『こっちの能力は見せられない』
「ああ、わかってる」
『でも、そこにこだわり過ぎないように』
「…」
『出し惜しみしていると、足元掬(スク)われかねない
キメラアントは、見た目以上に学習能力の高い種族だから
気を付けて』
「…わかった」
駆けて行くキルア。
不安そうに、その背中を見送るカシスも背を向けた。
キルアなら、大丈夫
そう言い聞かせるように、カシスも走り出した。
出来れば一緒に行動したい
しかし今は、時間が惜しい
キルアを信じて、今やるべきことをするしかない
それが、歯痒くてたまらない
いつもある心の余裕が、今は持てない
カイトの一件が、頭をチラついて…
大丈夫
キルアなら 大丈夫
カイトの時も、どこかでそう思ってた
”大丈夫”だと
言いようのない不安が、心を掻き乱す
別行動をとる度に、不安が増していく
もしかしたら…
そんな事、考えたくもないのに
不安が、勝手な思考を頭に巡らせてくる
こんな事は 初めてだ…
そんな感情を押し殺して、カシスもターゲットへ向かって行った。
無理だけは しないで
キルア…
その想いだけを残して。
・END・
14/8/31
23/1/13(修正)
◇だいぶ空きました。 久々の更新です!
今回は、会話がめっきり少なくなってしまいました・・・(-.-)
説明が多いです・・・。 だからなのか書くのに時間がかなりかかりました;
時間がかかったからなのか、自分ではすごく読みにくい感じです。 時間を空けて、修正できればと思っています。