キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
東ゴルトー共和国。 ディーゴによる独裁政権の国。
キメラアントの女王蟻から生まれた王が、住処として選んだ国。
10日後、建国記念大会と称した、国民の”選別”が行われる。
それを阻止するため、討伐隊はゴン達3人を含めて、各々作戦を開始した。
――
―――
―――――
皆が夢の中へ旅立つ丑三つ時。
密入国するため、国境まで来ていた3人。
生い茂る木々に、目の前を流れる国境の川。 茂みに身を隠すようにして話し合う。
「密入するには、この川を渡るのが手っ取り早いな」
「どうやって渡る?
都合良く、ボートでもあればいいけど」
『あったとしても、使えないよ』
「どうして?」
「さっきも言っただろ?
”指組”っていう強力な密告システムがあるって
スパイ・革命・亡命、国の不利益になるようなことを密告したら報奨金がもらえる。 逆に、実行犯なら厳罰がくだる」
「あ。 アメとムチだっけ
じゃあ、どうするの? 泳いで渡る?」
「静かに歩いて、な」
ゴンの額にデコピンをくらわしたキルア。 痛かったのか、額を押さえながら、浮かんだ疑問を口にした。
このまま川に入れば当然、今着ている服はびしょ濡れ。
そうなると、密入国した後が非常に動きにくくなる。 かといって、悠長に乾かしていたら夜が明けてしまう。
どうするのか?
『服脱いで、渡るしかないでしょ』
その台詞に、ゴンだけ驚き、顔を紅らめた。
「カシスは、それでいいの?」
『なんで?』
「オ、オレ達に…………裸……見られちゃうんだよ?
そしたら……お嫁に行けなくなっちゃうし…」
ぽっぽっと顔を紅くして、俯きながら自分の事を心配してくれるゴン。
そんな彼を、思わず抱きしめたくなる衝動を押え込んだ。
表には出さないが、心の葛藤をしていると、横からキルアが口を挟んだ。
「カシスだけ、オレ達と離れた場所から渡れば問題ないだろ」
『そゆこと』
「あ。 なるほど」
「まぁ。 カシスがオレ達と一緒がいいってんなら、止めねぇけど♪」
『ゴンだけなら、そうしてるんだけどね♪ 残念v』
おちょくるキルアに、負けじと返すカシス。 いつもの口喧嘩に発展したことは、言うまでもない。
だが、今はそんなことをしている場合ではない。 いつもは放っておくゴンだが、仕方なしに仲裁に入った。
カシスとは一旦離れ、川を渡る準備にかかった。
服を脱ぎながら、珍しくゴンからの注意を受けた。
「2人って仲良い癖に、いつも口喧嘩するんだから」
「別に、喧嘩してるわけじゃ」
「そんなことばっかしてると、せっかく付き合えたのに、愛想尽かされちゃうよ?」
その台詞に、シャツを脱ぐ手が止まった。
聞き違いかと、もう一度ゴンに聞き返してみた。
「だから、愛想尽かされちゃうよって」
「いや、その前」
「? せっかく付き合えたのに?」
「……誰が、誰と」
「キルアとカシスに決まってるじゃん!」
何がどうなって、ゴンがそんな勘違いをしたのか。
ゴンの中では、いつの間にか自分とカシスが恋仲になっているらしい。
「どう誤解してんのか知らねぇけど、オレ達付き合ってるわけじゃないからな」
「え? ウソ!?
だってGIの時、カシス押し倒してチューしてたじゃん!」
見てたのかよ……
まさか見られていたとは露知らず。 気恥ずかしさ満載のキルアは、照れ隠しをするかのように顔を逸らした。
「実際はしてねぇからな!」
「え~」
「とにかく、あいつはゴンと同じで友達なんだよ!」
「……でも、キルアは好きなんでしょ?」
「っ!?」
「えへへ、見てればわかるよ」
笑うゴンは、脱いだ服を頭にくくりつけて準備万端の様子。
キルアは気持ちを切り替えるかのように、一度カシスの向かった方角に視線を向けた。
カシスも準備出来たのか、頭に服をくくりつけていた。
地面から生い茂る草のおかげで、肩までの素肌しか見えない。 恐らく、向こうから見てもそうだろう。
キルアの視線に気づいたのか、こちらに顔を向けたカシス。
ぱちりと視線があう。 お互い裸だと思うと、少しの興奮を覚える。
しかし、目線の先のカシスさんは、そんなキルアの心境など知らぬ存ぜぬ。
人差し指を川に向け、行く合図を送ってくる。
…ったく
オレって
ゴンに気付かれるくらい、わかりやすいのか?
そりゃ、あからさまに態度に出したりもしたけど…
ゴンも気付いたってことは、あいつはとっくに気付いてるってこと…だよな?
たぶん……
でも、オレに接する態度に変化もなければ、あいつからのアクションもない
もしかして
オレに対して、友達以上の感情はないってことか?
……………はぁ
今、考えても仕方ねーな
雑念を頭の片隅においやり、ゴンと共に静かに川へ入って行った。
・
密入した一行は、周りを警戒しつつ森の中を進んでいた。
その際中、発見した一つの村。 茂みに隠れながら中を伺う。
夜中とあってか、当然明かりはついていない。
誰がどの家に何人いるか把握したい所だが、不用意に”円”を使って見つかっては元も子もない。
しかし、現在の情報も欲しいところだ。
連中の着ている服、階級を識別するためのバッジの類い。 スパイを見分けるための、色んな決まり事なんかもあるかもしれない。
そのためには、村に忍び込む必要がある。
そこで、元暗殺者のキルアに先陣をきってもらった。
闇夜の静寂の中。 一軒の家屋に忍び寄るキルア。
改めて目の当たりにするが
この静寂の中、足音どころか衣擦れの僅かな音でさえ、立てない移動技術
素直に凄いと思った
血の滲むような訓練をしていたに違いない
感心していると、キルアからの合図がきた。
ゴンと共に、村へ下りていった。
一軒の家の中を見て回るが誰もいない事以外、特に変わった様子はない。
「もうみんな、首都(ベイジン)に向かったのかな」
『…いや、何かあった』
「?」
「ああ
それを隠してる
かなり、雑なやり方でね」
壁際にある木製の椅子をどかすと、壁には血痕の跡。 床や他の場所、至る所に血痕が残ったままになっていた。
「どうする?」
『もう少し、調べてみよう』
しかし、他の家々を調べても、現状は同じだ。
村の周辺まで調べてみると、村の外れにそれはあった。
土に塗(マミ)れた、無数の白骨死体。
穴が浅く、野犬に掘り返されたのだろう。
恐らく
村人全員、ここに埋められているに違いない。
「一体、どういうこと?」
「国民大会の真の目的は、これだ」
「??」
『町や村人が、ある日突然一斉にいなくなっても不自然じゃない状況
それが”国民大会”っていう最大の理由になる』
つまり”選別”は
もう 始まっている
さて
これからどうするか。
選択肢は二つ。
500万人の犠牲を払って、ネテロ会長の作戦開始まで潜伏するか。
目の前の500万人を助けるか。
後者にした場合、自分達の存在が確実に王達に知られる事になるだろう。
それにより、作戦実行が困難になる可能性もある。
それは、自分達の敗北のリスクを高めるということ。 自分だけではなく、仲間の命をも危険に曝すことにもなるのだ。
それを考えた上で、キルアは2人の意見を聞いたのだが。
「やろう」
迷う事なく、返答をしたゴン。
後のことはあまり深く考えず、目の前の助けられる命を迷わず選択できる。
ゴンのいい所だと思う。
だがキルアは、煽動作戦は1人でやるという。
確かに今回は、単独でやった方がデメリットが少ない。
それにゴンには、ネフェルピトーを倒すという大事な目的がある。 極力、万全な状態で戦いに望まなくてはいけない。
「ちぇ~~……わかったよ」
「…本当にか?」
「?」
「本当に、わかったのかよ?」
「キル…ア」
「約束しろよ! 絶対に動くな!
例え、目の前で何人人間が殺されてもだ!!
約束しろ!!」
「…………」
『(……キルア?)』
ゴンに強く言い聞かせるキルアに、違和感を感じないはずがない。
ゴンも、少し戸惑っている様子だ。
何か焦っている?
いや、不安……いいようのない不安感が、ゴンに対しての強い物言いとして出たんだ
2人が視線を合わせたまま、数秒の沈黙が流れた。
「悪い……何でもねーよ
ちょっと、ピリピリしてるだけだ」
「…」
冷静を取り戻したのか、ゴンから視線を外した。
不安な表情を見せるゴンと、背を向けるキルア。
カシスは溜息をつき、口を開いた。
『ゴン。 何かあったら連絡入れるよ
私達の携帯なら、ここでも使えるはずだから』
「カシスも行くの?」
「これは、オレ1人の方がやり易いって言っただろ
カシスはゴンに、っ!!」
口を開くキルアを、鋭い視線で制した。
『東ゴルトーは、広いからね
1人より2人でやった方が早いから
ゴンは待ってて』
「……うん。 気をつけてね」
くるりとゴンの方に振り向き、安心させるように笑顔を向けた。
・
ゴンと別れ、キルアと共に歩いて行く。
沈黙のまま、何も話さないキルアに声を掛けようとした。
『キルア、何をそんなに』
「なぁ、カシス」
『?』
言葉を遮られたと思ったら、キルアはその場に立ち止まった。
頭に?を浮かべるカシスだが、キルアからの言葉を待った。
「……ゴンは、あいつを倒せるか…?」
『…難しい所だね
前にモラウさんが言ってたでしょ? 念同士での闘いに、絶対はないって』
「あぁ…」
アレを倒せるかどうか、それよりも私は…
「もし…カイトが、元に戻らなかったら…あいつは……」
途中でキルアの言葉は途切れた。
キルアの不安感は、それだったのだ。
カイトが元に戻らなかったら?
ゴンは、それを受け入れられるだろうか?
今のゴンが、普段通りに過ごせているのは、”あいつを倒せば、カイトは元に戻る”という、いわば自己暗示のような言葉を、心の支えにしているから。
それが覆(クツガエ)された時、ゴンの精神力は、ゴンの正気を保ってくれるだろうか。
カシス自身も、そっちの方が気掛かりだった。
『…わからない』
「カシス、言ってたよな
カイトは死んでる、もう元には戻らないって」
『………うん』
キルアも、頭ではわかってる
だけど、こればかりは未来予知でもしない限り、誰にもわからない
考えても、不安に思っても
仕方のない事
『キルア』
「行くぜ」
私とキルアは似ている
だから、もしもの時でも割り切れる
でも
ゴンは違う
純粋で、汚れを知らない
故に
心配なんだ
もしかしたら 壊れてしまうんじゃないかって
私とキルアで、ゴンの支えになれるだろうか
答えが出ぬまま、2人は闇に溶け込んで行った。
・END・
14/8/1
23/1/11(修正)
◇お待たせ致しました! やっと更新できました・・・p(^^)q しかし、中身が薄いような;
さくさく進んで、早く書きたいところに行くべきですね! だらだらと長くなると、私でも読むのが億劫になります;
次も恐らく、シリアスが続きます。
キルアが危ない(>_<)