ゾルディック家編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暗く冷たい長い廊下。 小さな灯(トモシビ)だけが、点々と照らされている。
地下への階段を下りると、両開きの扉が現れる。 開けると中は、石畳の部屋が広がっていた。
その中央には、冷たい鎖で両手両足を繋がれ吊るされているキルアの姿があった。
上半身は裸。 全身には、鞭打ちの跡が無数ある。
その体に更に傷跡を付ける、鞭を持った男。 キルアのもう1人の兄・ミルキだ。
丸々と太ったその体からは、彼の食生活がいかに杜撰(ズサン)なものかを物語っている。
「キル。 お前友達が出来たんだってな」
「…」
「なんで知ってるかって?
さっき、イル兄から電話があったんだよ
お前の友達が、ここまで来てるってな
女の癖に、1人でだ」
「(女…カシスか…)」
「ま、安心しろよ
イル兄が迷ってる所を無事保護したってよ」
「!」
その言葉に、一瞬反応するキルア。
キルアの表情にミルキは、満足気に告げた。
「その意味、わかるよなぁ
今頃、どうなってるか」
ガシャンと、キルアの腕を繋いでいた鎖が勢いよく切れた。 いや、キルアが引き千切ったのだろう。
睨みつけられたミルキは、まるで蛇に睨まれた蛙の様だ。
「…場所は」
「っ………キルの部屋だ」
そのまま独房を出て行ったキルア。
悔しそうな表情のミルキだけを残して。
はぁ、はぁ…
何で 来てんだよ
わけわかんねぇ
無事なんだろうな…あいつ
柄にもなく、焦りながら自分の部屋へと、少しでも早く足を進めた。
階段を上り、廊下の先に目的地の扉がある。
そして
勢い良く開かれる扉。
・
「カシス!!!」
『お! ホントに来た』
………。
開けた扉の先には、どんな光景が待っているのか、正直怖かった。
が。
キルアの目に映ったのは、それとは程遠いくらいにまったりとしたものだった。
ソファーに座り、紅茶を啜(スス)るカシスと、目が点になるキルア。
「なにアホな顔をしとる」
「じぃちゃん…! ……兄貴は?」
「とっくに仕事に出かけたわい」
「(…あのヤロ~……いつか殺す!)」
その時、ミルキに遊ばれていた事に気付いた。
元々、ミルキはイルミからキルアを呼ぶように言われていたようだ。
「ワシは退散するとしよう」
気を利かせたゼノは、部屋を出て行った。
今だにポカンとしているキルアに、笑いが込み上げる。
『上半身裸に傷だらけって、痛すぎ…ププ』
「…ププ。 じゃねーよ!
つか、何で1人でこんなとこまで来てんだよ!
お前、ここどこだかわかってんのか!?
暗殺一家のアジトだぞ!
乗り込んでくるとか、ありえねーし!!」
あれだけ焦った自分が妙に恥ずかしくなり、半分は八つ当たりもあった。
元を辿れば、原因はカシスなのだが。
『せっかく会いに来たのに、ずいぶんな言われようね』
「会いに来たって……それだけ?」
『他に何があるのよ』
ふんっと腰に両手を宛て、自慢げに言うカシス。
それだけのために、危険を冒してまでここまで来たってのか?
「なんで…
そこまでして会いに来たんだよ」
『なんでって…………』
あ…れ?
私
どうして、こんなに必死にキルアを追ってきたんだろう…
皆と一緒に来ても良かったのに……
それまで、”会いたい”。
ただ、それだけだったのに。
だけど
自分をここまで突き動かしたのは、違う思いだった事に今更ながら気づいた。
・
あの時
キルアの背中が離れていった時
重なったんだ…あの日と
いくら追いかけても
いくら泣き叫んでも
あの背中が、振り返ることも、戻ってくることもなかった
悲しくて…
怖くて……
もう
あんな思い したくなかった
だけど
それ以上に
キルアに
会えなくなるのが……怖かった
流れ出てしまった涙は、もう止めることが出来ない。
「なっ…!! 何泣いてんだよ」
『…ぅ………っ』
突然泣き出すカシスに、焦るキルア。
何故泣き出したのか、全くわからない。
声を押し殺して泣く彼女は、とても弱々しかった。
困った表情をするキルアの手は、自然とカシスの頭に触れた。
「……泣くなよ
お前が泣いてると、オレ…どうしていいか、わかんねーだろ」
四次試験の時と同じだ
お前が
なんで泣いてんのか
何に対して悲しんでるのか
何一つ
わからない
だから オレは
お前の事 もっと
もっと
知りたいんだ
・END・
12/2/11
22/12/12(修正)