キメラアント編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あのさ、もう一つ聞いていい?」
「ああ」
「なんでカシスは、殺されずに”捨てられた”んだ?」
「…さぁな
オレもジンさんも、それはわからない」
「…そっか」
素朴な疑問だったのか、それ以上キルアが聞くことはなかった。
が、カイトにしてみれば、それこそが最大の疑問だった。
しかし、それを口にする事はなかった。
カイトとの話しも終わり、キルアも眠りに着こうと腰を上げた。
「キルア」
「?」
「今話したことは、他言無用
勿論、ゴンにも…本人にもだ
カシスは、紺碧の瞳を所持したまま生き延びた、唯一の人間だからな
知っている人間は、極力少ない方がいい
でないと、強欲でクソみたいな連中が押し寄せてくる」
「わかってる
……あ。でも
何でカシスにも言っちゃいけないんだ? ゴンはわかるけど」
「……念のため、だ」
「?」
もし、この先
カシスが、この2人と離れたいと思った時
離れなければならなくなった時
それが
足枷にならないように
――
―――
―――――
次の日。
早朝から森を散策中の4人。
『ねぇ、キルア』
「ん~?」
『昨日、カイトと何話してたの?』
「起きてたのか?」
『うっすらね
2人の話声が聞こえたから、まだ起きてるんだぁ……って思ったら、寝ちゃってたから
内容は聞こえてたかも知れないけど、覚えてなくて』
「寝ぼけてたなら、聞かねぇ方がいいと思うけど」
『なんでよ』
「夜に男同士で話す事って言ったら、アレしかねーだろ?
それでも聞きたいわけ?」
『……』
口を手で隠し、ニヤニヤと笑うキルア。
それが何を意図するのか安易にわかる。
可哀相な人を見るような目を向けたかと思ったら、プイッと顔を前に逸らした。
「なんだよ…そのいかにも痛そうな奴を見る目は」
『いや…
これからは、そういう目でキルアを見ようかと』
「冗談だっつーの! 真に受けるなよな」
『キルアが言うと、冗談に聞こえない
むしろ、言い訳に聞こえる』
「お前…オレをなんだと思ってんだよ」
『エロガキ大魔神』
「……」
前よりも、あだ名が進化している。
なんだか、複雑な気分のキルア君。
そんな彼を余所に、前の2人を追い掛けるカシス。
「…」
前を歩くカシスの後ろ姿。
”紺碧の瞳”……か
どうりで…強いはずだ
んな爆弾を抱えてたんじゃ、嫌でも強くならなきゃなんねーじゃん
でも…
”今は、捨ててくれた事に感謝してるんだ
だって捨ててくれなきゃ、今の私はいなかったし
ハンターになろうとも思わなかった
それに
キルアと、こうして出会う事もなかったんだよ?”
あれは、アイツの本心から言った言葉だったのか
オレには、わからない
ただ
カシスが、ソレを持っていたおかげで
捨てられたおかげで
オレ達は
巡り会えた
心のどこかで
それを
”良かった”
なんて
思ってる自分がいる
不謹慎なことに…
フッと、苦笑いを浮かべたキルアも、3人を追い掛けた。
・
「ところで、カイトはここで何をしてるの?」
「生物調査さ。 カキン国に依頼されてな
新種の発見と、生態調査が主な仕事だ
あとで動物の映像でも見るか?
珍しいヤツが山ほど録れてるぜ」
カイトの話によると
ここは、カキン国だという
アイジエン大陸の真ん中辺りに位置する国のはず
ということは
私達は、大陸を飛び越えて来ちゃったってことか…
ヨークシンがある大陸は、海の向こうだから
かなり飛ばされたんだね
昼食の準備をしていると、今話していたカイトの仲間が戻ってきた。
自己紹介をすると。
「フリークス…? ………って、もしかして」
「そう、ジンさんの息子だ」
マジで!?
…まぁ
そう、なるよね
それに
キルアも一応、有名な暗殺一家だし
「キミも!? まさか、キミも?」
『私は、カシスって言います』
「こいつはオレと同じで、ジンさんの弟子だ
ちなみに
3人共、プロのハンター
お前達の先輩ってわけだ」
どひぇ~~~~
カイトの愉快な仲間達は、驚きの余り破顔していた。
今までで、一番凄い生き物に遭ったってカンジ。 なんて、ご感想を頂いた。
はは…
ちっとも嬉しくないや
褒められてるのか、疑わしい
そのままカイト達と共に、依頼主の元へ向かった。
そこで、奇妙な話しを耳にした。
サザンピースに、奇妙な生物の一部が持ち込まれたという。
――
―――
―――――
ヨークシン・サザンピース。
「こちらでございます」
案内された部屋の中央に、それはあった。
保育器のような箱に丁寧に入れられていたのは、人の腕ほどある、昆虫の足によく似た物だった。
その大きさからして、明かに未確認の生物である。
『…』
「どうした? カシス」
『あ、ううん…何でも』
マジマジと見るカシスを、不思議に思ったカイト。
なんだろう
どこかで見たような…
何かが引っ掛かってはいるものの、その答えを掘り出せないでいる。
だからカイトに伝えることはしなかった。
分けてもらったサンプルを調べれば、何か判るはずだし
カイト達は、拾い主の方を調べるため、ヨークシンから南へ下って行くことになった。
――
―――
拾い主に場所を聞くと、砂浜の波打ち際に漂っていた所を拾ったようだ。
本体が、近くにある密林に逃げ込んだのか。
はたまた海の底か。
違う島に流れ着いてるか。
それ以前に、本体は生きているのか。
色んな仮説を立てるが、どれも確認しようがない。
圧倒的に情報が足りないからだ。
と、調度その時。
カイトの携帯に、サンプルを調べていたポドンゴ達から連絡が入った。
「キメラアント………!!」
『! そうだ! キメラアントだ!』
カイトの発した単語に、引っ掛かっていた物を漸く掘り出せたカシス。
「キメラアント? それ、どんなヤツ?」
『蟻だよ
第一級隔離指定種に認定されている虫』
「危険なの?」
「とにかく貪欲なんだ
キメラアントは、摂食交配という特殊な産卵形態をとるんだが」
「旺盛な食欲で自重の数倍の食料を一日で消費する
固体によって好き嫌いが全く違うので、グルメアントという別名もあるわ」
『……でも
確かキメラアントって、女王蟻で10㎝程度じゃなかったっけ?』
「そうだね」
「全然違うじゃん。 こいつと」
『あの足の大きさから見ても、本体は恐らく2mかそれ以上…』
「人間でも食えそうだな」
その仮説に、不穏な空気が流れた。
そこにいる誰もが、”異常事態”だと悟らざる終えなかった。
「探そう」
これが
最悪の地獄への 幕開けとなった。
・END・
13/8/16
23/1/1(修正)