ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幻影旅団の襲撃は、旅団の死体と共に幕を閉じた。
復讐を遂げたクラピカ。
だが
気が晴れるわけでもなく。
逆に、心にぽっかりと穴が開いたような。
そんな面持ちだった。
”デイロード公園で待ってる!!
ゴン・キルア”
屋上で、抜け殻のように黄昏れているクラピカ。 携帯の画面には、ゴン達からのメールが表示されていた。
『どうするの?』
「……」
屋上の扉から入ってきたカシスは、クラピカの隣まで歩み寄った。 携帯を指差して、言葉の意図を知らせる。
『行くんでしょ!』
「……ああ」
色んな思いが巡る中、呆気なく終わってしまった復讐。
戸惑っているのか。
それとも
腑に落ちないのか。
どちらにせよ、クラピカの肩の荷は、ほんの少し降りたのかもしれない。
「行こうか」
前を歩くクラピカの背中を見つめながら、カシスも足を進めた。
クラピカ
このまま
偽りの事実のまま
気付かないでほしい
貴方には
もう戦ってほしくないから
――
―――
―――――
デイロード公園。
のどかで平和な風景がそこには広がっていた。
原っぱの上で、大量のアイスにガッ食いているお子様が2人。 早食い競争の最中らしい。
そこに近づく人影に、1人が気づいた。
「ぶぁはピカ!!」
嬉しさの余り、口に含んでいたアイスをぶちまけながら名前を呼んだ。
当然、被害を受けたのは目の前にいたキルア。 もろに直撃した。
「ゴ…」
「よかったね!!」
「!?」
「旅団が死んで、これでやっと一番したかったことに、集中できるね!
早く見つけてあげなきゃ!
仲間達の眼」
話している最中、ゴンの後ろから音も無く顔面にアイスをなすり付けるキルア。
さっきの仕返しだろう。
そのままケンカを始める2人。
当たり前だった光景に、懐かしさを感じた。
自然にこぼれた笑顔は、いつの間にか忘れてしまっていたモノなのかもしれない。
「あ! クラピカ、カシスは?」
「後で来ると言っていた」
「そっか!」
「…」
.
某ホテルのロビー。
懐かしい面々が集結した。
ゴン
キルア
カシス
クラピカ
レオリオ
5人揃ったのは、ハンター試験以来だろう。
『ゴン! 久し振り!!
ちょっと見ない間に、大きくなったんじゃない?』
「そうかな?」
「そうそう
成長したっていうなら、カシスの方がしてると思うぜ?」
『そう?』
「ああ
女っぽさが出てきたし……」
『…なに?』
顎に手を宛て、いやらしい目つきでじろじろと眺めてくるレオリオ。
「あと2年…いや、1年たてばいい女になるよなぁ~v」
カシスと、ウハウハのレオリオの間にクラピカが割って入った。
「君は、たいした変化もなさそうだなレオリオ」
「お前は、ムカつく度が増したな
オイ」
『…はは』
再会を喜ぶ中、視界に入る銀色の髪。
声を掛けたい。
しかし
あんなことがあってか、気まずさ満点だ。
クラピカと再会したときの比ではない。
他の3人もそんな空気を感じつつ、口に出すことはしない。
何があったかはわからないが、話さない以上は当人同士の問題。 口を出せば、それはお節介ってものだ。
中へ入り、ロビーにあるソファーで話すことになった。
テーブルを囲み座るが、カシスだけは、レオリオのすぐ後ろにある窓際に立ち、外の景色を眺めていた。
話しは、旅団の1人を倒したクラピカの念能力の事から入った。
「念を覚えて間もないお前が、一体どうやって勝ったんだ?」
「………
もし
お前達が、旅団(クモ)の残党を捕らえたくて訳を聞きたいなら、やめておけ
私の話しは、参考にならない」
それもあるが、これから先、念能力は絶対不可欠なスキルになる。 それを踏まえて、クラピカの話しが聞きたいのだ。
「なら、尚更やめておけ」
「何で?」
「私の能力は、旅団以外の者に使えない」
制約と誓約。
高いリスクをともなうことで、強い力を得る。
それが、制約と誓約。
クラピカは、旅団以外の者に攻撃した場合、自分が命を落とすことを話した。
「……なんで
何で話したんだ!!
そんな大事なこと!!」
「キルア?」
「何故だろうな…
奴等の頭が死んで…気が抜けたのかもしれない」
「まずいんだ!!
まだ、残ってる!」
旅団の中には、記憶を読み取る能力者がいる。 キルアかゴンが奴らに見つかったら、次は多分逃げ切れない。
クラピカも、ヒソカと協定を結んでいるが、ヒソカの狙いだったクロロが死んだ今、何をしでかすかわからない。
その前に、その能力者を早く始末したほうが得策だ。
「確かに、その女は私にとって危険だが
旅団の頭が死んだ以上、私はゴンの言う通り、同胞達の眼をとり戻す事に専念するよ」
その時、クラピカの携帯が鳴った。
メールのようだ。
メールを開いた瞬間、明らかにクラピカの表情が変わった。
雷の光に照らされたクラピカ。
驚愕の表情のまま固まっていた。
.
「おい、どうしたんだよ」
「…」
「ヒソカから?」
「ああ」
『死体は偽物(フェイク)』
飛んできた言葉に、全員耳を疑った。
くるりと皆の方を向き、窓に寄り掛かるカシス。
『とでも書いてあった?』
「…何故知っている」
『私も、実際死体を見たし触った
凝をしたら、すぐにわかったよ
死体にしては、体内オーラの流れがおかしいから
恐らく
具現化系の念能力者がいるんだろうね』
静まり返るロビー。
右手に持った携帯を、ギリッと握り締めた。
「知っていて黙っていたのか?」
『…』
「待てよクラピカ
カシスは、お前を思って」
「前もそうだ
何故、肝心な事を話さない!」
俯くカシスは、困ったような表情で顔を上げた。
『…だってさ
クラピカに、笑顔が戻ったから』
「!」
『だから、教えたくなかった
死体が偽物だって事も
旅団が生きてるって事も』
それは、カシスなりの優しさ。
それがわからないクラピカではない。
ピルルルル
またもや、クラピカの携帯が鳴った。
今度は電話のようだ。
相手はセンリツ。
コミュニティーが旅団残党狩りを断念したという。 理由は、旅団の出身が流星街だとわかったからだ。
流星街は、コミュニティーと蜜月関係にあるのだ。
それを壊した旅団は、異質都市の中でも、更に特異な存在かもしれない。
旅団が生きているとなっては、事態は極めて危険な状態だ。
クラピカの念能力を知った今、旅団に捕まる訳にはいかない。 旅団は、クラピカを探しているのだから。
だが、受け身でいるのも危険。
というわけで、記憶を読み取る能力者・パクノダを早急に始末しなければならなくなった。
ゴンやキルア、レオリオも加わり、作戦を立てるため再びロビーに戻った。
まずは、旅団のアジトを見張る役。
中継係にキルア。
クラピカと共に行動する運転手にレオリオ。
不足の事態に備えて、カシスも同行。
敵の目をくらます、撹乱係がゴン。
撹乱係は一番ヤバイ役。
キルアが待ったをかけるのも最もだ。 だがそれは、やり方次第。
やり方は、ゴンに任せることに。
少し考えたゴンは、クラピカに自分にも念の刃を刺してほしいと申し出た。
しかし、旅団以外に攻撃をした場合、クラピカは命を落とすことになる。
「だったらなんでクラピカの胸には、念の刃が刺さってんの?」
意外な盲点をつかれ、キルアとレオリオは同時にクラピカを見遣る。
ふふ…
ゴンって抜けてるように見えて、しっかり話しを聞いてる
そ
クラピカの説明には、矛盾がある
ここから先は、更にクラピカのリスクを上げることになる。
キルアとレオリオは、退席することにした。
「カシス、行くぜ」
「カシスは席を外さなくていい」
「?」
「既に話してある」
「そうか」
「…」
離れる二人を確認し、クラピカはゴンに矛盾の説明をした。
緋の目になった時だけ、特質系になることも。
・
「つまり
念の刃は、オレにも刺せるってことだね?
いいよ
掟(ルール)はまかせる」
「お前の覚悟、確かに受け取った」
すると、クラピカは背後に気配を感じた。
「その刃ってさ、4本って出せる?」
「任務完了の後は、その掟(ルール)解除できるんだろうな?」
キルア達も話し合い、参加するからには一蓮托生ということになった。
「「答えは?」」
「両方とも、可能だ
だが、三人とも一つ勘違いしていることがある
私は、お前達に剣を刺す気など、始めから全くないのだよ」
納得しないゴン。
今度捕まったら、クラピカの正体と能力がバレる。
だからといって、秘密を守るため
”パクノダに触れてはいけない”
などという掟(ルール)では、逆に反撃のチャンスをむざむざ潰すことになる。
「でも…
だったら、なんでリスクが増すだけなのに、オレにこんな話しを…?」
「ゴン
いや、お前達の覚悟に対する私なりの礼だよ
仮に、お前達から秘密が漏れたとしても、私はもう何一つ後悔しない」
私は
いい仲間を持った
そう思えるようになったのは、本当に心から信頼しあえるから。
と、レオリオがあることに気づいた。
「ところで、カシスはどこ行ったんだ?」
「少し風にあたってくると外へ出て行ったよ」
「…」
聞いたキルアは、重たい口を開いた。
「あのさ、クラピカ
話しがあるんだけど」
・END・
12/7/7
22/12/15(修正)