ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
激しく降っていた雨が、嘘のように止んでいた。
逸(ハヤ)る鼓動を抑えながら、ホテルの外へ向かう銀色の猫。 少し乱れた呼吸を整えながら、辺りを見回した。
ホテルのすぐ脇にある橋の上に、探し人を発見。
近づくキルアに先に気付いたのはゴンだった。
「あ、キルア!
話しは終わったの?」
「ああ
ゴン、わりーけど
席外してほしいんだ」
「…わかった!
レオリオ達のトコに行ってるから」
察したゴンは、2人を残しホテルへ入って行った。
ほど良いそよ風が2人の頬を撫でて行く。
少し俯き加減のキルアを見つめるカシス。
なんか
緊張してきた…
どうしたんだろ…キルア
『…キル』
「ごめん!」
『!!』
言葉と共に頭を下げたキルア。
当然
予期せぬ出来事に、カシスは驚くしかなかった。
「オレ…勝手に勘違いして思い込んで…お前を傷つけた
だから…ごめん……」
ずっと頭を下げているキルア。
その姿にホッとしたのか、大きな溜息と同時に、その場にしゃがみ込んだ。
『はぁ~~~…良かったぁ』
「は??」
『キルアに、嫌われたかと思ったから』
「……嫌いになるわけねーだろ」
『だって
キルア怒ってたし…』
そっぽを向き、片方の頬を膨らませて少し拗ねてみる。
何か言い訳を考えているのか、頭を掻きながら困った様子のキルア。
ふふ…
ま、いっか
スッと立ち上がり。
これで、仲直りだね!
笑顔になるとキルアも、沈んでいた顔が明るくなった。
良かった
ホントに…
あのままだったら、どうしようかと思った
これで
また、キルアと一緒にいられる
・
「あ、そうだ」
何やらごそごそとポケットの中身を探るキルア。
「カシス、手出して」
『なんで?』
「いいから」
両手を出すと、手の平にコロリと小さな何かが乗った感触。 見てみると、どこかで見た事のある物。
目を丸くして、視線を上げた。
『これ…』
「やるよ
欲しかったんだろ?」
『…』
手の中には
緑色の石の付いた四つ葉のクローバーのピアス。
カシスが露店で見ていた物だ。
リアクションの無いカシスに、焦るキルア。
「…もしかして、いらなかった……とか?」
『え?
ううん…すごく嬉しいよ』
ピアスに視線を落とすカシスは、とても嬉しそう。
だけど、どこか儚げに見える。
喜んでくれてる…んだよな……
不安を抱える中
カシスは、右耳に付いている碧いピアスを外した。
『漸く、これを捨てる事が出来る』
「?」
呟くカシスは、橋に寄り掛かり、遠くを見た。
ふわふわと碧みがかった髪が靡(ナビ)いていく。
その表情は、やはり切なげだ。
『前に話したよね
私が、捨て子だって』
「あぁ」
『このピアス
両親が私に唯一、残していった物なんだ』
捨てようと思えば
いつでも捨てられた
だけど
そうしなかったのは、心のどこかで
もしかしたら、私を見つけてくれるかもしれない
迎えに来てくれるかもしれない
そんな風に思っていた自分がいたからだと思う
だから
捨てられなかった
『でも、キルアのおかげで捨てられる理由が出来た』
「別に、捨てなくても…
大事な物だから、手放せなかったんだろ?」
『それは違うよ、キルア
この石に高価な価値があろうが、親が唯一残したものだろうが、私にとっては、何の価値も無いただの石ころ
こんな物よりも
キルアのくれたピアスの方が、私にとって
とても価値のある物なんだよ』
だから
左の指に力を入れると、碧いピアスは簡単に粉々に砕け散った。
太陽の光に照らされて、キラキラと輝きながら川へと降り注いでいく。
『これは、もう必要ない』
カシスは、右耳にクローバーのピアスを付けた。
そしてキルアに見せる様に、髪を耳に掛けてやる。
『似合う?』
ふわりと笑うカシス。
それは、キルアの気持ちを肯定するのに十分過ぎるものだった。
あぁ…
オレは
この笑顔が
好きなんだな…
左手を伸ばし、ピアスと耳に触れた。
そして自然と笑みが零れた。
「すっげー似合ってる」
そういうと、カシスはまた笑った。
正直
かなり嬉しかった
思えば、誰かにプレゼントなんてしたの初めてだったから
ずっと
この笑顔を見ていたい
ずっと
ずっと
キミの隣で
・END・
12/7/28
22/12/16(修正)