キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
工場を後にした4人は、森を更に奥へと進んでいた。
『な~んか…囲まれちゃってるね』
周りには、キメラアントの大群。
しかも、兵隊長クラスばかりときた。
良い修業になると、ゴン・キルアの2人が相手をすることに。
「戦闘体制に入った2人のオーラが、明かに力強くなったな」
『実戦向きだからね、2人とも
まぁ、ゴンはかなりのスロースターターだけど』
「これなら、十分に間に合う」
そう口にするカイトだが、その表情は言葉とは裏腹に、不安の色が浮かんでいた。
『…何か、不安なことでも?』
「………何故か、嫌な予感がする
何か見落としている…そんな、薄く粘っこい不安だ」
『…』
ハンターとしての勘がそう言っているのか。
嫌な空気に視線を戻した。
だが、不安を抱きつつも嬉しい誤算。
ゴン・キルア共に、兵隊長クラスを苦にしない程の実力だった。
『杞憂…だといいけど』
「…?」
『カイトの不安』
微笑むカシスは、闘い終わったキルアの元へ歩いて行った。
『キルア、交替』
「何言ってんだよ
まだまだ、これからじゃん」
『時間のムダよ』
言って、隊長蟻達の方へ歩いて行く。
「次は女か」
2匹続けて、いとも容易く倒された隊長蟻達は、次は自分がやるなどと、少し揉めだした。
前に出るカシスの後ろ姿を見て、ゴンが呟いた。
「…そう言えば、初めて見るね
カシスが念を使って闘うの」
「…あぁ」
確かに
今まで、ちゃんと目にしたことなかったな
ーー
ーーー
「だからジンさんは、カシスに念を教えたんだ」
ーー
ーーー
アイツが念を覚えたのは
5歳の時…
カシスの強さがどれ程のものか、興味を掻き立てられる。
すると、両手に鉄扇を出したカシスは、後ろにいる2人に小声で指示を出した。
『ゴン、キルア
3秒後に上へ飛んで』
「「?」」
隊長蟻達の前で足を止めたカシスは、鉄扇をバッと広げた。
腰を少し落とし、両手の鉄扇を左側に構えた。
「「!!?」」
刹那。
カシスのオーラが一気に膨れ上がったのを、2人は瞬時に感じ取った。
『…風刃』
ぐっと足に力を入れる。
円舞
2つの鉄扇を、円を描くように一回転させる。 瞬間、刃状の風が隊長蟻達を真っ二つにしていた。
上へ飛び上がっていた2人は、その一部始終を目の当たりにする事に。
「「…」」
円形に更地になったそこに着地した2人。
地面には、集まっていた全ての隊長蟻の頭や上半身が転がっていた。
予想以上の力に驚く。
ぱんっと、閉じた鉄扇をしまうカシスに逸早(イチハヤ)く駆け寄ったゴン。
「カシス! 今のって…」
『オーラを刃状に変形させたの』
感心するゴンの後ろで、今だ立ち尽くしているキルア。
…すげぇ威力…
一撃で、全滅させちまった
少しは 縮まったと思ってた
アイツとの 差
そう簡単に 縮まるもんじゃなかった
悔しさからか、きゅっと下唇を噛むキルア。
そんなキルアの心情を知ってか知らずか、カイトが声を掛けた。
「驚いたな
カシスが、これ程の念の使い手になっていたとは」
「…」
カイトに向けていた視線を前に戻した。
「さっきの…カシスが攻撃する時、一瞬でオーラが跳ね上がったんだけど、あれって」
「攻撃する瞬間だけ、必要なオーラを瞬時に出すことが出来るようだな
緻密なオーラコントロールがあって出来る芸当だ」
…なんか……くやしい
「行くぞ」
カイトを先頭に、先へ進む。
「…カシス」
『なに?』
「……いや…なんでもない」
『?』
首を傾げるカシスを追い越して、カイトに続く。
ムカつく…
お前は
こんなにも いとも容易(タヤス)く
オレの心を 掻き乱す
ほんと
むかつくよな…
ぐっと握り締めた手に、力が篭る。
余計な事は考えるな
巣は近いんだ
気を引き締めねぇと
・
先を急ごうとする一行。
だが、まだ息のある奴がいるようだ。
地面からカシス目掛けて、鞭のような物が飛んできた。
気付いていたカシスは、その鞭のような物を掴んだ。 そのまま地面から引きずり出し、木に叩き付ける。
「っ…くそっ!」
『残念だったね』
狙っていたのは、頭に貝を被った女のキメラアント。 攻撃してきたのは、こいつの尻尾だ。
カシスは鉄扇を手に、このキメラアントの始末にかかる。
だが
カシスの鉄扇は、キメラアントの首筋数ミリの所で止まった。
「……カシス」
小さく聞こえた、自分の名。
その声は、後ろにいる3人の耳にも聞こえていた。
「今…あのキメラアント
カシスの名前を呼んだ気がするんだけど…」
「あぁ、オレも聞こえた」
「…」
貝のキメラアントは続けた。
「やっぱり…カシスなのね
……生きていてくれたなんて…」
まるで
再会を懐かしむように、キメラアントの目からは涙が零れていた。
『…悪いけど
キメラアントに、知り合いはいない』
「わからないのも無理ないわね
こんな姿だもの…
貴女の、母さんよ」
『…』
「「!!?」」
思いも寄らぬ言葉に、ゴン・キルアは目を見開き、顔を見合わせている。
『母さん……?』
「えぇ
信じられないかも知れないけど…
数日前に、村に化け物がきて
お父さんも、貴女の兄さんも皆…
カシス……大きく、なったわね」
どうやら、このキメラアントは、前世の人間だった時の記憶があるようだ。
すると
カシスは、鉄扇をキメラアントの首筋から下ろした。 彼女はそれが嬉しかったのか、笑みを浮かべた。
「わかってくれたのね
嬉しいわ」
俯くカシスの表情は、伺えない。
それを読み取ったのか、キメラアントの表情も沈んでいった。
「カシスのお母さんって、本当かな?」
「さぁな…」
「大丈夫かな……カシス」
アレが、本当に母親なら
NGLがカシスの出身地ってことになる
さっき寄った村
カシスの、まるで知っているかのような足取り
迷う事なく立ち入った、一件の家
辻褄は合う
母親である可能性は、ある
だが、嘘である可能性も拭いきれない
「……そうよね
許されるはず、ないわよね
私は………貴女を…捨てたんだもの
恨んで当然」
『………恨んでないよ』
「…え?」
『恨んでないから』
微笑むカシスに、キメラアントは、手を口元にあて、涙を流した。
「………っ……ありがとう……カシス…
これで
安心して貴女を
殺せるわ!!」
カシスの後ろの地面から、先程の尻尾が飛び出し、カシスの後頭部に突き刺さった。
「ぐはぁっ!!」
ように見えた。
しかし悲鳴が上がったのは、貝のキメラアントの方だった。
自分の首に刺さったソレに視線を落し、その先に焦点を合わせた。
「な、なぜ…わかった……っ」
『ハンター…だからね』
しゃがんで攻撃を避けたカシスの右拳に、オーラが集まる。
「ま、まって!
悪かったわ、許してぇ!!
母さんだって、貴女を捨てることは苦渋の決断だったの! 仕方なかったのよぉ!!」
『…わかってる
だから恨んでないって言ったでしょ?
むしろ、捨てくれて感謝してるから
気負わなくていいよ』
「じゃぁ…」
『産んでくれたことは、感謝してるよ
母さん』
言い終わると、”硬”で強化した右拳を、顔面目掛けて叩き付けた。
かなりの破壊力に、キメラアントの頭は粉砕。 その後ろにあった大木も、粉々に吹き飛んだ。
それはまるで、今のカシスの心情を現しているかのように。
「…」
「…」
静まり返る中、くるりと顔だけ振り返るカシス。
『さ。 行こっか』
その笑顔に胸を痛めたのは、ゴンだけではなかっただろう。
カイトの後を歩くカシスに、ゴンが並んで歩く。
隠す必要も無いため、捨てられたことを話した。
「カシス……良かったの?」
『ん?』
「その…さっきの、キメラアント………お母さんだって…」
『うん。 たぶん本当』
「………なんで、殺したの?」
この質問に、カシスは驚いたのか、ゴンの方へ顔を向けた。
『キメラアントだから』
「でも、本当のお母さんなんでしょ?」
『……ゴン
私達は、何のためにここへ来たのか』
「勿論、それはわかってるけど…」
ゴンの言いたい事はわかる
理解しがたいんだろう
いくら敵とは言え、実の親
助ける道ぐらいあったかもしれない
それを、無惨にも殺したんだから
『……助けを乞うだけなら、見逃してもよかったんだけどね
見たでしょ?
実の子供でも、殺そうとする奴だよ
強暴性は明らか
今、仕留めとかないと、被害は拡大するだけでしょ?』
「カシス…」
『ありがと、ゴン
心配してくれて
私は、大丈夫だから』
笑顔を向けると、ゴンも一応納得してくれたのか、頭を切り替えたようだ。
前を進むゴンと入れ替わるようにして、キルアが隣に並んだ。
何も言わないキルアにも、微笑んでみせる。
本当に 大丈夫だから
私は もう
彼女を 恨んでいない
ただ
心が少し 軽くなった
平気だと思ってた
けど
どこかで 重荷になっていたんだ
捨てられた 事実が
大丈夫だから
私には
貴方達が いるから
思いが伝わったのか、キルアも安堵した表情になった。
・
岩石地帯を抜け、さらに森の奥地へ向かう。
『…っ』
奥へ進むにつれ、ねっとりとした嫌なオーラが纏わり付いてくる。
なに……この嫌な感じ…
こんなの、初めてだ
この先にいる奴は
それ程、ヤバイってこと?
頬を伝う汗を、手の甲で拭う。
それに気づいたのか、カイトが声を掛けた。
「大丈夫か?」
『……うん………カイト
もしかしたら
私達が思っている以上に、奴らは力を付けているかもしれない』
「……そうか」
「何でわかるの?」
「カシスのアンテナは、オレ達よりも遥かに精度が良いからな」
険しい表情のカシスを心配するように、キルアが声をかけた。
「カシス」
『キルア…
…気を引き締めた方がいい
思った以上にヤバいかも』
今までに、見たことないほど強張った表情。
緊張感がより一層増し、一行の足取りを速めた。
それから暫く進むと。
森の真ん中に、不自然に立った岩山らしき物が見えてきた。
キメラアントの巣に間違いない。
女王蟻も、あそこにいるはずだ。
この……
体中に刺さる、禍禍しいオーラ
まだ、こんなにも離れているというのに
まるで
目の前にいるような錯覚さえする
……やばい
「………………化け物だ…
なんてことだ
信じられん
ゴン、キルア
すぐ逃げろ!」
「「え!?」」
「早く行け!!
ここから離れろ!!」
同時に
何かを感じた。
それは、考えるまでもなく。
今までの経験が直感した。
来る!!
「オレから離れろ!!」
「!?」
『ゴン!!』
カイトの近くにいたゴンを、瞬時に遠ざけた。
刹那。
何かが目の前に飛んできた。
その何かは、一度2人に視線を遣るが、すぐにカイトへと視線を外した。
ただそれだけ。
それだけなのに
2人の精神は、かなり擦り減らされていた。
『…っ』
「!!」
膝を付くカシスに気づいたゴン。
カシスの左二の腕辺りが、半分ほどぱっくりと切れており、血が大量に流れていた。
自分を遠ざけた時に、飛んできた何かに裂かれただろう事は、安易に想像できた。
ゴンが声を発しようとした瞬間、ドサッと何かが地面に落ちる音がした。
カイトの右腕だ。
「うぁあああ!!」
『(ゴンっ!)』
「(ばっ)」
目にした瞬間、ゴンがブチ切れた。
ガッ!!
だが、キルアの一撃によって、ゴンは気絶することになる。
「いい判断だ、キルア
そのまま、ゴンを連れて逃げろ」
『…カイト!』
「カシス、お前も行け
2人を、頼んだぞ」
カシスは頷き、ゴンを担いだキルアと共にその場から離れた。
……………カイト
覚悟を決めた瞳だった
―――
――
「カシス
一つ、頼んでもいいか?」
――
―――
NGLへ来る前にした
カイトからの頼まれ事
そんな頼み
聞きたくないから
だから…
死なないでよ
カイト
・END・
13/11/15
23/1/3(修正)
◇母との再会は、もっとつんけんした感じにしようとか、人間の時に再会させようと思っていましたが・・
何故か、こうなってしまいました(-.-;)
さてさて、キメラアント編序章が終わったかなって感じです
次の次くらいから、パーム・ナックル・シュートの3人が登場するかも!
この3人の所も好きなんです☆