ヨークシン編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「何かあった!!」
双眼鏡で覗いていたクラピカが、異変に気付いた。
会場入口に乱暴に黒車を止め、慌てて中に入って行く関係者達。
急いで、ダルツォルネに連絡をした。
「………!!
至急お前達は、ビルへ向かえ!
リンセン達には、オレから指示する」
「行こう!」
「ええ」
カシス…!
クラピカの胸の内には、幼さの残る少女の安否だけが気掛かりだった。
――
―――
会場内に入ると、既にそこはパニックにも似た状態だった。
当然の反応だろう。
会場内にいた人間全てが、影も形も無く忽然(コツゼン)と消えてしまったのだから。 マジックなどのレベルではない。
念能力者の仕業。
そう考えるのが自然だろう。
しかし、念の存在を知らない連中にしてみれば、何が起こったのか全く想像もできない事態。 神隠しと思う輩も少なくはないだろう。
一度携帯を切ったクラピカは、無駄かもしれないが、ダウジングで4人を探した。
そうするしか、この動揺を収める手段が思いつかなかったからだ。
いったい、何があった?
客達は、どこに行った?
カシスは
無事なのか!?
微かにダウジングが反応した。
追っていくと、ロビーの植木の中にシルバーの細いフープのブレスレットを一つ見つけた。
拾い上げたブレスレットには、明らかに血痕と思われる血が付着している。
「これ、ヴェーゼの…」
不安が過ぎる。
最悪の結末が、頭から離れない。
カシス
どこにいる!
その動揺は、センリツにも聞こえていた。
「ちょっと待って、クラピカ!」
センリツは耳に手を当て、より周囲の音を拾いやすくした。
殺伐とした雑音の中から、センリツはある声を聞き逃さなかった。
………ッ…
「!!
間違いないわ! カシスの声よ!」
「本当か!?」
走り寄るクラピカに、センリツは更にカシスの声に集中した。
…センリツ……
センリツ……聞こえる…?
…ロビーの西側通路…突き当たりの……非常階段裏…
「こっちよ」
移動の最中もカシスの声は、これを繰り返していた。 恐らく、そこに彼女はいる。
そしてこれは、センリツに向けてのメッセージ。
センリツなら、この声を拾い上げてくれる。 そう思っての事だろう。
焦る気持ちを抑えながらも、進む速度は速くなるばかり。
西側通路の非常階段裏
あそこだ!
「カシス!!」
・
階段裏を見ると、少しボロボロになったカシスが、壁に背中を預けて座り込んでいた。
『…良かった
2人なら、見つけてくれると思った』
「カシス」
『ハハ…ちょっとヘマしちゃって
でも、この程度で済んだから良かったよ』
カシスの傷は大きいものの、出血は無かった。
だが、センリツにはわかる。 彼女の怪我が、かなり深いものだという事が。
鼓動や息遣いからして、クラピカも気付いているだろう。
出血が無いのは、カシスの念能力で辛(カロ)うじて止血しているから。
カシスもクラピカと同じ、具現化系の能力者だ。 鉄扇は具現化した武器。
その応用で、鉄を粒子状態で具現化し、傷口を覆っているのだ。
そうしなければいけなかったのは、他の奴の追跡の芽を潰すため。
血痕が道標になる可能性は、かなり大きかったからだ。
「いったい、何があった!?」
『…一先ず、ここを離れよう
コミュニティーに見つかったら、何かと面倒だから
センリツ、バショウに車を裏口に回してもらって』
「わかったわ」
『クラピカ、見つからないように外へ出られる?』
「…ああ」
『車の中で、話すよ』
クラピカはカシスを抱き上げ、周りを警戒しながら裏口へ向かった。
車に着く前に、カシスはある事をクラピカに告げようと口を開いた。
『クラピカ』
「どうした?」
『…………ううん…何でもない』
「……」
気にはなったが、敢えて聞き返さなかった。
言わない方がいい
数分の違いに過ぎないかもしれない
遅かれ早かれ、分かる事だ
相手が
幻影旅団だってこと
今は
伝えない方がいい…
いや
伝えたくない
復讐心に捕らわれてしまったら、きっと周りが見えなくなってしまう
……クラピカ
貴方の支えに…なれるだろうか
復讐心の塊の
貴方を…
・END・
12/4/28
22/12/13(修正)