ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『はぁ~…』
深い溜息を吐き、懐中電灯片手にホテルの配電盤前に来ていた。
綿密には
立てていない作戦
まず
この作戦を、2人に伝える事が絶対条件
レオリオをロビーに紛れこませ、待ち人を装う
周りに聞こえる声で、電話にキレたように話す
レオリオのあの人相なら、その場でバレる事はない
レオリオがいる事が分かれば、2人ならキーワードを拾い上げる事も可能
気付かれないように、2人だけに分かるようなキーワード
7時
暗闇
これが伝われば、2人ならこの作戦を予想できるはず
そして
7時きっかりに、私がブレーカーを落とし停電させる
あとは、闇に乗じてクラピカの鎖でクロロを捕らえ
ゴン、キルアが奴らの隙を付ければ、逃げられる
響くラジオの声は、作戦開始1分前。
果たして
そんなに上手くいくかな
程よい緊張感がカシスを高揚させる。
秒読み5秒前
4…3…2…1…
時報と共に、ブレーカーを落とした。
同時にその場を素早く離れ、センリツが待機している車へと移動した。
・
車の中には
クラピカ
レオリオ
センリツ
カシス
そして、捕らえたクロロが乗っていた。
ゴン、キルアは、旅団に痛手を負わせたが、逃げる事は出来なかったようだ。
車内では、異様な空気が漂っている。
「何を見ている?」
「いや
鎖野郎が、女性だとは思わなかった」
「発言には気をつけろ
何がお前の最後の言葉になるかわからんぞ」
「殺せやしないさ
大事な仲間が残ってるんだろ?」
「挑発を受け流せるほど
今の私は冷静じゃない…!!」
言葉の通り。
普段の冷静なクラピカは、見る影もない。
今にも、クロロを絞め殺しそうな勢いだ。
クラピカの隣に座っていたカシスは、仕方無しに2人の間に割って入った。
『はいはい
気持ちは分からないでもないけど、一先ず落ち着いて!』
「…」
「やはり
鎖野郎と接点があったんだな」
「!?
カシス…面識があるのか?」
クラピカの疑うような眼差し。
も~…
コイツは
余計な事を…!
心で毒づくも、後の祭り。
カシスは冷静に答えた。
『セメタリ―ビルでね…』
「…」
「男の嫉妬は、見苦しい物だな」
「なんだと?!」
「あの娘の占いにも、この事は出なかった
つまり
この状態は、予言するほどの事も無い
取るに足らない出来事
というわけだ」
「貴様…!!」
クラピカが鎖を操るまでのほんの一瞬で、その場の空気が止まった。
クラピカとクロロの喉元には、今にも突き刺さりそうな鉄扇が、突き付けられていた。
2人の間にいるカシスの両手には、鉄扇が握られている。
『これ以上騒ぐなら、喉元に風穴開けるから』
普段の穏やかな彼女からは、想像もつかないほどの”殺気”が出ていた。
その台詞と口調は、”本気だ”と思わせるのに十分なものだった。
敵も味方も関係ない。
クラピカの殺気が少し静まった所で、カシスも鉄扇を2人から外した。
「(…これがカシスなのか…
試験の時とは、大違いだ
オレなんか、今の一瞬で殺された気分だぜ)」
運転しながら思うレオリオ。
クラピカも、内心驚いていた。
鉄扇が喉元にチクリと触れるまで、その存在に気付けなかった。
それほどまでにカシスの攻撃速度は速かったのだ。
鉄扇を収めたカシスは、再びシートに背中を付けた。
それをチラリと、盗み見をするクロロ。
いい攻撃だ
速さも、申し分ない
面白い素材だな
故に
落とすのは難しい…か
横目で見つつ、外へ顔を向けた。
その口元は
怪しくも笑っていた。
・
リンゴーン空港。
パクノダ1人だけで来るよう指示をした。
それに従い、飛行船に乗り込み、真っ暗な空へと飛び立った。
パクノダと対面したクラピカは、2人に条件を出した。
クロロには
今後、念能力の使用を一切禁じる事。
旅団員との一切の接触を断つ事。
パクノダには
今夜0時までに、人質2人を小細工無しで無事に解放する事。
クラピカの事について、一切情報を漏らさない事。
それを厳守すれば、クロロを解放する。
というものだ。
パクノダはそれを承諾し、2人の心臓には”律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)”が刺し込まれた。
空港へ戻り、パクノダは飛行船を降りて行った。
心臓に鎖を刺せた
なのに
クラピカの表情には、安堵や余裕など微塵も無い
むしろ
追い込まれている感じだ
恐らく
クラピカ自身も、この矛盾を心のどこかで感じている
それに気づかないフリをしているんだ
飛行船のデッキから外を眺めていると、レオリオが声を掛けてきた。
『ねぇ、レオリオ』
「ん?」
『パクノダは、なんで1人で来たのかな…』
「そりゃ
そう指示したからだろ?」
『だって、クロロには人質の価値が無いんだよ?
そもそも、この人質交換自体成立しないと思う』
「んなことねーだろ
現に、交渉成立してるんだしよ」
そう
交渉成立した
奴らは
冷徹非情な集団
だけど
本当に、それだけ?
奴らに仲間意識が無いわけじゃない
でなければ
クロロの涙も
パクノダの行動も
有り得ない事だから
だからといって
奴らのしてきた事が非情である事に、変わりない
なんか
やるせない……
・END・
12/8/16
22/12/17(修正)