ハンター試験編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
青く青く澄んだ空は、どこまでも青く続いていた。
前回から引き続き、ブロック塀に座り、頬杖をつきながら、ぼーっと空を見上げるカシス。
そんな彼女に、2つの影が落ちて来た。
「お譲ちゃん、1人?」
「暇なら、俺達と遊びに行かねぇ?」
『遠慮します』
カシスの前を囲うように、男2人が声をかけてきた。
「暇なんだろ? さっきからずっとここに座ってんの、知ってんだよ」
「楽しいトコ知ってんだ、行こうぜ」
男達はカシスを強制的に立たせ、連れて行こうとする。 そんな野郎共に、小さく溜息を吐いた。
追い払おうと、口を開きかけた時だった。
「ぐわっ!!」
「何しやがんだ! ガキ!!」
「あ、わりーわりー
ちょっと運転操作あやまっちゃって」
男の1人に、突如スケートボードが突っ込んできた。
謝る少年は、全く悪びれた様子もない。
それどころか、今のはあからさまにワザとした事だろう。
「このガキ! ワザとやりやがったな!!」
「こういう生意気なガキには、お仕置きしとかねぇとな」
数秒後。
男達の、伸びた姿があった。
「言ってるワリに、弱いよね
さて‥と」
銀色の猫っ毛の髪をした少年。 12、3歳ってところだろう。
くるりとカシスに顔を向けたかと思ったら、すぐさま口を開いた。
「助けてやった代わりに、ちょっと聞きたいことあるんだけどさ」
可愛い顔して、なんとも生意気なガキだ
それが第一印象
『恩着せがましいわね
それに、助けてくれなんて一言も言ってないんだけど』
「…あんたも、素直に”ありがとう”ぐらい言ったら?」
ホントに 生意気
少年は、そのまま何も聞かずに歩き出して行く。
『聞きたい事、あったんじゃないの~?』
「別の奴に聞くから、いい」
あれ? もしかして、怒っちゃった?
そう感じたカシスは、苦笑いをしながら少年に再び声を掛けた。
『キミも、ハンター試験を受けるんでしょ?』
「!?」
少年の”なんでわかったんだ?”っと言う顔に、思わず笑ってしまった。
それが気に障ったのか、眉間に皺を寄せる少年。
「”も”ってことは、あんたも?」
『そういう事になるね』
ニッコリと笑いかけると、”あっそ”と言って、再び回れ右をしてしまった。
ま、聞きたい事は大体予想がつくけど
『ねぇ、良かったら試験会場まで一緒に行かない?』
「…なんで?」
『ほら、旅は道連れって言うじゃない?』
「……遠慮しとく」
振り向かず、そのまま歩き出した。
『アナルル港行きの船の出港時間、聞きたいんでしょ?』
それを耳にした少年の足が、ピタリと止まった。
少し間をおいてから、少年からは”何時?”と、質問が飛んできた。
だけど、世の中そんなに甘くはないのだよ、少年。
『その前に、昼食でもどう?
あ、勿論奢ってあげるよ。 一応、さっきのお礼も兼ねて』
「…………別にいい」
何かと葛藤でもしたのか、間を挟んで断られた。
すると歩き出す少年とは裏腹に、腹の虫は正直者だ。 ご馳走になります! と言わんばかりの、盛大な音で返事をしてきた。
バツの悪い顔をする少年と、ニッコリスマイルの私
ーー
ーーー
近くのオープンカフェの店に、銀色と紺色がテーブルを囲んでいた。
『ところでキミ、名前は?』
オムライスを口に運ぼうとした少年の瞳が、こちらを向いた。
「…人に聞く時は、自分から名乗るのが礼儀じゃねーの?」
ありゃ
これは失礼
『私は、カシス
で、キミは?』
「キルア」
キルアか…意外に可愛い名前
『年は? 12、3歳ってところ?』
「そんなとこ。 アンタは?」
『アンタじゃなくて、カシス』
「あ~。 で、カシスは? 同い年?」
『キルアよりも年上ってのは、確かかな~』
年上…同い年かと思った
しかも結局、曖昧なのかよ
とは、口にしない。
『ご両親は何やってるの?』
質問ばかりで、少しウザったいと感じるキルア。
「なんで?」
『え? なんでそんな事聞くのかって?
だって、ハンター試験って12歳から受けられるけど、まずその年で受けに行くなんて子、あまりいないじゃない?
ハンター試験は、大人でも難関な試験なんだから
それでも受けに来るって子は、親がハンターをしてたり、特殊な環境下で育った子だったりかな…って思って』
少し目を丸くしたキルアは、間を開けると悪戯っ子のような顔をした。
「オレんとこ、暗殺稼業なんだよ
親も兄弟も、みんな」
こんな事を聞いたら、冗談として捉えるか、真に受けて顔を恐怖で歪ませるか
それが今までの奴らの反応
冗談だと思った奴らは、ちょいと脅かしてやると簡単に信じた
だけど
こいつの反応は、今までの奴らとは全く違った
意表をついたつもりが、逆に意表をつかれてしまう。
『なるほど…それなら納得かも』
こいつ、オレの話し聞いてたのか?
普通”暗殺稼業”って所に、少なくとも何らかのリアクションをするだろう…
『なに? リアクションが欲しかった?』
「うぉっ!?」
『んふふ…。 そんな顔してる』
笑っていると、キルアは真剣な顔でカシスを見つめた。
その瞳に笑うのを止め、目の前のドリンクをストローで回す。 カラン。 と心地良い氷の音が鳴った。
『別に、驚くことじゃないでしょ?』
「普通はビビるところだろ」
『そうかもしれないけど……でも仕事‥でしょ?
”暗殺”とは言うけど、依頼されてターゲットを仕末するってだけで、無差別に人を殺す通り魔や殺人鬼とは、違うと思うなぁ
だから、キルアを怖がる必要も警戒する必要もないわけだ
まぁ最も、私を殺す依頼を受けているとしたら、別だけど』
ニッコリ微笑むカシスに、キルアからは笑いの声が上がった。 キョトン顔のカシスの頭には?が浮かぶ。
「んな面して、そんなこと言ってきた奴、お前が初めてだぜ」
腹いて~。 と腹を抱えながら笑う。
流石にムッとするカシスは、頬を膨らませた。
『そんなに笑う事無いでしょ~』
「ははは…。 いいぜ」
『?』
「試験会場。 一緒に行っても」
そう告げるキルアに、自然と顔が綻んだ。
少しは打ち解けた‥かな?
『え~、どうしようかなぁ?』
「おい! そっちから誘って来たんだから、選ぶ権限ねーだろ! 即答しろよ!」
冗談を言い合いながら笑いあう。
暗殺者だとキルアは言うけど、こうやって笑った顔を見ていると、年相応の可愛い子供
けど
きっと闇の部分は、彼の言うとおり”暗殺者”なんだと思う
初めて他人に受け入れられた気がした
悪い気はしない
むしろ、心地良い
こんなこと
初めてだ
胸の奥底が温かい
何だ…コレは
それぞれの思いを胸に、2人仲良く、荒暮れる海へと出航して行った。
・おまけ・
「そういやぁ、なんであんな簡単に信じたんだ?」
『何でって言われても…』
「ウソついてるかもしんねーじゃん」
『ん~…かもね
キルア嘘つきっぽいし』
「…」
『でも、さっき家族のコト話してくれた時、キルア淋しそうな瞳してた
一瞬だけどね
だから、嘘じゃないって思ったんだ』
「…やっぱお前、おもしれーな」
・END・
11.11.3
15.8.26(修正)