キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
パームから逃げ延びた3人の元に、ナックルから一報が入った。
カイトを救出した、と。
喜びを抱く3人だが、どうやら手放しには喜べないようだ。
ナックルの話だと、カイトは敵に操作されている状態だという。
――
―――
―――――
とある地下の一室。
討伐隊が揃っていた。
「本当にいいんだな?」
「もう、お前達の知っている彼ではないぞ」
「大丈夫
絶対、オレ達が治してみせる」
念を押すように述べるナックルとシュート。 それ程までに、カイトの状態は深刻なものなのだと伺える。
彼等の向こうには、鳥籠の様な物が浮かんでいた。 この中に、カイトがいるという。
これは、シュートの念能力 ”暗い宿(ホテル・ラフレシア)”
条件を満たせば、相手の一部から全てまで、籠の中に閉じ込めることができる。
金属音と共に、籠の入り口が上へと開いた。 そこから、人形サイズくらいの人間と思しきモノが出てきた。
「籠から出ると、元の大きさに戻る
用心してくれ。 念は使えないが…それでも手強い」
シュートの言葉通りに、見る見るうちに元の大きさに戻っていく。
大きくなるにつれ、その姿は余りにも、悲惨な状態だという事が見て取れる。
傷だらけの身体に、異様な立ち姿。 左の眼球は、今にも飛び出さんばかりに見開かれていた。
声も出なかった。
目の前にいる”彼”の、あまりの変わりように。
あの約束が、頭にちらつく
私は……
握りしめた拳は、白く変色するほどだった。
大丈夫だと近づくゴンにも、何の反応も示さず、ただただ機械的に攻撃をするだけ。
それを避けもせず、受け続けるゴン。
カイト……ゴンだよ?
わからないの?
攻撃を受け続けるゴンに、カシスは唇を噛み締める。
本当に わからないの……?
胸に何かが突き刺さるように痛い
あの時
何故、カイトの言う事を聞いてしまったのだろう
あの場に残り、カイトと2人で闘えば、もしかしたら、こんな結果にはならなかったのかもしれない
………違う そうじゃない
そんなことしても
私も、カイトと同じ様にされるだけに過ぎない
今 やるべきことは…
・
機械的な攻撃を避け、カイトを抱きしめたゴン。
「ごめんね、カイト
オレ達のせいで、こんな……
少し…休んでいいよ
後は、オレ達に任せて」
優しい声を掛けるゴンに、カイトの動きがピタリと止まった。 するとゴンは、カイトから離れた。
念の使えないゴンには見えないだろうが、異様な雰囲気を察知したのだろう。
目の前には、大きな機械の様な物体が現れていた。 ロボットの指先から糸の様な物が、カイトへと繋がっている。
カイトは念を使えない状態。 故に、これはカイトを操っている者の念能力という事になる。
今のカイトに触れると、次の段階へステップアップするようで、クリアするには、かなり高度な戦闘技術が必要になる。
近づかなければ、カイトから仕掛けてくることはない。
この現状を目の当たりにし、どうすればいいかわからず、ただ佇(タタズ)んでいるゴンに、カシスは歩み寄った。
手に、鉄扇を握りしめて。
『ゴン。 そこを、どいて』
「カシス…?」
『彼は、もうカイトじゃない
ただの、操り人形よ
私達の害にしかならないのなら、今の内に壊しておくべき』
カシスの発言に、驚きの表情を見せた。 その間に、ゴンの横を通り抜け、カイトを視野に入れた。
しかし、ゴンの運動能力の方が勝っていたのか、カシスの前に回り込み、カシスの両腕を掴んだ。
「何言ってんのカシス!?
カイトは、目の前にいるよ? あいつを倒せば、カイトは元に戻るんだよ!!」
『カイトは、もう死んでる。 体内オーラの流れを見れば分かる!
生きている人間の流れじゃない!!』
「そんなことない!! カイトは生きてる! 今は、操られてるだけなんだ!
絶対、元に戻る!!
どうしちゃったの? カシス変だよ
カイトは、カシスの兄弟子なんでしょ? 殺すなんて……そんなこと、おかしいよ
オレの知ってるカシスは、そんなことする人じゃない!」
「…」
「おい! おめェら!」
口論する2人の姿に、眉をひそめ俯くキルア。
代わりに、落ち着かせようと声を掛けるナックル。
『…よく聞いて、ゴン
念は、便利な魔法じゃないの
自然の摂理に反することは、何者にも出来ない
死した命を甦らせることなんて、出来ないのよ!』
そんなこと、ゴンだって良く知ってる
私だって、こんなことしたくなんかないよ
でも
ゴンの手を払い除けた。
すると、ゴンの纏う空気が変わった。
ゴンは両手を広げ、カシスの前に立ちはだかる。
その行動には、流石に動きが止まった。
「そんなに、カイトを壊したいなら
オレを
殺してからにしろ」
自分を睨み付けるゴンの眼は、明らかに敵意に満ちていた。
冷静に、何にも感情を揺るがせないように
特に、”殺し”という一点に関しては……
今、目の前にいるゴン
私なら、兎の喉を掻き切るよりも簡単に、殺(ヤ)ることができる
だけど
身体が 動かない
言う事を 聞かない
―――――
―――
――
「カシス、一つ頼みを聞いてくれるか?」
『何? 改まって』
「今回の仕事、かなり危険が伴う」
『うん』
「だが、この仕事は確実にやり遂げなければならない
もしオレが、任務遂行の妨げになるような事態になったら、迷わずオレを仕末しろ」
『なっ…なに言ってるの! カイ』
「頼んだぞ。 カシス」
『………………わかった』
「…すまない。 こんな事、お前にしか頼めなくてな」
『ただし!
そうならない努力をすることが条件…だから』
「…ああ」
――
―――
―――――
・
カイトは、もう死んでいる
あいつを倒したとしても、カイトが元に戻ることは……ない
だけど、このままにしておくのは、苦しすぎる
楽にしてあげた方が、カイトのため
カイトが 望んでいるコト
だけど…
カシスの掌から、鉄扇が消えた。
『………ごめん。 ゴンの言う通りだ
私、どうかしてたよ』
「…カシス」
『あいつを倒せば、カイトは元に戻るかもしれない。 もし駄目だったとしても、他に方法があるかもしれないもんね』
笑顔で話すカシスに安心したのか、ゴンも表情を和らげた。
一触即発の危機を回避し、ナックルやシュートも安堵した。
その表情に、胸が締め付けられる。
ごめんね カイト
私は
カイトとの約束を守るよりも
ゴンに 嫌われる方が怖いみたい
約束 破っちゃうけど
許して くれるかな
――
―――
―――――
オレンジ色の空の下。 温かいそよ風が心地良く、髪を撫でていく。
東ゴルトー共和国への出発は、明朝。 今晩は、宿に泊まることになった。
屋上のフェンスに凭れながら、ゆっくりと変わっていく空のグラデーションを眺めていた。
「もうそろそろ、メシだってよ」
いつの間に来たのか、哀愁漂う背中に声を掛けた。
しかし、生返事を一つしただけで、動こうとしないカシス。
キルアは、そのまま隣まで歩みを進めた。
『…』
「さっきのコト」
『…』
「何か、理由があってしたんだろ?」
フェンスの上に組んだ腕。 その上に顎を乗せているカシスは、口を尖らせた。
『約束…してたんだよね
カイトが、任務遂行の妨げになるような事態になったら、迷わず仕末してくれって』
驚き、目を丸くするキルア。
カシスは、ぐっと腕を空へと伸ばした。
『でもさ
私は、ゴンに嫌われてまでカイトとの約束を果すことが出来なかった
自分でも驚いてるんだ
だから、約束は破っちゃった』
ペロリと舌を出してみせるカシス。
その仕草に、心配して損したと思うキルア。 だが、それは違った。
『それ以上に
私も、信じてみたかったのかもしれない
カイトは、死んでない
元に戻るって』
悲しみに満ちた横顔は、カシスの心情をそのまま表しているようだった。
彼女は、嘘が上手い。
故に
本当の心を見せるのが、下手なのだ。
それを読み取れたことに、少なからず嬉しさを感じつつ、自分に似た部分が彼女にもある事を知った。
フェンスに置いてあるカシスの手に、自分の手をそっと重ねた。
「可能性は、ゼロじゃねーだろ?
なら、諦める必要もない」
『…うん』
微笑むカシス。
ぎゅっと指を絡め、握り返す。
ありがとう キルア
・END・
→おまけ
微笑み合う2人の後ろのドアの隙間。
イライライライラ……
「ナックル、抑えて」
イライラ度MAXのナックルと、ナックルを落ち着かせるゴン。 なかなか戻って来ない2人を呼びに来たのだが、出れずじまい。 結果、覗き見をすることになった。
だが、2人のイチャつきっぷり(ナックルにとっては)にとうとう耐え切れなくなったのか、勢いよくドアをブチ開けるナックル。
「てめぇら! いつまでイチャついてんだコラァー!!」
『ナックルに、ゴン!』
「別にイチャついてなんかいねーし」
「じゃあ、その手は何だぁ!!
しっかり握ってんじゃねーか! おまけに、指まで絡めやがって!」
「羨ましいだけだろ?
それに、手繋いだだけで怒んないでよ♪」
「んだと! オラァ!!
オイ、キルア。 前々から言おうと思ってたんだよ
おめぇ、カシスちゃんに随分と馴れ馴れしなぁ
カシスちゃんの彼氏でもあるめぇし」
「……まぁ」
「じゃあ、やめろ! そのスキンシップは、男のモラルに反するだろうが!
男なら、真正面からぶつかりやがれ!」
「それで、玉砕したくせに」
「(ガーーン...)」
「それに、オレ達
これでも結構、深い仲なんだけど」
「(ガガーーーン)」
『おい』
カシスの肩を引き寄せ、ニヤついた顔をしたキルアに、チョップをかましてやった。
『なにが、”深い仲”よ』
「照れんなって。 色々やっただろ? オレ達」
『あんたね…。 誤解を招くような言い方』
「キルアーー!! てめぇに、決闘をもーしこーむ!!!」
「はぁ?」
「てめぇのその腐った根性、このオレが叩き直してやる!!」
なんだか面倒な事になってきたので、ゴンの元に避難した。
『はぁ……なんであの2人は、ああなるかなぁ』
「(カシスが原因なんだけどなぁ…)」
『で、なに?』
「夕食の時間だって」
『じゃ、いこっか』
「………2人はどうするの?」
『ほっとけばいいよ! いこ、ゴン』
「う、うん」
白熱する2人(ナックルのみ)を置き去りに、屋上から出て行くゴンとカシスであった。
14/6/10
23/1/9(修正)
◇忙しすぎて、やっと更新ができました(T_T)
ゴンとの言い争いなんて、初めてで新鮮だった☆ でも、ゴンっぽくなってるかな?
もうちょっと、カシスの心情を細かく書けたら、わかりやすかっただろうに・・・。