キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―今日昼頃、パタ市郊外で市民7名が、謎の生物に殺害されました。
謎の生物は、駆け付けた警官数名にも重傷を...―
テレビから流れるニュースに、髪を拭きながら耳を傾けた。
そのニュースは、キメラアントがNGLから生息範囲を拡大している事を物語っていた。
ニュースで流れていた地域を、携帯で確認しているキルア。
「(パタ市……ミエラ山…)」
『近くと言えば、近くだね』
「あぁ。 でも、このキメラアントが向かったっていうミエラ山は、逆方向だ
問題なさそうだな」
「出たよー、キルア」
ぺたんと寝た頭をしたゴンに呼ばれ、キルアも風呂へ行くためにテレビを消し、席を立った。
明日は、ゴンとパームのデートの日。
お邪魔虫のキルアとカシスは、1日ジムでトレーニング。
という予定になった。
――
―――
―――――
翌朝。
ゴンは、待ち合わせの場所である掲示板前にいた。
そこには沢山の人達が行きかっているが、肝心のパームの姿は、まだないようだ。
待ちぼうけをするゴンをベンチに座り、様子を伺っている人物が2人。
目立たないように、多少の変装をしたキルアとカシスだ。
というのも
ゴンは今、念能力が全く使えない状態になっている。 ナックルから受けた念により、この状態は30日間続くという。
近くまでキメラアントが来ているという現状に、裸同然のゴンを放っておけるはずもない。
だからと言って、パームとのデートを取り消すことも、すっぽかすことも出来ない。 同伴など、もっての外だ。
という事で、2人の出した結論は
バレないよう尾行する事。
キルアは雑誌を読み、カシスはベンチの横に立ち、携帯を耳に当てている。
すると、待ちぼうけのゴンに声を掛ける女性が1人。
「ゴン君。 ここよ」
「わぁ…全然気付かなかった」
「変じゃないかな?」
「ううん。 すっごいキレイだよ!!」
ゴンの目の前に現れたのは、おめかしをしたパーム。
その容姿は、普段目にしているパームからは微塵も想像ができないほどの豹変っぷりだ。
同一人物とは、到底思えない。
「誰だよ!?」
『パームでしょ』
「なんでわかるんだよ!
ほぼ、別人じゃん」
『キルアって、ホント見る目ないんだね
パームって普段髪で顔隠れてるけど、元々キレイな人なんだよ
それに、恋する女の子は、キレイになるって本で読んだことあるし』
「にしても、変わり過ぎだし…
ぜってー、サギだ」
なんて文句を垂れている間に、ゴン達が移動し始めたので、キルアの首根っこ捕まえて、尾行を開始した。
まず向かったのは、水族館のイルカショー。
2人が見える位置に座り、ショーを観戦。
イルカが、勢いよく自らジャンプをし、吊るされている輪をくぐる。
『おお! すごいすごい!』
「おいカシス。 遊びに来てんじゃねぇんだぞ」
『わかってるよ
でもキルアみたいに、眉間に皺ばっか寄せてたら、余計に怪しいでしょ
周囲に溶け込むことも、尾行するのに大切な事じゃない?』
なんて言っているが、実際は溶け込むどころか、本当に楽しんでるんじゃないかって思うくらいカシスははしゃいでいる。
ったく
これじゃあ、オレ達までデートしてるみたい………
急に止まる、思考回路。
尾行をしていると言っても、2人で出掛けているのと大差ない。
隣にいるカシスは、変装しているものの、普段よりも女の子の格好をしている。
おまけに、楽しそうな笑顔。
膝の上に頬杖を付き、カシスに目をやりながら、ほんのりと頬を紅く染める。
……これも、デート…になるのか…
胸の辺りが温かい。
これが世間で言う、”幸福感”というものなのだろう。
幸福感に浸っているキルアだが、ある言葉に現実に引き戻された。
―2人の元から、消えなさい―
ビスケの、あの言葉。
さっきまでの温かい気持ちが、一気に締め付けられる思いだった。
自分は、2人と一緒にいてはいけない。
2人を見殺しにする。
言われた時
”そんなことしない”
そう思った自分と
”そうかもしれない”
と、感じた自分がいた
今は 2人が 眩しすぎるだけ
そうなのかもしれない
オレは…
オレの本質は……やっぱり
『キルア、行くよ』
「!?」
はっと顔を上げるキルア。
目の前のイルカショーは、いつの間にか終了しており、集まっていた客達も席を立っていた。
どうしたの? と顔を覗き込んでくるカシスに、何でもない事を伝える。
先に席を立つカシスの後ろ姿に、キルアも立ち上がった。
…こんな風に、カシスといられるのも
これが、最後なんだよな………
会場を後にするゴン達を、再び尾行した。
・
店が立ち並ぶカフェテラスで、暫しの休憩。
『はい』
「サンキュ」
飲み物をキルアに渡し、隣に座る。
ゴンとパームに目をやると、何を話しているのか、笑顔が絶えず楽しそうだ。
『なんか、楽しそうだね。 2人共』
「…あぁ」
ストローに口を付けながら、ちらりと隣を盗み見た。
イルカショーの時から、何となく感じる違和感。
『何か悩み事?』
「ぇ…?」
『そんな顔してる』
「……」
図星だったのか、顔を俯かせるキルア。
するとキルアは、ぽつりぽつりと話し出した。
「あのさ…カシス」
『ん?』
「今日が終わったら…ゴンの事、頼む」
『…』
自分を嘲笑っているのか、表情が伺えないが、薄っすらと口元が笑っていた。
少し間をおいて、カシスは口を開いた。
『…それが、キルアの出した答え?』
「あぁ…」
『そ。 なら、止めないけどさ』
「……」
『正直、がっかりだな
キルアにとって私達の繋がりって、その程度だったんだね』
俯き、黙り込んだままのキルア。
わかってるよ
キルアだって、悩み抜いて出した結論だって
でも…
『キルアはさ、死ねって言われたら死ぬの?』
「……何言ってんだよ」
『シュートに勝てなかったら、私とゴンの元から消えなさい
ビスケにそう言われたから、そうしようとしてるんでしょ?』
「…っ」
『キルア、前に言ってたよね
人にレール敷かれる人生は嫌だって。 だから家出したって』
キルアにとって絶対的存在だったゾルディック家
暗殺者として敷かれたレールに抗(アラガ)ってでも、家を飛び出したかった
その結果
キルアは今、ここにいる
私達と共にいる
「今回は、あの時の比じゃない
このまま一緒にいたら、いつか見殺しにするかもしれないんだ」
『だからビスケの言う通りにするんだ
はぁー。 なっさけなーい
キルアって、もっと根性ある奴だと思ってたのに』
その言葉には、キルアもカチンときたのか、勢いよく顔を上げ、カシスを睨み付けた。
「オレだってな! これから先も、ずっとお前らと一緒にっ…………いるつもりだったんだ」
それが 本音
本当は、離れたくなんかない
せっかくできた、唯一の友達だから
でも だからこそ
失うのが
失くすのが 怖いんだ
勢いで立ち上がったキルアの手は、ぐっと握られ震えていた。
その手をカシスは、そっと包み込むように握った。
『そうすればいいじゃん』
「っ!」
『難しく考えないでさ
一緒にいたいなら、一緒にいればいいんだよ』
「……でも」
『そんなに不安なら、強くなればいい』
「!」
『それだけの事、でしょ?』
微笑むカシス。
目を丸くしていたキルアの瞳に、光が戻ったように見えた。
起こるかどうかもわからない未来のために、今を我慢する事なんてない
そうならないようにする方法を見つければいい
それでも不安なら、打ち勝つくらい強くなればいい
やり方なんて、いくらでもある
大事なのは
キルア自身が どうしたいのか
ビスケの言う通りにするのも、一つの手
でも、それに抗う事も選択できるんだよ?
『キルアは、どうしたい?』
「………オレは」
一緒に いたい
そう言ったら、カシスは笑ってくれた
不安定な未来を考えるより
大事なのは、オレがどうしたいかだったんだ
ビスケはただ、選択肢を増やしたに過ぎない
それは、オレにとって楽な道
だけどその先には、誰もいない、空っぽな道
そんなのは、今までと何ら変わらない
家の中だけが、自分の世界だったあの頃のオレと
そこから抜け出すために
オレは
2人と一緒に 歩いて行きたいんだ
・END・
14/3/11
23/1/5(修正)
→短いおまけ
「カシス抱きしめていい?
てか、抱きしめさせろ」
『なんで命令形なわけ?
あと、せめて言った後に行動してほしいんだけど』
「それだと、逃げるだろ」
『時と場合による』
「なら、いいじゃん別に」
『サイテー……って! ゴン達移動してるじゃん! バカな事してないで行くよ!』
「……ちぇ(バカな事って…)」
的なことがあったり?