ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
某ホテルの一室。
大きな鉄の寝台には、捕らえたばかりのウボォーギンが、鉄錠や鎖などで縛り付けられていた。
今は、筋弛緩(キンシカン)ガスを3人分も嗅がされ大人しくしている。
このままコミュニティーに引き渡す予定だ。
部屋の外では、壁に凭れているクラピカとカシスの姿があった。
「…知っていたのか?」
『?』
「地下競売を襲った奴らが、幻影旅団だったことだ」
『……うん
戦った時に、確認した
言った方が良かった?』
その問いには、クラピカからの返答は無かった。
『言わなかったのは、ああなることが安易に想像できたから』
「……そうか」
それ以上は、双方口を開かなかった。
これ以上、言う必要もないし
言わなくても、クラピカなら分かっていると思うから
ダルツォルネを残し、他の者は休息をとる事になった。
電気の消えた部屋には、床やソファーで雑魚寝する野郎共。 皆疲れからか、ぐっすり眠っている。
そんな中、窓辺に座るカシスの姿があった。
窓の外は、色とりどりのネオンが散りばめられている。
何を見るでもなく、ただただそれを眺めていた。
―――
――
「少し出掛けてくる」
――
―――
敢えて、行先は聞かなかった
休みもせずに、どこほっつき歩いてるんだか…
一番体を休めなきゃいけないのは、クラピカなんだよ?
一つ溜め息をつき、徐(オモムロ)に携帯を取り出した。
開くと、受信メールが2件入っていた。
ヨークシンに来てから、ほとんど携帯を見ていない事に、今更ながら気づく。
メールの送信者を確認すると。
『キルア…』
その名前を口にするのは、酷く懐かしく思えた。
気付けば、半年以上会ってもいなければ、声すら聞いていない。
だからなのか、キルアからの文句のメールさえ、単純に嬉しさが込み上げてきた。
口元が自然と緩んでしまう。
キルアに返信メールを打とうとした時だった。
「くそオォオオーーーーーーーーオ!!
あの鎖野郎…!!
必ず借りは返すぜ!!!」
っ!!!
紛れも無く、捕らえたはずのウボォーギンの怒号だった。
・
スクワラの運転で飛ばす、一台の車。
ウボォーギンの怒号の直後、ホテルを急いで出た護衛団。
「お、おい
どうなってんだよ!」
「…やっぱり、リーダーは電話に出ないわ」
『一先ず、パターンBに向かって』
カシスは携帯を取り出し、電話を掛けた。
「--私だ」
『クラピカ、問題が発生した
旅団の11番が逃げ出した』
「何!?
奴が!? 自力でか?」
『ううん
旅団の仲間がコミュニティーの連中に成り変ってたみたいで
ダルツォルネは、恐らく殺されてる…』
クラピカに、直ぐ戻るよう告げた。
――
―――
―――――
パターンB・某ホテル。
広いダイニングルームに、6人は集まっていた。
これからどうするか。
ダルツォルネは死んだ。
任務も遂行できていない。
まずは、ボスであるネオンに報告すべきか。
だが、ネオンはボスとは名ばかりのただの少女。
『ライト=ノストラード
本当の依頼主は、ネオンの父親よ
実際の指示は彼が出して、それをダルツォルネが受けていたから
ただ、ダルツォルネ以外は、その連絡先も知らないけど』
「やはり、報告するしかないだろう」
時間は、夜中の2時。
夢の中にいるネオンを起こし、事の次第を報告した。
しかし、指示を得ようにもネオンでは無理だ。
ネオンも自分ではどうにも出来ないと思い、父親に連絡してくれと携帯を渡した。
「スクワラ、電話してくれ」
「え!?
何でオレだよ!?」
この中では、一番の古株はスクワラだ。
だが、とてもじゃないが彼にリーダーとしての、統率力も判断力もあるとは思えない。
そこで、皆で推薦することにした。
「私は、クラピカを推すわ」
皆それに意義は無かった。
「…私よりも、カシスの方が適任だと思うが」
注目する中、クラピカの視線はカシスへ向いていた。
カシスは、クラピカが手にしている携帯を取った。
『私もクラピカが良いと思う
いきなり電話するのもなんだから、私から紹介するよ
私、一応面識あるから』
携帯を操作しながら、耳に当てた。
数コールの後、ノストラード氏が出た。
『もしもし、カシスですが
…はい……いえ、実は少々問題が発生しまして…』
オークション会場の襲撃。
ダルツォルネの死。
現状を話した。
『そこで勝手ながら、こちらで代理の者を立てました』
「代理なら、君が適任だろう」
『…いえ
私よりも適任者がいます
彼なら、貴方の期待に応えてくれるはずです
今後のことは、彼に指示をお願いします』
・
携帯を受け取ったクラピカは、そのまま部屋を出ていった。 ネオンに内容を聞かせない為の配慮だろう。
携帯を渡したカシスも部屋を出た。
玄関近くにある電話で、フロントへ掛けた。 この部屋の宿泊名義を確認するためだ。
同時に、パソコンでプロハンター専用の情報サイトを開いた。
――
―――
電話を終えたクラピカと手の空いている者を呼び、パソコン画面を見せた。
画面に映ってるのは、ノストラード組が所有している物件、組構成員の全リストだった。
旅団がこれを調べていたとしたら、非常にまずい事になる。 この部屋も、簡単に割り出されてしまうだろう。
「今すぐボスを連れて、別の部屋を借りてくれ」
「え…?」
「同じホテルでいいのか?」
『下手に移動するより、早いからね
部屋は、バショウの名前で借りといたから心配ないよ
この部屋は、どうするの?』
「このままチェックアウトしなくていい」
さすがだな
私がやろうとしていた事を、既にやっていたとは…
状況をよく見て判断し、先の事を想定し行動する
カシスなら…今後の仕事のパートナーとして、申し分ない
秘(ヒソ)かに考えていた事だった。
部屋を移動したら、誰も部屋から出ないよう言った。
『クラピカ…』
「私は、ここに残る」
決意を固めた瞳
奴と、殺りあうんだ
止めるつもりは無い
けど…
クラピカの右手を、自分の両手でそっと握った。
「…カシス?」
『……帰って来なかったら
許さないから』
止める権利は無い
なら せめて
貴方が 無事に帰ってくる事を
祈らせて…
・END・
12/5/6
22/12/13(修正)