ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
長い夜が明けた頃。
カシスの意識が、夢から覚めてきた。
瞳をゆっくりと開いていくと、ぼやけた視界いっぱいに整ったクラピカの顔が映り込んだ。
「おはよう」
『…っ』
##IMGU14##
満面の笑みで言われた。
カシスは、無意識に頬を赤く染めると、ゆっくりと枕に顔を埋めた。
「どうした?」
『……別に』
…なんか
恥ずかしくなってきた
今になって、羞恥心が込み上げてきたようだ。
すると、何かが髪に触れた感触に、勢い良く頭を上げた。
そこには、触れたであろうクラピカの右手が行き場を無くしていた。
『な、なに?』
「いや…寝癖が」
『ぅわおっ!』
ばっと後頭部を押さえるカシス。 その姿に、クラピカは思わず笑ってしまった。
笑うなぁ…。 という言葉もとても愛らしいと感じてしまう。
ほんの一時だったかもしれないが、少なくともクラピカの心は、幸福感を感じていただろう。
__
___
夕方過ぎ。
所変わって、ゴン達が宿泊しているホテル。
買い物からキルアが帰ってきた。
「おーい、ゴン」
「なに? わっ!」
「それやるよ
余分に買ってきたから♪
レオリオの分もあるぜ!」
そう言って、宙を飛んでいくチョコロボくん。
「オレ、風呂入ってくるわ」
受け取ったゴンは、目を見開き唖然とするばかり。
当然の反応だろう。
チョコロボくんと言ったら、キルアの大好物。 それを他人にあげるとは、槍が降るのではないかというほどの出来事だ。
鼻歌を歌いながら風呂場へ消えて行ったキルア。
直後、ゴンの唖然とした顔が後ろを振り返った。
「レオリオ! キルアが変!! 病気かな?!」
とても失礼だ。
キルアの気持ち悪いまでの上機嫌。 訳を知るのは、レオリオのみ。
「心配ないぞゴン」
「え?」
ゴンに、こそっと耳打ちした。
今日は、デートだからな
・陽も落ち、暗くなった夜空には、キラキラと星達が輝き始めていた。
『クラピカ
2時間くらい外出したいけど、いい?』
「今日中に戻れば問題ない
用事か?」
『うん。 ちょっと人と会う約束があって』
「なになに? カシス、デート?!」
どこから現れたのか、目をキラキラさせて詰め寄ってくるネオン。
その瞳に、嫌な予感がする。
『ネオン……
知人と会うだけだよ』
「よし!
カシス、こっち」
腕を引っ張られ、強制連行されていく。
人の話を、聞いてくれ……
__
___
_____
競売市場の噴水前。
時間よりも少し早く来てしまったキルア。 しかしその表情も、今では不機嫌極まりない。
時刻は、19時半を回ろうとしている。
約束は19時。 30分の待ちぼうけである。
……おせー…
まさか、すっぽかされた…?
あいつに限って、それはない…か
来れないなら、連絡あるだろうし
はぁ~…
溜息を吐いたキルアの頭上から、待ち侘びた声が降ってきた。
走ってきたのか、その声は息も絶え絶えだ。
『キルア~! はぁ、はぁ……ごめん…』
「おっせーよカシス!
何分待、った…と……」
『ごめんって
出る直前に、ネオンに捕まっちゃって』
##IMGR40##
……………。
目の前で、ネオンがどうのこうのと言っている女の子は、確かにカシスなのだが。 キルアの記憶している彼女とはまるで違っていた。
肩が大きく開いたニットのワンピースに、それに合ったゆったりめのブーツ。 髪形も、以前とは違う。
そんなカシスを目の前に、キルアは釘づけになっていた。
『で、結局30分くらい着せ替え人形にさせられてて…………お~いキルア? 聞いてる~?』
何の反応も無くガン見してくるキルアの目の前で、手を振ってみる。
すると、はっとしたのか反応があった。
「あ、ああ…聞いてる聞いてる」
『…あ、この服?
ネオンに着せられたんだけど…
やっぱ、馬子にも衣装って感じ?』
「自分で言うのかよ」
『ははは…で、どぉ?』
「……まぁまぁかな?」
視線を逸らし、照れ隠しをするキルア。
”かわいい”とは、口が裂けても言えないようだ。
『まぁまぁか……じゃ、いっか』
「いいのかよ」
『だって、キルアの”まぁまぁ”は、悪くないって事でしょ?
悪くないなら、それでいいよ』
カシスの解釈は、やはり少しズレていた。
いや、キルアの場合だけなのかもしれない。
『それより、キルアご飯は?』
「まだだけど」
『じゃあ、ご飯食べに行こうよ
私、お腹ペコペコ』
「なら、先食べるか」
と、2人仲良く歩き出す。
…つーか
少し会わないだけで、女ってこんなにも変わるもんなのか?
髪形とか服装だけじゃない
何て言うか…女っぽくなった?
『なに? 何かついてる?』
「ん? いや…
何でもねぇよ」
無意識に見とれていた事に気付く。
頭に?を浮かべながらも、気にすことはなかった。
……ずりーよなぁ…女って
・
夕食を終え、市場をフラフラと他愛ない話をしながら歩いた。
「で、”グリードアイランド”っていう、バカ高いゲームにゴンの親父の手掛かりがあるんじゃねーかって事になって」
『資金調達のために、懸賞金を掛けられた旅団メンバーに接触した…と
バカね』
「しゃーねぇだろ! 1人20億ジェニーだぜ?
これ以上の話しなんて無いし、多少の危険は覚悟の上だった」
『けど…それ以上に旅団は強かった』
「…ああ」
大きな誤算は、そこだったわけか
まぁ、生きて帰って来られたこと事態、奇跡に近い事だけど
私ですら、危ない橋を渡ったんだから
話している途中、カシスの足が止まったことに気づいた。 カシスの目を引き付けたのは、アクセサリーを扱う店。
じっと見つめているカシスの元まで戻った。
「やっぱ、こういうの好きなのか?」
『そりゃま、一応女の子ですから』
言いながら、店を後にする。
「買わねぇの?」
『そういう物は、買わない主義なので』
ニッコリと振り返るカシスは、そのまま歩いて行った。
もう一度、カシスが見ていたアクセサリーに目をやる。
緑色の石がついた、四つ葉のクローバーのピアス。
「…」
――
―――
時刻は、21時を指そうとしていた。
一休みするため、競売市場から一本外れた所にある広場へ来ていた。
「…なんか、はぇーなぁ
もうこんな時間か」
『でも、それなりに楽しかったよ?
久々に羽伸ばした感じ!』
「仕事…忙しいの?」
『そうだねぇ…結構忙しいよ
得に、クラピカが大変…かな』
「旅団相手だからな
クラピカって、1人で突っ走るとこあるから、余計だよな」
『……うん』
カシスの表情が、明らかに沈んだ。
「……旅団の1人を殺ったのって、クラピカだろ?」
『………うん
今のクラピカ、精神的に不安定な状態でさ
1人にしておくのも心配だから、朝まで一緒にいたんだけど』
…ん?
朝まで一緒にいた?
その言葉に、少し動揺をしたキルアの表情は固まっていた。
「…2人きりだったってわけじゃ」
『部屋には、私とクラピカだけだったけど』
「一晩2人きりだったって事?」
『うん』
「もしかして、一緒に寝た…とか?」
『キルアとも、一緒に寝たことあるでしょ?』
……そ、そういう事だよな
「一緒に寝ただけかよ
まぎらわしいな…」
笑いながら返すキルア。
だけど、それはほんの一瞬。
カシスの表情の僅(ワズ)かな変化を見逃さなかった。
”何かあった”
そう確信するのに、十分な変化だった。
ドクッドクッと、嫌な心音がする。
「…それだけ?」
キルアの刺すような瞳に、思わず目を逸らしてしまった。
あれは、そういう意味でしたわけじゃないのに
何故だろう
後ろめたさがある
「なんだよ
キスでもされたのか?」
『……ぁ…あれは
そういう意味でしたわけじゃ……』
キルアから視線を逸らしたまま、ほんのりと頬を染めるカシス。
…あーぁ
なんで、こういう冗談が当たっちまうんだよ
・
小さな嫉妬を抑えながら、なるべく平常心を装(ヨソオ)った。
「へー。 したんだ」
『でも、あの時は
クラピカの精神状態が不安定だったし…』
「縋(スガ)られたんだろ?
それって、お前の同情に付け込んだって事じゃん」
『そんな言い方しないでよ
それに、私は同情なんてしてないし、クラピカはそんな人じゃない』
普段、温和なカシスがやけにムキになるから、キルアも余計にムキになる。
「どうだか
お前って、意外に隙だらけだからな、そういうトコ
キスだけって言ってたけど、一線越えたりしてんじゃねーの?」
『っ!? だから』
「男と女が朝まで2人きりで、何もないわけねーだろ!」
『………何も知らないくせに…そんな風に言わないで!
クラピカは、キルアと違って、誠実だし優しいし! 私の事すごく気遣ってくれるし!
クラピカが辛い時は、私も何か力になりたい
そもそも、キルアに怒られる理由なんかっ!?』
##IMGR41##
腕を捕まれたと思った一瞬の出来事に、頭が付いていかない。
『……っ!!』
気づいた瞬間、キルアの胸板を押すがびくともしない。 片腕は捕まれたまま。
噛み付くようなキス。
クラピカとは、全然違う。
『んっ……んんっ!』
無理矢理、舌をねじ込んでくるキルア。
逃げるカシスだが、逃れられるはずもなく、呆気なくキルアの舌に絡み取られてしまう。
抵抗するも、貪(ムサボ)るようなキスに、恐怖すら覚えた。
とにかく、今のこの状況をなんとかしたくて、思いきり噛みついた。
突然の痛みにビックリしたのか、少し怯(ヒル)んだキルアを押し返し、漸く離れることができた。
地面に尻餅をついたキルアの唇には、うっすらと血が滲んでいた。
『っ……なん…で』
「……んだよ
クラピカは受け入れて、オレは拒否すんのかよ」
『…キルア?』
俯くキルアの様子がおかしい。 手を伸ばし、確認しようとした。
だが、それは
キルアに届く前に、ピタリと止まってしまった。
「……行けよ」
『ぇ?』
「…帰れって」
『キルア…』
「帰れって言ってんだろ!!!」
ドクリと心臓が大きく脈打った。
頭が真っ白で、後退りしたカシスは、そのままその場を走り去るしかなかった。
走る足音が遠ざかり、やがて消えていく。
暗い広場には、座り込むキルアが虚しく残っているだけ。
「…っ!」
ギリッと握り締めた拳を、思い切り地面に叩き付けた。
何やってんだよ
オレは……
――
―――
はぁ、はぁ…
ホテルまで走ってきたカシスは、膝に手をつき息を整えた。
キルア…怒ってた……
なんで…急に…
膝についた手の甲に、一粒の雫が落ちた。
『……な、んで』
私は
泣いてるの?
なんでこんなにも、胸が痛いの…?
『っ…』
その場に座り込み、膝に顔を埋めた。
なんで、こうなったの?
なんで…
わからないよ
キルア…
・END・
12/6/10
22/12/14(修正)
◇恋愛経験、皆無の二人だからこそ、すれ違ってしまう……みたいな感じですかね~♪
キルアは、夢主への想いに実は気づいてないのですよ!
気になる存在。 自分のモノみたいな感じです。
気付いているようで、気付いていないキルア君ですv