ハンター試験編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガタガタと揺れる薄暗い船内。 部屋には、溢れる人の数。
このほとんどがハンター試験を受けるべく、試験会場へと向かっている連中だ。
その片隅で、壁に背を預けた銀色と紺色が仲良く並んで座っていた。
「すっげー人数だな」
『これ、ほとんどが受験者なんだよね』
「どいつもこいつも、大したことねーな」
カシスも、それは思う所だ。
試験会場に辿り着けるのは、この内のほんの一握り。 この船に乗っているほとんどの受験生は、会場に辿り着けないだろう。
『でも、残念だったね』
「ん~?」
『せっかくの船なのに、すぐ嵐が来ちゃうなんて』
「だよなぁ
船内探検とかしたかったし」
出港して一時間もしないうちに嵐が来ると、船室に詰め込まれたのだ。
何をするでもなく時間が流れる中、隣ではリンゴを齧(カジ)り始めるキルア。 暇そうだ。
すると前を通り過ぎた人から、タオルのような布が床に落ちた。
気付かず通り過ぎる人を見て、カシスは腰を上げる。
それを、リンゴを頬張りながら不思議そうに見やるキルア。
『あの、これ落ちましたよ』
「ああ。 悪いな」
男に落とし物を渡すが、男の視線はカシスを見据えたまま。
『…なにか?』
「いや…お前さんみたいな女の子が乗ってるなんてな
まぁ、泣きを見る前に早く帰った方が身のためだぜ」
頭をぽんぽんと叩かれ、笑いながら男は去って行った。
その男を、ジト目で見送る。
…何 あいつ
と、その時。 船が今までで一番大きく揺れた。
本格的に嵐が来たようだ。
突然の大きな揺れに、カシスも驚き、バランスを崩してしまう。
『! わっ!』
「!」
後ろに倒れるカシスをキルアが咄嗟に受け止めた。
「大丈夫か?」
『…あ、ありがとう』
「すっげぇ揺れだな」
未(イマ)だ続く揺れに、少しワクワク気味のキルア。
そんなキルアの顔を見上げたカシスは、違和感を感じ、見上げていた顔を下げた。
倒れる自分を受け止めてくれたキルアの両腕は、しっかりと自分を抱き留めてくれている。
そのおかげて怪我をせずに済んだ。 それはとても感謝している。
しかし、問題なのはキルアの手の位置だ。
左手は腰の位置だが、右手は自分の左胸を掴んでいた。
瞬きを2回した後、再び後ろにいるキルアを見上げた。
キルアは気付いていないようだ。
『キルア…
出来れば…そろそろ手を放してほしいんだけど…』
「ん? なんで?」
疑問に思うキルアは、カシスの右の肩口からカシスの顔を覗き込んだ。
少し恥じらうようなカシスは、遠慮気味にキルアの右手を指差した。
そこで漸く気づく。 カシスの胸を掴んでしまっている事に。
これには、さすがのキルアも頬を紅く染めた。
「わっ、わりぃ!!
…あ…こ、これは…とっさだったしっ」
『わかってるから。 気にしないで』
ばっ! と、手を放すキルア。
助けてくれた結果の末なので、そこはカシスも怒ることはしない。
話題を変え、この揺れの大きさと部屋の中の大惨事の事へ。
話しをしながら、ちらりとカシスを盗み見る。
胸掴んでも、怒らなかった…
カシスって
結構さばさばした性格だよな
見た目は女なのに、男っぽいっていうか…
話しやすいし、一緒にいて面白いし
でも…
やっぱ、女…なんだよな カシスは
今更ながら、カシスが女の子であると自覚した。
そして、無意識に自分の右手に視線を向けていた。 驚きと後ろめたさに少し後悔する。
まったく、感触覚えてねぇ…
勿体なく思うキルアだった。
ーー
ーーー
ーーーーー
無事、アナルル港へ到着した2人。
「え~と…試験会場のザバン市に行くバスは」
『キルア、何してるの?』
「ザバン市行のバスの確認してるに決まってんだろ」
さも、当たり前のように言うキルア。 普通に考えたら、それは至極当然だ。
しかし、これはハンター試験だという事を忘れてはならない。
『キルア、こっち』
「なんだよ」
キルアの腕を掴んで、バス停に群がる受験生達から外へ出た。
少し離れた所まで行き、キルアの腕を放す。
『1万人に1人。 何の数字かわかる?』
「さぁ」
『試験会場に辿り着く確率だよ』
毎年ハンター試験には、何万もの試験申込みがある。 しかし、それを全員審査する人手も余裕もハンター協会にはない。
その為、試験会場へ辿り着く。 この前段階でふるいにかけられるのだ。
会場へ辿り着けない輩は、試験すら受ける資格が無いと。
『だから普通の方法じゃ、試験会場に辿り着くのは至難の業。 ていうか、それじゃ辿り着けないの』
「へぇ~。(なんか、ロープレみたいだ)
じゃあ、何? 聞き込みでもするわけ?」
『まずは、ナビゲーターを探すよ』
というわけで、街で情報収集を開始した。
1時間後に港集合で。
――
――――
「ったく、あのババア…
結局何も知らねェんだったら、初めっから言えよな! ムダな時間食ったし」
頭の後ろで手を組みながら愚痴を溢すキルアは、集合時間の為、港まで戻って来た。
辺りを見渡し、紺色の猫を探す。
…カシスは……いた…って
またアイツ、絡まれてるし
見つけた紺色の猫は、男2人に声を掛けられていた。
「女1人じゃ、心細いだろ
俺達と一緒にいかねぇか?」
「その方が、キミも何かと安心だろ?」
『結構です』
「そう言わずにさ
ほら、旅は道連れって言うだろ」
「そうそう
人の親切心は、素直に受け取るのが礼儀ってもんだよ」
人の好さそうな顔をしながら言い寄って来た2人も、ハンター試験を受ける受験生のようだ。
カシスが断るも、食い下がる2人を少々ウザったく思う。 このしつこさの理由を、勿論カシスも気付いている。
一つ溜息をついたカシスは、男2人を挑発する。
『あなた達が欲しいのは、ナビゲーターの居場所でしょ?』
「「!?」」
図星を付かれた男2人から、ヘラヘラした顔が消えた。
「はぁ…バレちゃ、しょうがねぇなぁ」
「つーわけで、一緒に来てもらおうか?」
『悪いけど
私、弱い奴と組む気ないから。 他当たってくれる?』
その一言に、男2人は逆上。
1人はナイフを取り出し、カシスに襲いかかった。
その様子を遠目で見ていたキルア。
「…」
頭の後ろに手を組んだまま、事の成り行きを見ることにした。
それは、カシスの実力を見るためでもあった。
これで助けを乞うようであれば、このまま1人で試験会場に行った方が良い。 そう考えたのだ。
しかしそれは、要らぬ考えとなった。
ナイフで切りかかってくる男の腕を掴み避け、左拳で顔面に一撃を入れる。
間髪入れずに、後ろにいた男が剣を振り下ろす。 それを回転しながら避け、その勢いのまま、男の米神に右足の踵(カカト)をヒットさせた。
速く無駄のない攻撃に、目を見開き驚くキルア。
『はぁ…。 あ! キルア!』
何事も無かった様に手を振るカシス。
早速、ナビゲーターの元へ行くため歩き始めた。
「お前、案外強いんだな」
『え? あぁ…さっきのは、あの2人が弱かったんだよ』
と、謙遜するカシス。
確かに、あの男2人は弱いのだろう。
だが、それとは別に、男2人を倒したカシスの動きを見ての発言。
自分が思っていた以上に、彼女の戦闘能力は高かった。
面白い誤算に、少しの高揚感を覚えた。
コイツ
思った以上に、面白れー奴かも
そう直感したキルアの口元は、少し楽しそうに笑っていた。
ーー
ーーー
宿屋の一室。
ベットにうつ伏せで寝転がっているカシス。
そこへ、タオルで頭を拭きながらキルアが風呂から出て来た。
隣のベットへ座り、目が閉じそうなカシスに話しかける。
「つか、こんなのんびりしてていいわけ?」
『ん~?』
「なんとかっつーキノコ、探しに行くんだろ?」
あれからナビゲーターに会うことが出来たのだが、ある課題が出された。
”アオダケ”というキノコを持って来ること。
それに合格出来れば、試験会場への詳しい行き方を教えてくれるという。
すぐに探しに行くのかと思いきや、いきなり宿を取り、今日は宿に泊まると言い出したのだ。
疑問に思うのも当然だ。
枕に埋めていた顔をキルアに向けた。
『”アオダケ”は日の出の時しか、見つけられないんだよ』
「日の出?」
『んふふ…
明日、教えてあげる。 見た方が早いから』
意味深な事を言ったカシスは一度起き上がり、右腕を上に上げ、ぐっと伸びをした。
「…」
黒のキャミソールに黒の短パン姿。 伸びをするカシスのそのシルエットに、自然と目がいってしまうのは仕方のない事だろう。
今まで自分の周りにいた異性は、母親と執事のみ。 それはキルアの中で”女”だと認識するのには難しいものだ。
そういう意味でも、初めて”女”だと認識したカシスに、少なからず興味を持ち始めていた。
そんなキルアの視線に気付く。
『なに?』
「…別に」
『? ま、いいや
私、寝るから。 キルアも早く寝なよ
明日は早いからね』
そう言いながら布団に潜る。
”おやすみ”と告げ、キルアに背を向けて眠りについた。
電気を消し、キルアも布団に潜り込む。
カシスと反対向きになると、カーテンを閉め忘れた窓ガラスが目に映る。
月明りを、ぼんやりと眺めた。
なんか…不思議だ
今まで
こんな風に過ごしたことなんか なかった…
生まれた時から全てが暗殺の修行だったキルアからしたら、今の普通の日々は非日常という事になるのだろう。
何もかもが新鮮で、それにちょっとした隠し味をつけてくれるのが、先日出会ったカシスだ。
胸が弾み、心が躍るように。
いいな…これ
無意識に顔が綻(ホコロ)んでいた。
―――
―――――
日の出前の暗い森の中に、カシスとキルアの姿はあった。 早朝とあって、欠伸をしながら歩いていくキルア。
そんなキルアを、横目で見やる。
すぐ隣を歩いているのに、全然足音がしない
キルアと出会った時から思ってたけど
森の中でも、関係ないんだよね…
この年で”暗歩”を使いこなしているなんて
キルアの暗殺技術の高さに関心していた。
そこで、一つ質問をしてみた。
『ねぇ、キルアの家って
もしかして、有名…だったりする?』
カシスの頭には、一つの有名な暗殺一家が思い浮かんでいた。
この年で暗歩をマスターしているとしたら、幼少期からそういう教育を受けている。 と考えられる。
「ん~…なんで?」
『その年で、それだけの暗歩が出来るから
単なる好奇心だよ』
カシスに目をやるキルア。
暗殺技術の知識があることに少し驚いた。
考えを巡らせたキルアは、口を開いた。
「ゾルディック家」
したり顔のキルアと目が合った。
それはカシスが頭に浮かんだものと同じだった。
やっぱり…と思う中、今度はキルアから質問が飛んできた。
「オレも、一つ聞きたいんだけど」
『なに? …あ!』
と、何かを発見したのか小走りで行ってしまうカシス。 それによってキルアの質問は、口から出て行く事はなかった。
『これだよ。 ”アオダケ”』
後ろにいるキルアに取って見せた。
暗がりでよく見えないが、特に変わった所はない。 ただのキノコだ。
「なんだよ
見つけられるんなら、別にこんな朝早くに来ることないじゃん」
『まぁ、見てて
そろそろ日の出だから』
森の向こう側から朝陽が昇り、暗闇だった森に光が差し込んでいった。
すると、カシスが持っているアオダケが、青く光り出した。 それを目にしたキルアは、感嘆の声を上げる。
「すっげー! 光った! どうなってんだ?!」
『太陽の光が当たると青く光るんだよ』
「太陽の光? …あ! そうか、紫外線!」
『そ!』
しかし、紫外線で光るのであれば、日の出時に来る必要はない。 日中の方が、寧(ムシ)ろ紫外線量が多いのだから。
キルアのこの疑問に、カシスはこう答えた。
アオダケは、ある一定量の紫外線でないと発光しないのだ。 その量が一番適しているのが、日の出時という事だと。
「あれ? でも、こっちのアオダケは光ってない」
カシスの手には2本のアオダケがある。 2本とも同種のアオダケ。 にも拘らず、光っているのは1本だけだった。
『キルア、ナビゲーターの人が何に注意しろって言ってたか覚えてる?』
「ん? え~っと…確か…
夜は見つけにくいから…」
勘の良いキルアはそこで気付いた。
夜は見つけにくいとは、太陽の光が無いため、光るアオダケを見つけられない。
つまり、光るアオダケを持って来いという事だ。
「スゲーな、カシス」
『たまたま、知ってただけ
ほら、キルアも摘んじゃいなよ』
光るアオダケを1本取り、早速ナビゲーターの元へ持って行く。
太陽が昇りきる頃には、アオダケの発光はなくなり、茶色い傘の普通のキノコになっていた。
一つ疑問が浮かんだ。
何故、光るものと光らないものがあるのか。 種類は同じ物だとカシスは言っていた。
それは、突然変異によるもの。
それによって、光るアオダケが生まれたのだと。
「でも、なんで”アオダケ”なんだよ
どっからどう見ても、茶色いキノコじゃん」
『それは、逆だからだよ』
「逆?」
『アオダケは、本来発光するキノコ
突然変異で生まれたのは、光らないアオダケの方なんだ』
「ふ~ん、だから名前は”アオダケ”なんだな」
『そゆこと』
豆知識をカシスから教わりながら、ナビゲーターの所へ向かった。
――
――――
「確かに、”アオダケ”だ
ほれ、試験会場までの詳しい行き方が書いてあるメモだ」
『ありがとうございます』
「確認しなくていいわけ?」
今の茶色い傘のキノコでは、課題の”アオダケ”かどうか見分けるのは不可能。
しかしナビゲーターは、その必要は無いと言った。
「こんな早朝に持ってきた事が、光るアオダケだっていう証だ」
「?」
「種類がある事と、見分ける方法を知ってる奴は、だいたい早朝に持って来るからな」
それは、ハンター試験開始の日時が決まっている為。 早く試験会場に着いた方が良いに決まっている。
万が一、遅れでもしたら、今年の試験は受けられないのだから。 後で持って行くなどと考える輩はいないだろう。
『じゃ、会場まで行きますか』
「おう」
意気込み、歩き出す2人。
ザバン市までは、飛行船で向かうようだ。
『そう言えば…キルア、何か聞きたい事あったんじゃないの?』
森の中での事だろう。
「あ~…大したことじゃないから」
『え~、なんか気になるんだけど』
「…カシスの年、聞きたかっただけだよ
お前、結局教えてくんなかったし
まぁ、別にいいんだけどさ」
『…15』
「…は?」
『だから、15だってば』
「15!? …マジ?」
疑うようなキルアの表情に、イラついたのは気のせいではないだろう。
『なによ。 その疑いの目は』
「オレ、初め同い年くらいかと思ってたから
年上だって言うから、1コくらいかと…」
『悪かったわね
どーせ、子供っぽいわよ』
「んなこと言ってねェだろ」
『言ってるのと同じでしょ』
飛行船乗り場まで、口喧嘩をしながら仲良く向かうことになった。
ーー
ーーー
ーーーーー
無事に空の旅を終え、ナビゲーターに貰った地図を片手に小さな2人の前には、それは立派な建物があった。 まさに、ハンター試験会場に相応しい場所と言えるだろう。
「へぇ、思ってたよりは良いトコじゃん」
見上げるキルアを呼ぶ声が聞こえた。
『なにやってんの!
そっちじゃなくて、こっち!』
と指さす先には、しがない定食屋。
マジ…? と思うが、仕方がない。 ナビゲーターに貰った地図によると、ここに間違いないのだから。
店の扉を開けると、元気な店主の声に迎えられた。 店の中は、なんとも食欲をそそるいい香りが漂っている。
「腹減ってきたな…」
「ご注文は?」
「やっぱステーキ定食でしょ」
「焼き方は?」
「そりゃあ、ミディアム」
『違うでしょ!』
キルアの顔を壁にめり込ませ、発言を遮った。
『弱火でじっくり!』
その合言葉で、店員さんに奥の部屋へ案内された。
部屋の中では、ステーキが二人前すでに焼かれていた。
席に着き、ステーキを頬張り始めると、部屋全体がエレベーターの様に下がっていくのを感じた。
「ふ~ん…なるほどね。 そういう事」
『あんた、本当にハンター試験受ける気あるわけ?』
さっきの下りに、あれこれ小言を言うカシス。
暫くエレベーターは下がり続け、ガコンと止まった。 扉が開き、一歩出てみる。
ピリピリとした重い威圧感。 今まで会った受験者とは、まるで別物だ。
試験会場まで辿り着くだけあり、かなりの手だれ揃いなのだろう。
「なんだ、たったこれだけ?」
『早く来すぎたのかもね』
「キミ達で丁度、100人目だからね」
「番号をどうぞ」
『あ、どうも!
ね! キルア、見て見て!! 私の番号、100番だ!』
「…ふ~ん」
『もうちょっと、何かリアクションが欲しいんだけど』
「あ~、すごいすごい! 何か良いことありそうだなぁ」
『…なんかムカつく』
自信ありげに話し掛けてきた中年のオヤジだが、気づかれず自然と無視をされた疎外感は、尋常ではないだろう。
そんなオヤジに、今気づいたフリをする2人。
『何かご用ですか?』
「あぁ、君達新顔だね」
『わかるんですか?』
陽気に話し掛けてきたのは、今年でハンター試験35回目のベテラン、トンパ。 少々自慢げに言っていたが、結局は受かっていないという現実。
それだけ落ちれば解るだろうに。 ハンターには向いていない、と言う事が。
色々と聞いてもいない事をベラベラと一通り話した後、お近づきの印しにと、缶ジュースを貰った。
…って、ハンター試験に缶ジュースって…見るからに怪しいんですけど
なんて事を、缶を睨みつけながら思っていると、隣ではゴクゴクとジュースを飲み始める無警戒な猫がいた。
『…キルア』
「ん? 結構上手いよ! コレ」
『……そう』
大丈夫なのかな?
そう思った時だった。
「飲まねぇなら、ちょうだいよ」
言いながら、こっちを見たキルア。
ほんの一瞬
”危険だ”
そんな眼だった。
『…仕方ないなぁ』
「サンキューv」
カシスからジュースを受け取ると、一気に飲み干した。
「トンパさん、コレもうないの?」
「ぁ、あぁ…すまない。 もう持ち合わせが無いんだ」
冷や汗を掻きながら、そそくさと人混みに紛れて行ってしまった。
それを見送る2人。
『……で
何が入ってたの?』
「別に。 ただのジュースだよ
ま、何か混じってたみたいだけど」
『ふ~ん』
『…大丈夫なの?』
「なに? 心配してくれるわけ?」
『一応』
「オレ、訓練受けてるから
毒じゃ死なない」
『なら、いいけど』
一安心
でも、毒が入ってる事知ってたんなら、わざわざ飲まなくても…
それから1時間。
『ふぁ~………ひま』
大分増えてきた受験者達を眺めながら、頬杖をつく。
『キルア、私寝るから
試験始まったら起こして』
「(こんなトコで寝るのかよ)」
数秒もしないうちに、カシスは眠りについてしまった。
寝るの早っ!!
…ったく
こんなヤローだらけのところで、無防備に寝るなよな
カシスの正面にしゃがみ込み、腕から覗く寝顔を見ながら頬をつつくキルアであった。
(寝顔はかわいいんだな、こいつ…)
・END・
11.11.6
23.3.25(修正)