キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
八方手を尽くしたが、これ以上、現場での情報は見込みがないようだ。
『カイト、私がやってみるよ』
そう言ったカシスは、靴を脱ぎ、裸足で海に入って行った。
踝(クルブシ)まで海に浸かると、その場で立ち止まった。
皆が見守る中、碧みがかった髪がそよそよと潮風に吹かれる。
目を瞑(ツブ)り、何かを感じているのか、そのまま数分が経過した。
顔を見合わせる一同。
何をしているのか、全く分からない。
その中でカイトのみ、カシスのオーラの変化を察知していた。
それは、ごく自然体で。
恐らく、ゴンやキルアでは気付かないほどの変化。
……ほう
これは思っていた以上に、コントロール出来ている
驚きの表情の後、口角を上げた。
心強い
いい逸材だ
それ故に
恐ろしい存在でもある
そう感じとったカイトだった。
暫くすると、くるりとこちらを向いたカシス。
『本体は、NGL付近にあるよ』
――
―――
―――――
カイト達は、ミテネ連邦にあるNGL自治国へ向かっていた。 カシスの序言もあるが、そこである可能性は高い。
2mもある女王蟻が、人間に目をつけていたら。
必ず、村や町単位の集団失踪事件が起きるはず。 しかし、ネット上にそんな情報は一切出てこなかった。
ネオ・グリーン・ライフ。
NGLはこの略称だ。
機械文明を全て捨てて、自然の中での生活を徹底している自治国。
故に、情報が外に漏れることは殆ど無いに等しい。
というのもあった。
「ねぇ、カシス
さっきのアレって、何をしてたの?」
「あ、それ。 オレも聞きたい」
荷物トラックに揺られながら、そんな質問をする2人。
「海の中に入って、じっと立っていただけだと思ったら
いきなり”本体は、NGLにある”なんて言い出すんだもん」
『海流の過去を遡(サカノボ)ってたんだよ』
「海流の過去?」
『そ。 念能力でね』
念と聞いた2人は、興味津々な様子。
そんな2人からは、詳しく聞こうと、がんがんに質問が飛んで来る。
興味津々なのは良いことなのだが、とても話せる内容ではない。
説明するには、この瞳の事から説明しなくてはいけないからだ。
従って、キラキラの瞳を向けてくるお子様2人には。
『企業秘密だ』
と、指で耳を塞ぐ。
後ろでは、ギャースカ騒ぐお子様達。
「あ。 でもカシスって、具現化系だろ?
海流の過去遡ったって、どういうことだ?」
具現化系の能力だけでは無理な能力だ。
それこそ、特質系の能力に近いものだろう。
疑問を持つキルアに、顔を背け耳を塞ぎ、先程と同じ台詞を告げた。
さすがに
この事は、言えないから
「…」
その様子を見ていたカイトは、深く帽子を被り直した。
・
暫くトラックに揺られていると。 目の前には、NGLの国境に当たる大木が2本、見えてきた。
ここは、検問所兼大使館になっている。
NGLでは、天然素材以外の物品の持ち込みを禁止しているため、入国するにあたって天然素材の服や靴に着替える必要があった。
ポドンゴと一緒に、女子更衣室のカーテンをくぐった。
窓代わりにくり抜かれた穴が上の方にあり、温かな光が差し込んでいる。 床には、麻で編んである絨毯が敷いてあった。
奥には棚。 そこに天然素材の衣服が置かれており、隣には籠が置いてある。
着替えた服を入れるためだろう。
はぁ…
かなり厳重だこと
自分達のしていることは棚に上げて
いや
だから…か
NGLの黒い噂は、無論カシスも耳にしている。
溜息をつきながら、用意されている服に腕を通した。
――
―――
1階では、既に着替え終えた男性陣がいた。
『お待たせ~』
遅れること5分。
女性陣も階段を下りてきた。
振り返る男共は、皆揃って感嘆の声を上げた。
その視線の先には、普段よりも少し露出度の高いカシスの姿。
「お~! いいねぇ」
「カシス似合うよ! 可愛い♪」
『ありがと! 2人共』
お褒めの言葉を貰い、上機嫌のカシス。
彼女自身、この服を気に入った様で。 デザイン性もそうだが、何より動きやすいからだろう。
すると、じっと見つめたままのキルアが目に入った。
『何か言いたげだね?』
「……別に」
『ゴンみたいに、素直な感想を述べてくれても良いのだよ? キルア君』
鼻高々に言うカシスに、口角を上げたキルア。
”じゃあ…”というようにカシスにズイッと近づき、耳元で囁いた。
「…スゲ〜 そそる」
『っ!!?』
予想を遥かに超えた感想に、不覚にもボンッ、と顔を紅くした。
『なっ…何言ってんのよ!!』
「素直な感想言えっつったの、そっちじゃん」
ヒョウヒョウとした顔で言われ、愕然と肩を落とす。
こいつに聞いた私が馬鹿だった…
そんなカシスを見るのが余程楽しいのか、ニヤリと笑った猫顔。
悪い顔だ。
そのままカシスの肩を組み、顔を覗き込んだ。
「んな、照れんなって……っ!!」
『さ、バカは放っといて
ちゃっちゃと検問しちゃおう』
「(もぅ、キルアってば…)」
一言多いんだから…
右ストレートを喰らったキルアは、既にノックアウト。
それを、哀れな顔と呆れた顔で見遣る周りの野次馬達だった。
・
馬を4頭借り、ゴン、キルア以外は2人ずつで馬に乗り、NGL内部に入った。
一先ず、集落を一つ一つチェックし、虱潰しに情報収集をすることになった。
「とにかく、海岸線に沿って集落をチェックしていくしかないね
全部廻ってみて、何の情報も出なかったら
多分、本体はこの国でもないってことだよ」
「NGL(ここ)の連中の言っていることが、本当だとしての話だけどな」
「ま、もともと
ここの連中に何も期待はしていない
オレの勘が言ってる
”ここにいる”とな」
ピリッとした空気の中、空から何か小さな影が、こちらに向かって飛んで来るのが見えた。
『待って、カイト』
馬を止めさせ、人差し指を空へ向けると、小さな影がカシスの指に止まった。
ゴン、キルアも不思議そうに影を目で追う。
「ハチ?」
「何か持ってるぜ」
蜂は、大事そうに紙切れの様な物を抱えていた。
カシスはソレを受け取り、広げてみる。
小さな紙切れには
NGLの地図に×印、メッセージが血文字で書かれていた。
『……カイト』
「…」
紙切れを、後ろにいるカイトにも見せた。
その表情は、更に険しくなる。
カイトの勘は、当たっていた。
NGLでは既に、キメラアントによる未曾有の生物災害(バイオハザード)が始まっていた。
事は一刻を争う。
カイトはポドンゴとスティックに、この事態をハンター協会へ連絡するよう言った。
そして
ゴン、キルアには、危険を伴うが一緒に来るかどうかを確認。
勿論、2人の返事にNOはない。
馬を降りた4人は、それぞれ準備運動をした。
「ついてこれなきゃ、置いてくぞ?」
「こっちのセリフだね」
「準備OK!」
『いくよ!』
言葉と共に、目にも留まらぬ速さで走って行ってしまった。
通訳兼、監視役の2人は、開いた口が塞がらないまま、その場に取り残されていた。
――
―――
―――――
4人は、一つの集落に到着した。
道や畑には、色々な物が散乱している。 服や靴、髪留め、畑道具などが無造作に。
「……誰もいないね」
その光景は、既にこの集落に人がいないことを物語っていた。
手分けして集落を調べている中、カシスだけはその場で固まっていた。
NGLに来るのは、初めてのはず
でも…
目の前に広がる景色に、見覚えがあるのだ。
今では
遠い記憶
頭の片隅に置かれた
しかし、色褪せることのない記憶
カシスは歩を進め、集落の奥へ入って行った。
それに違和感を覚えたキルアは、後を追う。
その行動を見守るカイト。
初めて来たと言っていたにも関わらず、何の迷いもなく歩いていく彼女を、疑問に思った。
カシス……どこに行く気だ…?
ある家の前で立ち止まったカシスは、開いている玄関をくぐった。
昔ながらの造りで、部屋の中央には囲炉裏(イロリ)もある。
食事を摂るところだったのだろうか。
囲炉裏を囲み、3人分の食事が用意してあった。
冷めきっているスープは、既に食べる主がいないことを示していた。
『……』
家の中を見渡すカシス。
幼い頃の自分が、この家の中を駆け巡る姿が目に浮かぶ。
思い出される記憶は、どれも笑顔の自分だった。
…そっか
私は……
嘲笑うように俯くカシス。
そんな彼女の後ろ姿に声をかけた。
「カシス、どうしたんだ?」
『………何でもないよ』
「2人共」
呼びに来たゴンに、2人も家を後にした。
疑問が残るも
”何でもない”と言うカシスを、問い質すことはしなかった。
それは
カシスの、触れられたくない部分に関係している。
そう直感したから。
ゴンの背中を見ながら、来た道を戻って行く。
集落を見る限り、キメラアントに襲われた後だとわかる
村人は全員、殺されたか喰われたか…
あの人達も…
何故かな
それを知っても、全く悲しくない
裏切られた愛情
縋り付きたかった愛情
それが
こんなにも
私の心を
凍てつかせていたなんて…
産まれ育った家。
主を失った
からっぽな家。
二度と彼女が
振り返る事はなかった。
・END・
13/9/6
23/1/2(修正)
◇少しわかりにくいかもしれないです・・;スミマセン(-.-;)