「ゴン君
この二ヶ月、よく約束を守りましたね」




２００階に上がり、念の存在を知ったゴンとキルアは、偶然知り合ったウイングから、念を教わる事になった。

教わるにあたり、二ヶ月は試合をしないと約束をした。　にも拘(ｶｶﾜ)らず、好奇心に負けたゴンは、試合に挑み…。
その結果。
全治二ヶ月（ウソ）の大怪我を負ってしまったのだ。

怪我が治る二ヶ月間、念に関する一切の事を禁じられていた。
その約束を守ったゴンと、それに付き合ったキルア。　２人共、今日からズシと修行を再開するところだった。




「でもさ、何で約束を守ったかどうかわかんの？
もしかしたらコイツ、こっそりズルしてるかもしれないじゃん」

「ムカッ」

「誓いの糸が切れていないからですよ」




誓いの糸は、念を使うと切れるように、ウイングの念で結んであったもの。
ゴンが纏(ﾃﾝ)を使ってみたら、簡単に切れてしまった。

それを見たキルアは、何かに気付いたのか、ウイングに尋ねた。




「ねぇ、ウイングさん
もしかしてさ、コレも同じ様なヤツ？」




そう言ってキルアは袖を捲り、手首を見せた。
そこには、誓いの糸とよく似た物が付いていた。




「これ、どうしたの？　キルア」

「それが、わかんねぇんだよ
ゴンみたいに付けられた覚えないし」




キルアの手首をマジマジ見るウイング。




「確かに
これは誓いの糸と同じで、念が込められています


キルア君
いつ、コレに気が付きましたか？」

「念を教わってすぐ
風呂入る時に気付いた

それまでは、無かったから」

「…なるほど」




顎に手を当てるウイングに、３人は首を傾げた。




「恐らく、キルア君の念に反応するように組んであったのでしょう」

「オレの念に？」

「えぇ
念の開化…それが条件だったのだと思います」

「だけど、これだけで特に変わったことも無いぜ？」

「もう一つ、何らかの条件が必要なのかもしれません」

「条件…か」

「念の開化がコレを見えるようにしたのなら、恐らくそう難しい条件ではないと思いますよ

念の基礎、四体行を一つずつ習得していけば、自ずと答えが出てくるでしょう」




手首を見つめるキルア。




コイツの事はわかった

でも、問題は




・


「いつ、誰がつけたのか」

「……ヒソカとか？」

「ありえねぇだろ
オレはあいつに、触れてもいないんだぜ？

第一、ヒソカがオレにこんなもんを付ける意味なんてねーし…ゴンならともかく」




考え込む２人に、ウイングがキルアに確認するかのように質問をした。




「ここへ来る前に、誰かに手首を掴まれたり、手を握られたりしませんでしたか？」

「特には………！！」




はっとしたキルア。

そう
思い当たる人物が、１人だけいるのだ。




「カシスだ」

「カシス？」

「ほら、あいつ１人でオレん家来ただろう？
帰る間際に、”また会えるおまじない”　とか言って、無理矢理握手させられたんだよ」

「恐らく、その時に付けられたのでしょう

握手をすることで、念を送り込み手首に定着させた」




よくわからないが、納得するゴンに対し、キルアは納得するどころか否定した。




「でも…それは有り得ないかも」

「？」

「考えてもみろ
あいつがオレん家に来たのは、ハンター試験終了直後だろ？

あいつが念を習得する時間なんてなかったはずだ
カシスがコレを付けたんだったら、一体いつ念を覚えたんだ」




辻褄(ﾂｼﾞﾂﾏ)が合わない。
つまり、コレはカシスが付けた物ではないという事になる。

だが、他に心当たりがない。




「となると、考えられるのはただ一つ

そのカシスという子もハンター試験を受ける以前から、既に念を習得していた、という事になります」

「「！！」」




驚く２人。
無理もない。

そんな素振りは、微塵もなかった。
かといって、イルミやヒソカの様な嫌なオーラを感じたこともない。

当然だ。
ウイングが前に言っていたように、念は使い方を間違えれば、恐ろしい武器になってしまう。
だから、ハンター試験では念を使わなかったのだ。




「しかも、かなり念に長けていますよ
この子は」

「どうしてわかるの？」

「相手の体に、自分の念を定着させる事は、厳しい鍛練が必要ですからね」

「そんなにすごいんだ…」

「…」




複雑そうな表情をするキルア。




凄い奴だとは思っていた


でも、カシスはオレよりも
遥か前を歩いていた

恐らく
ハンゾーよりも、ヒソカに近い所にいる



悔しい
とは、少し違う

嫉妬に似た感情




オレ達は
スタートラインに立ったばかり



絶対、追い付いてやる！




「ゴン！　ヨークシンまでに、ぜってー強くなるぞ！！」

「うん！！」




こうして、２人の修行が再び始まった。




・ＥＮＤ・
12/3/10
22/12/12(修正)